2012年12月、26人が死亡したサンディフック小学校銃撃事件の被害者で、最年少だった6歳のノア・ポズナー君の父親レオナルド・ポズナー氏に45万ドルの損害賠償が認められた。裁判でポズナー氏は、銃撃事件は実際には起こらなかったと主張する陰謀論者を名誉毀損で訴えていた。


ウィスコンシン州の陪審はミネソタ大学ダルース校の元教授ジェームズ・フェッツァーに対し、ノア君の死亡証明書が偽造だという言いがかりをつけたとして45万ドルの賠償金の支払いを命じた。フェッツァーは共著『Nobody Died at Sandy Hook(原題)』の中で、ポズナー氏が息子の死亡証明書を偽造したと主張。さらに、銃撃事件はオバマ政権が、銃規制法を可決するためにでっちあげたものだと主張していた。

陪審が賠償額を決定した後、ポズナー氏は声明を発表した。「フェッツァー氏には、サンディフック事件が実際には起こらなかったと信じる権利があります。自分の無知を口にする権利もあります。ですが今回の損害賠償の裁定により、フェッツァー氏のような人々が誤りを犯す権利と、私や息子のような被害者が名誉毀損や嫌がらせ、意図的な恐怖の賦課から免れる権利は、明確に異なることが改めて証明されました」

去る6月、ウィスコンシン州デーン郡巡回裁判所のフランク・レミントン判事は、ポズナー氏がフェッツァーおよび共同著者のマイケル・パレチェクに名誉を傷つけられたとの判決を言い渡した。この裁判でポズナー氏は、フェッツァー氏とパレチェク氏の共著が出版された後、脅迫状や嫌がらせを受けたと訴えていた。フロリダ州のとある女性はポズナー氏に脅迫状を送ったとして逮捕され、禁固5カ月を言い渡された。脅迫状には「死はすぐそこまで迫っているぞ」と書かれていた。

出版社を相手取った別の訴訟により、本は今年初めに回収された。出版社は6月にポズナー氏と非公開で和解し、同氏への謝罪文を公表した。
パレチェクも先月、非公開で和解に合意した。「裁判所はノア・ポズナー君の死亡証明書が偽造ではないとの判決を下しました。私は判決を受け入れ、上訴は致しません。結果として私が引き起こしたであろう、あらゆる苦痛をお詫びいたします」と、同氏は当時声明を発表した。

それでも主張を続ける陰謀論者たち

だがフェッツァーはこうした悔恨の念を見せていない。最近では先月、秘匿事項のポズナー氏の供述内容をインターネット上でサンディフック陰謀論者らに公開したとして法廷侮辱罪に問われ、原告弁護団の侮辱罪申し立ての費用7000ドルの支払いが命じられた。裁定の結果をうけ、フェッツァーは賠償額が「非常識」だとし、上訴する考えを述べた。

フェッツァーは、サンディフック大量虐殺はでっちあげだと信じる人々の集団、いわゆる「真実」究明運動のリーダー。この活動は、陰謀論を支持するラジオ番組『InfoWars』の司会者、アレックス・ジョーンズを中心に広がっていった。ジョーンズも、他の事件被害者7組から訴えられている。彼がラジオ番組を基盤として大量虐殺はでっちあげだという陰謀を広めたことで、遺族らは『InfoWars』のファンから嫌がらせや脅迫をうけていた。

そのうちの1件、サンディフック事件の遺族であるスカーレット・ルイス氏が訴えていたテキサス州の裁判で、ジョーンズは言論の自由を理由に上訴していたが、現地時間11日に敗訴した。
この裁判では、意図的な精神的苦痛に対する損害賠償が請求されている。
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