有観客ライブとしては、LiSAにとって実に1年以上ぶり。このコロナ禍において、昨年末に実施された配信ライブ『ONLiNE LEO-NiNE』が久しぶりの単独公演となったが、続く今回のアコースティックライブでは一体どんなステージを見せてくれるのか。また、1年以上ぶりに再会するファンを前に、彼女がどんなパフォーマンスを届けてくれるのか。始まる前から期待は尽きなかった。
筆者は3月14日の配信を通じてこのライブに触れたのだが、結果から書いてしまうと……これは会場で体感したいステージだったと言わざるを得ない。それくらいスペシャルで、エモーショナルな瞬間が凝縮された、今後のLiSAにおける大きなターニングポイントになるであろう公演だったからだ。配信を通じて本公演に触れたという方の中には、もしかしたら何度も配信を見返したという声も多いことだろう。それくらい何度でも味わいたい、見応えのあるライブだったと力説しておきたい。
【画像を見る】エモーショナルな瞬間の連続だったアコースティックライブ
配信開始時間と同時にモニターがライブ会場に切り替わると、街の喧騒や雨が降る音などが響く中、会場の暗転とともに美しいピアノの旋律が流れ出す。そのメロディに乗せてLiSAがステージに登場すると、会場は大きな拍手に包まれる。
音数の少ないアレンジだからこそ、息遣いや繊細なニュアンスまで伝わる
「ASH」という楽曲とMCを通じて、少しだけ気持ちが楽になったLiSAは、続く「紅蓮華」でさらなる圧倒的な存在感を歌で提示。音数の少ないアレンジだからこそ、息遣いや繊細なニュアンスまで伝わるこんな贅沢な瞬間、なかなか経験できないものだ。さらに短いMCを挟み、以降はドラム、ベース、アコースティックギター、ピアノ、パーカッション&女性コーラスという編成をベースにライブが進行。観客のハンドクラップを効果的に取り入れた「BRAND NEW YOU」では、アコースティックギターのストロークとアーシーなアレンジ、LiSAの荒々しい歌声とが相まって独特のグルーヴが生まれる。また、「変わらない青」では無機質なシーケンストラックに乗せて、LiSAがイントロや間奏でグロッケンを叩く場面も。

Photo by Viola Kam(Vz Twinkle)
ジャジーなアレンジに生まれ変わった「蜜」からは、再び場の空気が一変。LiSAはグランドピアノの上に横たわりながら、優雅かつセクシーさをにじませた歌を聴かせる。普段のLiSAのライブではオーディエンスの声援や歌声も重要な演出要素となっていたが、今回のこういったアレンジ/演出の場合はむしろ声を出さずにじっくり歌に耳を傾けるほうが最適のように思える。公演中、声を上げることができない昨今の状況が、(結果論でしかないが)今回のライブを最良の方向へと導いたのではないだろうか。さらにこの「蜜」から、アカペラスタートのアレンジが施された「シルシ」へと続く構成は贅沢以外の何ものでもない。この冒頭のアカペラのみで涙腺を刺激されたという視聴者は、きっと筆者だけではなかったはず。力強さと繊細さ、豪快さと儚さが共存するこの名バラードを、完璧すぎるほどエモーショナルな歌で表現するLiSA。久しぶりの”デート(※LiSAはライブをこう称する)”を心の底から楽しんでいることが画面越しにも伝わる。さらにダメ押しで、大ヒット曲「炎」へとつなぐと、ピアノ伴奏に女性コーラスが加わることで、原曲が持つ美しいハーモニーがその場で再現されていく。LiSAはいつも以上に言葉の1つひとつを丁寧に歌うことで、歌詞の持つメッセージを会場中に、そしてモニターの先により強く響かせた。
優しさに満ちた美しい新曲「サプライズ」
再び会場に雨音が流れる中、儚げなピアノの音色が響き渡る。
「dawn」で会場の雰囲気が変化したことを受け、LiSAは「幕が開けました!(笑)」と力強く宣言。ライブはここから、さらに明るさを増していく。普段のLiSAのライブを思わせる、多幸感溢れる楽曲で構成された10数分におよぶメドレーコーナーに突入すると、ポップな「KiSS me PARADOX」を筆頭にアップテンポの楽曲が続いていく。「オレンジサイダー」ではLiSAが鍵盤ハーモニカを使う一幕もあり、さまざまな形で観る者を楽しませてくれる。途中、「1/f」や「リングアベル」でペースダウンして優しい歌を届けると、最後は軽やかな「LOVER" S" MiLE」で締め括るというジェットコースターのような構成で、その場にいるすべての人たちを笑顔にさせた。

Photo by Viola Kam(Vz Twinkle)
以降は、クライマックスへと向けてLiSAとバンドメンバーはフルスロットル状態に。「Rally Go Round」ではLiSAが叩くドラムに合わせて、観客がハンドクラップやフットストンプで応える新たなコール&レスポンスが用意され、会場の熱気が一気に高まる。このコール&レスポンスは曲中にもたっぷり採用され、腕を振り上げる観客の熱量がライブ序盤よりも高まっていることも見て取れた。
アンコールでは、白いドレスに着替えたLiSAが「今年2021年4月で私は10周年を迎えます。この10年、いろんな人に出会いながら、いろんな出来事に出会いながら、いろんな出来事に泣かされたり喜んだり、いろんな思いを感じさせてもらいました。それは1つひとつ、その時々にいてくれたみんなが作ってくれたサプライズのような、希望の光のような、そんな1つひとつだったなと思います」と、改めて今の思いを吐露。続けて、「1つひとつここまで作ってくれたみんなに感謝を込めて、そしてサプライズのような希望をみんなに、これからも届けていけるように願いを込めて、新曲歌います」と新曲「サプライズ」を初披露した。優しさに満ちた美しいバラードは、デビュー10周年を目前としたLiSAに、この先もたくさんのうれしいサプライズをもたらしていく1曲になる……彼女の心のこもった歌を聴きながら、そう誰もが思ったはずだ。

Photo by Viola Kam(Vz Twinkle)
LiSAがステージで見出した新たな指針
LiSAからのうれしい”サプライズ”を経て、正真正銘のラストナンバーは彼女のライブには欠かせない1曲「best day, best way」。全力で歌い踊るLiSAの姿に胸を打たれと同時に、高く掲げたピースサインがここから先に待つであろう最高の未来を象徴するようで、観ているこちらも自然と笑顔になれたはず。こうして、2時間近くにおよぶ特別なライブは幕を下ろした。
「みんなのペンライトや肌色の手、すごいね? みんなの視線、すごいね! 今日はここに来てくれた1人ひとりがこの日を大切に作ってくださったからできた今日です。みんなに大きな拍手!」と改めて喜びを口にしたLiSAは、続けて「今日私は、『ああ、何かやれることあるな、ライブって楽しいな』と思っちゃいました。皆さんはどうですか? 今までたくさんライブをやってきて、誰かが作ってきた歴史の上にライブというものがあって、それを私たちは遊ばせてもらっていたんだなと思います。
1年越しで、1公演だけでも実現した今回のアコースティックライブは、間違いなくLiSAにとって”with コロナ”以降の大きな指針になる。そんな手応えを感じた貴重な公演だった。まだまだ思い通りにいかない日々が続くかもしれないが、4月のデビュー10周年を境に、さらに進化したLiSAに出会えるはず……そう信じている。
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LiSA『LiVE is Smile Always ~unlasting shadow~』セットリスト
01. ASH
02. 紅蓮華
03. BRAND NEW YOU
04. 変わらない青
05. 蜜
06. シルシ
07. 炎
08. unlasting
09. dawn
10. メドレー
・KiSS me PARADOX
・sweet friendship
・オレンジサイダー
・妄想コントローラー
・say my nameの片想い
・1/f
・リングアベル
・LOVER" S" MiLE
11. Rally Go Round
12. やくそくのうた
13. ハウル
--ENCORE--
14. サプライズ
15. best day, best way