約3年半ぶりとなる通算12枚目のオリジナル・アルバム『PHOENIX』をリリースしたEXILE。コロナ禍での活動の舞台裏と、NEW EXILEとしての今後についてリーダーのEXILE AKIRAに語ってもらった。


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ー2020年~2021年にかけてコロナ禍でライブが止まってしまった時、AKIRAさんはどう過ごされていたのでしょうか?

こんな状況になるなんて想像もしていなかったですよね。今出たお話で言うと、僕たちEXILEのライブ「EXILE PERFECT LIVE 2001→2020」の最終日当日、開演の数時間前くらいに 初めて国からイベント開催に関する自粛要請が出たんですね。その時は”こんなことが起こるのか”という戸惑いと、ファンの人たちへはどう判断、説明しようかという焦りと、果たしてこの まま公演を中止することが正しいのか、それとも政府の言う”自己責任による判断”で決行すべきなのかという葛藤が押し寄せていました。

―2020年2月26日ですよね?

はい。結局その日の公演は中止しましたが、そこからどんどん感染が拡大していって、 日本中が”STAY HOME”するしかない状況になって。当然その頃にはもう、普段出来ていたこと、僕たちの場合はステージに立ってパフォーマンスをするということが一気に出来なくなってしまったわけで。
さすがに、あの時は無力さをものすごく感じましたね。自分たちの存在意義についてあらためて考えさせられた期間でもありました。”自分たちは何のためにここまでやってきたんだろう?”って。コロナ禍で一番必要なのは正確なニュースと衣食住であり、エンタテインメントは二の次なわけじゃないですか。そう考えるとさすがに思い悩みましたけど、やっぱりEXILE のスタイルというか生き方として、ピンチをチャンスに変えてここまでやってきたという経緯がありますし、東日本大震災の時に掲げた”日本を元気に”というテーマを思い出して、もう一度自分たちを信じて奮い立たせようという気持ちにたどり着きました。エンタテインメントの力を信じて発信し続けて、微力ながらも少しでも希望や光を届けられたらと。
それで、”RISING SUN TO THE WORLD”というテーマを掲げて走り出したという流れがありましたね。

ーとはいえ、ライブが出来ないとなると配信という手段しかなかったわけですけど、配信をAKIRAさんはどう捉えていましたか?

”ピンチをチャンスに変える”ことの一環としてもライブを配信するのはすごく良いと思いましたし、実際に自分たちもやっていました。ただ、当時よく耳にしたのが”無観客ライブ”という言葉だったんですけど、僕の中で”無観客”という意識でライブをしたくないというのがあって。無観客なんだけども、その先にはお客さんがいるので、【LIVE×ONLINE】という独自のネーミングで新しいエンタテインメントの1つとして発信することにしました。

ー普段ステージの上でやっているパフォーマンスを撮影して配信。実際にやってみてどう でしたか?

あらためて自分たちのクリエイティヴに対する意識が刺激されましたね。
2 時間くらいあるライブをパッケージにして、映像の中でその熱量を伝えていかないといけないので。例えばバンドアーティストだとしたら演奏して歌唱してトーク……という構成が出来ますけど、僕たちはダンス&ヴォーカルグループなので、歌とダンスだけで2時間近くどう見せていくかというのが大きな課題になっていて、それに対してものすごくみんなで考えましたし、LDHライブの特性でもあるカメラワークを駆使しパフォーマンスとの呼吸や連動にも磨きをかけ、さらにLIVE×ONLINEならではの臨場感や躍動感を出しながら、結果的にクリエイティヴのレベルが上がったと感じます。

ーなるほど。

そのクリエイティヴ精神って僕たちEXILEの原点でもあるので、なんだか本当の意味で初心に返れたというか。みんなで試行錯誤して考えたものを届けるということは、すごく 大変でしたけど、みんなにとって良いモチベーションになったと思います。今までももちろん真剣にそれぞれ取り組んできましたけど、どこかアリーナやドーム、ホールでライブができることが当たり前になっていて、もしかしたら中には”こなし”になっていた人もいたかもしれない。
でも、今回のコロナ禍を通して今一度同じ方向を向く、一丸となって ”RISING SUN TO THE WORLD”というテーマを掲げて走っていくぞという、EXILE TRIBE全体が1つになれた良いきっかけでもありました。

責任感と発信力

ーAKIRAさんが先程おっしゃっていた”自分たちは何のためにここまでやってきたんだろう?”という点で、そのことに悩む若い世代のメンバーもいたかと思います。彼らをどうやって引っ張っていったんですか?

ライブを何公演もキャンセルしてという状況が続いていた中で、当然ながらステージに早く立ちたいという想いは強くありましたけど、それ以前に日本にはエンタテインメントで生きている、たくさんの素晴らしいアーティストの方達やそれらを支える、スタッフ、クリエイター、技術者がいるわけじゃないですか。ただ自分たちが早くやりたいからという理由ではなく、”日本を元気に”というテーマの通り、その人たちにも何か希望を与えたいというか、ファンの皆様はもちろん、エンタテインメント業界復活の兆しを見せられる第1歩となるのがLDHでありたいという熱い想いがあったんです。だから、自分も含め周りの若い子たちにも、あらためて僕たちがエンタテインメント業界の代表として発信していくくらいの意識で責任感を持って、日頃のコロナ対策もそうだし、呼びかけなども発信していこうと伝えていました。

―なるほど。


その甲斐あってか、2021年に入って、しっかりとした感染症対策と東京都医師会や政府、各界の方々からのご支援とご指摘ご指導を受けながら、2万人規模のドームライブをさせてもらえたんです。そこで一番嬉しかったのは、2万人のファンの人たちが、どんなに盛り上がる曲をやっても一切声を発さなかったんですよ。ライブをやる前は正直、”どういうテンションなのかな?””ドームクラスの動員数のお客様達が一つに団結できるのかな?”とか、何より”これで(ライブを)やって面白いのかな?”と不安に思っていたところも沢山あったんですけど、やってみると逆に鳥肌が立つというか。こんなに多くの人たちが一丸となれるんだと思った時に、STAY HOMEばかりがコロナ収束の鍵じゃないんだな、ということを感じましたね。僕たちがこの状況下でエンタテインメントからコロナ収束にむけ、予防対策や危機管理を発信することで、結果的に来てくださったファンの人たち1人1人の意識を高めることに繋がり、ライブから帰った後も周りの人に注意喚起を呼びかけあったりだとか、マスクをした方がいいよ、今は飲み歩かないでおとなしくしていようってリーダーシップを持って伝えていくことで、1人が2人、2人が4人、4人が8人というように広がって、収束につながっていくんじゃないかとさらに希望を持てたんです。そういう新しい可能性を感じたことで僕たちも自分たちの存在意義をようやく感じられたし、本当にファンの皆様の団結力を本当に誇らしく思いましたし、感謝しかありませんでした。
すごく大きな学びだったし、本当にやって良かったと思いました。

ー素晴らしいことですね。そこに集まった人たちが自発的にその場所を守ろうとするために、いろんな暗黙のルールができていくというのは。

”ライブに行くのが怖い”じゃなく”ライブから収束への一歩を築き上げる”環境作りができたらなと。そのためには、まず自分たちが一番徹底しなきゃいけないですし、何よりお客様の安全を考えた予防対策というのは絶対に必要なんですけどね。

NEW EXILEをやる意味とは?

ーAKIRA さんもちょっとくらい腐った瞬間とかはなかったんですか?

いやいや”ふざけんな”でしたよ(笑)。でも、これも運命じゃないですか。この経験を生かすも殺すも自分次第だし、ここでどう自分が成長するかによって次の未来が決まってくると思うと、これはこれで自分に必要な時間なのかなって。ましてや、このコロナのタイミングでNEW EXILEとして新しく挑戦していかないといけないプレッシャーもありましたし。時代の移り変わりを感じながら新しいことに挑戦していくという、これほど大変なことはないんじゃないかと思ったし、これほど不利な状況もないんじゃないかと思いましたね。普通、新しいグループだったらリリースして、TVやイベントにも露出してファンミーティングなどで楽しんでもらってライブをやる、という流れが一切出来ない。その中で自分たちがNEW EXILEをやるという意味をものすごく考えました。

ー普通ならやれることが出来ない状況で ”NEW EXILE らしさ”というものをどういうふうに構築していったのでしょうか?

まず1つは僕たちEXILEがEXILE TRIBE という全体の中での先駆者であり先頭を走るチームとして、このコロナ禍とどう向き合うか、どう戦っていくかというのを姿勢で見せていく必要があると思いました。EXILEの中だけで言うと、ATSUSHIくんという絶大なる柱が抜けた後、今のEXILEを輝かせていくためには1人1人のストロングポイントを引き出しながら今の14人ならではのEXILEにしなければならないということで、本当にメンバーみんなと向き合って作っていきました。

ー言い方は変ですけど、こういう状況だからこそ結果的に濃いものになったのもあるんじゃないですか?

うん、ものすごく濃いものになったと思います。これまでのEXILEのスタイルをただ若いメンバーに押し付けるのではなくて、この状況で新しい時代を生きるEXILEを作っていかなきゃいけないという不自由さが、逆にメンバーそれぞれの強みを知ることにつながり、それがエネルギーになっていった感覚があります。EXILEに入ったばかりの時を思い出すような熱さがありますね。

ーぶっ壊れていた方が作る面白さを感じられますしね。

壊すというよりはトランスフォームしていくというか、変幻自在のEXILEであれたらなとも。破壊と再生を繰り返して構築されてきたように、今までは新メンバーの加入を機に体制が変わっていたんですけど、メインヴォーカルが勇退し抜けて、残りのメンバーだけで新しくスタートするというのは、今回初めての経験で。そういったところでも、壊して新しいものというより、現メンバーで変幻自在に対応しながら、アメーバのように色んな広がりを見せ、形を変えながら色んなアプローチができたらなと。自分たちが何かを任されているような、不思議な使命感を感じています。

EXILE AKIRAが語る、この時代にあらためて考えた「EXILE」の存在意義


みんなの夢を叶える場所

ーNEW EXILEの、敢えて今までに無かった部分を挙げるとするなら?

EXILEという単体のダンス&ヴォーカルグループで考えるというよりは、EXILE TRIBE、LDH全体の概念や意志が集まって形になったものという感じがします。所謂”EXILE魂”を持っているのは14人のメンバーだけではなく、他のグループはもちろん、Jr.EXILE世代の若い子たちも持っているんですよ。10年前からEXPG(LDHのダンススクール)で教育してきているので。コロナ禍を経たことで、EXILEという存在自体がLDHにいるみんなの 概念や思想を投影したものでありたいなとも思いましたし、みんなの夢を叶える場所に進化してきていると思うんです。なので、”EXILE”という看板を背負っているのは実はEXILE TRIBE全員なのです。

ー今まではある種のスタイルやジャンルだったものが、プラットフォームのようなものに変化していった?

はい。でも、僕の意地の部分ではちゃんと”EXILE”を表現しなきゃダメだという想いもあるんですよ。他のグループにも”from EXILE”とか”from EXILE TRIBE”って付いていますけど、”やっぱり(本家の)EXILEはこれでしょう!”というオリジナルならではの気迫や信念と共にパフォーマンスや姿勢を僕らがしっかり発信しないといけないという、その役目と責任は強く感じています。

ー新しいエンタテインメントの在り方をAKIRAさんはどのように考えていますか?

この先もエンタテインメントを長く続けていくためには、アニメやヴァーチャル、ゲームの世界というところに広がっていくのが自然な流れだと思うんです。でも、僕としては逆にそこに頼りすぎないで、いかにリアリティがあるものを届けられるかというところが重要でだと思っています。アナログだろうがヴァーチャルだろうが、良いものはいつの時代も人々に刺さるわけです。だからこそ形にとらわれず、シンプルに想いが強い人だったり、表現力・発信力がある人、自分たちのスタイルを貫き通した人が生き残っていくのかなと思います。コロナ禍になって映像の見せ方とかも進化して、僕たちもLIVE×ONLINEをやりましたけど、良い意味でものすごく幅が広がっていると思うんですね。でも、そこで頭でっかちになりすぎても良くないかなと。それに、世界中でコロナの捉え方が違うじゃないですか。日本みたいに安全第一で考えているところもあれば、欧米のように気にせず通常のスタンスでライブやスポーツ観戦をすでにやっている国もあるし。そういうのを見ていると、コロナに対する意識がどう変わっていくのかにもよるのかなと思いますけどね。

EXILE AKIRAとしての表現

ーちょっと踏み込んだ質問になりますが、ビジネスという観点でのコロナ禍でのライブに関してはどう考えていますか? 様々な制約がある中、どうやって利益を出していくのかということも大事なことだと思いますが。

LDHファンの人たちは有難いことにライブを欲してくれているので、ライブはどんな形でもやりたいです。もちろん色々な問題はありますけど、僕たちがそこでまず考えるべきことは自分たちよりも、自分たちの軌跡や日々のドラマから生まれるものを大切に、それをエンタテインメントに変えながら、ファンの人たちにその時代なりのアプローチで喜んでいただけるものを届けること、それが第一優先かなと思います。そういったファンファーストの意識で考えると、今までドーム規模でやっていたのを敢えてホールとか、そういうところで草の根活動みたいなことをしてみよう、みたいなアイデアも出てきて。今まで行けなかったところに行くことで、初めてEXILEを生で見る方々もいらっしゃるかと思いますし、コロナ禍でまだ、他の地域に行くのが怖いと思ってる方々へ僕らが自ら皆さんの元へ会いに行くことでライブに来やすい状況をつくれるのかなとも思いますし。それに、そうやって各地で丁寧に生身のパフォーマンスをしていくことで、その先にまたドームをやった時に倍になって返ってくるんじゃないかとも思うんです。

ーアルバム『PHOENIX』発売後に行われる「EXILE 20th ANNIVERSARY EXILE LIVE TOUR 2021 "RED PHOENIX”」も、そういう考え方をベースに作られたものになりそうですね。

ツアーに関しては今揉んでいる最中なんですけど、それに近い形に出来たらと思っています。ちなみに、この『PHOENIX』には、タイトルの通り”不死鳥の様に何度でも蘇り不屈の精神で舞い上がる”というテーマがあるんです。それは、もちろんコロナ禍にも掛けていて、こういった時代を生き抜く僕たちの姿を見て欲しいというのもそうですし、ファンのみなさんにとっても諦めない精神を感じてもらえるような作品にしたいなって。

ーアルバムジャケットにもワクワクドキドキするようなエネルギーがあります。

ジャケットを見て、”次のライブの世界観はどうなるんだろう?”って思ってもらいたいんですよ。僕たちの場合、アルバムの世界観やメッセージが、ライブステージへ繋がっている、という点もこれまでのEXILEエンタテインメントの魅力でもありますし、ファンの人たちにワクワクしていただけるポイントかなとも。過去の作品も、毎回そこは意識しているんです。

ーEXILEはみんなの夢を叶えられる場所とおっしゃっていましたけど、その中でもさらに1歩先を見ているAKIRAさんの現在の夢というのは……?

………農業ですかね。

ー農業?

冗談です(笑)。全然自給自足できるタイプではあるので、農業も良いなと思うのは本当ですよ(笑)。大変だと思いますが……。まず僕個人としては、近々ではアジア進出、また、LDHを世界に発信していく役目を果たせたら理想ですね。EXILEとしても自分達の世代でアジアの他国でもライブしたいですし。どれも大きな夢ですが、小さなことを言葉にするより、デカイ夢もって、日々一つ一つ積み重ねて現実にしていきたいのであえて、口にします(笑)。あとは、とにかく自分を突き詰めて表現することかな。自分の存在意義を考えると、どんな形でもEXILE AKIRAとして表現は続けていきたい。それが芝居なのかダンスなのか、さらなる次世代アーティストの発掘や育成に携わることなのか、はたまた全く違うことなのかは分かりませんが。例えばローリング・ストーンズとか、80代になった今でもライブツアーを回っているじゃないですか。あの年齢で、いまだにエネルギーを届けて回っているって すごいことですよ。真のエンターテイナーですよね。”年齢なんて関係ねぇ!”みたいな。 ああいう姿を見ていると、自分たちも長くエンタテインメントを発信して表現し続けられる存在でありたいと思いますね、農業はさらにその先、もしくは来世の話ということで(笑)。

<INFORMATION>

EXILE AKIRAが語る、この時代にあらためて考えた「EXILE」の存在意義

『PHOENIX』
EXILE
エイベックス
発売中

EXILE 20th ANNIVERSARY EXILE LIVE TOUR 2021 "RED PHOENIX”

2022年2月26日(土)・27日(日)福井・サンドーム福井
2022年3月5日(土)・6日(日)宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ
2022年3月15日(火)・16日(水)埼玉・さいたまスーパーアリーナ
2022年3月20日(日)・21日(月・祝)新潟・朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター
2022年4月16日(土)・17日(日)広島・広島グリーンアリーナ
2022年5月10日(火)・11日(水)大阪・大阪城ホール
2022年5月17日(火)・18日(水)愛知・日本ガイシホール
https://www.ldh-liveschedule.jp/sys/tour/12657/