2019年に突如として現れた17歳の天才ラッパーLEX(レックス)が、セカンド・アルバム『!!!』を12月11日(水)にリリースした。前作『LEX DAY GAMES 4』で叩き出した新世代のサウンドをさらに跳躍させ、重量感を獲得した本作。
作品の変化と共に、17歳の彼にはどんな変化があったのか。そして、それは彼の今後をどのように方向付けているのだろうか。

―2019年4月にリリースされた前回のアルバム『LEX DAY GAMES 4』を製作された際は、地元・湘南の仲間と楽曲制作に取り組んでいました。あれからLEXさんの周囲の環境に変化はありましたか?

LEX:だいぶ変わりましたね。周りの友達はあまり変えたくないと思っている一方で、環境は確実に変わっていて。ただ、自分が作る曲は変えたくないので。音楽を作る環境はあまり変えないように意識して今まで通り家でレコーディングをするようにはしていますし、作り方も変えていないです。

―以前よりもLEXさんに注意が集まるようになって、周りからの見られ方は変わったのではないですか?

LEX:そうですね。ただ、周りから注目が集まる分だけ期待に応えなくちゃいけないとか、周りの求める音を作りたいと思う人もいますけど。僕はそれは間違いだと思うし、自分の音楽をこれからも作り続ける努力をしていきたいと思っています。

―単純に湘南から東京に来て仕事をする機会が増えたと思うのですが、それに関しては何か変化はありましたか? 

LEX:ライブ会場は東京が多いんですけど、曲を作る時は家に帰るようにしていますね。東京はやっぱり食われるというか(笑)。
僕は、落ち着いたところが必要な人間なので。仲がいいアーティストも東京に来ると苦しいって言っているのを聞くし、休憩は必要だと思うので。

―LEXさんの過去も振りかえってみようと思うのですが、まず音楽を始めようと思ったきっかけは何でしたか?

LEX:特に理由とかはないんですよね。ただ物心ついた時から、音楽に囲まれた環境があって。お腹の中にいた時からお母さんがライブハウスに行っていたので、その影響もあると思います。 

―モーツァルトを聴かせると良いとかは聞きますよね。

LEX:僕の場合は、ヘビメタとか聴かされてたっていう(笑)。 

―その影響はあるかもですね(笑)。ヤンキー時代もあったとのことですが、そこから音楽に軸を移していったのはどんな変化があったのでしょうか?

LEX:音楽はずっとそばにあったんです。ただ、集団で暴行を受けたことがあって、それがきっかけでヤンキーを辞めて。その時から、音楽に移っていきましたね。

17歳の天才ラッパーLEXが信じる「自分」という存在


―そのままグレてしまう人もいるじゃないですか。
そこを昇華できたのはどうしてでしょうか?

LEX:そこは、母親を想ったというのが一番強いですね。毎日家にもいなかったし、服に穴を開けたりとか傷だらけで帰ってきたりとかしてしまっていたので。

―それは、何歳くらいの時ですか?

LEX:中学1年生とかですね。

―その時から、”LEX”という名前で活動されていたんですか?

LEX:いや、その頃はまだ”白紙”っていう名前で活動していました。別に名前の案もないし、その頃は今とは感情が違って、なあなあにやっていて。自分の核というか芯がないまま活動していたというか。そこから、だんだんと物心というか感情の整理がついてきて。どうして自分がこうやりたいのかとか、何で歌っているのかとか考えた時にLEXという名前に変えました。

―その変化は大きいですね。そこから周りを巻き込んで活動をし始めることになると。

LEX:僕はあまり学校には行っていなかったんですけど、中学の昼休憩の時にブラックニッカを飲んで好きな曲に関して話すっていうのが流行ってました(笑)。後ろのポケットにブラックニッカを携帯するのがカッコいいっていう。


―ブラックニッカを媒介に仲間を増やしていったんですね(笑)。17歳になられた今、LEXさんが思う大人ってどんな存在ですか?

LEX:僕はまだ、ネガティブな感情を消化しきれないんですよ。そういう感情を自分の中で整理できるのが大人だと思っていて。僕は家から出なくなったりだとか、自分をまだ悪い方向に持っていってしまったりするので。

―その一方で、その気持ちを整理仕切れていない不安定な部分も作品に現れているのかなと思います。

LEX:そういう部分はめちゃくちゃ大きいと思います。実際それがエネルギーになって、曲に生かされている部分もあるし、ライブではそれがみんなの共感を生んでいるのかなって思いますね。
 
―その前向きな勢いとは逆に、死について考えたりはしますか?

LEX:それはあまり考えないようにしていますけれど、やっぱり思春期ですし、自殺も近くにあったり。実は僕も1回自殺を試したことがあって。その結果、飛び降りて気を失っていた時間にいろいろ学んだことがあった。自分が抱えている問題って、意外とみんなも悩んでいることなんだなってこととか、逆にどれだけつながりがあるような見せ方をしていても、人は結局孤独だっていうこととか、自分がどれだけ周りの家族とか友達とか他の人に影響を与えるのかとかもそこから知りましたね。

―ご自身の世代はどんな世代だと思いますか?

LEX:今のティーンに関してはスマホが普及してきて、僕もそうですけど、本とか読まなくなってきていると思うし、それが理解力の低下とかにも繋がっていると思いますね。


―LEXさんも本はあまり読みませんか? 

LEX:読まないんですよ(笑)。この前も漫画を1冊読もうかなと思ったんですけど、ピリピリって剥がすやつすらまだ開けてないです。ちなみに、『スラムダンク』の1巻です。今度時間があったら読みたいんですけど。

―今の世代は、スマホやSNSが普及した良い影響も受けているんじゃないかとも思います。

LEX:昔を僕は知らないんですけど、人と繋がれるようになっていると思うんです。悪い面で言うと、スマホではネガティブな言葉が増えますね。SNSでは匿名で他人に悪口を言えるし。それは、人生を損しているんじゃないかなって。自分が行動してSNSを使うんじゃなくて、SNSを使うために行動しているというか。それは、携帯に使われてるというか、自分の人生を面白くなくしているような気がしていて。だから最近は頻繁にはSNSも更新しなかったり、そこは意識していますね。


―世代観に関してはかなり意識されているんですね。

LEX:それは昔から考えるようにしていて。考えたことはリリックにも入れるし、自分で物事を決めていきたいと思っていて。人がこう言ったからとか、携帯の画面でこれが流行ってるからとかそういうのじゃなくて。自分の中で流行りを作ってもいいんじゃないかなって。すごく簡単なことなんですけど、簡単なことって大きいところに繋がっていると思うので。

17歳の天才ラッパーLEXが信じる「自分」という存在


―高校には進まれたんですか?

LEX:高校1年生の時、丁度アルバムを作っているシーズンに中退しました。僕はそのアルバムを出したら何かが変わるって信じていたので、その自分への信仰心から辞めました。絶対に何かを変えるんだって思って、辞めてやりました(笑)。

―新アルバム『!!!』の話に移っていければと思うのですが、現在はどれくらいのペースで曲を作られているのでしょうか?

LEX:今までは作るスピードを意識していたんですけど、最近は曲の質というか中身を気にするようにしていて。だから、1ヶ月に3、4曲とかです。前は1日1曲とか作っていたので、重みも必要だなっていう感情の変化があったんですよね。


―前回のアルバムは自主制作で出されていましたが、今回は田我流やゆるふわギャングなどが所属するレーベル「Mary Joy Recordings」からのリリースとのことで、どんな変化があったのでしょうか?

LEX:前作の時からアプローチはもらっていたんですけど、色々あって自主で出して。だから今作からはお願いしようかなって思ってそうしました。制作の面では、変化のないように意識したので今までと変わらずです。

17歳の天才ラッパーLEXが信じる「自分」という存在


―インパクトの強いこのジャケットは、どんなコンセプトが込められているのでしょう?

LEX:僕がこのアルバムを作る時に、”革命”っていう言葉をキーワードにしていたので、それを元に作っていただいて。これ自分の実写じゃなくて、全身を3Dスキャンしてもらったんですよ。もしかしたら、これが動き出すかもしれないですよ(笑)!

―それは楽しみです(笑)。アルバムは、そんな”革命”というコンセプトがまさに詰まった1曲目「STAR」から始まります。

LEX:この曲をレコーディングして通して1人で聴いてみて、この曲を芯にしてアルバムを作っていこうかなと思ったんです。だから、『!!!』のメインソングでもあります。

―LEXさんはどんな人がスターだと思いますか?

LEX:お金持ちになるとか、そういうところとは全然違うと思っていて。全てにおけるバランスが良く取れているというか。感情のコントロールという面で、人々の前に立ってお手本となれるような人がスターだと思います。

―LEXさんが、憧れるアーティストって誰かいますか?

LEX:ちっちゃい頃はジャスティン・ビーバーとマイケル・ジャクソンをタイムリーに聴いていましたね。最近は、ラッパーもヒップホップアーティストもバンドもテクノも聴くので、誰かに絞るのは難しいです。

―今回のアルバムでは、”差別”や”偏見”なども今回のキーワードになっていると思うのですが、それはどうしてでしょうか?

LEX:曲の歌詞を書いている時に思いついて。それは自分が受けた差別とか、人種によるものだったり。みんながみんな無い物ねだりして、ネガティブな感情って生まれると思っているので、それに関して歌ってみました。

―何か実体験があったのでしょうか?

LEX:横須賀に黒人の人が多くいる地域があって、そこにいるとアジア人が笑われたり。逆に、僕の地元では黒人だとバイトが受からないとかがいまだにあって。そういうのに対して日々思っていることがあったりしたので。

―「GUESS WHAT? Ft. XakiMichele」のMVが公開になっていますが、これもまた差別などのテーマを踏まえた作品になっています。

LEX:堀田監督の台本を読んで、MVに写っていない部分まで色々書かれていて、すごく共感する部分が多かったですね。撮影自体も、僕の中で大きな経験になりました。しかも1日で全部完成させたんですよ。朝から、終電ギリギリまでやって何とか(笑)。

―サウンドの面でも変化や進化をされていると思うのですが、これはやはり意識されての変化なのでしょうか?

LEX:はい。曲ごとに曲調を変えたいなと思っていたので。前作はネオなサウンドで、今回はアルバム全体を通してハードなサウンドで作りました。

―曲作りの段階でアルバムのことを考えながら作っていったと。

LEX:はい。していましたね。アルバムの曲順とどの曲を入れていくかとかも考えながら作りました。

―アルバムの中でのジャンルの幅も広いですよね。

LEX:そうですね、そこも意識しました。昔から自分が聴けるジャンルの幅も広かったので、いろんな入っていると自分も楽しめるかなと。

―LEXさんの中で、歌うこととラップをすることは何か区別はありますか?

LEX:それは特にないですね。歌うこともラップすることも音楽っていう言葉で括るようにしていて。あまりカテゴライズしたくないし、窮屈にはなりたくないので。もっと多様性があった方が面白いと思います。

―そこから少し離れた質問なのですが、LEXさんってテレビは見ますか?

LEX:テレビはあまり見ないですね。昔自分の家が、他の人に占領されてしまったことがあったんですよ。その時にテレビは1階にあったんですけど、僕らは2階にどかされてしまって。そのころからテレビは見なくなりましたね。だんだんと家の主が移り変わって行って、最終的に僕らが出ていくことになって。びっくりですよね(笑)。

―そんなことがあったんですね……。映画はどうですか?

LEX:映画はめちゃくちゃ大好きで、暇があったら今日映画館で何やってるのかなとか。立体音響が好きで、ミュージカル系の映画はIMAXで見るようにしています。右左でしっかりパン振りされていているんですよ。『アナと雪の女王2』もIMAXで見て感動しました(笑)。

―音楽を聴くのはストリーミングが常だとは思うのですが、CDでは聴きますか?

LEX:小学校ギリギリの時に、TSUTAYAに行ったことがあるくらいですね。そこからはiPodが出てiPhoneが出て、ストリーミングになりました。

―それは完全に時代ですね。自身が発表する場としてはどうでしょう?

LEX:みんなが使っているし、ストリーミングの方が聴きやすいと思うので、これからもストリーミングですね。

―これからの未来の想像はしていますか?

LEX:していないですね。この先に何があるかあまり考えたことがなくて。ずっと今を生きている感覚ですね。未来を考えて生きると今を生きられないというか、そのほうが人生が鮮やかに見えるというか。常に選択は今の自分が選ばないといけないので。

17歳の天才ラッパーLEXが信じる「自分」という存在


―”LEX”というアーティストがどうなっていくのか、に関してもあまり考えていないですか?

LEX:LEXの今後の活動としては、2、3年先のことまで考えています。作品のことばかりで、規模とかも実はそこまで考えていないんですけど。この先、僕が曲を出して聴く人が聴くテリトリーがどう進化していくのか、動かしていけるのかはたまに考えたりもします。

―最後に、LEXさんの中でかっこいいとダサいの基準はどこにあると思いますか?

LEX:自分に嘘をついている人は、ダサいですね。その嘘がバレるかバレないかっていうのはどうでも良くて、自分にだけは嘘をついちゃいけないなと。逆にかっこいいなと思うのは、自分を三人称の視点で捉えられることですね。でも音楽に関しては、みんなかっこよく聴こえますけどね(笑)。


<リリース情報>

17歳の天才ラッパーLEXが信じる「自分」という存在


LEX
『!!!』

リリース日:2019年12月11日(水)
レーベル:Mary Joy Recordings

=収録楽曲=
1. STAR
2. THUNDERSTORM!!
3. Bust down
4. DIE IN YOUR ARMS
5. ALIEN
6. GUESS WHAT? ft. XakiMichele
7. B.B.SIMON
8. RUN!! ft. SOG
9. FLASH! ft. Hezron
10. Super
11. ihate pussyboy&badbitch ft. AJAH
12. RockFord Hills
13. CLEOPATRA

LEX Twitter:https://twitter.com/lex_zx_lex_0
Instagram:https://www.instagram.com/lex_zx_lex_0/
SoundCloud:https://soundcloud.com/lex3_zzz_0
編集部おすすめ