グループ結成から10年という節目を迎えたワン・ダイレクション。再結成に関するメンバーの全発言を、ローリングストーン誌が徹底検証。


グループ結成から10年という節目を祝して、現在活動休止中のワン・ダイレクション(以下、1D)のメンバーが7月に何かスペシャルなことを企画しているとほのめかすや否や、世界中のファンはそれが大々的な再結成発表であると憶測しはじめた。だが期待とは裏腹に、1Dは再結成ではなく、ミュージック・ビデオ、アートワーク、メンバーが一緒にいる姿をフィーチャーしたバックステージ映像をはじめとする一連のアーカイブ・コンテンツのリリースを発表した。ニューアルバムや(スパイス・ガールズのような)再結成ツアーという希望はすぐに砕かれる結果となった。

たしかに、ハリー、ルイ、リアム、ナイル、ゼインの5人が近い将来ステージで共演を果たす可能性はなさそうだが、一回限りのシングルの発売、あるいは(昨年12月に最新アルバム『ファイン・ライン』の発売を記念してハリーが行ったような)一夜限定のコンサートなど、形はどうであれ、1Dファンは再結成の希望を失っていない。

「1Dファンは、何も再結成アルバムのような新作やツアーを望んでいるわけではないと思います。メンバーがまた一緒にいる姿を見たいだけなんです」とTwitterのアカウント、@1Dneewsの立ち上げメンバーのひとりであるエラ・ダンハムさん(22)は言う。「全メンバーがデビュー当初のボーイズバンド的サウンドからあまりに離れてしまったので、いまのスタイルを変えて昔のボーイズバンドの雰囲気に戻れば、見ているファンは気まずさを覚えると思います。でも、新作という選択肢があるのなら、どのようなジャンルの音楽になるか興味はありますね」とダンハムさんは語った。

ダンハムさんが言うように、1Dのメンバーはボーイズバンドという枠を超えて成長した。それでも、#10YearsOf1Dとハッシュタグを入れてSNSに投稿したり、「再結成するの? しなの?」と期待を膨らませたり、さらには再結成したときの彼らの姿を想像したりするのは、結成10周年を祝う醍醐味でもある。メンバーたちの発言があらゆる憶測を呼んでいるように、実際に1Dが再結成するのか、もしするなら、それはどのようなものになるのかという質問に対し、メンバー自身の心も定まっていないようだ。だからといって、再結成の可能性がまったくゼロというわけではない。


これらのことを踏まえたうえで、ローリングストーン誌はあらゆる知恵を総動員して1Dが再結成する確率を計算した。今回紹介するランキングは、各メンバーの(インタビューやSNSでの発言にもとづく)再結成に対する前向き度、ソロアーティストとしてのキャリア、現在のプライベート状況を検証して作成したものだ。さっそくランキングを紹介しよう。

1.リアム・ペイン
再結成に参加する確率:80%
ワン・ダイレクション再結成の可能性は? メンバーの全発言を徹底検証

Illustrated by Matthew Chow

トップバッターはリアムだ。リアムは、メンバーのなかでも1Dの復活についてもっとも多く言及してきた人物である。2020年5月のインタビューでは、再結成に対して「望みを抱いている」と発言しただけでなく、「どこかで動きはじめるんじゃないかって思ってる。すっごくワクワクする」とも語っている。

それぞれのメンバーはソロアーティストとして楽曲を発表してきたものの、リアムはすぐにでもグループに戻ることができるだろう。R&Bヒット曲「Strip That Down feat. クエイヴォ」のおかげでリアムにはソロアーティストとして極めて前途洋々たるキャリアが待っているように思えた。だが、ヒューゴ・ボスのアンダーウェアのキャンペーンモデルに起用された1Dの”ダディ”ことリアムは、あまりの露出の高さのせいで母親にかなり気まずい思いをさせてしまった。挑発的な画像のおかげで十分すぎるほどの注目が集まったものの、リアムの音楽は残念ながら同程度のインパクトを与えられていない。

数回にわたって延期されたリアムのデビューアルバムは2019年にようやくリリースされたが、音楽チャートに爪痕を残すことはできなかった(英国ではなんとかトップ20に食い込み、米国では初登場111位を獲得)。
リアムのデビューアルバムは、1Dメンバーのなかでもっとも低いランキングのアルバムとなってしまった。だが、それは楽曲のせいというよりは——ライアン・テダーがプロデューサーを務めたシンセサイザー主体の「Say It All」はシングルとしても十分通用するレベル——むしろタイミングの問題だったのだ。ようやくリリースされた頃には、アルバムに取り組みはじめてからはやくも3年が経過していたのだから。

プライベートに関しては、リアムは最近ハリー、ルイ、ナイルと連絡を取り合っている。ここで1Dが再結成する可能性が現実味を帯びてくる。4月にはナイルのInstagram Liveに参加し、そこでリアムとナイルは4人がメッセンジャーアプリWhatsappで定期的に連絡を取り合っていることを認めた。「Midnight」のコラボレーターであるアレッソとの別のInstagram Liveでは、再結成計画について話し合うための電話会議を企画していると告白(ルイから「あまりしゃべりすぎないように」と釘を刺されていることも明かした)。6月には、FaceTimeでハリーと交わしたビデオ通話の動画の一部をTikTokに投稿した。とはいっても、ハリー(リアムのスマホの連絡先には”H”と登録されている)が電話に出た瞬間に動画は終わっている。これは、友人の近況を確認するためのただのフレンドリーな電話なのか? それとも、リアムは何かもっとビッグなことを計画しているのだろうか?

数々の1Dの楽曲の作詞作曲を手がけただけでなく、グループの事実上の広報担当としていくつものインタビューに応じてきたリアムは、つねにリーダーとしての役割を担ってきた。もし再結成が本当だとしたら、私たちはその知らせを最初にリアムの口から聞くことになるだろう。

2.ナイル・ホーラン
再結成に参加する確率:60%
ワン・ダイレクション再結成の可能性は? メンバーの全発言を徹底検証

Illustrated by Matthew Chow

3月にナイルはセカンドアルバム『Heartbreak Weather』をリリースし、ワールドツアー日程を発表していた。
だが、アルバムのリリースと同時に新型コロナウイルスによる感染が世界規模のパンデミックへと拡大し、アルバムのプロモーション活動は中断されてしまった。数週間後、ナイルはツアーの中止を発表。ハリーが自身のツアーを2021年に延期できた一方、今後ナイルのツアーの振替公演が行われるかは未定だ。そのため、ファンはツアーの無期限中止を覚悟している。プロモーション活動もできず、ツアーの目処も立たないなか、近いうちにほかのメンバーたちと一緒に(バーチャル?)再結成しないか? という提案はナイルにとって魅力的かもしれない。

とはいっても、ナイルは1Dメンバーのなかでソロアーティストとしてもっとも成功したひとりであり(ハリーを除き)、「Slow Hands」といったラジオの人気ナンバー1楽曲はもちろん、マレン・モリス、ジュリア・マイケルズ、アッシュといったアーティストとのコラボレーションも高く評価されてきた。本誌は、『Heartbreak Weather』が2020年にリリースされた新作のなかでもっともまとまりのあるメロディアスなアルバムだと評価している。1Dがニューアルバムのレコーディングをするなら、ソロアーティストとしてのナイルのポップ・ロックスタイルはグループが前進するための方向性のひとつになるかもしれない。「Story of My Life」や「Fools Gold」のサウンドは、1Dの楽曲を想起させる(Flickerワールドツアーでナイルは「Fools Gold」のカバーを披露)。

1D再結成の噂についてナイルは以前にコメントしている。5月には、インタビュアーに「再結成についてあれこれ話し合っている。僕らにできそうなちょっとしたことについてだけど」と語った。
その一方、ナイルは次のようにも語っている。「グループの再結成に関しては何の進展もないよ。だから、現時点での答えはノーだね」。ナイルはいつも1Dについてオープンに語ってくれるものの、リアムやルイと比べると再結成に対してはやや中立的な立場だ。最近の発言からは再結成を望む気持ちがうかがえるが、ファンが期待するほどすぐに実現することはないだろう。

3.ルイ・トムリンソン
再結成に参加する確率:75%
ワン・ダイレクション再結成の可能性は? メンバーの全発言を徹底検証

Illustrated by Matthew Chow

先日、ルイはSyco Musicとの契約解除を発表した。Syco Musicは、1D誕生当初からルイが”ホーム”と呼んできたレコード会社だ。フリーになったルイが再結成した1Dへの参加を検討するのにいまほど最適なタイミングはない。さらにルイは、1Dが活動休止を決めたときはショックで、そもそも1Dの幕を下ろす心の準備ができていなかったとあるインタビューに告白した。「多かれ少なかれ驚いたよ。今後のプランのようなものもなかったしね」とルイは語っている。

手堅いシングルをいくつもリリースしてきたものの(ビービー・レクサをフィーチャーした「Back to You」は名曲なのに過小評価されている)、ほかの1Dメンバーのようにルイの音楽がチャートを賑わせたとは言い難い。
2020年1月には待望のデビューアルバム『ウォールズ』——本誌は「1Dの黄金期をノスタルジックに想起させる」と評価——をリリース。仮に1Dが新曲を出すのであれば、作曲をたびたび担当してきたルイが1Dらしいヒットを生み出せることがこのアルバムによって証明された。だが、予定していたツアーが新型コロナウイルスの影響で2021年に延期されたことを考慮すると、1D再結成の可能性はグッと遠ざかってしまったのかもしれない。

音楽以外に関しては、ルイはふたたびリアリティ番組で成功をつかんだ。ルイは、英人気オーディション番組『Xファクター』(1D誕生のきっかけとなった番組)の審査員を務めているのだ。ほかのどのメンバーよりもリアリティ番組とのつながりが強いルイがメンバーを再集結してノスタルジックな復活を実現できるかもしれない。

再結成に関する具体的な言及はないものの、ルイは間違いなくグループに愛着がある。「アイツらのことはマジで大好きだし、一緒に成し遂げたすべてを心から愛してる」と2020年に本誌のインタビューでルイは語っている。「いまでも、アイツらとの時間が恋しいよ」。

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4.ハリー・スタイルズ
再結成に参加する確率:50%
ワン・ダイレクション再結成の可能性は? メンバーの全発言を徹底検証

Illustrated by Matthew Chow

2016年にグループを脱退して以来、ハリーのキャリアは飛躍した。高評価のアルバム2作のみならず、ハリーはグッチのキャンペーンに起用され、音楽業界に君臨するポップスのプリンスとしての地位を獲得した。

2019年12月にリリースされた最新アルバム『ファイン・ライン』はいまも音楽チャートで強い存在感を放っているし、最新シングル「Watermelon Sugar」は栄えある”サマーソング”候補にもなっている。
Loveツアーは新型コロナウイルスのせいで延期になったものの、すでに来年夏の振替公演も決定している。要するに、1D再結成に参加する暇なんてないのだ。

高評価の映画『ダンケルク』(2017)でハリーはハリウッド進出も果たした。ディズニーが準備中の実写版『リトル・マーメイド』ではエリック王子に抜擢されるのではないかと話題になったし、バズ・ラーマン監督の新作伝記映画の故エルヴィス・プレスリー役のオーディションを受けたという報道もある。

「再結成にもっとも前向きなのはナイル、リアム、そしてルイだと思います」とダンハムさんは言う。「ハリーは、ソロアーティストとしてとてつもない成功を収めたので(それも1D時代とはまったく違う方向で)、ほかのメンバーと異なり、再結成することのメリットがまったくわかりません」。

だからといって、本誌はハリーが再結成に参加する確率を0%にはしない。アーティストのなかにはボーイズバンドという過去を捨てたがる人(ジャスティン・ティンバーレイクのように)もいる一方、ハリーは1Dの楽曲を自身のツアーでつねにカバーしてきた。最新アルバムの発売を記念して2019年にロサンゼルスで行われた一夜限定コンサートでの「What Makes You Beautiful」のサプライズ・パフォーマンスはその一例だ。いまや公然の秘密となった1Dグループメールに加わっていることと、「step [back] into the light(ふたたびスポットライトを浴びる)」という「Lights Up」の歌詞は、ハリーが再結成に前向きな証拠ととらえていいだろう。ハリーは2019年に本誌のインタビューで次のように語っている。「二度とやらないとは言い切れないよ。だって、そうは思っていないから。全員がやりたいって思う、それこそが本当にやるべきタイミングだ。肝心なのは、『あれはマジで楽しかったよな。またやろうぜ』って全員が感じることだと思う」。

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5.ゼイン・マリク
再結成に参加する確率:0%
ワン・ダイレクション再結成の可能性は? メンバーの全発言を徹底検証

Illustrated by Matthew Chow

本誌は、最後にゼインを持ってくることにした。というのも、ゼインなしの1D再結成は本当の意味での再結成とは言えないからだ。ゼインはグループのアルバムのなかでももっともオイシイ部分を担当してきた人物だ(「Steal My Girl」のハイトーンはいま聴いても鳥肌モノだし、心のこもったゼインの歌声なくして「Night Changes」はあれほどの名作にはならなかった)。ゼインは、キャリアのスタート地点からあまりにも遠い場所に行ってしまったような印象を与えるだけでなく、グループを脱退した頃から1Dとメンバーへの言及を避けてきた。要するに、ゼインとグループのあいだには憎しみしかないのだ。物柔らかな話し方でおなじみのゼインは大々的なインタビューを控えてきたものの、2015年の米FADER誌の記事では「そもそもあのグループには、僕がさまざまなクリエイティビティを試す余地なんてなかったんだ」とコメントし、1Dの楽曲を「クソみたいにつまらない」と評価した。

ゼインは、1Dのなかで最初にソロ活動を開始したメンバーであり、デビューアルバムの先行シングル「PILLOWTALK」はいまでも史上最高のデビューシングルのひとつに挙げられる。しかしながら、ゼインのキャリアはそれ以来山あり谷ありだった。テイラー・スウィフトとのデュエット曲「I Dont Wanna Live Forever」(映画『フィフティ・シェイズ・ダーカー』のサントラ収録曲)の大ヒットにもかかわらず、セカンドアルバム『Icarus Falls』は米国・英国の音楽チャートトップ60にさえランクインすることができなかったのだ。

新作に着手していると報じられているほかの4人と異なり、ゼインは今後のプロジェクトについて一切言及していない。ゼインに関する最後のニュースといえば、実写版『アラジン』(2019)のサントラ用に新人シンガーのジャヴァイア・ワードと「ホール・ニュー・ワールド」をデュエットしたくらいだ。あとは、シェイドの「Trampoline」(ひどく過小評価された楽曲)のリミックスにも参加している。これらの一回限りのプロジェクトからは、気分が乗っているときに——それも心から好きになれるプロジェクトにだけ取り組むというゼインの音楽への姿勢がうかがえる。いまのところ、そこに1D再結成は含まれていないようだ。

それに加え、4人のメンバーが友好的にグループから脱退したのに対し、ゼインは2018年のインタビューで次のように語っている。「あのグループでは誰かと仲良くなることはなかった。なんとなく、そうしなかったんだ。別に怖くて隠しているわけじゃないから、はっきり言うよ」。メンバーを友人と思わないゼインにとって再結成なんてあり得ない。

実は、もうひとつ重大な出来事がゼインを待ち受けている。モデルのジジ・ハディッドとのあいだに子供が生まれるのだ。1D時代を楽しめなかったことを公にしてきたゼインだが、父親になるとなれば、1Dの再結成に参加する可能性は事実上ゼロだ。

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当然ながら、先のことはわからないし、イン・シンクのようにどのグループにとっても解散は避けられないものだ。だが、デビューから27年以上精力的に活動を続けているバックストリート・ボーイズのようなグループがいるのも事実だ。それに1Dから何かひとつのことを学んだとすれば、それは誰もグループから除外してはいけないということ。1Dとしての最後のパフォーマンスで4人が歌ったように、彼らにはともに歩む「まったく新しい歴史」が待っている。彼らはかならずもっと遠くまでいけるだろう。

1Dファンは、気を配りながらも楽観的な見解を持ち続けている。「私のなかのティーンエイジャーの私が再結成を熱望する一方、彼らが個々で活躍するのはうれしいことです」とダンハムさんは言う。「彼らのサウンドは1D時代とはまったくの別物ですから、再結成と同じくらい彼らのソロアルバムをサポートするのが大切です」。ダンハムさんはさらに次のように言い添えた。「ファンが再結成を推すのであれば、同じようにソロアルバムも推すべきだと思います。そうずれば、ウィン・ウィンになる——1D時代を振り返りながらも、ソロアーティストとしてのそれぞれのキャリアを支援できるのですから」。

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