ある夏の晴れた日、耳から脳に直接吐息が吹きかかるが如く、トム・ジョーンズのささやき声が耳元で聞こえる。そしてゆっくりとささやく、「Whats new, pussycat?」と。ドラッグでラリっているわけじゃないが、この声がなんとも心を落ち着かせるのだ。
世界中が奇妙な方向に進んでいる昨今、音楽業界も新たなイノベーションを発信し続けている。昨年流行ったのはスリープ・ミックス、パンチ・トラック、レゴDJ、AIポップスター、そしてビデオゲーム・コンサート。この奇妙なイノベーションリストに新たに加わることになったのが、DeezerがローンチしたDeezer Sessionという新規サービスだ。このサービスは、有名ミュージシャンやアーティストが自らのヒット曲をささやくASMRリミックスを配信する。
初回リリースは、アリシア・キーズの「フォーリン」、ジェームス・ブラントの「ユア・ビューティフル」、トム・ジョーンズの「何かいいことないか、子猫ちゃん?」、エイバ・マックス「Kings & Queens」、そしてヤングブラッド「ペアレンツ」。Deezerのアーティスト・マーケティング部門のバイス・プレジデント、ナイジェル・ハーディングがローリングストーン誌に語ったところによると、同社はこのサービスで提携するアーティストを物色中で、複数のレーベルとも話し合いを進めているということだ。Deezerが提供する他のセッションやオリジナル同様に、このセクションのアップデートを最低でも年1~2回は行っていくと発表している。
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ではASMRに白羽の矢を立てた理由とは? Deezerの回答は「需要があるから」。そして、ささやきトラックには「健康面でのメリット」と「エンターテイメント的な目的」がある点をハーディングは強調する。
Deezerのチーフ・コンテント&プロダクト・オフィサーであるアレグザンダー・ホーランドはコメントで次のように説明している。「ASMRコンテンツへの人々の反応が多種多様な点が魅力的だ。かつてはニッチなコンテンツと捉えられていたものが、今ではメインストリームに入りつつある。好きでも、嫌いでも、どちらでもないにしろ、自分に最もしっくりくるASMRの有無を確認してみるのは意味があると思う。だからこそ、ヒット曲のASMRトラックに対してのファンたちの反応が待ち遠しい。それを考えるだけで鳥肌が立つようだ」
From Rolling Stone US.