※本記事は最新作『最後のジェダイ』のネタバレは含まれておりません。
スター・ウォーズの最新3部作には、マスタープランと呼ぶべきものがまったくなかった。Lucasfilmのキャスリーン・ケネディ社長と彼女のチームが指南役としていつも見守っていたとはいえ、『フォースの覚醒』から『最後のジェダイ』へと監督のバトンがJ・J・エイブラムスとローレンス・カスダンからライアン・ジョンソンに渡り、『スカイウォーカーの夜明け』で改めてJ・J・エイブラムスと脚本家として新たに就任したクリス・テリオに託されるあいだも、全体のストーリーと方向性においては制作者の自由な采配が許されていた(ジョージ・ルーカスが手がけたオリジナル3部作の数多くの要素は、ストーリーが進行するにつれて流動的であり続けたことも指摘しておこう——そうでなければ、ルークとレイアが唇でキスするなんてあり得ないのだから。しかも2回も。こうした流動的な傾向は、次の3部作でも続いた。たとえば、『シスの復讐』の草稿では、パルパティーンが”ミディ=クロリアン”操作によってアナキンを創造したと彼に明かしている)。
2017年、スター・ウォーズシリーズを再びJ・J・エイブラムスに委ねようと準備していたライアン・ジョンソンは、制作プロセスを必死に擁護した。「不思議だよね」とジョンソンはローリングストーン誌に語った。「聞いた話によると、一部のファンは、僕たちが行き当たりばったりでストーリーを作ってるんじゃないかって懸念を抱いてるらしい。意味がわからないよ。だって、そもそも物語って作り話じゃないか! 10年前に誰かがすべてをホワイトボードに書き出して、みんながそれを踏襲する、あるいはストーリーが展開するにつれて自然なやり方を見つけていく。いずれの場合も、過去のものを前進させて納得のいくエンディングへと導くために熟考しているんだ」
スター・ウォーズシリーズの紆余曲折をもっとも的確に表しているのがデイジー・リドリー扮する主人公レイの生い立ちだ。
2019年 J・J・エイブラムス
『フォースの覚醒』、『スカイウォーカーの夜明け』 監督・脚本
『最後のジェダイ』では、最終章のために準備していたストーリーのアイデアを避けるようなことはしなかった、とエイブラムスは語った。「レイはどこから来たのか? という質問に対し、いくつものアイデアがあった」とエイブラムスは言う。「それに、最終的なアイデアもあった。でも、ジョージ・ルーカスが『ジェダイの復讐』を『ジェダイの帰還』に変えたように、もっといいアイデアが生まれる。そこで『そうか、こっちのほうがしっくりくるな。実はこういう意味だったんだ』と気づかされる」
2019年 クリス・テリオ
『スカイウォーカーの夜明け』 共同脚本
”選ばれし者”の束縛から解放され、フォースの民主化をはかったライアン・ジョンソンのやり方を否定せずにレイの生い立ちをエイブラムスとともにどのように展開していくか? という課題に対し、テリオは周到な答えを準備していた。「ライアンがやったことは非常に興味深かった」とテリオは言う。「それは、スター・ウォーズの民主化だった。
2017年 J・J・エイブラムス
『フォースの覚醒』、『スカイウォーカーの夜明け』 脚本監督
「ライアンは類稀な才能を持つ映画監督であり、語り手でもある」とエイブラムスは言う。「ベビーシッターやロードマップなんて必要なかった。僕はライアンにスピリチュアル面での方向性を伝えただけで、当時はエピソード8と9の概要さえなかった。
2017年 ライアン・ジョンソン
『最後のジェダイ』監督・脚本
ジョンソンは、レイに関するすべての新事実が与えるエモーショナルな効果がありのままの事実よりも重要である、と考える理由を説明してくれた。「僕は、エモーショナルなインパクトを与えられるような深い何かが必要だと信じている」とジョンソンは言う。「それこそがすべてなんだ。
さらにジョンソンは、レイとは何者か? という質問に自由に答える権限を与えられていたことをはっきりと認めた。「デイジー(・リドリー)は、その答えを知っているつもりだったと思う」とジョンソンは言った。「J・Jは何らかのアイデアを持っていたのかな。僕らはいろんなことについて話し合ったけど、レイが何者かであるか、という情報はまったく与えられなかった。制作の過程でJ・JやLucasfilmのチームとも『これとか、あれとか、こんなのもアリだよね?』のように、レイの正体についてあれこれ議論した。すると、『OK、ストーリーの進行においてもっともインパクトがあるのは何だろう?』という話題になった。
2017年 デイジー・リドリー
レイ役
最後に、ここでさらなる混乱を招きそうなオチを紹介しよう。レイの両親に関する真実は、エイブラムスが『フォースの覚醒』の制作中に明かした内容の通りだった、と『最後のジェダイ』の公開前にリドリーはローリングストーン誌に語った。「アブダビの砂漠で、初めて言われたことがすべてなんだと思ってた」とリドリーは言う。それでも、リドリーはレイというキャラクターをめぐる憶測を楽しんでいた。「誰の意見にも根拠がある」と言った。