さらに最新シングル『抱き寄せ 高まる 君の体温と共に』は、オリコン週間シングルランキング(6月1日付)で初登場3位を記録。リリース毎に着実に評価と期待を上げていったWANDSが、10月28日に約21年ぶりとなるアルバム『BURN THE SECRET』をリリースする。今作は第5期になって発表したシングル2枚はもちろんのこと、「Secret Night ~ Its My Treat ~」、「明日もし君が壊れても」、「もっと強く抱きしめたなら」、「世界中の誰よりきっと」と名曲のセルフカバーも収録されている。3人はどのような思いでアルバムを完成させたのか。そして、これから彼らが向かっていく未来について話を聞いた。
ーWANDS第5期が始動した当初、「これからどうなっていくのか、まだ分からない」と言ってましたよね。あれから約1年が経ったわけですけど、振り返っていかがでしょうか。
上原大史(Vo.以下、上原):んー……。まだ何もわからないというか(笑)。周りの方以上に自分たちが一番わかってないんですよね。ファンの方々とか「再始動してどうなるんだろう?」とか「どんな感じだろう」って、色々とクエスチョンマークが浮かんでいたと思うんです。僕ら自身も右も左も分からないまま、とにかく楽曲制作をしたり、目の前にあることをこなしていって。
柴崎浩(Gt.以下、柴崎):そうだね。このメンバーでやるのは去年11月からのスタートだったので、WANDSではありつつも、新人バンドのような心持ちがあって。アルバムを出したことで、ようやくバンドとして1つ、ことをやり遂げた感覚は多少ありますけど。上原が言ったように、割と目の前のことを少しずつ進めていった感じですかね。
木村真也(Key.以下、木村):うん。強いて言えば、年下の上原くんが僕らにタメっぽい感じで接してくれるようになったし、お互いがどんな人間なのか分かり合える時間だったんじゃないかなと思いますね。
ー今年1月、ラジオ『FM802』に皆さんがご出演された時は「お客さんに受けいれてもらえるか恐怖を感じてる」と話してましたけど。
上原:「大丈夫かな? 受け入れてもらえるかな?」から始まり「あ、意外と大丈夫かも」「いや、違うかな」みたいな繰り返しでふわふわ来てますね(笑)。
ーふわふわしてる(笑)。『真っ赤なLip』、『抱き寄せ 高まる 君の体温と共に』と2枚のシングルをリリースされました。そこでの手応えはどうでしたか?
柴崎:手応えってある?
上原:う~ん、難しいな。
ーえ! そんな感じですか。
スタッフ:リリースをしたという意味での手応えは、アーティストは直接感じづらいなとは思います。
上原:そうですね。
スタッフ:お客さんと対面する機会がほとんどなくて、メンバーは直接手応えを感じづらいかもしれないですね。その上、コロナの影響でキャンペーンもそれほどできなかったので。
柴崎:WANDSらしい曲が出来たと思っているんですけど、それのリアクション待ちみたいな感じです。
ーWANDSファンはめちゃめちゃ反応してて。かなり興奮している様子でしたよ。
上原:ああ……ありがたいですね(笑)。
木村:自分はSNSを積極的に使ってないので、話がまったく入ってこないですね。逆に、どうなっているんでしょうか?
ーこちらは盛り上がってます(笑)
柴崎:YouTubeにWANDSのオフィシャル動画が上がってて。そこのコメントを読むことはありますけど、見た人全員が書き込んでいるわけじゃないから、本当のところはどうなんだろうなって。
ーお客さんと対面できないことで楽曲のリアクションが掴みづらいのは、今回が初めてだったんでしょうか。
柴崎:そんなこともないですね。実は、WANDSって90年代はずっとコロナみたいな感じで。
木村:アハハハハ。そうだよね。
柴崎:ここ数年はSNSの普及により、アーティストとお客さんの距離が近かったものの、コロナによって断裂した感じはします。……だけどWANDSの歴史で見ると、割といつもこんな感じだったなって(笑)。
木村:そうだね。昔はリリースする曲の発売日すら分からなくて、スタジオに入ってることもあったから。
柴崎:そうそう(笑)。
ーハハハ、そこは気にしてくださいよ! ちなみにアルバムの制作自体はいつから始まったのでしょう?
柴崎:去年の11月から曲作りはしていて、少しずつ進めていった感じですね。
ー1曲目の「David Bowieのように」は、まずタイトルで驚きましたね。
上原:作詞は結構大変だったんですよ。中々できなくて、ああでもないこうでもないと何パターンも作って。一時はスランプになってしまい、プロデューサーの長戸(大幸)さんに相談したんです。そしたら「地名とか有名なアーティストとか、何か固有名詞を軸にしたら?」と言っていただいて。それで考えた結果、デヴィッド・ボウイを歌詞に落とし込むのが個人的には良いなと思って。ただ、デヴィッド・ボウイが浮かんでからも、本当に良いのかな?と悩んでました。で、柴崎さんから「本当に良いと思ってる?」と言われて「どうなんやろう?」とまた考え直して。
ーかなり迷走していたと。「これで行こう!」の決定打は何だったんですか。
上原:もしも自分以外のアーティストが、デヴィッド・ボウイという歌詞を用いて歌っていたらどう思うやろう? と想像したらすごいキャッチーだなと思ったんですよ。それで悩みが晴れた気がします。
ーデヴィッド・ボウイ以外にも候補はありました?
上原:いろんな案は考えたんですけど、デヴィッド・ボウイ以外でコレっていうのはなかったですね。
ーハハハ、直球ですもんね。
上原:それでグルグルと考えた答えは「いや、そんなことない」と。カッコよく歌えば、カッコ良くなるよなと思って。そこから自分の中で答えが出ました。
柴崎:作曲でいうと、最初はメロディのパーツをたくさん組み合わせていたんですけど、それをプロデューサーのサジェスチョンと言いますか。もっと簡潔に明解にした方が良い、ということでだいぶ削りましたね。あとヴァースからサビへ転調をするかどうかも色々とパターンを試しつつ、最終的には転調しないことになったりして、完成するまでに試行錯誤をしましたね。

柴崎浩
木村:演奏はすごい難しいんですよ(笑)。今まで僕が挑戦してきたクラシックと比べても「David Bowieのように」はトップクラスに難しい。
柴崎:4分の4拍子なんだけど、コードチェンジのタイミングが4拍目になってて、それが難しいと言ってたよね。
木村:そうそう。
柴崎:あとは言葉の一発目が「David Bowieのように」と来たことで、えらいキャッチーになったとは思いました。
ー歌詞の面白さでいうと、個人的には「賞味期限切れ I love you」も気になりましたね。人間の業を感じるなって。
上原:音的にも爽やかではないじゃないですか。だから、歌詞はちょっとどろっとしている方が良いんじゃないかなと思って。カッコよくて、ちょっとゲスっぽい歌詞にしたいと思ったのがまずあって。抽象的な内容よりは、リアルな方に振り切ろうと。
ー大好きな子と付き合ったはずなのに、いつの間にか冷めちゃって。気づいたら他の女の子に目移りしちゃうっていう。
上原:年齢をいってる方なら1回くらいは経験あるだろう、と。
木村:あるある。
上原:ありますよね! そうなんですよ。付き合ったことのある人なら、すごくリアルな歌詞に感じると思います。自分もそういう感情になったことは、もちろんあるんでね。とはいえフィクションの部分もあるんですけど。
ー作曲に関してはいかがですか?
柴崎:とにかくグルーヴにこだわったというか、気持ちいい感じになるように意識しましたね。イントロからちょっと怪しげな雰囲気になっているので、間奏を作るときもそっちに寄り添うコード進行を考えたりして。割とジャズで用いるようなコードをたくさん使いました。演奏に関しては「David Bowieのように」もそうですけど、この曲も難易度は高いかもしれないです。
ーアルバム中盤では、1970年代ハード・ロックを彷彿とさせる「Burning Free」、妖艶なジャズロックの「真っ赤なLip」など、ダンス要素の強い楽曲が続きますね。
柴崎:基本的には、踊れるようなテイストのロックが好きなのかもしれないですね。「Burning Free」は上原くんのボーカルを聴いて、最初に作った曲なんですよ。ワイルドな部分が出たらカッコいいなと思って、そのインスピレーションで生まれました。
上原:ボーカル的に難しい曲ではあります。特にサビは難易度が高くて、普通の人なら相当苦労するんじゃないですかね。パーンって上に行くところからの、ダダダと畳み掛けるところとか。
ー気になっていたんですけど、上原さんのリズム感はどこで培ったんですか。
上原:初めてバンドを組んだ時は、自分がボーカリストになる気はさらさらなくて。僕はギターを弾いていたんです。ギターを弾きつつ曲を作って音楽の道へ進もう、と思っていました。

上原大史
ーギタリストとして世に出ようと思ってた。
上原:そうです。その後にひょんなきっかけでボーカルになったから、リズム感でいうとギターの影響が大きいのかなと思います。ギターをやっていた人がボーカルになると、音感が良かったりしますもんね。
ー歌唱力の疑問が1つ晴れたところで、歌詞についてもお訊きしたいんですけど。上原さんの書く詞って「賞味期限切れ I love you」みたいに人間の欲深い部分を描く曲もあれば、「Burning Free」のような刹那的な歌詞もあって。改めて上原大史の歌の核は何があるんでしょう。
上原:元々、僕は歌詞を書くのって好きじゃないんですよ。
ーえー!?
上原:そうなんですよ。子供の頃から、音楽を聴くときに歌詞は全然気にしてなかったし、興味もなかったです。だって、高校時代はヘビメタばっかり聴いてましたからね。
ーアハハハハ、そうでしたね。
上原:ヘビメタの歌詞なんてヒドいじゃないですか(笑)。悪魔がどうとか、剣がどうのこうのとか、ドラゴンも出てくる。それを聴いて「カッケー!」と言っていた人間なので、そもそも何を歌っているのかは興味なくて。だから作詞をするようになって、色々と勉強していった感じです。というわけで、核に関しては何もないかも知れないですね。
ー例えば、怒りを覚えたときに歌詞を書きたくなるとか、人間のずるい部分を描きたくなるとか、どんなことが作詞に向かわせますか?
上原:んー……。色々です。僕はコレっていうのがないタイプなので、もしかしたら誰かの歌詞に影響を受けているところもあるだろうし。あえて言うなら、自分の実体験からくるものが多いかもしれないですね。リアルな実体験じゃなくても、経験の中の感情から話を広げていくというか。
ー1つの事柄に対して、想像で膨らませていく。
上原:「真っ赤なLip」もああいう経験をしたわけじゃないですけど、1つのキーワードから想像して作詞しました。漫画だったりドラマだったりを見て、インスピレーションが広がって、自分の経験値になるじゃないですか。そういうところから、僕の歌詞はできている感じがしますね。
ー例えば、これまでのWANDSの雰囲気から大きく外れないようにとか、そういう意識はありますか? それともまっさらな状態で書かれているんですか?
上原:あまりにもかけ離れた感じになるのは良くないなと思って、最初はすごい意識してましたね。だけどアルバムの制作が後半に向かうにつれて、だんだん気にしなくなりました。僕が書くからこれまでと違うものになっていくのは当然だし、逆に今までのWANDSになかったテイストを提示した方が面白いかなって。上杉(昇)さんや和久(二郎)さんだったら絶対に書かなかった歌詞の方が、第5期をやっている意味があるのかなって。
ー上原さんの歌詞について、柴崎さんと木村さんはどう受け止めていますか。
柴崎:今言っていたように、最近は「自分を出していこう」って姿勢がうかがえるから良いなと思っているんですよ。やっぱり同じ人間ではないので。良い感じに上原らしさが出てきているなって思います。
木村:うん。思想とかそういうことより、すごい本人と近い歌詞になっているんじゃないかなって思いますね。
ーそして今作は、過去にリリースしたWANDSの楽曲をセルフカバーされてますけど、曲のチョイスはどのように決めたのでしょう?
柴崎:プロデューサーの提案に基づいて、どの曲をカバーするか決めました。第3期と呼ばれている時期の曲をやるのは、個人的にとても良いなと思ってますね。「Secret Night ~ Its My Treat ~」はオリジナルバージョンのドラムがカッコよくて。アレを超えるものを作るのは難しいなと思って、ベーシックなものはなるべくオリジナルに近づけるようにして、うわもので変化をつけましたね。
ー確かに大きなアレンジをしたというよりは、原曲の雰囲気を大事にしつつ変化をつけてますね。
上原:大きな変化はボーカルが違うってことですよね。やっぱり最初は「偉大な先輩の曲を、よう分からん新人が歌うなんて」と思われる可能性もあるし、僕自身はすごく抵抗がありました。ただ、やるしかないので。なるべくイメージを壊さないように歌いました。
ーそしてアルバムのラストを飾るのは、上原さん作詞作曲の「アイリメンバーU」。
上原:僕は生まれが九州で、この曲は上京した時のエピソードを元に作りました。なので実体験に基づいて、ちょっと脚色した感じですね。
ー今日のインタビューを振り返ると、今作は上原さんのパーソナルな部分が色濃く現れている印象を受けました。
上原:そうですね。割と生々しいと言うか「上原さんってこういう人なのかな?」と想像するような歌詞になっていると思いますね。
ー『BURN THE SECRET』が完成して、今はどのような手応えを感じていますか?
柴崎:明確に見えてるものがあって制作がスタートした訳じゃないけど、『BURN THE SECRET』は新曲もセルフカバーも入って、ちゃんとWANDSとしての同じ色のアルバムができたな、という感触ですね。中にはWANDSっぽくするにはどうすれば良いのか考えた曲もありますけど、大方は特にそんなことも考えずに作ったものが多くて。その割には、統一感のあるアルバムになったなと思っています。
木村:最近になってWANDSって何かな? と考えるんですよ。今作もそうですし、これまでの曲を並べると色んなことをやってて。1つの何かに執着することはなく、その時にやりたいことをやるのが僕の中のWANDSなのかなって。第1期から第5期まで全部違うじゃないですか。

木村真也
ーそうですね。
木村:だからこそ『BURN THE SECRET』は、今のWANDSと過去のWANDSを繋ぐ接着剤の役割をしているアルバムになっていると思います。
柴崎:過去を通過点にして、さらに進んで行けたら良いなという感覚はありますね。
上原:そうですね。あのWANDSだ! というイメージが早くなくなると良いですね。「あの」じゃなくて、「今」も普通にやっているんで。バンドとして常に更新していきたいです。
<リリース情報>

WANDS
6thアルバム『BURN THE SECRET』
発売日:2020年10月28日(水)
初回限定盤 [CD+DVD] 3500円(税抜)
【特典DVD】MV:「真っ赤なLip」「抱き寄せ 高まる 君の体温と共に」「Secret Night ~ Its My Treat ~ [WANDS 第5期ver.]」Short ver.
通常盤 [CD] 2700円(税抜)
初回生産分のみの封入特典
「抱き寄せ 高まる 君の体温と共に」「Secret Night ~ Its My Treat ~ [WANDS 第5期ver.]」のMVメイキング映像が視聴できるSPECIAL MOVIE視聴用シリアルナンバー入り
=収録曲=
1. David Bowieのように 作詞:上原大史 / 作曲・編曲:柴崎浩
2. 抱き寄せ 高まる 君の体温と共に 作詞:上原大史 / 作曲・編曲:柴崎浩
BSテレ東土曜ドラマ9「サイレント・ヴォイス season2」主題歌
3. 賞味期限切れ I love you 作詞:上原大史 / 作曲・編曲:柴崎浩
4. Secret Night ~ Its My Treat ~ [WANDS 第5期ver.] 作詞:上杉昇 / 作曲:栗林誠一郎 / 編曲:柴崎浩
5. Burning Free 作詞:上原大史 / 作曲・編曲:柴崎浩
6. 真っ赤なLip 作詞:上原大史 / 作曲・編曲:大島こうすけ
読売テレビ・日本テレビ系アニメ「名探偵コナン」オープニングテーマ
7. 明日もし君が壊れても [WANDS 第5期ver.] 作詞:坂井泉水 / 作曲:大野愛果 / 編曲:柴崎浩
8. もっと強く抱きしめたなら [WANDS 第5期ver.] 作詞:魚住勉・上杉昇 / 作曲:多々納好夫 / 編曲:柴崎浩
9. 世界中の誰よりきっと [WANDS 第5期ver.] 作詞:上杉昇・中山美穂 / 作曲:織田哲郎 / 編曲:柴崎浩
10. アイリメンバー U 作詞・作曲:上原大史 / 編曲:柴崎浩
WANDS Official Website:https://wands-official.jp/
公式YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCYvCFfw4_uC9GX40K7Uo-kg