ワーナーやユニバーサルの経営体制にならい、ソニーも音楽出版と音楽事業を再編成。

三大メジャーレーベルの他の2社の経営体制にならい、ソニーミュージック・エンタテインメント(SME)およびソニー/ATV――それぞれソニーの音楽事業と音楽出版事業を展開する子会社――が来月から新会社に統合されることになった。
ローリングストーン誌では、現地時間17日にソニー社内で配布された内部メモを入手。この中でソニー株式会社の吉田憲一郎CEOは社員に向け、2つの子会社が今後「ソニーミュージック・グループ」に統合され、SMEの現会長、ロブ・ストリンガー氏が指揮を執ることを伝えた。

SMEジャパンは現状のまま独立会社として継続するが、ソニーミュージック・エンタテインメントとソニー/ATVミュージックパブリッシングはいずれもストリンガー氏の統括課に置かれる。同氏はSMEおよび新会社のトップを兼任する。今回の組織再編により、ソニーが抱える各レーベルと所属アーティスト――ビヨンセやジャスティン・ティンバーレイクといった大物や、トラヴィス・スコット、リル・ナズ・Xなどの若手まで――は今後ソニーの出版部門と「よりいっそう協力体制を深める」ことが可能となるが、今後も2社の業務は独立して運営されるという。

また、ソニーはこれで他のメジャーレーベルと同じ組織体制をとることとなった(ワーナーの音楽部門および出版部門はいずれもワーナー・ミュージック・グループ傘下に置かれ、ステファン・クーパーCEOが自ら指揮を執っている。一方ユニバーサル ミュージック パブリッシング グループとユニバーサル ミュージック グループ レコーディング株式会社は、会長兼CEOのルシアン・グランジ氏率いる会社に統括されている)。

「新会社の目的は、音楽業界のリーダーとしてのソニーの立ち位置をさらに強化・確立するとともに、我が社に新たな価値を生みだすことです」と吉田CEOは述べ、音楽ストリーミングサービスの恩恵で音楽ビジネスが急速に変わりつつある昨今、「業界のリーダーとしての地位を維持するには、ソニーはいまこそ積極的な措置をとるべきだと感じました」と強調した。以下、メモの全文を掲載する。

ソニー株式会社、吉田憲一郎CEOの社内メモ(以下、英語原文を日本語訳したもの)

社員のみなさま

ソニーのエンターテインメント各部門間での協力体制を増強し、クリエイターに寄り添い、より戦略的なチャンスを開拓してゆくという我が社の事業目標の一環として、8月1日付でソニーの海外音楽部門と音楽出版部門を統合し、新たにソニー・ミュージック・グループを設立することを皆様にご案内いたします。ロブ・ストリンガー氏にはすでに打診し、現職のソニー・ミュージック・エンタテインメントCEOに加え、新会社の会長職を引き受けていただくよう要請しました。

新会社の目的は、音楽業界のリーダーとしてのソニーの立ち位置をさらに強化・確立するとともに、我が社に新たな価値を生み出すことにあります。
今回の統合により、各部門の独立性と独自の企業文化を尊重し、維持しながら、音楽事業および音楽出版事業間でさらに高いレベルの協力体制を形成することができるようになります。新体制下では、ソニー/ATVミュージックパブリッシングの会長兼CEOのジョン・プラット氏がロブの直属の部下となります。音楽出版事業の運営に関しては、これまで通りジョンが責任者として統括いたします。

ストリーミングサービスの台頭とその他マーケットの変化により、音楽ビジネスのあり方が変わり、これまで以上に成長のチャンスが生まれました。その結果、ソニーが音楽業界のリーダーとしての地位を維持するためには、アーティストや作曲家、ビジネスパートナーに対する我が社の価値を高めるべく、世界に誇る音楽事業と音楽出版事業間でのコラボレーションと価値創生を加速させるという抜本的な対策を、いまこの時点で講じることがなにより重要だと感じていました。

ソニーミュージック・エンタテインメント・ジャパンは現状のまま、独立会社として私が統括いたします。新会社ソニーミュージック・グループとSMEJが「One Sony」のスピリットのもと、今後も協力体制を継続し、さらに強化してゆくものと期待しています。

CBSソニーレコードの合弁事業として、ソニーが1968年に音楽ビジネスに参入してから51年が経ちました。2018年にはEMIミュージックパブリッシングを買収し、音楽企業としてさらに規模拡大いたしました。

業界での豊富な知見を備えた傑出した指導者であり、従業員、アーティスト、作曲家からも絶大な支持をもつロブとジョンに、私は心から敬意と信頼を寄せています。今後2人は皆さんとともに働き、時に助言を仰ぎながら、アーティストと作曲家に優しい世界No.1の音楽企業としての地位を守り、我が社のレガシーをさらに強化して未来へ引き継ぐとともに、ソニーミュージック・グループにさらなる成功をもたらしてくれるものと確信しております。

ソニー株式会社 社長兼CEO
吉田憲一郎
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