筆者はRED MARQUEEでサブリナ・クラウディオを3曲ほど聴いてから駆け付けたのだが、道中で漏れ聞こえるリハの出音からして明らかに凶悪。さっきまでの晴天がウソのように雨雲が立ち込めていくWHITE STAGEに、まずはマイケル・カバナーとエリック・ムーアが現れ「ズドン!」と重厚なツインドラムのビートを刻んで火蓋を切ると、大歓声に導かれ残りの5人のメンバーが登場。長髪にエルフ顔の中心人物=スチュ・マッケンジーがメタリカのバンドTシャツ、ベースのルーカス・スキナーが着用するTシャツにはイラスト付きで「バナナ。」のカタカナ文字……という時点でもう「優勝!」としか言いようがないが、そのまま「Self-Immolate」のスラッシーな高速リフに突入すると、ステージ前には早くもモッシュピットが爆誕である。髪を振り乱しながらアヘ顔でギターを弾き倒すスチュに対して、左端でおどろおどろしい鍵盤を鳴らしながらコーラス&ブルースハープを添えるアンブローズ・ケニー・スミス(塩顔イケメン。彼の別プロジェクト=ザ・マーロックスも最高です)とのコントラストも個人的には見どころだ。

Photo by Kazushi Toyota

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2017年はなんと5枚のフル・アルバムをリリースした彼らだが、今回の来日公演は8月にお目見えする15作目『Infest the Rats Nest』にギュッとフォーカスした演目に。続く「Mars for the Rich」では、ミュートを効かせたマシンガン・ギターが時にスタジアム・ロックの貫禄すら漂わせていたし、「アリガトゴザイマス! 日本でプレイできて光栄だよ」というスチュのMCを挟んでからの「Organ Farmer」は、ラムシュタインとスレイヤーを魔改造したような爆裂サウンドに我を忘れて興奮してしまった。スチュはギブソンのホーリー・エクスプローラー、ジョーイ・ウォーカーはフライングVと、視覚的にもロック・キッズを夢中にさせる「分かりやすさ」が散りばめられているのもKGLWの魅力なのだろう。彼らとクック・クレイグを加えた3人が鳴らすトリプル・ギターの響きもレディオヘッドやウィルコに比肩するくらい表情豊かだし、何よりメンバー全員が楽しそうに演奏しているところにグッと来る。
中盤では過去曲からもいくつか披露され、『Polygondwanaland』(2017年)収録の10分を超えるダーク・ファンタジー的な大曲「Crumbling Castle」では終盤のカオティックに減速→加速→ファジーに爆発していく演奏に合わせて横殴りの雨が降り出すというオマケ付き。スチュが12弦ギターを手にとってからの「Robot Stop」「Gamma Knife」のノンストップな変速プログレ・サイケ、そして『Murder of the Universe』収録の「The Lord of Lightning」で見せつけたストーナー(というかブラック・サバス?)成分などなど、音楽ジャンルもオーディエンスの語彙力も次々と無効化していく構成力/起爆力/演奏力はちょっと尋常じゃない。

Photo by Kazushi Toyota

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その後は再び『Infest the Rats Nest』にシフトチェンジし、フジ時点でまだ世界で4回しかプレイされていなかった「Venusian 2」と、スラッシュ・メタル三部作(と、勝手に呼んでます)の先陣を切った「Planet B」で無数のダイバーが飛び交う中でフィニッシュ。
体感5分、抱腹絶倒のジェットコースター・プログレッシヴ・メタル・ショーではあったが、思い返せば代表曲の「Rattlesnake」も聴けてないし、KGLWのパフォーマンスを味わい尽くすには50分じゃ全然足りません。単独来日公演、熱望!!