今回の最新シングル『null』に収録された「怪物の詩」で”愛をもっと”と歌うそのヴォーカルの存在感。深い響きと底に秘めた力強さ。彼女の歌声は、なぜここまで切実に感じられるのだろう。その背景を探るべく話を聞いた。
ー5月に開催された「SACRA MUSIC FES.2019–NEW GENERATION-」を見たときに、ReoNaさんが纏っていたダークな雰囲気がすごく気になって。楽曲を含めて、他の出演アーティストと雰囲気が異なっていましたよね。
ReoNa:正直、盛り上がる曲をやらないと受け入れてもらえないんじゃないかと、以前は思っていたんです。そういう時期を経て、今は自分が伝えたい世界観を歌ってもReoNaの歌を聴く姿勢をとってくれる方が多いことを実感するようになって。それまで拳を上げて盛り上がっていた方も、「あっ、ReoNaの出番だ」って席に座って聴く姿勢をとってくださるんです。ReoNaとしてのお歌の世界を、そうやって受け取ってくれるのはすごく嬉しく思います。
ーReoNaさんはエド・シーランとかダニエル・パウターといった洋楽も好きですよね。ReoNaさんの根っこの部分として、彼らのような方向で活動していきたい? それともアニソンなどのカルチャー方面をメインに活動していきたいのでしょうか?
ReoNa:私自身イジメられた経験があるんですけど、そのとき、どちらの音楽にもすごく支えられてきて。
ーエド・シーラン以外で聴いてたアーティストっていましたか?
ReoNa:私はアーティストで聴くというより、楽曲にハマって繰り返し聴くタイプで。ザ・バンド・ペリーさんの「f I Die Young」とか、マイリー・サイラスさんが『ハンナ・モンタナ』で歌われてた「The Crime」とか、そういう苦難を歌った楽曲を探して聴いていました。他にはR. シティさんとかも聴いていました。掘り下げてみたら歌詞も共感できて更に好きになったり、耳に入ってくるメロディが気持ちいいから聴いている曲もありました。ケシャさんとかは全然歌詞を気にせずメロディが好きで聴いていました。
ー自分がミュージシャンをはじめるまで、海外の歌手のコンサートは観に行ったことはなかったですか?
ReoNa:一度だけエド・シーランさんの武道館ライブは観に行かせていただきました。でもデビューする直前なので、もう割と最近の話ですね。
「何一つ専門知識がない頃から、邦楽と洋楽を歌うのでは声の出し方が全然違うなと感じていた」
ーそう考えると、今年6月24日のダニエル・パウター来日公演で共演されたっていうのは、いろいろな段階を飛ばして一気に距離が近づいた日だったんですね(笑)。
ReoNa:すっごく緊張しました。
ーダニエル・パウターと同じステージに立って、しかも共演までしたわけですけど、間近で接してみてどうでした?
ReoNa:すごくパワーを感じました。「引っ張ってあげるから楽しんで歌いなよ!」 って言ってくださって。緊張しすぎて楽しい時間を作れない方が失礼だなというか。胸を借りた気持ちで楽しんで歌わせていただこうと思いました。
ーヴォーカリストとして、声の表情や演奏も間近で見られたと思うんですけどその辺りも新鮮でした?
ReoNa:ダニエルさんはとてもハイトーンボイスが綺麗なアーティストじゃないですか? 身体が鳴っている声だなってすごく感じました。ああいう風に楽曲を歌えたら楽しいだろうなと思いますし、そこに積んでこられたキャリアも感じました。
ー声や歌い方の部分でいうと、ReoNaさんも特徴的ですよね。
ReoNa:それは根幹にあると思います。何一つ専門知識がない頃から、邦楽と洋楽を歌うのでは声の出し方が全然違うなと感じていて。英語っぽく日本語を歌ったらどうなるだろうとか、当時からたくさん聴いて同じ発音になるよう繰り返しやっていたので、その積み重ねはあるかもしれません。
ー言葉にするのは難しいと思うんですけど、具体的にどこらへんが違うんでしょう?
ReoNa:力の入っている場所が違うと思います。洋楽や英語詞を歌うときは、自然と息を多く乗せて歌っていた。そこは意識してなかったところなんですけど、今になるとそうなのかなと思います。
受け手から送り手になったきっかけ
ー一方で、アニソンはまた違う歌い方だと思います。邦楽と洋楽の歌い方があるから、一方のいいところを活かせるという感覚はあるんでしょうか?
ReoNa:使い分けている意識はないんです。言葉一つ一つをどうにか届けようと目一杯歌ったものを後で聴き返したときに、「あっこれは英語っぽいな、まっすぐ持てる限りの力で歌ってるな」と気づくことが多いです。意図的に英語っぽくとかは、使い分けてないかもしれないです。でもそれが地になってきているのであれば、聴いてきた意味があるなと思います。
ーそういう影響を受けている一方で、自分が辛い時に支えてくれたアニソンもありますよね。
ReoNa:自分が辛いことを打ち明けたとしても、苦しみを共感してくれる人が周りにいなくて。それで自分の殻に閉じこもっていた時、身近な人の死や大切な人がいなくなる悲しみとかに頑張って耐えようよ! みたいな表現よりも、そういう苦しみもあるんだよっていうことをアニメが表してくれてるような気がしていて。アニメやその主題歌が、周りが自分に共感してくれないものを代わりに形にしてくれています。
ーアニメや映画の作品って、観てスカッとしたい人もいれば、世界観や余韻を味わいたいっていう人もいると思うんですけど、ReoNaさんは作品をどう鑑賞していたんでしょう?
ReoNa:どっちかというとスカッとしたかったんですかね。物語の中で、状況を打開できる人に共感するとするじゃないですか? 現実の自分は何も変わってないんですけど、同じようにもがいて苦しんでいたりする姿を見て癒されたり、もう少し頑張ってみようとか考えていました。でも、明日学校行こうという感じではなかったです。自分では逃げることしかできなかったので、あくまで逃避先でした。
ーアニメや漫画、音楽って逃避先でもあるべきだと思うんですけど、自分の青春に稲妻が走って将来の道まで決めちゃうような作品に出会ったことはありますか?
ReoNa:このアニメを見たから歌手になろう、と思ったことはないです。でも、唯一自分が背伸びせず好きでい続けられた物が音楽とアニメでした。これからはアニメと音楽の2つが自分の芯になればいいな、自分の人生や居場所が作れたらいいなと思ったのが始まりでした。

ーReoNaさんは歌手として、受け手から送り手になったわけじゃないですか。自分も人前で何かを届けたいということを意識したのはいつ頃からなんでしょう?
ReoNa:自分を表現したり何かを発信するっていうのは、どこか別の世界の話のように感じていたんですけど、高校生の頃、知人にインディーズでライブに出ている子がいて。
今だから歌えるつらさや苦しみ
ー闇雲に続けていく中で、自分の表現者としてのターニングポイントになった出来事やステージもありしましたか?
ReoNa:デビュー前でいうと、アニソンカバーをした時ですね。自分の好きな気持ちを、好きなもの同士が同じ痛みや共感を持って集まる空間が居心地よくて、ここに居たいって思いました。やっぱり、自分の発した言葉や音に反応が返ってくるのは嬉しいですね。今でも、ステージに立ったら全員の顔が見たくて、なるべく目を合わせられるようにっていうのは続けています。
ー自分への共感者がどんどん増えるのは、強いモチベーションになりますよね。
ReoNa:当時の自分自身が、痛みや苦しみを代弁してくれるものを探し求めていたように、自分がお歌を歌える立場になっても、もしかしたら同じ気持ちの人がいるんじゃないかなと思っています。これだけの方に響いているのは、自分と同じ気持ちでお歌に癒しを求めてきてくれる人がいるんだろうなって。

ーファンや共感者もどんどん増えてきて、明るい未来が待っているであろう状況で今回の3曲入りシングル『Null』に収められてる曲は、ReoNaさんが絶望している当時の心境を曲にしたものですよね。それは今だから歌えるっていう部分もあるんじゃないですか?
ReoNa:それはあります。17、18歳のとき、自分の居場所なんてないと思ってたし、お歌を歌っていけるのか、歌っていって良いのかすら分かっていない状態で。歌うことで自分を曝け出している感覚があったので、ReoNaとして人に届ける歌詞って、内臓や心を見せるような苦しみがあるんです。今の立場になって、当時の辛さを振り返れるようになったからこそ出せるようになった曲だなと感じます。2曲目の「Lotus」もそうですね。自分の中で今なら言葉にできる言葉を書き連ねて、一旦飲み込めた苦しみだけを形にしました。この歌詞に表している当時の自分に歌えって言われたら、あまりにリアルで世に出すには痛い楽曲だったろうなって思います。
ー同じく『Null』に入ってるAqua Timezのカバー曲「決意の朝に」は、昔から馴染みのある曲なんですか?
ReoNa:元々はアニメ映画『ブレイブ ストーリー』の主題歌になっていた曲で、当時はすごく好きで歌っていたのに、楽曲自体からはしばらく離れていたんです。デビュー前にライブで歌うカバー曲を考えていたときに、ふと思い出して。ただ、歌詞も全部日本語ですし、このお歌に関しては伝えたい気持ちをお歌にすると邦楽っぽいというか、英語の歌詞を歌っている時と違う感じになっているのかなと思いますね。
ー9月からツアーも回られますよね。アコースティックギター1本でステージに立ったり、バンド編成の時もあると思いますが、ReoNaさん的にはどちらが好みなんでしょう?
ReoNa:やっぱり音数が少ない方が、言葉として届きやすいなって思います。先日、初めてアコースティック編成だけのワンマンライブをしたんですけど、ロックな曲をアコースティックでやった時、シンプルだからこそ分かる歌詞の意味や解釈があって。同じ歌詞でも、曲の雰囲気が変わるだけで全然違う顔が見られるなと感じました。どっちが好きとかではないんですけど、言葉を伝えるという意味では、音数が少ない方が自分の声を聴いてもらえる。そこがアコースティックのいい部分だと思います。
ー弾き語りでもバンド編成でも、ReoNaさんの声が有機的で馴染みがいいと思うんです。自身のヴォーカル表現で気をつけていることって何かあるんでしょうか?
ReoNa:表現で気をつけていることはやっぱり言葉です。まだ使い分けられるほど余裕はないですけど、どれだけ息が苦しかろうと音が高かろうと、言葉がより伝わる為に、どこを強くするかというのは、精一杯の中でも大事にしています。
ーライブはファンと直接触れ合える場所だと思います。それが広がって、大きなステージに立っているのは素敵なことですね。
ReoNa:初めてのツアーが今年の2~3月だったんですけど、こんな短いスパンでまたツアーをやらせていただけるとは想像していなかったので嬉しいです。今年の自分の目標の一つとして、自分から全国の人に会いに行きたい、お歌を届けに行きたいっていうのがあって。6都市回らせていただくんですけど、初の仙台もありますし、北海道もワンマンは初めて。音源でお歌を聴いてくださっていた方に、初めて同じ空間で一回しかないお歌をお届けする機会がたくさんあるのは嬉しいです。どんな空間で、どんな人たちと、どんな物が作れるだろうってことを、たくさん考えないといけないと思いますし、とても楽しみです。
ーツアーなど楽しみなことがたくさんがあって、充実した作品も作れているわけですよね。昔の痛みを背負って絶望があった環境とは違う場所にいるわけですが、今でもそこまで打ちのめされることってあるんですか?
ReoNa:これまでの長い過去を積み重ねてきたからこそ今があるわけで、ちょっとしたことで過去に引っ張られちゃうこともあります。今回みたいにお歌にできた過去の痛みとかもあるんですけど、学校に行けなかった過去とか、自分の居場所がなくて認めてもらえなかった幼少期など、今でも私の中に開き続けてる穴があって。あの時救ってもらえなかった自分は、ずっとあの時に生き続けていて、あの痛みを少しずつお歌という形にしながら、いつか本当に過去にできる日があるかもしれない。ただ、絶望アニソンシンガーじゃなくて絶望”系”アニソンシンガーなので、逃げてきた痛みとか苦しみの果てに、私はお歌がある。今私に共感してくれる人たちにも未来があって、その人たちも皆まだ道の途中だと思いながら、今もお歌を歌い続けています。
Edited by StoryWriter
<INFORMATION>
『null』
ReoNa
SACRA MUSIC
発売中
完全生産限定盤

初回生産限定盤

通常盤

・ReoNa Live Tour 2019”Colorless”
9月21日(土)BIGCAT(大阪府)
OPEN 17:00 / START 18:00
問:夢番地 06-6341-3525
9月29日(日)HEAVENS ROCK さいたま新都心VJ-3(埼玉県)※女性限定ライブ
OPEN 17:30 / START 18:00
問:ホットスタッフ・プロモーション 03-5720-9999
10月5日(土)DRUM LOGOS(福岡県)
OPEN 17:00 / START 18:00
問:キョードー西日本 0570-09-2424
10月10日(木)仙台Rensa(宮城県)
OPEN 18:00 / START 19:00
問:キョードー東北 022-217-7788
10月12日(土)THE BOTTOM LINE(愛知県)
OPEN 17:00 / START 18:00
問:サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
10月18日(金)cube garden(北海道)
OPEN 18:30 / START 19:00
問:マウントアライブ 011-623-5555
オフィシャルHP
https://www.reona-reona.com/