昨年10月に本誌でフィリピン出身のアーティストであるノー・ロームをインタビューした際、「うちら(アジア人)は、やっと最近、世界の音楽マーケットに入っていけたところだからね。
前置きが長くなってしまったが、今回メールインタビューができた「Strawhatz」は、彼らを発掘したダンスクルー・Quick Styleが持つアジア人としてのアイデンティティを自覚し、アジア各国のカルチャーをブレンドした表現をコンセプトに掲げながら、世界中を駆け回っている3人組のエンターテイメントダンスクルー。覆面プロジェクトであるが、ダンスを自分たちの最大の武器にして世界中でショーやCMに出演、彼らのダンスの振り付けを担当するQuick StyleはBTSなどの振付を担当、さらには中国とノルウェーにてダンススタジオを運営している。Strawhatzはここ日本でも、トヨタのテレビCM出演、菅原小春やHIFANAとのコラボレーション、最近ではお笑い芸人・しずるとの共演といった表現を通して、我々日本人が気づいていない日本の独自性をもすくいあげている。Strawhatzは現在のアジア、日本の文化をどう見ているのか? なぜ、各国の文化のブレンドを重んじているのか? 10の質問に答えてくれた。
―まず、Strawhatzとして成し遂げたいと思っていることを教えてください。
Strawhatz:あなたを笑顔にすることと、毎日をもっと楽しむ気持ちを思い出してもらうこと。そして音楽やダンス、喜びには、人間皆共通するものがあるからこそ、あらゆる年齢、文化、民族、宗教の人たちをつなげることが目標だ。
―日本の文化を取り入れた作品作りをやろうと思ったきっかけは?
Strawhatz:初めて東京に来たのは2013年の大雨の日だった。
日本で撮影しながら中国の音楽を起用しているのも、Strawhatzのコンセプト「Blending the Asian Culture(アジアのカルチャーをブレンドする)」の表れ
このビデオは韓国のクルー「Jinjo Crew」とともに韓国で撮影されているが、起用されている音楽は日本人である高梨康治による「ナツのテーマ」
―Strawhatzは日本の文化、アート、人をどう感じ取っていますか?
Strawhatz:日本が大好きな理由はいくつもある。食べ物も、建物も、デザインも、人々の集合的意識も、無限のクリエイティビティーも、とても刺激的だから。僕たちが出会った人は皆、他の国では感じたことがないくらいに優しくて、義理堅くて、感謝の念を示してくれた。日本の文化、アート、人は、いつだってStrawhatzの核にあるんだ。
―Strawhatzが多くの人に知られるきっかけとなった「A Concept」のビデオは、どういったことを表現したいと考えたのでしょうか?
Strawhatz:2013年に、日本人アーティストであるHIFANAの「WAMONO」というトラックを聴いて、インスピレーションが湧いてダンスを創作したんだ。2年後には実際にHIFANAと会うことができて、その後一緒にトヨタのテレビCMを作ることもできた。「A Concept」のビデオは、発表してからどんどん一人歩きしてくれて、もっとたくさんの人に喜びや刺激を与えられるダンスビデオを作りたいと思わせてくれた1本となった。
「A Concept」。HIFANA「WAMONO」にダンスを乗せている
2016年に放送された、トヨタ・クラウンのテレビCM。
2019年12月に公開された足袋のプロモーション映像にて、HIFANAのトラックとStrawhatzのダンスのコラボレーションが再び実現した
「中国のアートは、クリエイティブにおける新たな見方や考え方を僕たちに与えてくれる」
―菅原小春さんとコラボレーションしたビデオ「Kimono」は、どういったインスピレーションから生まれたものでしょうか?
Strawhatz:僕たちは着物を、上品で洗練された日本文化の象徴だと感じている。素晴らしいダンサーである小春が京都に連れていってくれたんだけど、そこで紹介してくれたおばあさんが家に招いてくれて、浴衣を3着プレゼントしてくれたんだ。小春は振付を作るのも手伝ってくれて、彼女の友達と一緒にビデオにも出演してくれた。これまでたくさんの素晴らしい日本人アーティストとコラボレーションしてきたけど、すべての始まりはこの作品だった。
菅原小春も出演する「Kimono」。京都の生蓮寺にて、特別に許可を得て撮影された
フューチャーファンク界で人気のYung Baeが八神純子「黄昏のBay City」をサンプリングした楽曲「Bae City Rollaz (Feat. Natvnomvzik)」を起用。ビデオ自体もヴェイパーウェイヴを昇華したテイストに仕上がっている
―Strawhatzは世界各国を旅していて、中国ではダンススタジオも開いていますが、中国の文化、アート、人についてはどう感じていますか?
Strawhatz:中国の文化にはとてつもなく長い歴史があって、現在のアジア各国の文化に大いにつながっている。中国のアートは、クリエイティブにおける新たな見方や考え方を僕たちに与えてくれるんだ。
―近年ではダンスだけでなくトラックも自らクリエイトされています。そうするようになった理由は?
Strawhatz:初めてオリジナルソングを作ったのは2016年で、それも東京だった。琴奏者の明日佳がライブで琴を弾いてるのを聴いて、すぐに彼女とコラボレーションしたいと思ったんだ。それまで僕たちは琴を聴いたこともなかったんだよ。
久良岐能舞台にて撮影された、明日佳とStrawhatzのビデオ
H&M Studio S/S 2018 Fashion Show in Parisのビデオ
―ロサンゼルスのレーベル「IDAP Music」と契約もしました。その狙いは?
Strawhatz:「IDAP Music」は、プラチナディスクを何枚も生んでいるプロデューサー / ソングライターであるWilliam Larsenと、マネージャー / エグゼクティブプロデューサーであるJulian Alexanderが創設したレーベルだ。彼らはこれまで、様々なジャンルのメジャーアーティストたちと、グローバルなヒットソングを作ってきた。彼らのサポートのもと、僕たちの中にある世界中の音楽文化に対する愛を形にしながら、ユニークなサウンドを作りたいと思っている。
―昨年11月にリリースされた2ndシングル「Power Up」は、「ぽんぽこぽん」「えいえいあー」など日本語を用いた楽曲で、ビデオは日本で撮影されています。しかも、芸人のしずるが出演するバージョンも公開されました。この楽曲ではどういったことを表現したいと考えたのでしょうか?
Strawhatz:日常に溢れているような厳しい労働環境を、可笑しく、かつ何も規制することなく表現したいと思ったんだ。ストーリーの中心にあるのは、疲れたときに「パワーアップ」してほしいという気持ち。しずるは本当に素晴らしくて、ビデオの脚本を読んですぐに僕たちが伝えたいメッセージを理解してくれた。日本の労働環境はときに激しくてチェレンジングだろうけど、エネルギーがなくなりかけているときにこそ、このビデオを見て「パワーアップ」してもらえたらいいなと思うよ。
「Power Up」ミュージックビデオ、しずるが出演するバージョン
―最後に、2020年の展望を教えてください。
Starwhatz:まず、最新シングル「Uncle Robz Theme」では、原宿のアイドルである紅林大空を招いているよ。他に目指していることで言うと、全曲ミュージックビデオが付いたデビューアルバムを発表すること。2020年が終わるまでにはすべての楽曲を届けられるように、1曲ずつリリースしていこうと思っている。それに、僕たちのビジョンを表現してファンとより深くつながれるようなライブショーもやっていこうと頑張っているところだよ。
Strawhatz - Uncle Robz Theme featuring. Haruka Kurebayashi (Official Music Video) ビデオ