昨年2019年も様々なライブやイベントに足を運んだが、もっとも心を掴まれて今も思い返すライブがある。それが、踊Foot Worksが2019年11月22日に渋谷クアトロで行なった5大都市ライブの東京公演「GOKOH FINAL」だ。
FINALと銘打たれているが、東京公演のあとに大阪公演も控えていたり、この日が集大成ワンマンというわけでもなかったが、とにかく心を掴まれたワンマンだった。改めてこの日のことをお伝えしたいと思う。

踊Foot Worksは、バンド形態をとりながら、ソウル、R&B、ロックテイストなサウンドにラップが乗るスタイルを用いており、ジャンルで形容することが難しいところがある。ミクスチャーっぽいテイストを感じるときもあれば、シティポップ、ヒップホップだったり、J-POP歌謡曲を感じるときもある。ストリーミングで何度も音源を聴いていたものの、ライブを観るのは初めてだったので、少し緊張しながら渋谷クアトロに向かった。

小雨が降る寒い渋谷の街を歩いて到着した会場はお客さんであふれていた。20代前半くらいであろう若い人たちが多く、ライブハウスという場所を感じないようなお洒落ファッションの人たちが集まっている。各々リラックスしながらスマホを眺めたり、仲間と談笑するなど、肩肘を張らずにゆったり開演を待っている姿が印象的だった。

開演すると、コーラスのfanamoが1人ステージに登場。「HELAGI」のメロディを歌い始めると、他のメンバーたちも曲の最中にステージに現れ、MCのPecori、ギターのTondenhey、ベースのSunBalkan、この日サポート・ドラムを務める澤村一平(SANABAGUN.)が揃った。マイクを握ったPecoriが「お前らみんな大好きだよ」としっとり歌い上げると、ギターの音色が心地よいソウルフルなスローナンバー「髪と紺」へ。のっけから合唱が起こる。
Pecoriが「調子どうですか?」と投げかけ、ハードなファンクネスを感じるミクスチャー楽曲「JELLY FISH」でヴォーカルにエフェクトがかかり雰囲気が変わる。続く「19Kids Heartbreak」は、メロウで一発でメロディを覚えてしまうような愛らしい楽曲。ルールを感じさせない自在に変化していく様が非常に心地よい。

踊Foot Works、「緩やかな連帯」を生み出した2019年のワンマンを振り返る

Photo by 小見山 峻

どこか照れと無邪気さを含んだ「おちんちんパンパン」という下ネタも入れつつライブは進んでいく。初めて観るライブなのに、純粋に音楽を楽しめる空間がそこにはあった。その光景を言葉に表すのであれば、「緩やかな連帯」とでも言えばよいだろうか。大型フェスやロックのライブにあるような雰囲気とは違って、合唱やコール&レスポンスも個々が自発的に自分なりに楽しんでいる。まるで日常の延長にあるようなチルな雰囲気。しかも、客席を観ると、ほとんどの人たちが踊Foot Worksの楽曲を一緒に口ずさんでいる。あくまで自然と口からこぼれ落ちているような光景。それは明らかに他のライブにはないものだった。

「Bebop Kagefumi」ではシャ乱Qの「ズルい女」をワンバース歌ってみせたり、「フロウがDiggy-MOに似ているとよく言われる。
だったらDiggy-MOになっちゃえばいいじゃん!」という前振りから、SOULd OUT「TOKYO通信」を演奏込みで本気でコピーするなど、音楽的な遊び心もあふれている。VJや豪華な照明やセット、サプライズなど大業な仕掛けのあるライブも楽しいが、あくまで音楽を音楽として純粋に楽しめる空間というのは実に新鮮だ。ライブハウスということを忘れてリラックスでき、音楽を心から享受することができる。まるでパーティに招待されているような雰囲気を感じるようでもあった

踊Foot Works、「緩やかな連帯」を生み出した2019年のワンマンを振り返る

Photo by 小見山 峻

ライブ後半、ハードなギターカッティングを鳴らして始まったファンクチューン「逆さまの接吻」、「ギラギラしたいからスマホのライトをつけて」というPecoriの呼びかけに応えて会場が光に包まれた「GIRAGIRA NEON」など、曲ごとに違った盛り上がりが生みだされていった。どの曲が1番盛り上がるみたいな序列を感じることもなく、すべての楽曲が観客の心と体を揺さぶる。こんなライブを体感するのは初めてかもしれない。一人静かに感動しているうちに本編は終了してしまった。

といっても、Pecori自らが「残り2曲、アンコール入れて5曲」と宣言していたので、こちらも準備ができている(笑)。こういうところも自分がライブに参加している感覚を持てるポイントだ。アンコールに登場した彼らは、4人がマイクを持って競演する「SEASONS」、クラップから始まる「NEASE」、キャッチーな楽曲にオートチューンがかったPecoriのヴォーカルが乗ったダンスチューン「Tokyo Invader」の3曲を披露して再びステージを後にした。

それでも鳴り止まない観客たちの拍手に応え再び5人が登場すると、Pecoriが「新曲も作っています。1番近いところでいうと、クリスマス楽しみにしていて」と宣言(※踊Foot Worksは12月24日にクリスマスソング「Angel」をフリーシェアした)。
そして、「2020年5月3日で結成3周年になります。来年の5月3日は、リキッドルームで会いましょう。ワンマンをやります!」と発表すると会場は大きな声援と拍手に包まれた。そして、本当のラスト曲となるロックチューン「Mooneyes」を演奏し、最後までハッピーでリラックスした雰囲気のまま「GOKOH FINAL」は終了した。

踊Foot Works、「緩やかな連帯」を生み出した2019年のワンマンを振り返る

Photo by 小見山 峻

と、ここで本レポートを締めようと思ったが、2019年12月31日をもってfanamoの脱退が発表された。脱退の理由などはわからないけれど、人生は出会いと別れの連続でもある。踊Foot Worksは2020年も続いていく。初ライブから3周年の記念日5月3日にリキッドルームで行われるワンマンライブ「ODD FOOT WORKS」。会場が大きくなっても、規模が大きくなったとしても、踊Foot Worksのライブの楽しみの本質は変わらないに違いない。このレポートや写真だけでは伝わらない部分もあるくらい、踊Foot Worksのライブはリラックスできるし。それが新鮮だし、有り体とは違うようなライブ体験をさせてくれる。騙されたと思って足を運んでみてほしい、とオススメして筆を置こうと思う。


Photo by 小見山 峻 (shun komiyama)

踊Foot Works
「GOKOH FINAL」

2019年11月22日(金)渋谷 CLUB QUATTRO
=セットリスト=
0. HELAGI
1. 髪と紺
2. JELLY FISH
3. 19Kids Heartbreak
4. Bebop Kagefumi
5. GOKOH
6. KAMISAMA
7. メスゴMIRROR
8. VIRTUAL DANCER
9. 逆さまの接吻
10. PRIVATE FUTURE
11. nightcrawler
12. GIRAGIRA NEON
13. MILK
14. NDW
en1. SEASONS
en2. NEASE
en3. Tokyo Invader

<イベント情報>

「ODD FOOT WORKS」

2020年5月3日(日)東京・LIQUIDROOM
出演:踊Foot Works
料金:前売 3700円(税込・1ドリンクオーダー)

「GALAXY MOTEL vol.3」
2020年5月10日(日)大阪・千日前ユニバース
出演:踊Foot Works + Guest
前売:3700円(税込・1ドリンクオーダー)

公式サイト:oddfootworks.com
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