「アメリカの基準で言う、アイビーリーグ(訳注:ハーバード大やイエール大を含む、アメリカの伝統ある私立大学8校の総称)のような一流大学を目指していました」とBTSのリーダー、RMは語る。
※先月、米ローリングストーン誌がBTSが本誌の表紙を飾ったことを記念して、各メンバーをフィーチャーしたデジタルカバーストーリーを数日にわたって掲載した。日本版も「Rolling Stone Japan vol.15」発売日の6月25日へのカウントダウン企画として、完全翻訳記事を毎日掲載していく。
ーあなたは先日、「僕は韓国人であり、韓国人としてでないと何もできない。これ以外のことは何ひとつできない。なぜなら、僕はアウトサイダーだから」という韓国の抽象画の先駆者、キム・ファンギ(1913~1974)の言葉を引用していました。最近は、主にこの言葉について考えているとも言いましたね。ファンギの言葉は、どのようにしてあなたの作品に当てはめられるのでしょうか?
僕が聴くポップスやヒップホップのほとんどはアメリカのものです。
ーいまも活動中の韓国ヒップホップの黎明期を代表するEpik High(韓国出身の3人組ヒップホップグループ、RMに大きな影響を与えた)をはじめ、韓国には数多くの素晴らしいヒップホップアーティストがいます。昔はどのようなアーティストの作品を聴いていましたか? 現在は?
新しいものがひとつの文化に入り込んできて、そのアイデンティティが変化し、新しい場所に適応するというプロセスは常にあるものです。ご存知の通り、韓国とアメリカの音楽に影響を与える要素は異なります。
聖書のなかに「日の下に新しきものなし」という一節があります。とくに僕たちのような人、いわば世界の端っこにいるような人たちは、海外から入ってきたものを変えて、自分たちのものにするにはどうしたらいいか?と考えています。韓国とアメリカのラッパーから得た刺激のバランスをとる際、僕はこの点について考えるんです。でもいまは、さまざまなジャンルが収束しているように感じます。

BTSのRM(2021年4月6日、韓国・ソウルにて撮影)
Photograph by Hong Jang Hyun for Rolling Stone. Fashion direction by Alex Badia. Shirt, pants, and bracelet by Fendi.
ーBTS結成当初は、ラッパーになるかアイドル——いわゆる”ポップスター”——になるかという問題が一部の人々の頭のなかにあり、あなた自身も悩んでいたそうですね。これについては、すでに楽曲のなかでも触れています。この葛藤について、もう少し詳しく教えてください。当時は、どうしてこの問題にそこまでこだわっていたのでしょうか?
子どもの頃は、散文家や詩人になるのが夢でした。
ですから、こうしたアイデンティティを育み、自分のものとして受け入れるには、ある程度の時間が必要でした。でも、ラップであれポップミュージックあるいはその他のジャンルであれ、それらは僕の想いや考えを表現し、人々に共感してもらうためのものです。結果として、こうした葛藤の多くは自ずと解決されたんです。それに、いまとデビュー当時の2013年の状況はかなり違うと思います。
ーBTSは、アルバム『花様年華』時代に真のアイデンティティを見出した印象です。すべてがひとつにまとまり始めたのもこの頃ですね。当時を振り返ったときの感想は?
『花様年華(英題:Most Beautiful Moment in Life[人生でもっとも美しい瞬間])』というタイトルにもかかわらず、その頃は僕にとってもグループにとっても激動の時代でした。『2 Cool 4 Skool』(2013年)をはじめ、デビュー初期はタフなイメージというか、タフさと怒りを誇張して表現していたんです。その後、僕たちは少し肩の力を抜いて、夢を抱いている若い人たちの気持ちを表現しようとしました。これは以前よりも誠実な表現でしたし、多くの人が共感してくれることにも気づきました。
これは未経験のことでしたから、なかには混乱する人もいました。というのも、僕たちは以前よりも自分自身をさらけ出し、より繊細な面を見せていましたから。それまでとはかなり違うアプローチでした。ですが、それは意味のあることだと気づき、『LOVE YOURSELF』シリーズでも継続したんです。
ーBTSファンの多くはBTSの楽曲をK-POPととらえていないようです。あなたも「BTSはジャンルです」と言っていました。それに対する見解を聞かせてください。
とても重要な問題ですね。なぜなら、K-POPと呼ばれるジャンルは、ものすごいスピードで拡大していますから。たとえば、いわゆるK-POPグループのなかには、ヨーロッパ、インド、中国など、外国人しかいないグループもあります。韓国人メンバーがいないのに、歌っているパートを代えるなど、K-POP的なことをしているんです。BTSも急成長を遂げています。それにいまとなっては、K-POPの幅もかなり広がりました。K-POPは韓国の歌を歌う韓国人のことだと言う人がいるかもしれません。たしかにそれはK-POPです。
ー芸術家としての可能性に対する考え方を改めさせてくれたアーティストは?
入り口はナズ、エミネム、黄金時代のヒップホップアーティストでした。転機となったのはドレイクですね。2009年に『So Far Gone』がリリースされた頃です。この作品には、何というか、ショックを受けましたね。ラッパーが歌を歌うなんて気持ち悪いと思っていましたから。でもその直後から、多くのヒップホップアーティストが歌いはじめたんです。ラップとメロディーのあいだに様々なジャンルのメロディーを差し込むようになりました。なので、僕にとってこれは大きな変化でしたね。
ーソロ曲「Intro: Persona」の”僕の影、僕は「戸惑い」と書いて呼んだ(My shadow, I wrote and called it hesitation)”というラップの意味について教えてください。
躊躇あるいは慎重さともいえますが、こうしたものがリスクをおかしたり、挑戦したりするときの妨げになると思ったんです。
ーいつか孫たちがグラミー賞のパフォーマンスを観るかもしれないといってメンバーを鼓舞したそうですね。こうしたことはよく考えるのでしょうか?
僕たちが刻むすべての足跡がオンラインという誰もが観られる場所に残ると考えただけで、時折ゾクゾクします。ですから、そうですね、こうしたことが僕たちのモチベーションになっていると思います。
ー「痛みは一瞬。映画は永遠」と、ある俳優が言ってましたね。
(うなずく)。人生は短い。芸術は永遠です。
From Rolling Stone US.
【BTSメンバー個別インタビュー】
▼J-HOPEが語る、BTSで成長することとソロ活動の意味
▼JIMINが語る完璧主義とダンスに捧げる情熱、ARMYへの愛と感謝、BTSの未来
▼JINが語る、歌手としての義務と使命、BTS「Spring Day」に込めた想い
▼JUNG KOOKが語るBTS「Dynamite」制作背景、ARMYへの想い、アリアナからの学び

Rolling Stone Japan vol.15
発行:CCCミュージックラボ株式会社
発売:カルチュア・エンタテインメント株式会社
発売日:2021年6月25日
価格:1100円(税込)
photographed in Seoul on April 6th, 2021.
Photograph by Hong Jang Hyun for Rolling Stone. Fashion direction by Alex Badia. Hair by Han Som, Mujin Choi, Lim Lee young, Lee Da Eun. Grooming by Kim Da Reum, Seo Yuri, Kim Seon Min. Styling by Kyungmin Kim, Lee Ha Jeong, Kim Hyesoo, Hong Sil, Seo Hee Ji, Kim Hyunjeong. Vs jacket; Sugas T-shirt; Jins top and necklace; Jungkooks coat; RMs jacket and necklace; Jimin and J-Hopes shirts and jackets by Louis Vuitton.
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