タイトルの「little more」には、新型コロナウイルスの感染拡大の中、あらゆることへの自粛・制限が余儀なくされた社会的背景の中、フラストレーションをパワーに変えていこうとする葛藤が込められている。
ーコロナの影響が無ければ、2020年のFAKYはワンマンライブもやって、大いに活動していく勢いだったと思うんですけど、まさかの事態ですよね。
Lil Fang(以下、Lil):でも、びっくりするぐらい皆落ち込まなかったんです。めっちゃ切り替えが早くて。ファンの人には申し訳なかったんですけど、むしろしっかり準備できるし、今後やりたいことがどんどん出てきてどうしようかと思っていました。次のワンマンとか5時間くらいやるんじゃないかな(笑)。FAKYはライブが一番大事だと思ってやってるんです。ライブのことを毎日考えて生活していたし、ライブでしか発散できなかったものもたくさんあったんだなってめっちゃ思います。
ーコロナ禍で、皆さんがどんな音楽を聴いていたのか教えてください。
Taki:私は幅広く聴いていました。昔の曲も好きだし、バックストリート・ボーイズ、ボーイズⅡメン、昔のR&Bとか。
Akina:私は海外の曲を多く聴くんですけど、サブリナ・クラウディオとかJhene Aikoとか、チルで綺麗でセクシーボイスな女性がすごい好きで、その辺りをよく聴いてます。R&B、Sultry R&Bが好きで、YouTubeで探して、iTunesでも買ったりしてます。
Mikako:私はコロナ期間中に家のテレビでドラマや映画の再放送を観ていて、ちょっと昔の曲を掘り下げるのが最近好きです。最近聴く中で一番古いのは松田聖子さん、ちょっと最近のJ-POPだとコブクロさん、ドリカムさんなどを聴いて勉強していますね。普段は三浦大知さんとか清水翔太さんが好きなんですけど、親に電話で昔どんな曲聴いてた? って訊いて勉強しました。そういう曲をFAKYで歌ったらどうなんだろう? って想像したり、昔の映像の感じも可愛かったりして、たくさん見聞きしてましたね。
Hina:私は最近、海外の方がlow-fiを夜に生配信で流してるラジオチャンネルみたいなのを聴いていて。それまでlow-fiっていう単語も知らなかったんですけど、それを聴いてからめっちゃいいなと思って。歌声が入ってないトラックだけを聴くことがあまりなかったんですけど、夜作業してるときとか寝る前に聴くと意外と気持ちいいんですよね。
Lil:私は何でも聴くんですけど、最近またマイブームが来ているのはColdplayですね。私は歌詞を書くときに色んなところに刺激を受けに行くんですけど、コロナだとそれも難しくて。
ー11月4日にリリースされた配信シングル3部作の第2弾『little more』は、前作『ダーリン (Prod. GeG)』に続いて、プロデューサーのカラー、今回だとmaeshima soshiさんの作った曲のテイストと、FAKYの持ち味がうまく融合してる感じがしました。この曲にトライしてみていかがでしたか?
Mikako:これまでFAKYはダンスチューンを多く出してきたんですけど、最近は「ダーリン (Prod. GeG)」とか「half-moon」みたいなゆったりめの曲もやって。そろそろまたダンスナンバーやりたいなっていう想いがあったんです。なので、今回またFAKYらしく歌って踊って、その中にも5人の人間的なかっこよさとか、生きてきた軸のバックグラウンド、闘ってきたことが上手く表現できたなって思います。
ー「ダーリン (Prod. GeG)』みたいなバラード曲も経た上でのFAKYのダンス曲ということで、改めてFAKYらしさを感じた部分もあるんじゃないですか?
Lil:そうですね。元からFAKYを好きでいてくれた皆さんは、歌って踊るグループだって認識してくださっていると思うんです。でも、その中でも自分たちが今やりたいこと、かっこいいって思うこと、伝えたい想いをどんどん発信していきたかったんです。今私達に伝えられることっていうのは何だろう? 私達が新しい挑戦をしたいと思った時にしっくりくるサウンドって何だろう? って皆で話した時にしっくりきたのが『Little More』っていう曲でした。サウンド感も新しいし、すごくテクニカルなことをなさる楽曲制作の方々なので。新たな挑戦ですごく苦戦や葛藤しながら生まれた作品なので、『little more』っていうメッセージをより強く、体現して伝えられたんじゃないかなって思います。
Hina:Lilが言ってくれた通り、私にとっても今回の曲はすごく難しくて。リズム一つにしても、オンビートのところもあればブリッジのところはビートが無くなって静かになったりするので、レコーディングの時もすごい苦戦しました。でも、Lilがディレクションをしてくれて。アドバイスもたくさんくれるのでありがたかったし、いい経験になりました。
Akina:この曲は歌詞が割とディープなんですけど、曲調はアップビートでポップなので、そのギャップがとても好きです。私もHinaと一緒で、リズムがレイドバックになりがちなのが難しかったです。この曲のアップビートテンポに合わせてちょっとポップな声で歌う方向にいくのか、歌詞の部分をもう少し共感できるようにトーンを抑えて歌うのかもちょっと迷って。その塩梅はチャレンジでした。
ーTakiさんはいかがですか?
Taki:最初にデモもらった時からレコーディングまで、どういう感じの歌い方をしたらいいか全然わからなくてLilにも相談しました。私のパートもいつもと違う感じで、ちょっとかわいい声を出してみたり、セクシー感を出したり、ウィスパーで歌ってみたり、色々試したんです。結果、デモと完成した曲では、メンバーの個性とかも入っていい意味で全然違う良い曲になりました。
ーメンバーそれぞれのボーカルの個性など踏まえてのディレクションも、Lilさんがやられているんですか?
Lil:歌割りも考えさせていただいてるんです。
ーその辺りはmaeshimaさんともやりとりしたんですか?
Lil:maeshimaさんとは直接お話する機会はなかったんですけど、歌詞を書く時のディレクションの中で、自分の中の葛藤とかはすごく表現したいからプッシュしてほしいってお話をいただいたんです。それをすごく意識して、キーも1個上げて。聴いていただいた方に挑戦する勇気をあげたいって言っても、自分たちが挑戦しないと説得力がないなって思ったんです。私たちが先にチャレンジすることで、その想いを体現できるんじゃないかなってより強く思いました。
ー確かにサウンドはUK的で、すごくクールな質感になってますよね。こういう曲のノリって、今のチャート音楽とまたちょっと違うじゃないですか。曲のイメージは先に解説されるんですか? それとも個々で見つけてくるんですか?
Lil:曲をもらってから、それぞれどう思うのか話し合う形でいつも決めます。そこから歌詞を練っていくので、自分の中にはなかったトピックが出てきたり、5人いるからこその制作の形ですごく面白いです。
Akina:この曲に関してはLilが歌詞をリライトするときに5人で話し合いました。今の時期コロナがあって、『little more』を通して安全に慣れていく世界になれればいいっていう、リアルなメッセージを皆に伝えたいってテーマがあって、この曲が出てきたんだよね。
Lil:皆が共通して、この自粛期間に音楽で何かを伝えたいっていう想いがすごく高まって。この状況でコロナ禍の時の気持ちを歌にしないわけにはいかない、鬱屈した気持ちを歌詞にしたいという考えは全員共通でありました。
ーMikakoさんはその話し合いの場でどういうことを語ったんですか?
Mikako:世界共通で同じことに対して悩んだりすることって、この先あるのかなって思ったんです。私もどうなるんだろうと思ったし、皆と会わない期間も続いて、FAKYの活動も大丈夫かな? こんなに会わなくて、次は何をどうやっていこう? とか悩みました。でも、FAKYっていう音楽を届けたいと思ったときに、皆が色々なことで弱ってる中でも、どこかに皆の強さが絶対にあるってメンバーから感じていて。それを曲にしたいなって思いました。弱いものと強いものって紙一重でもあるけど、とりあえずその強さの話をLilに投げて、上手く噛み砕いてくれました(笑)
Lil:最初にそれ言われました。どっか一個でも強さがあった方がいいからって、真っ直ぐな瞳で言われました。
Hina:私が思ったのは、ステージの裏側はただの23歳の人間なんですけど、そこを見せる機会ってなかなかないじゃないですか。去年の冬にABEMAの「月とオオカミちゃんには騙されない」に出演したんですけど、普段の姿を見せることで、逆に共感してもらえることもある、弱いところを隠さずに見せていくのも別に悪いことじゃないのかなっていうのが、私にとってすごい大きな発見で。
Akina:私もHinaと一緒でなるべくリアルの方向に行きたいと思って。この曲は本当にこの先どうなるのか分からないけど、とりあえずもうちょっと頑張ろうというストーリー感をこの曲で表現したくて。
Lil:あとは、全部に意味を持ちたいってミーティングで言っていて。全部のラインに意味が欲しい、アーティストとして意味のないことを今の状況であまり言いたくないというようなことも言ってたよね。
ーTakiさんは?
Taki:私、普段から結構喋るから本当に覚えてないです(笑)。ごめんなさい(笑)。
Lil:Takiが最初に、コロナっていうキーワードを絶対に曲にしたいって言って。Takiは世界情勢にすごい詳しいんですよ。色々なところに住んでいたっていうバックボーンもあって、今この国はこういう状況で、どういう人たちがつらくて、どういう想いなのかを知っていて。それを私は曲にしたい、だから世界共通で分かるもの、世界共通のものに立ち向かっているんだよっていうのを、FAKYとしてすごく表現したいって言ってました。
Taki:あー、良いこと言ってたなあ(笑)。
一同:(笑)
ー色々な国々の社会的なトピックに関心があるからこそ、FAKYでもグローバルな表現で自分たちの曲に共感してもらいたかったんですか?
Taki:そうです。FAKYとしては、日本だけじゃなくて海外も目指しているから、自分たちが現地事情を知らなかったら、どうやって曲でコネクトできるのかとかも分からない。だから、いつも何かあればずっと調べたり、共有してます。日本はコロナの状況下で一番気楽にやってこれた感じがしていて。パリとかフィリピンの友達は今でも自粛してるし、夜は8時ぐらいで家に帰らないといけないし。日本と全然違うんですよ。日本の方が比較的余裕がある感じがします。海外だと仕事が無くなってる人も多くて、前に住んでた場所のことだと彼らのことも心配になっちゃうし。そう考えると、日本いる自分は、普通に仕事もできるし、外にも出れてラッキーな感じがしています。
ーそういう皆の想いを曲にしてく作業はこれまでもあったと思うんですけど、今回は全然違う感じでしたか?
Lil:今回は特にそうですね。歌詞をリアレンジっていう形でやらさせていただいて。この5人の気持ちをFAKYとして表現するのは、いつもやっていることなのでなんとなくわかるんですけど、maeshimaさんの気持ちも含めた6人の気持ちで歌詞を書かなきゃいけないっていうのが、FAKYとしては初めての試みだったのですごい苦戦しましたね。一語一語に拘って難産でした。
ー音にのせたときのフローなんかも練ったんじゃないですか?
Lil:練りました。サビの「恐れず変えていける」のとこは、1行の歌詞なのに8種類ぐらい書いていて。何回も何回も家で歌って録って繰り返し聴いて、どれが一番綺麗に聞こえるか? って考えましたね。だんだん正解が分からなくなってきちゃったんですけど、信頼しているメンバーに訊いて、これがいいって言われたらそうしようって決められました。
ー他のメンバーの皆さんは客観的に見て、Lilさんがそういう歌詞の部分で悩んでるなっていうのは感じてました?
Akina:めちゃ感じていました。彼女はクリエイティブプロセスが結構何個もあるので、そこに微妙に入っちゃうと申し訳ないというのもあって。でも、彼女はアドバイスが本当に欲しいときはちゃんと訊いてくれるので、それまでは、自分のマインドと頑張って闘って! って感じです(笑)。本当に助けてほしいときはちゃんと助け合えいますね。
ーそれぐらいこだわりを持って作った曲だから、今回の『Little More』は本当に新しいFAKYの形が凝縮されてる曲に仕上がってると思うんです。この体制になってからも色々な音楽性の曲を出してきて、作詞もやられるし、グループに多様性もあるじゃないですか。あとは個々での活動もあって、武器は既にたくさんある。そうやって培ってきた武器を持って、これからどうやってFAKYとして闘っていきたいなと思ってますか?
Akina:私はダンスが好きで、海外のダンサーとか流行りのダンスをチェックするので、ダンスカルチャーとかを私が教えて、そこで5人のスタイルやジャンルをもう少し近づけて踊りも綺麗にしたいですね。
Taki:私は海外経験も多くて、15歳からずっとこういう活動してきました。そういう経験値を共有しています。他にはSNSを通してファンとの交流でも積極的に現地の言葉でリプライしたり、ライクもしていて。日本に来る前は、学校でマーケティングのレッスンをずっと受けていたので、SNSのアナライズをしたり、更新タイミングを共有したりもしています。
Hina:ここ数年間のSNSの発達もあって、SNSでバズってる子がスカウトされたり、インスタグラマーの子がモデルと同じ仕事をしたりしているじゃないですか。でも私はアーティストとしてデビューしたので、これまで音楽活動だけやってきたんです。でも、ABEMAの番組に出演して、インフルエンサーの要素が大きいところで共感してもらえるポイントが新たに分かったので、アーティストとインフルエンサー両方のいいところを上手く吸収して、音楽好きな層やキャッチーなことが好きな層、皆が求めていることを学んで色々な層でFAKYのファンを増やせたらいいなと思ってます。
ー色々な角度からFAKYを見れた方が、より良い見せ方とかも分かりそうですよね。
Hina:第三者としてFAKYを見ることが増えたかもしれないです。今この辺にFAKYはいるなとか、あの辺の人たちはこういうことやってて、FAKYにはこういうのが足りないなってすごい見えるようになりました。
ーMikakoさんはいかがですか?
Mikako:私はファッションがすごく好きなので、この他の4人に自分がプロデュースした服を着せて、アー写を撮りたい。それには流行ってるものとかじゃなく、皆が好きなもの・似合うものも違うから、一人一人違うルックを着させて、ファッション好きの人にも評価されるものを見せたいです。可愛い、かっこいいって、正直たくさんいると思うんです。SNSの発達がすごい中で、写真や動画を見て可愛いっていうのがどんどん流れていくじゃないですか。その中でも細部に拘って、ファッション好きをグイグイFAKYに引っ張るものを作りたいです。
ーLilさんはどうですか?
Lil:私ができることと言ったらトークかなと思っていて。皆を見ていてすごくアーティスティックだなって思うので、話しかけづらいんじゃないかなって思うんですよね。だからこそ、私はFAKYの中でも付け入る隙でありたいというか。いっぱい喋ったり、バカなことを言ったりとかするのが元々好きだし、それをやることによって、ちょっと面白い感じで、人間味溢れる子たちなんだなっていうのを皆に共有できたらいいなと思います。
ーラジオパーソナリティもやられていますもんね。それによって自分自身にも影響はありましたか?
Lil:一年半やっていて話す内容のNGがなくなりましたね。前までは、ここは隠したい、恥ずかしいとか思うことがたくさんあったんですよ。でも、もう生きてきたことでしか表現できないんだって分かって。この貯金をいかに使って、いかに更に貯金を増やしていくかっていう思考にすごく切り替わった瞬間があって、それからさらに喋れるようになりましたね。喋ることに対して臆さなくなった、伝えないとやっぱり受け取ってもらえないなっていうのを感じました。
ー各々の強みを皆さん自覚していらっしゃるんですね。
Lil:コロナの期間に個々がグンとレベルアップしましたね。FAKYの中で自分が何をできるかっていうのを、結構シリアスに考えました。大きい会社でやらせていただいてるから、ある程度守っていただいてるし、スタッフにも支えられているんですけど、この状況になってしまったら何があるか分からないじゃないですか。だから、私たちが何かをしないといけないと思って。コロナ期間中に発信したSNS企画は、ほぼ全部メンバー発信でやらせてもらったりとか。今考えると、すごく必要な時間だったなって思います。
ー深刻な状況ではありますが、その中でこうやってリリースまでできて。
Lil:FAKYってスタッフの皆さんにとても愛してもらってると思います。私とMikakoはもう8年目で。Hinaも前のグループの解散を経験したりしていて、その中で生き残らせてくれてるのは、信頼してもらってるんだなって感じます。
Mikako:皆が一緒に闘ってくれるので、それにも応えたいっていうのもあります。
Hina:FAKYはメンバー内でも音楽の話はもちろん、それ以外のプライベートのこともすごい話すし。今2人が言ってくれたみたいにスタッフさんの熱量とか、チーム感っていうのもやっぱりすごいから、私もこうやってチャンスをいただいた分、絶対FAKYで成功して恩返ししなきゃいけないなと思います。
Interviewed by Takuro Ueno
<配信情報>
FAKY
配信シングル「little more」
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