1274年・1281年の元寇に続く、3度目のモンゴル襲来が2020年3月に実現する。THE HUは2016年、モンゴルのウランバートルで結成されたロック・バンドだ。
モンゴルの伝統的楽器やホーミー(喉歌)を躍動感あふれるロック・サウンドと合体させた”フンヌ・ロック”は一躍世界で注目を集め、「Yuve Yuve Yu」「Wolf Totem」は動画サイトで3000万回を超える再生回数を記録した。アメリカやヨーロッパでのツアーも行い、現代のロック・シーンにモンゴル旋風が吹き荒れている。

そして初のフル・アルバム『The Gereg』を引っ提げて初の来日公演が実現。BABYMETALの北米ツアーの2公演でオープニング・アクトを務めるなど、日本でも話題沸騰の彼らがどんなステージで魅せるか、期待は高まるばかりだ。

日本上陸を目前にして、THE HUが闘いの雄叫び(ウォー・クライ)を上げる。Gala(モリンホール、ホーミー)、Enkush(モリンホール、ホーミー)、Jaya(トゥムルホール、ホーミー)に語ってもらおう。

The HUが語るモンゴルの誇り、伝統とモダンの融合、BABYMETALへのシンパシー

Photo by Jackie Schutza

ーTHE HUの初来日公演が実現するのを待っていました!

Gala:THE HUとして日本に来るのは、これが初めてだ。でも俺は高校時代、日本に短期留学したことがあるんだ。それで10年前、Jayaと日本でライブをやったことがある。モンゴルの身体障害者のためのチャリティ・コンサートだったんだ。

Enkush:俺は以前やっていたドモックというバンドで日本でプレイしたことがあるよ。THE HUで戻ってくることが出来て本当に嬉しい。


Gala:アルバム『The Gereg』は13世紀モンゴルの外交官の通行札、今でいうパスポートなんだ。THE HUが世界に進んでいくパスポートが『The Gereg』なんだよ。それと同時に、音楽に国境が存在しないことを象徴している。旅行者や交易など、モンゴルはさまざまな国外との交流があった。さらに13世紀、チンギス・ハンはモンゴル帝国における信教の自由を認めたんだ。それは当時としては画期的な方針だった。THE HUも自由で先進的な音楽をやりたいと考えている。

ーTHE HUの音楽がどんなものか、日本の音楽ファンに教えて下さい。

Enkush:俺たちがプレイするのは”フンヌ・ロック”だ。西洋のモダンなロックと、モンゴルの伝統的な音楽を融合させたものだよ。そして俺たちはバンドのメッセージを伝えようとしている。 分け隔てない愛、そして先祖への尊敬、自然への敬意、社会の不平等に対して立ち上がる姿勢、世界規模での連帯。
いずれもTHE HUにとって重要なことなんだ。

ーモンゴルでは90年代に民主主義が到来して、西洋の音楽が流入してきたそうですが、あなた達が影響を受けたのはどんなアーティストですか?

Jaya:メタリカ、スリップノット、トゥールなどに影響を受けてきたし、今でも大好きだよ。ただ残念なことに、なかなかウランバートルを訪れてくれるバンドがいないんだ。でもスコーピオンズやセパルトゥラ、ナザレスなどがライブを行っている。THE HUが成功することでモンゴルにロック・シーンが根付いて、もっとたくさんの西洋のバンドがライブをやるようになったらいいね。

ーTHE HUはどのようにして曲を書くのですか? プロデューサーDashkaの役割はどんなものですか?

Gala:曲はバンド全員が、チームとして書くんだ。Dashkaはそんな作曲プロセスにも関わってアイディアを出すし、アレンジやテーマにも意見をくれる。彼は”ステージ上にいないメンバー”みたいなものだよ。

ーこれまでモンゴル出身のロック・バンドが国際的な成功を収めてこなかったのは何故でしょうか?

Jaya: 俺たちが注目されたのは”モンゴルらしさ”だけではなく、”THE HU”らしさ……バンドの個性が音楽リスナーの耳を捉えたんだと思う。THE HUのプレイする”フンヌ・ロック”は俺たちだけのもので、モンゴルの伝統楽器やホーミーとロック・ミュージックのユニークな融合は、モンゴルだけでなく世界のどこでも他のバンドはやっていない。誰のコピーでもない、オリジナルな音楽なんだ。今後、モンゴル出身の他のバンドも注目を浴びることになるかも知れない。
その中には素晴らしいバンドもいると思う。でも、そのバンドがやっているのは”フンヌ・ロック”とは異なる別のスタイルになるだろう。

ーTHE HUというバンド名について教えて下さい。イギリスには、とても似た名前のバンドがいますが......。

Enkush:俺たちのバンド名は決してイギリスのザ・フーから取ったものではないんだ。もちろん同名のバンドがいることは知っていたけど、それ以前にTHE HUというバンド名に託したいメッセージがあったんだ。”hu”とはモンゴル語で”人間”という意味だ。知性を持った人間すべてを指しているんだ。偶然だけど、英語でも人間のことを”hu”manと呼ぶだろ? あらゆる人間を結びつける音楽をやりたくて、この名前を付けたんだよ。

The HUが語るモンゴルの誇り、伝統とモダンの融合、BABYMETALへのシンパシー

Photo by Andrew Stuart

ーTHE HUはアジアから世界に向かって進出していくロック・グループですが、同様にアジアから世界に飛び立っているグループに日本のBABYMETALがいます。彼女たちのことはどう考えていますか?

Gala:BABYMETALはとてもユニークなグループだね。シアトルとポートランドで一緒にライブをやったことがあるんだ。
彼女たちはヘヴィ・メタルという、今や歴史の長いスタイルにダンスや振付など、新しい要素を取り入れて、独自のアイデンティティを確立している。そういう意味で、THE HUと共通しているかも知れない。もっとも俺たちのヴィジュアルは彼女たちとまったく似ていないけどね。彼女たちの方がずっとキュートだよ(笑)。

ー彼女たちと交流はありましたか?

Gala:俺たちがショーをやって、その後にBABYMETALを見たよ。あんなショーは見たことがない。とてもユニークでエキサイティングだった。彼女たちは俺たちの楽屋に来てくれて、一緒に写真を撮ったよ。いつかアメリカやヨーロッパをBABYMETALとツアーしたいね。彼女たちがやっていることはエキサイティングだ。

この投稿をInstagramで見るThe HU(@thehuofficial)がシェアした投稿 - 2019年10月月16日午後12時53分PDT

ー「Yuve Yuve Yu」の歌詞など、THE HUは先祖へのリスペクトを題材にしていますが、50年代のロックンロールや70年代のパンク・ロックは先祖や伝統に”敬意を払わないこと”が歌われることが少なくありませんでした。そんなロックンロールの反体制や反・伝統についてどう考えますか?

Gala:50年代や70年代のロック・バンドは道を切り開いてきた俺たちの先祖だし、大きなリスペクトを持っている。
ただ、先達の主張することすべてに同意するわけではないよ。俺たちは彼らのコピーではないし、自分自身の考えを持っている。先祖や伝統には敬意を払うべきだと信じているし、それを歌詞で訴えているんだ。それで若い音楽リスナー達に俺たちのメッセージが伝わったら嬉しい。先祖や、先祖から受け継いだこの美しい世界に対して敬意を持って欲しいんだ。

ー「Yuve Yuve Yu」歌詞では”汗国の再興”が歌われていますが、ある意味、右翼的なイデオロギーなのでしょうか?

Gala:「Yuve Yuve Yu」で歌っているのは政治的なメッセージではなく、より精神的なものだよ。世界中の若者たちに、汗国の時代の誇りを取り戻すことを促しているんだ。自分らしく、強くあれという歌だ。俺たちはイデオロギーを押しつけたりしない。むしろ正反対で、自分自身の考えを持つよう訴えかけているんだ。

ーTHE HUのライブではバンドと観客が拳を突き上げて「Shoog! Shoog!」と合唱しますが、Shoogとはどんな意味ですか?

Enkush:Shoogはモンゴルの伝統的なテングリ信仰の掛け声だ。永遠の青空を祈願する呼び声なんだ。
日本のステージでみんなと一緒に叫ぶのを楽しみにしているよ。

ーTHE HUのライブを日本で見ることが出来るのを楽しみにしています!

Jaya:俺たちは過去に日本を訪れた経験から、日本のリスナーが音楽に対して熱意と知識を持っていることを知っている。THE HUのポジティヴなパワーとエネルギーをステージでぶつけるのを楽しみにしているよ。バンドとお客さんの間にスペシャルな絆が築かれる、記念すべきショーになるだろう。俺たち自身、すごく楽しみにしているんだ。ドウモ・アリガトウ!

THE HUの初来日を記念し、同じモンゴル出身の大相撲 第69代横綱・白鵬関からビデオメッセージが到着

The HUが語るモンゴルの誇り、伝統とモダンの融合、BABYMETALへのシンパシー

THE HU
THE GEREG TOUR JAPAN 2020

東京公演
日程:2020年3月12日(木)
会場:新宿BLAZE
時間:18:30開場/19:00開演 
料金:¥7,000(スタンディング・入場整理番号付/税込)※ドリンク代別途必要
お問い合わせ:ウドー音楽事務所

大阪公演
日程:2020年3月13日(金)
会場:梅田クラブクアトロ
時間:18:00開場/ 19:00開演
料金:¥7,000(スタンディング・入場整理番号付/税込)※ドリンク代別途必要
お問い合わせ:大阪ウドー音楽事務所

公演詳細:
https://udo.jp/concert/TheHU
編集部おすすめ