映画『ジョーカー』のホアキン・フェニックスが話題だ、ここではそれ以前にジョーカーを演じた俳優を一挙公開。10段階で評価してみた。
・シーザー・ロメロ
彼こそ元祖。今日我々が知るジョーカーは、1960年代のTVシリーズ『バットマン』で彼が生んだものだ。オーバーな高笑いと狂気じみた笑み、そしてエメラルドグリーンのボサボサ頭で、アダム・ウェストとバート・ワード演じるバットマン&ロビンと戦った。ロメロはつねに古き良きハリウッドの代表格だった。「マンハッタンからやってきたラテン男」と呼ばれた主役級のキューバ人アメリカ人は、『オーケストラの妻たち』(1942年)をはじめとする作品で威勢のいいワルを演じた。また、伊達男のイメージを大事にしていた彼は、この役で自慢のひげを剃るのを拒否した(実際はメイクでひげを塗りつぶしている)。この役を演じたときロメロは60歳近かったが、今でも犯罪界の「道化王子」といえば彼が真っ先に思い浮かぶ。あのボブ・ディランも、2000年初期に彼のジョーカー・スタイルを取り入れていた。今日に至るまで、ジョーカーとドラキュラを両方演じた役者はロメロだけ。
評価:10点満点中7点
・ジャック・ニコルソン
ジャックよ、世間に言ってやれ。「笑いには癒しの力があると聞いたことはないかい?」。 ニコルソンは、一世を風靡した1989年のティム・バートン監督作品『バットマン』で、完全に主役を食った。いくつかキャスティングに難はあったものの――マイケル・キートンがマントの騎士役に起用されたとき、世間が驚愕したのを覚えているか?――ジャック・ニコルソンをジョーカー役に抜擢したのは賢い選択だった。いやむしろ、冴えていた。彼に悪役を演じさせるには、”ジャック・ニコルソン”らしさを少々誇張すればよかったのだから。厚塗りメイクと紫のボレロハットの奥に『ファイブ・イージー・ピーセス』(1970年のドラマ映画)で見せた邪悪な笑いを浮かべた彼は、この作品の中で唯一人生き生きしていた。「完全自殺を成し遂げた、世界初のアーティスト」を自称し、相手を納得させることができる者など、彼をおいて他に誰がいるだろう?
評価:10点満点中8点
スター・ウォーズで有名なあの俳優も
・マーク・ハミル
まさかと思うかもしれないが、ルーク・スカイウォーカー役で有名な彼を、1992年のTVアニメシリーズ『バットマン』の声優に起用するのは危険な賭けだったに違いない。だがハミルは、『スター・ウォーズ』からはまったく想像もできない神がかり的なサイコキラーぶりを発揮し、この悪役に新たな息吹を吹き込んだ。タトゥーインの農場からやってきた少年が、あれほど邪悪な笑い声を出すなど、いったい誰が思っただろう? これまでにも、ラリー・ストーチ(『スクービー・ドゥ』の中で登場)やケヴィン・マイケル・リチャードソン(黒人初のジョーカー)らがジョーカーの声を担当してきた。だが、90年代のアニメーション作品(当時のハリウッド実写版よりも何倍もすぐれている)や『バットマン アーカム・アサイラム』などのゲームソフトの中で、ハミルは群を抜いている。
評価:10点満点中9点
・ヒース・レジャー
『ダークナイト』が公開されたとき、ヒース・レジャーがこの世を去ってすでに6カ月が経過していた。彼の突然の痛ましい死は、ともすれば映画に暗い影を差したかもしれない。だが、「なぜしかめ面してるんだ?」という彼の演技は、歴代ジョーカー最大の伝説となった。死後アカデミー賞助演男優賞を受賞したが、スーパーヒーローもので悪役がオスカーを手にしたのはこれが初めてだった(ニコルソンとレトもオスカー俳優だが、別の作品で受賞した)。彼にはサディスティックで歯止めのきかない邪さ(よこしまさ)がありながら、瞳の奥に孤独な少年の哀しみをたたえていた。すでに有名な役柄を、彼は見事に自分のものにした。だからこそ、彼は究極のジョーカーなのだ。
評価:10点満点中10点
・ジャレット・レト
他界したヒース・レジャーがオスカーを獲得した直後に、この役に挑戦したレトは称賛に価する。初期のジョーカーの猿真似だからといって、彼を責めることはできまい。彼のジョーカーは、ギャング風の銀の入れ歯や入れ墨、とくにあの”damaged(キズもの)”という額のタトゥーなど、ジャスティス・リーグというよりはウータン・クランに近かった(レトが演じるジョーカーは、ジョーダン・カタラーノのように、誰にも理解されず哀しい眼をした青年にすぎない)。彼は『スーサイド・スクワッド』でこの役に新たな方向性を示したが、所詮は端役。
評価:10段階中5点