一般的に、グループの人数が減ることによる影響はネガティブな面が大きいが、それはエビ中には当てはまらない。最近、自分が彼女たちのライブを観ていて感じるのは、<残された自分たちに何ができるか>ということではなく、<今いるメンバーでできるベストは何か>を常に探り、志半ばで卒業してしまったメンバーの思いを胸に、しっかり結果を残しているということ。私立恵比寿中学というフォーマットに自分たちを押し込めるのではなく、グループの未来を自らの手で切り開こうとしているのだ。しかも、笑顔で。
その結果、現在のエビ中は、パフォーマンス面では過去イチではないかと思うぐらい素晴らしいステージを展開している。元々、エビ中には数多くの名曲が存在する。たむらぱん、池田貴史(レキシ)、TAKUYAなど豪華な作家陣による楽曲は、アイドルシーンの枠を超えてより多くの音楽ファンの心を掴み得るものが非常に多い。
今は高い歌唱力を持つアイドルは多いし、良質なアイドル楽曲もたくさんある。そういった点だけみれば、エビ中のような存在は決して珍しくないのかもしれない。では、何が彼女たちとほかのアイドルとの違いを生み出しているかというと、各メンバーのキャラクターが存分に開放されたライブパフォーマンスと、これまでに数々の苦難をともにしてきた中で自然と育まれた、家族のような団結力なんだと思う。これが私立恵比寿中学という存在をより特別なものにし、ライブ会場をファンの笑顔で満たすのだ。
今回は、新曲「トレンディガール」の話だけでなく、メンバーが思う各メンバーのパフォーマンスの変化や、最近自分たちで行うようになったというフェスでのセットリスト決めの苦労などについて根掘り葉掘り聞いてみた。
―まだ4月ですが(インタビューが行われたのは4月中旬)、今年のエビ中はかなり忙しくないですか?
星名美怜(以下、星名) ツアーが始まったし、ありがたいことに毎日色々やらせていただいてます。
―ツアー以外にも、今年はドラマ「神ちゅーんず ~鳴らせ!DTM女子~」の収録、前夜祭(4月16日に行われたイベント「エビ展の前夜祭 ~開校10周年をお祝いする夜~」)、MUSiCフェス、対バン(対バンシリーズ「私立恵比寿中学合同合唱コンクール」)があって、ライブに至ってはそれぞれ内容が変わってくるという。ライブの構成を頭に入れるだけでも大変なんじゃ?
全員 大変ですよ!
―そうですよね。
星名 でも、去年のクリスマス大学芸会(12月23日から25日にかけて幕張メッセイベントホールにて開催されたクリスマスライブ)は3日間それぞれセットリストが違ったので、それを経てからは慣れたというか。
安本彩花(以下、安本) エビ中ってメンバーチェンジがたびたびあったり、変化の多いグループで、そういう意味ではその道のプロだし、「どんとこい!」っていう感じではありますね(笑)。
真山りか(以下、真山) 人数が変わるたびにフォーメーションが変わるしね。
中山莉子(以下、中山) でも、頭に入れるのも上手くなったけど、忘れるのも上手くなっちゃって(笑)。
真山 そうだね。ところてんみたいな感じ(笑)。
小林歌穂(以下、小林) すぐに忘れちゃうよね。
―でも忘れることも大事ですよね。新しく覚えたこととごちゃごちゃになってしまいそうだし。
柏木ひなた(以下、柏木) でも、忘れなくていいことも忘れちゃったりして(笑)。
真山 ヤス(安本)は食べたご飯のことも覚えてないんですよ。
星名 そうなんですよ。「どこどこの県で食べたアレ、美味しかったよね!」「私、食べてない」「いやいや、いたから!」みたいな(笑)。
安本 その時にあった出来事も含めて飛んで行っちゃうんですよ(笑)。
―様々なイベントをこなしていく中で、頭を上手く切り替えるコツはあるんですか?
安本 ひとつひとつのフェスやライブをやり切ることで、次の日の仕事にすっきりした状態で臨めるので、悔いが残らないように全部出し切ることが大事なのかなって思います。
―僕が見ていて感じるのは、6人になってから結束力やパフォーマンスのクオリティがグッと高まっているんじゃないかという点で。実際のところはいかがですか?
星名 この6人になってから、ちゃんとした話し合い以外の何気ないときにも、「次のイベントで何をやりたいか」とかいろんな話をするようになったと思います。それは年齢的な成長もあるとは思うんですけど。だから、フェスのセットリストをみんなで意見を出し合って決めるようになったり、そういうところから変わってきた気がします。
柏木 6人になってからは自分たちからも意見するようになったし、スタッフさんからも「自分たちで決めてみて」って頼ってくださることがすごく増えたので、それは大きいと思います。昔だったら、私たちだけで話し合いをすると一瞬で飽きて、「ご飯、何食べ行く?」みたいにすぐに違う話をしちゃってたんですよ。だけど今は年齢も上がってきたし、フェスでのセットリストを自分たちで考えるようになったこともあって、ステージに対する意識とか思いが強くなっているので、全員が自分たちの意見をきちんと言うようになりました。
星名 これまでもやりたいと思うことはいろいろあったけど、実現することはなかなかなかったんです。私たちの伝え方もあまり上手じゃなかったし。その頃から比べると、スタッフの皆さんとのコミュニケーションは増えた気がします。
―フェスのセットリストは何を意識して組むんですか?
真山 フェスにもよるけど、基本的には初見の方が多いと思うので、認知度の高い曲だったり、どの層に響かせたいかというところから決めていきます。
安本 楽曲の振り幅はエビ中の魅力のひとつなのでそういうところは意識しつつ、でも盛り上げたいっていう気持ちもあるからけっこう悩みます。
柏木 全部がアゲ曲っていうのも大変なので、聴かせる曲を上手く入れたりしますね。
真山 校長(私立恵比寿中学のチーフマネージャー)からやってほしい曲を提示されることもあるので、自分たちをどう見せたいかっていうところも含めて話し合いをしてまとめますけど、まだまだ至らないところが多いですね。
星名 今はまだ勉強中です。
―エビ中の楽曲は名曲だらけですし、フェスの短い時間でどの曲をピックアップするかかなり悩みそうですね。
小林 悩ましいよねえ!
安本 「アレもいいけど、アレもいい よね!」みたいになったり!
星名 いろんなジャンルの曲をやらせてもらっているが故の悩みがありますね。
―6人それぞれの思いもありますしね。
真山 でも、メンバーの思考はけっこう似てるかもしれない。
星名 歌ってる側と観てる側で捉え方がけっこう違っていて、メンバーの意見は合うんだけど、スタッフさんからはまた別の意見が出るから、みんなでよく悩んでますね。
柏木 ライブが終わった後に、「やっぱ、これを入れておけばよかったね!」ってなることもたまにあるんですよ。だから、「それは次につなげていこう」って。
―本番中、「あ、もしかしたら次の曲はアレのほうがよかったかも!」みたいなことがあったり。
全員 あるあるある!
柏木 つなぎ的な問題で。
星名 「でも、もう戻れない!」みたいな(笑)。
柏木 そういう時はもう、その曲を一生懸命やるっていう。
星名 そういうところも含めてみんなで話し合ったり考えることが増えたのかもしれない。
―先ほど柏木さんも話してましたが、自分たちでセットリストを考えるようになったことで、ステージに対する責任感も増していきますね。
真山 そうですね。自分たちで「これがいい!」って押し切ったセットリストは、ライブ後に「だから言ったでしょ?」ってスタッフさんに言えるようにするために、もうみんな必死です。
中山 うん、必死!
真山 でもそうすると、本来のライブの意味を見失いそうになったりすることがあるので、これからもセトリを決めるときは様々な課題をクリアしていけたらなと思います。
―さて、エビ中開校から10年も経つと、それぞれ加入時期は違うとはいえ、みなさんのパフォーマンスも変化してきていると思います。そこで、各メンバーのパフォーマンス面での変化をみなさんに分析してもらいたいと思います。まず、真山さんはいかがでしょうか。
真山 一番変わらないと思うんだけど。
安本 でも、ライブ中の見せ方とかに大人の色気が出てきた。
真山 (まんざらでもない表情)
―うれしそうですね(笑)。
星名 「あれ? 中学生とは言いつつも、やっぱり22歳なんだ」っていう感じがする。
真山 そりゃそうだ!(笑)
安本 真山は<ハイテンションガール>っていうキャッチフレーズがあるので、元々はスポーティーなイメージが強かったんですけど、最近は変わりましたね。
真山 ふふふ。
柏木 自分の魅せ方をわかってると思う。
―そう言われてみてどうですか?
真山 そのとおりだと思います(笑)。年齢は自分がエビ中で一番上だから、そういう面での切り込み隊長は私が最初やらないといけないと思ってます。昔はただがむしゃらにやらなきゃって思ってたんですけど、今はがむしゃらに加えて、ただ子供が踊っているだけのものにはならないように、この先エビ中を長く続けるためにも年齢に見合ったパフォーマンスをしようと心がけていますね。
―真山さんはパフォーマンス中、グッと曲に入り込む瞬間があるように見えるんですが。
真山 ああ、基本的にライブ中の記憶がないんですよ。いいライブはだいたい記憶がない。それぐらい無意識なのが自分にとっては一番よくて。クセで力み過ぎちゃうところがあるので、最近は力まずに記憶をなくすっていうのが課題です。
星名 「力まずに記憶をなくす」って、フレーズだけ聞くと怖い(笑)。
小林 あはは!
真山 まあ、リラックスが一番だっていうことをこの10年で学びました。
―続いて、安本さんはいかがでしょうか?
星名 変わりすぎ! 時代によって「本当に同じ人かな?」って思うぐらい激しいキャラ変(笑)。
柏木 表現が豊かになったよね。
星名 「出席番号の歌その1」に、<エビ中のボーカロイド>っていう歌詞があるんですけど、今はもうガンガン。
真山 フェイクまでやるしね。一番ステージに対する考え方が深くなった人だと思う。ライブでMCをやってくれるようになってからは、どうやってステージを自分たちで作り上げるかっていうことを一番考えてくれるようになったので、ライブ終わりの話し合いでも、煽りやフェイクをどこに入れるか、どうやったら盛り上がるかっていう議題をヤス(安本)が率先して提案してくれます。
星名 ね! すごく変わった~。
―小林さんから見ていかがですか?
小林 私はボーカロイド時代は知らないから……。
真山 でも、ヤスと出会ったときから比べても相当変わったでしょ?
小林 大きく変わったっていう印象が私の中ではあまりなくて。でも、大人になるにつれて、好きでパフォーマンスしてる感じが自然と出てくるようになったなと思います。
―安本さん、どうですか?
安本 ライブに対する考え方はだいぶ変わりましたね。最初は本当にゼロからのスタートだったので。
真山 ゼロっていうか、マイナスじゃない?(笑)
安本 (笑)言われたことを自分なりに正確にやることがアイドルのお仕事だとずっと思ってたんですけど、それじゃあ自分がアイドルである意味がなくなってしまうんだなってことに気付いて。そこから「自分を出すしかなくねっ!?」って思うようになったし、今はそういうパフォーマンスになってると思います。昔に比べると感情がすごく入るようになりました。
―では、星名さんに関してはいかがですか?
真山 美怜ちゃんはずっと安定してる。安定していい。
安本 ブレない感じがする。
中山 確かに、加入した当初からずっと変わらないし、頼れるなって思います。
真山 人間的な部分は変わってるんだけど、それがステージに現れないところがすごくいい。
柏木 一番ちゃんとアイドルしてる。
真山 そう。でも最近、楽屋でしか見せない顔がちょいちょいライブでも出てくるようになってるよね。男らしさというか、芯がしっかりしてるところが出てきて、それもカッコいいなあって思います。
小林 ライブでやってるキメ顔を私に向けてもやってくれる(笑)。
星名 なにそれ、わかんないわかんない(笑)。
小林 ファンの方にキメ顔をするじゃないですか。そのキメ顔をした状態で、ペアで踊ってるときの私とも向き合ってくれるんですよ。
星名 楽屋だったらもっと「イエーイ!」ってやるけど、私たち2人のことを見てる人もいるからね。
小林 ああ、やっぱりファンの方のことも考えてるんだ~。
星名 はっず! うれしいけど。でも、最近は楽屋でのテンションがそのままライブでも出るようになって……。
中山 最近、さらに出てきてると思う!
星名 実は、ステージより楽屋にいるときのほうが私は騒がしくて。ファンの方は私に対して女の子らしいイメージを持ってると思うんですけど、意外とそうでもないような気がする……そう思うのは私だけ?
真山 いや、女の子だよ? 絶対的に女の子なんだけど……。
小林 たまにおじさんがやってくる感じ(笑)。
星名 自然と自分の中のおじさんが登場してきて(笑)、最近はそれをステージでも出せるようになってきたからめちゃめちゃ楽しいです。
―続いて、柏木さんはどうですか?
星名 ひなたは変わった?
安本 パフォーマンス面では変わってない。いつの時代も<エビ中の歌姫>って感じ。
真山 でも、パワープレイじゃなくなったかもしれない。出会った当初は力と自我で押すタイプだったけど、大人になってからは柔らかくなったし、歌に関してもカラオケにいつも行ってるだけあって、喉が強い。
星名 休みの日によくそんなに行くなってぐらいカラオケ行くよね(笑)。
真山 昔からだけど、基礎がしっかりできてる上でいろんな技を自分の引き出しから丁寧に出してる感じがする。
安本 お上品だよね。
真山 うん、何をやっても品がある。変顔しても品がある。
安本 さすがにそれはない!(笑)
星名 でも、そういう二面性があるからこそ、このグループのなかにふわっといられるんだと思う。
―だそうですが、柏木さん。
柏木 ありがとうございます。恥ずかしいですけど(笑)。パフォーマンスに関してはダンスも歌もエビ中結成と同じぐらいに始めたので、歴としてはみんなとあまり変わらないんですよ。でも、自分が好きなことは歌とダンスしかないので、私の全てがそこに向かっちゃってる感じ。いろんなお仕事をしていても、一番好きなのはライブだし、そこに対する気持ちが自分でもわかるぐらい熱いんです。あと、今、私はダンス部長をやらせていただいてて、みんなの踊りのクセもわかるので、うまく全体のバランスが取れるように心がけています。
―小林さんについてはいかがでしょう。
安本 コバカホ(小林)は変わらぬ癒やしだよね。
真山 そうだね。
安本 一時期さ、太い声に憧れてたじゃん。
小林 ありました!(笑)
安本 あの頃は頑張って声を太くしててらしくなかったけど、今は自分らしさを理解して、癒やし担当として歌声やダンスでファンのみんなを癒やしてます。柔らかいよね。
真山 ずーっと明るい。でも、これから先もきっと変化するんだろうなって気がする。
星名 私たちも(小林と)同じぐらいの歳でいろいろ変わったもんね。これからどうなるんだろう。
真山 あとは最近、トークが芸人さんみたい(笑)。好きな芸人さんの影響を受けやすいんだよね。
小林 だって、他にツッコむ人がいないんだもん!
―中山さんは小林さんと同じタイミングでエビ中に加入しましたが、見ていてどうですか?
中山 すごく近い存在だから、正直、わからないんです。もうちょっと離れてたら気づくと思うんだけど、ずっと隣にいるからわからないです。
―ああ、確かにそうかもしれないですね。小林さんは今の解説を聞いてどうですか?
小林 私は、歌は好きだけど踊れないほうだから、「歌とダンスが癒やし」って言ってもらえたのは嘘なんじゃないかと思うぐらいうれしいです。声を太く出してた時代は、ちょうどその頃太い声のアーティストさんが好きだったんですよ。それで、太い声を出せるように頑張ってたんですけど、『穴空』(2016年4月リリースの3rdアルバム)の初回特典に付いてたさいたまスーパーアリーナのライブCDを聴いたら、吐きそうになるぐらい気持ち悪くて! そこで「自分に太い声は向いてない」ってことにやっと気付いて本来の声に戻したら、「癒やしだ」って言ってもらえるようになりました。
―それがのちに「感情電車」の名演につながっていくわけですね。
小林 はい! うれしいです。
―では最後、中山さんです。
安本 子鹿ちゃんから猛獣に(笑)。
真山 猛獣? 珍獣じゃない?(笑)。
星名 最初は衝撃的なぐらい小刻みに震えてて(笑)。
安本 今はもう、「ついて来なさい!」って言ってるのが背中から感じられるぐらい勢いがあって、パフォーマンスでも頼りにしてます。
―最近の中山さんのパフォーマンスは「ドスン!」とした塊感がありますよね。
真山 しっかりした感じ。あと、ダンスはすごく激しくなった。
小林 キレキレ。
柏木 バレエをやってたこともあってメンバーの中で一番体幹がしっかりしてるので、ダンスのキレがすごいんですよ。だから、「曇天」でのソロダンスも全くブレない。
―中山さん、いかがですか?
中山 なんだろう……?
安本 みんなは褒められて照れてたのに、1人だけなんとも思ってなさそう(笑)。「ああ、そう。言ってろ言ってろ」みたいな(笑)。
真山 そんなところもいいよね!
中山 (笑)ダンスは3歳ぐらいから習ってて、ステージで何かすることがすごく好きで、小学生の頃からバレエの発表会でソロで踊ったりもしてて、その影響でアイドルに憧れるようになったので、今、こうして活動できてるのが自分でもすごいなって思います。
―最初の頃はおっかなびっくりに見えていたんですけど、今みたいに堂々としたパフォーマンスができるようになったきっかけはあるんですか?
中山 自分の中では変わってないんですよ。初対面だと今みんなが言ってたように見られがちなだけで。
―じゃあ、ステージ上でも変わったとは思わないですか?
中山 自分なりの表現をするっていうことを先生たちに教えてもらって、それから自分を出せるようになっていったんだと思います。
―なるほど。そういうことだったんですね。ありがとうございます! さて、前作『エビクラシー』辺りから曲調にさらなる幅が生まれて、大人な雰囲気の楽曲が増えてきたと思うんですが、それについてみなさんはどう感じていますか?
星名 ありがたいですね。私立恵比寿中学という名前が付いてることで、これまでは<中学生感>というものをずっと求められてきたんです。だから『エビクラシー』よりも前の私たちにとって、中学生感っていうのは「とりあえずがむしゃらになんでもこなす」ということだったんです。だけど今はいろんな曲に挑戦させてもらえるようになったことで、私立恵比寿中学という名前にとらわれる必要がないんじゃないかっていう意識に変わったんです。今は曲にグループが助けられてるし、素敵な曲を作ってくださる作家のみなさんにも助けてもらってると思います。
―みなさん、当たり前のように様々なタイプの曲を歌いこなしてますけど、相当器用ですよね。
小林 ええ~っ!?
星名 いや、毎回苦戦してますよ!
真山 やっていくうちに馴染んだらいいなっていう感じだし、全然器用じゃないです。
星名 ライブで成長って感じだよね。
柏木 確かに。
―でも昔から、珍曲から名曲まで幅広くフォローしていて。
小林 あはは!
星名 いろんな曲をやってきたから、抵抗なくなんでも受け入れられる態勢が整ってるのかもしれない。
安本 素直に受け止めて、全力でやってます。
―では、今考えるエビ中らしい曲ってなんだと思いますか?
小林 なんだろう?
安本 なんだろなんだろ。
真山 私が思うライブのエビ中のイメージは、一番新しいアルバム『MUSiC』で言うと「元気しかない!」ですね。歌パートがありつつ、コント的な要素もあって。あと、6人が横一列で手を回す振りがあるんですけど、それもエビ中ぽいなあって。楽屋でやる気に満ち溢れているときの雰囲気に近いですね。
星名 そうだね。普段の私たちに近いね。
―今のエビ中らしさはあの曲に集約されてるんですね。
真山 最近はいろんな作家の方のニュアンスに6人のイメージを合わせてレコーディングすることが多いんですけど、あの曲だけは「好きなようにやっていいよ」って言われました。
小林 <永遠に中学生>って言ってるからこそアホにもなれるし、でもその反対に大人な楽曲も歌えるようになってきたのはすごいなって思います。
―中学生コンセプトにハマらない世界観を自分たちの手で押し広げているところにファンも可能性を感じているんじゃないかと思っています。さて、新曲「トレンディガール」ですが、何か意識したところはありますか?
星名 この曲は意識しまくりですね。みんなのニュアンスを揃えることを徹底しました。声質は違えどひとつの世界観……1人のなかに6つの声が入ってるようなイメージ。だから、ひとつのものを作ってる感覚がいつも以上に強くありました。
―この6人の特徴的なヴォーカルを合わせるのは大変そうですね。
安本&小林 難しかったねえ。
星名 仮歌をかなり意識しました。
柏木 全員のニュアンスが一緒っていうのはこれまでなかったので、すごく新鮮でした。
―楽曲のプロデュースを手がけた川谷絵音さんとは初めてのお仕事でしたが、何かアドバイスはありましたか?
安本 なんでもストレートに言ってくださる方だったのでわかりやすかったです。ズレてたら「ズレてるよ」ってオブラートに包まずそのまま伝えてくださるので、曲の世界観を理解する上でもありがたかったですね。初めての経験もたくさんあったし、刺激になるレコーディングでした。
―こんなにクールなサウンドは初めてですよね。
真山 初めてですね。
星名 なので、ライブで歌うときの想像がまだできないです。新しい扉を開けた感じがあります。
安本 ファンの人はどういうコールを入れるんだろうね(笑)。
真山 そもそもコール入れるのか?っていう。
小林 入れなそうじゃない?
真山 ゲスの極み乙女。さんとかindigo la Endさんのライブはどちらかという横ノリだし、その感じがエビ中にもやってきたのは新しいですよね。
柏木 静かに聴くのも合うかもしれない。
中山 ライブのどの位置にこの曲を置くかも考えないと。
―確かにセットリストは悩みそうですね。そのほか、レコーディングで意識したのはどういうところですか?
星名 曲の最初のほうがめちゃくちゃ早口なので、とにかく滑舌を意識しましたね。
安本 言葉がたくさん詰まってるので、リズムで覚える感じで体に叩き込みました。
中山 緊張してたこともあって言葉が追いつかなくて、口が全然回りませんでした(笑)。
小林 私は滑舌が悪くて、1行は歌えてもその次の行ができなかったりしたので、細かく録っていただきました。カップリングの「あなたのダンスで騒がしい」も川谷さんのイメージが強いから、川谷さんに見えている風景を私たちの歌で伝えるのがすごく難しくて、そこは課題でした。
―ライブでの再現を考えるとどうですか。
柏木 ライブのほうが難しそうじゃない? いつものライブのテンションのままで歌うのは違うだろうし、レコーディングのときのことを思い出すぐらいの勢いじゃないと。
中山 それまでのライブの流れを変えちゃいそう。
真山 そこはちゃんと守りたいよね。以前、川谷さんはTEAM SHACHI(当時は、チームしゃちほこ)にも楽曲(「シャンプーハット」)を提供されてて、それをエビ中でカバーしたことがあるんですけど、めちゃめちゃ難しかったんですよ。だからそのときの記憶が蘇ってきて、ライブでやるのが楽しみのような、ドキドキのような……。
―現在はライブハウスツアーの真っ最中ですね。
星名 ファンの方との距離がちょうどいい近さなので、10周年の感謝を伝える上でもライブハウスツアーでよかったなと思います。
―狭いステージでパフォーマンスをする上で意識することはありますか?
真山 「ぶつけすぎない」ことですね。
―ああ、やっぱりメンバーとぶつかってしまうんですね。
真山 いや、物理的なことではなくて、自分たちのパッションをお客さんにぶつけすぎると、近すぎて受け取りづらくなるのかなって思うんですよ。ライブではあくまでもお客さんが楽しめる空間を作りたいし、どうやったらお客さんも私たちも気持ちよくノレるのか考えることが大事だと思うんです。お客さんとの距離が近ければ近いほどパフォーマンスは楽しくなるけど、だからと言ってパワーを出しすぎることでただのお祭りみたいなノリになってしまうのはちょっと違うのかなって。
―小さい会場だと空気を共有する感覚がより強くなるので、ホールとは意識の持ち方が変わりそうですね。
柏木 ホールよりライブハウスのほうがお客さんとのやり取りがしやすいし、コールもより近くに聞こえるから、そういうのも楽しいですね。
安本 「へぇ~、こんなこと言ってたんだ~」っていうこともあるよね。
―お客さんが言ってることは全部拾えますよね。
星名 会話ができますね!
柏木 MC中にも何か言ってくださるから、「え、なんて?」って聞き返すとすぐに声が返ってきます。
―今年の後半もいろいろと予定が詰まってるんですか?
星名 私たちもまだ知らないんですけど、秋にアルバムが発売されることは決まってます。
安本 それを筆頭にいろいろあると思います。
真山 ギリギリまで10周年イヤーを盛り上げていけたら。
―校長がファンの財布の心配をしていましたね。
小林 そうなんですよねえ。
安本 でも、お金のことなんて忘れちゃうぐらい、1年を楽しく盛り上げていけたらなって思います。
真山 そうだね! 100点満点のコメント!
―周年でイベントをするアーティストは多いですけど、ここまでてんこ盛りなのはなかなかないですよ。
真山 胃もたれしますよね!(笑)
小林 そうだよねえ。
柏木 「まだやるのかよ」みたいな(笑)。
―でも、不思議とやりすぎな感じがしないんですよ。フェスだったり、対バンだったり、あらゆる方向からボールが飛んでくる感じが刺激的だし、それがエビ中らしさなんだと思います。
全員 ありがとうございます!
<INFORMATION>
「トレンディガール」
私立恵比寿中学
SME Records
発売中
初回限定盤A

初回限定盤B

通常盤
