メタルやパンクの境界線を超えて、ベテランから若手まで強力なラインアップを揃えたこのフェス。
スウェーデンのイェーテボリで結成、北欧メロディック・デスメタルの重鎮として君臨する彼らはダウンロード・ジャパンで1995年の名盤アルバム『スローター・オブ・ザ・ソウル』完全再現ライブを行なうことを宣言。現代のメタル・シーンにおける最重要作品のひとつが再現される機会は世界でも稀であり、日本でも1回のみ。”必見”という表現が控えめ過ぎるライブである。
バンドのヴォーカリスト、トーマス・リンドバーグは遂に実現する名盤完全再現に、興奮を隠せずにいる。彼にダウンロード・ジャパンに向けた抱負、そしてアルバムにまつわる秘話を語ってもらおう。
ーダウンロード・ジャパンへのアット・ザ・ゲイツの参戦、とてもエキサイトしています!
俺もだ! イン・フレイムスやアモン・アマースとは長年の、同郷スウェーデンの友達だ。マイ・ケミカル・ロマンスの音楽はあまり詳しくないけど、俺が教師をやっている学校で、若い生徒が彼らのTシャツを着ているのをよく見かける。すごい人気だということは知っているよ。ミニストリーと一緒にやるのは2008年、フランスのヘルフェスト以来だ。ミニストリーは最初の3、4枚のアルバムが大好きだったし、ステージの脇からでも彼らのショーを見れたら最高だね。
ーアット・ザ・ゲイツが『スローター・オブ・ザ・ソウル』を完全再現するというのもフェスの最高の見所のひとつですね。
ありがとう。『スローター・オブ・ザ・ソウル』完全再現はまだ1度しかやっていないんだ。フロリダ沖の「70,000トンズ・オブ・メタル」クルーズがワールド・プレミアだった。みっちりリハーサルしたし、すごい盛り上がりになったよ。さらに日本でのショー、それから夏のヨーロッパでのフェスに向けてさらにリハーサルを積むし、エキサイティングなショーになる。ダウンロード・ジャパンでの持ち時間はまだ聞いていないけど、アルバムを全曲プレイして、残りの時間は他のアルバムからの曲をやる。
ー「70,000トンズ・オブ・メタル」で『スローター・オブ・ザ・ソウル』ライヴをやった感想を教えて下さい。
まさに”嵐のライブ”だったな(苦笑)。

トーマス・リンドバーグ
「再現ライブはひとつの国で1回ずつしかやらない」
ー1995年のアルバム発表以来ライブでやっていない曲もプレイしましたが、それはどんな経験でしたか?
かなり久しぶりの曲もあったし、スリルを感じた。インストゥルメンタル「ザ・フレイムス・オブ・ジ・エンド」はアルバム発売当時のライブでもプレイしなかったんだ。初めてステージで演奏したのはオランダのロードバーン・フェスティバルだったと思う(2019年)。あのショーでは普段やらないスペシャル・セットをやったんだ。フィリップ・グラスの『コヤニスカッツィ』とかね。

ヨナス・ストルハマー
ー『スローター・オブ・ザ・ソウル』をライブ再現して、新たな発見はありますか?
うん、演奏するたびに、それまで気付かなかった発見がある。「アントゥ・アザーズ」で複雑なギターのパートがあって、「こんなアレンジだったのか!」と驚いたりしたよ。
ーアルバムをレコーディングしているとき、自分たちが”伝説”を作っている意識はありましたか?
まさか(笑)。とにかく自分たちが作り得る最高の、誇りに出来るアルバムを作ろうとしただけだよ。理想を高く持って、ハードに働けば、きっと悪くないアルバムになると信じていた。
ー『スローター・オブ・ザ・ソウル』を作ったとき、「最もクリエイティヴな環境だった」とインタビューで回想していましたが、それはどんな環境だったのでしょうか?
『スローター・オブ・ザ・ソウル』はバンド全員が集中して作ったアルバムだった。それまでのアルバムが100%だったとしたら、150%を注入した感じかな。スタジオにマジックな空気が流れているのが判ったよ。ただ、再結成して作った『アット・ウォー・ウィズ・リアリティ』(2014年)、『トゥ・ドリンク・フロム・ザ・ナイト・イットセルフ』(2018年)も同じ集中度で作ったアルバムだし、やはり誇りにしているよ。
「俺たちが聴いて育ったすべてのヘヴィ・メタルを、デス・メタルのアプローチで解釈した」
ー『スローター・オブ・ザ・ソウル』はいわゆるイェーテボリ・メタル・サウンドを確立させた作品と評価されていますが、どのようにして独自のスタイルを築き上げたのですか?
俺たちは必ずしも斬新な音楽を生み出したわけではない。デス・メタルにクラシック・ヘヴィメタルのメロディを加えて、全力でアウトプットしたんだ。ジューダス・プリーストからシン・リジィ、エクソダス、ダーク・エンジェル、メタリカ……俺たちが聴いて育ったすべてのヘヴィメタルを、デスメタルのアプローチで解釈したんだよ。それが特別なケミストリーを生み出したんだ。
ープロデューサーのフレドリック・ノルドストロームに「インダストリアルなサウンドが欲しい」とリクエストしたそうですが、具体的にはどんなサウンドを求めていたのですか?
当時俺たちはゴッドフレッシュやスワンズをすごく気に入っていたんだ。
ー日本公演は『スローター・オブ・ザ・ソウル』完全再現ライブということで、アルバム通り「ブラインデッド・バイ・フィアー」から始まることになりますか?
うん、そうなるだろうね。
ー「ブラインデッド・バイ・フィアー」は世界中のメタル・ファンから名曲扱いされていますが、あなた自身はあまり気に入っていないのだとか?
まあ、悪い曲じゃないけどね。「アンダー・ア・サーペント・サン」のような曲の方が労力をかけて書いたし、思い入れがあるのかも知れない。「ブラインデッド・バイ・フィアー」はレコーディング・セッションの最後にパッと書いた曲だった。もちろんヘヴィな音楽を好きな人間だったら、嫌いな人はいないと思う。メタリカの「バッテリー」やスレイヤーの「エンジェル・オブ・デス」みたく、すごく直接的にアグレッシヴな曲だし、首を振るにはベストな曲だ。
ーブラック・サバスの「パラノイド」もアルバムのレコーディング・セッションの最後に付け足しのような感じで書かれて、バンドの予想外に神格化されるようになったそうですね。
彼らにどれだけ思い入れがあるか判らないけど、俺自身も「パラノイド」は大好きな曲だし、メタル史上に残るクラシック・ナンバーだと思う。「ブラインデッド・バイ・フィアー」は俺のフェイヴァリット・ソングではないけど、この曲を愛してくれるファンには感謝しているし、バンドにとってスペシャルな曲だ。だから普段のアット・ザ・ゲイツのショーでは最後にプレイしているし、今回は1曲目にプレイするんだ。
ドラム・トラックに一部サンプリングを使用
ー『スローター・オブ・ザ・ソウル』のドラム・トラックの80%がライヴで、バスドラムの20%がパンテラ『ファー・ビヨンド・ドリヴン』、スネア・ドラムの20%がスレイヤー『レイン・イン・ブラッド』のサンプリングだというのは本当ですか?
本当だよ。別に隠すことじゃない(笑)。アルバムのドラム・サウンドにちょっとしたエッジを加えたかったんだ。提案したのはプロデューサーのフレドリック・ノルドストロームだった。当時はサンプリングという概念が面白くて「ぜひやってみよう!」とみんな乗り気だったのを覚えている。元々フリー素材として提供されたサンプルだったし、パンテラやスレイヤーに金を払う必要はなかったんだ。エイドリアン・アーランドソンのドラムスがメインだけど、要所でサンプリングを使うのは効果的だったよ。

エイドリアン・アーランドソン
ー「ザ・フレイムス・オブ・ジ・エンド」は元々ホラー映画『Day Of Blood』のために書かれたそうですが、その映画について教えて下さい。
その話はアンダース・ビョーラー(脱退済/ギター)に訊いた方がいいね。『Day Of Blood』は彼が作っていた自主映画なんだ。森の中で殺人事件が起きて……という内容で、5分ぐらいの短編映画だった。そのテーマ曲のデモを俺たちが聴いて、面白いと思ったんで、アット・ザ・ゲイツ・ヴァージョンにアレンジしてアルバムに入れたんだよ。あの映画は今でもアンダースがVHSのビデオテープを持っている筈だよ。仲間内のアマチュア映画だし、今のところ公にリリースする予定はないけどね(笑)!
ー『スローター・オブ・ザ・ソウル』発表後にバンドが最初の解散をしたのは、アンダースの脱退が大きな原因のひとつと言われていますが、彼が2017年に2度目の脱退をしてもバンドが活動を続けているのは、どこが異なるのでしょうか?
アット・ザ・ゲイツが最初に解散したとき、俺たちはこのバンドが自分たちにとっていかに重要であるかを再認識したんだ。アンダースは再び脱退することになったけど、残った俺たちはアット・ザ・ゲイツの音楽を愛しているし、新しい音楽を生み続ける渇望がある。そして世界中のファンのために続けていく義務があると考えたんだ。もちろんアンダースとは今でも友達だよ。実はこのインタビュー(電話)は、彼と一緒の飲み会をちょっと抜け出してやっているんだ。これから戻ってまた飲み直すところだよ(笑)。
「2021年の前半にはニューアルバムを出せると思う」
ーアット・ザ・ゲイツのニューアルバムを作る予定はありますか?
もちろん! 今年、ライブの本数を少なくしているのはそのためなんだ。『トゥ・ドリンク・フロム・ザ・ナイト・イットセルフ』を発表した後、200回ぐらいライブをやったけど、今年は数を絞って、新曲を書くことに重点を置いている。既に4曲が仕上がっているし、2021年の前半にはニューアルバムを出せると思う。
ー『スローター・オブ・ザ・ソウル』はイギリスのイヤーエイク・レコーズから発売されましたが、彼らとの関係は今も良好ですか? ナパーム・デスやピッチシフターなど、レーベルを離れた後に批判の声を上げるバンドもいますが……。
アット・ザ・ゲイツはイヤーエイクを離れたけど、レーベル・マネージャーのダン・トービンとは今でも連絡を取り合っているよ。創始者のディグビー・ピアスンとも面識があるけど、いつも話すのはダンの方だ。ナパーム・デスやピッチシフターの話は聞いているけど、俺たちとイヤーエイクとの関係はずっと昔から良かった。単にラッキーだったのかも知れないね(苦笑)。
ーダウンロード・ジャパン以降のスケジュールを教えて下さい。
夏にヨーロッパのフェスで10本ぐらいライヴをやる。それから北米で数回ショーをやるかも知れない。そうして秋からニュー・アルバムの制作でスタジオに入るよ。アット・ザ・ゲイツの2020年の活動はすべてダウンロード・ジャパンからスタートするんだ。「スローター・オブ・ザ・ソウル」のイントロでいつも叫んでいる”GO!”って気分だよ。日本で会おう! GO!
<INFORMATION>
DOWNLOAD JAPAN 2020
イギリス発ロックの祭典DOWNLOAD FESTVALがロック、パンク、メタルを1日に凝縮した超濃厚なラインナップで贈る二回目の日本開催! 今年はヘッドライナーとして、先日6年ぶりの復活を発表した、マイ・ケミカル・ロマンスが出演! そしてオフスプリング、エヴァネッセンス、ジミー・イート・ワールド、イン・フレイムス、アット・ザ・ゲイツに加え追加ラインナップとして、インダストリアル・メタルの重鎮ミニストリー、スウェーデン発新世代メロディック・デスメタルの雄アモン・アマース、LA発の新星ダーティ・ハニー、アートメタル革新派バロネスの出演を新たに発表!
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