【画像を見る】モノクロのカット=ØMIの世界のイメージで撮り下ろしを敢行
昨年のインタビューで、自分が「月」だとすると、LDHはHIROさんが作った光り輝く「太陽」であり、その中で自分なりの新しいエンタテインメントを追求したいと語ってくれた登坂。
―去年のインタビューでは、コロナ禍の前に開催したドームツアー(「LDH PERFECT YEAR 2020 SPECIAL SHOWCASE RYUJI IMAICHI / HIROOMI TOSAKA」)の中で次にやりたいことが見えて、そしてコロナ禍の状況になってからは考える時間もできて、今はそれをどうやって世に出そうか考えているし、モチベーションもすごく高いと話してくれました。その時に言っていたことを正しく有言実行というか、作戦の成果がしっかり出たんじゃないかなと思うんですけど、ご本人的にはいかがですか?
前回インタビューしていただいた時には、「ANSWER… SHADOW」と「Can You See The Light」はほぼほぼ出来上がっていて、それが、本当にようやく……本当は昨年出す予定ではあったのですが、ようやくこういう形で世に発表できました。普段楽曲を作る時、キックとかビートはヒップホップで……とかメロディはR&Bのこういう感じで……とか、そういう話から作っていたりするんですけど、「ANSWER.. SHADOW」という曲に関してはジャンルの話は一切しないで作ったので。作った僕らですら「これ、ジャンルなんだろうね?」みたいな楽曲になりました。基本はトレンドのサウンドをどんどんやっていきたいという思いは、未だに変わらずあるんですが、でもそういうジャンルレスというか、伝えたいメッセージや世界観が自分の中で決まっていたから、1年前に完成していた「ANSWER… SHADOW」も自信を持って世に発表できるなと。
7人ではなく一人だからこそ実感できる「光」と「影」
―「SHADOW=影」にフォーカスを当てようというアイデアは最初から決まっていたんですか?
1年以上前にリリースしたアルバム『Who Are You?』を作っている時と、コロナ禍に入る前にソロでドームのステージに立っている時、その時から既に次は自分の心境を吐露したような作品を作ろうかなって思っていて。
三代目 J SOUL BROTHERSでドームのステージに立つのとソロでドームに立つのでは全然感覚が違うんです。三代目だけでなくソロアーティストとしてもドームのステージに立つことが出来たんだなっていう実感とともに、7人ではなく一人だからこそいつも以上に強く光が当たったり、ドームだったら何万人の視線や声援がすべて僕にぶつけられるというか。物理的に光が強く当たったぶん、影が濃くなるように、自分もステージに立ってパフォーマンスをしている時にドームでライブがやれたという達成感や喜び、充実感を感じながらも、それと同時に心にぽっかり穴が不思議と空くというか。その感覚をステージに立ちながら感じていて。
『Who Are You?』って自分自身に問いかけたものに対して、心にぽっかり穴が空くような感覚があるのであれば、そこに対するアンサーで影、闇とかそういう部分を表現しようと思って「ANSWER… SHADOW」という言葉が思い浮かんだんです。
ーなるほど。三代目の7人で立つステージとの対比という意味もあるんですね。それは登坂さんにとって、とてもパーソナルなことですよね。アーティストとしてというより、一人の人間として。
人って心の中に光と影の二つの面を必ず持っていると思うんです。

Photo by ティム・ギャロ
自分の声色を最大に活かせた「ANSWER… SHADOW」
―そういう感情やフィーリングを作品に落とし込んでいく際、一緒に曲を作っているクリエイターにはどうやってイメージを共有していくんですか?
「深海の底に落ちていくようなコーラスにしたい」「黒なんだけど……漆黒じゃなくて……」とか、音的にどれくらい重ねてとかそういうことよりも、情景や色で伝えていました。その後に「キックはもうちょい深い感じの音がいいかも」とか「スネアはもう少し軽い音がいいな」とか。思い浮かんだ画にどの音がはまっていくんだろうっていうのを一個一個合わせていってメロディにしてコーラスにして……っていう作業で完成した曲ですね。長年一緒にやっているチームなので、僕の感じもわかってもらっているし、「ANSWER… SHADOW」とはどういうものなのか、長い目で見た時にどういう作品になるのか、そしてどういうライブをしたいのかっていうところまで話しているので。
―表題曲の「ANSWER... SHADOW」はパッと聴いた感じバラードっぽい雰囲気もあるけど、これまでの似たような曲とは明らかに違う方向性というか、ボーカルのディレクションにめちゃめちゃこだわって作られたのかなと。実際どうだったんでしょうか?
ああいうサウンドで作ったからこそ、ボーカルもその世界にいかに合うものにするか、要はサウンドにうまく乗せられるかっていうのは、めちゃくちゃ考えましたね。いつも考えるんですけど、この曲ほど考えたことはなかったなと思うぐらい、自分の声の性質――低い倍音であったり、ファルセットの抜け方とか鳴り方とか、語尾の消え方とか――一音一音の細部にまでこだわりました。
―じゃあ、かなり試行錯誤しました?
そうですね。その結果、この曲のボーカルは、僕の一番いい要素が出ていると自分自身でも思うんです。自分の声色を最大に活かせた曲だなって。僕の声はこれです、こういう倍音を持っています、こういう声質を持ったボーカリストですって言える。名刺代わりじゃないけど、自分はこういう人なんですって出せるようなものが詰まっている曲になった感じがします。
愛を表現した「Give up」
―「Can You See The Light」はサウンド的には今までのソロの曲に近い印象だけど、さっき言っていた「色」みたいなところで言うと、色合いとかは全然違うなと思って。
例えば「ANSWER… SHADOW」は、深海の、光も音も無いような世界に行き着いた時に一筋だけ光が見える。それを手繰り寄せたいとか、心の内なる炎じゃないけど……そういうものをこの曲では描いていて、ある意味「ANSWER... SHADOW」と対になる曲なんです。
―確かに「ANSWER... SHADOW」と「Can You See The Light」の2曲は根底では繋がっている感じがしますね。あと「Give up」と「Colorblind」は、サウンド的にはアブストラクトかつアンビエントな要素がありつつ、トラップ調のボーカルアプローチも新鮮で、新たな挑戦とも言える2曲ですよね。
「Give up」に関しては、EPの4曲の中で唯一”LOVE”の要素が入っています。ラブソングとは自分では思わないんですけど、このEPを通して、リリックに出てくる「あなた」「君」「YOU」といった自分の対象となる相手は、自分を応援してくれているファンに向けたものなんです。なぜファンなのかというと、『Who Are You?』の時にたくさんのファンの方に応援していただいて、その体験があったから自分の影に気づくこともできた。そういう意味でのアンサーでもあるので、そこの表現はすべてファンの人に向けているんです。「Give up」のデモも結構前からあったんですが、ラブソングを今回のEPで作る予定はなかったんです。でも何回も聴き返していたら、『ANSWER... SHADOW』の軸となるサウンド感を保ったまま、愛というものを表現する楽曲にはふさわしいのかなと思って、この曲も入れさせていただきました。
「Colorblind」に関しては、EPの作品を締めくくる一曲であるのと、次のアンサーシリーズは光の部分を表現したいと思っているので、その橋渡しになるような楽曲にしたいなぁっていうのもあって。

Photo by ティム・ギャロ
刺激をくれる仲間の存在
―「Can You See The Light」に参加しているUTAさんはトレンドの音を普段からキャッチアップしている方だと思うんですが、UTAさんのコラボレーションはどうでしたか?
UTAさんとは普段からオンラインゲームで一緒に戦闘しているんですけど(笑)、ゲームしながら「次の曲さ、こんな感じどう?」「いいっすね!」ってチャットしていたりします。「このアーティスト知ってる?」みたいな。自分が知らないと「聴いてみて。嫌いじゃないと思うんだよね」って教えてくれたり。 UTAさんの家に行って、作曲目的じゃなかったのに「時間ある?」って聞かれて「もう一曲なんかやる?」みたいな流れでUTAさんがギターを弾きながら曲を作ったり……みたいなこともあったり。「ANSWER... SHADOW」の軸は決まっていたので、それに対してUTAさんのスパイスが欲しかったというか、そういう感じでお願いして作っていきました。
―表題曲を一緒にやったZEROさん、SUNNY BOYさんとはどうでしたか?
僕ら3人は同世代で、SUNNYとは前の作品からずっと一緒にやってきているし、ZEROくんは三代目の曲でもお世話になっていて。ただ、同世代だけど2人と一緒に曲を作ったことがなくて。こんなに近いところにいて、世代も同じなのに、3人でやらないのは不思議だなと思って、僕が2人を引き合わせたんです。
―そう考えると、コミュニケーションもグルーヴ感が大事というか、音楽以前にオンラインゲーム仲間だったり、同世代ならではの距離感だったり、ビジネス上のお付き合いという感じじゃないのがいいですね。
そうですね! いつも納期に追われるような感じがありますけど、こういう状況下で自分を縛るものが無くなって、音楽に触れ合うことができたというか。時間を気にせず作っている感覚。その感覚の中で音楽を作ったのは初めてかもしれないです。10年やっていて。だから正直、すごく楽しかったっていうのが率直な意見なのかな。
「CDL entertainment」でやるべきこと
―LDH内でご自身がプロデュースするプロジェクト「CDL entertainment」を本格始動させました。自身のソロ活動作だけでなく、新しいエンタテインメントをこれから発信していく立場にいるわけですが、心境はいかがですか?
「CDL entertainment」は、自分の作品を発表すると同時にやりますと発表させていただいたんですけど、CDLの中ではグループだったりアーティストを送り出していくこともやりたいと思っています。過去の取材で言ったことがあるかもしれないですけど、特にこれからの日本の音楽業界というのはよりグローバル化っていうのが必須にならないといけない。じゃないと、エンタメと音楽はガラパゴス化、この島から出ていくことは無くなってしまう。K-POPのアーティストが世界で活躍しているのって、本当にいい例だと思うんですけど、あれで気づかされることってたくさんあると思いますし、自分は音楽をやっている立場で、ジャンル的にはダンスミュージックとかヒップホップ、R&B、ポップスというところで活動しているわけで。自分が今後やっていくCDLは基本グローバル化っていうのを考えてやる必要がありますし、そういったアーティストを育てていく環境を作っていくのをメインにやっていきたいです。
それプラス、ファッションや飲食など、音楽に紐付けたカルチャーとしていろんな場を提供したり、発信していきたい。そういったプロジェクトが無限に実現していくような組織にしていきたいですね。今はそれをやるのが、最大の楽しみでもあるし大変さでもあるなって。両方を感じながらやっています。
―キャリア的にもちょうどいい時期というか。
本当にその通りだと思います。もちろんこの後の作品もあるし、もしかしたら僕のソロライブもあるかもしれないし、まだいろんなスケジュールがありますけど。でも自分が表舞台でずっと表現者であり続ける感覚っていうのは、いい意味で無いかもしれないです。もっと言うと、先のことを考えているからこそ、今できる自分の表現者としての立場をやらせていただくということを考えているので。タイミングっていうのは、すごく感じていますね。
―今回のEPはこれまでの登坂さんが発表してきた作品の中で一番好きな4曲なんですけど、それは曲のクオリティの高さというのもあるし、 登坂さんがおっしゃっているグローバル性っていう意味でも――今回のMVはYouTubeのコメントも海外のコメントがすごく多いですし――通用する曲たちだなというのがあって。でも狙って作ったというよりは、ありのままの自分で作った。ということは、まずは自分の中にある想いみたいなものが一番大事なのかなと思いました。
今言われて思いましたけど、自分は売れ線のものにしようとか考えていなかったなと思って。聴きやすい曲に……とか1ミリも考えないで作っていました(笑)。「売れる曲を作る」とか「みんなが好きそうな曲を作る」って大事なことだけど、ある意味そういう縛りからも解放されて作れたなって、今思い出しました。
―それこそがØMIでやる意味でもありますよね。
そうかもしれないですね。

Photo by ティム・ギャロ
<INFORMATION>

『ANSWER... SHADOW』
ØMI
CDL entertainment
発売中
1. ANSWER... SHADOW
2. Can You See The Light
3. Give up
4. Colorblind
5. ANSWER... SHADOW (Instrumental)
6. Can You See The Light (Instrumental)
7. Give up (Instrumental)
8. Colorblind (Instrumental)
https://www.hiroomi-tosaka.com/