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ー二人はどのように出会い、IC3PEAKの結成に至るのですか?
ニック けっこう前から知り合いなんだ。IC3PEAK以前の僕は、ソロでエクスペリメンタルなベース・ミュージックをやっていた。スロッピング・グリッスルが大好きだったから、彼らのようなインダストリアルな曲を作ろうと思って。1曲出来た後、スゴくシンプルなトラップ・ビートを乗せてみたら、ナスチャがそこにスクリームを乗せたんだ。それで出来た曲が面白かったから、ネットで発表したところ、今までで最大の反響になったんだ。これは何かあるなと思って、プロジェクトを始めることにした。
ナスチャ 私は最初ニックのプロジェクトでビジュアルの手伝いをしてた。私は私で、女の子5人のグループでノイズを出して、ジェンダーやフェミニズムをテーマにしたアート・パフォーマンスをやってた。ニックとは、スゴくエクスペリメンタルなことをいろいろ試してやってみたくて。当時のモスクワには音楽性は違うけど、同じようなダークネスと絶望感を持った音楽のシーンが生まれていた。
ーIC3PEAKはロシアで論争を呼ぶ存在になりましたが、何が起こったのでしょう?
ニック 僕たちは政治的な風刺を「Death No More(Смерти Больше Нет)」という曲のMVに入れたんだ。そのMVはかなり反響を呼んだんだけど、当局からの検閲が入って、予定していたツアーがすべてできなくなった。彼らはライブ会場のクラブに来て、クラブを潰すなどと脅しをかけたり、窓を破ったりしたから、クラブからライブのキャンセルが相次ぐことになって。他でライブ会場を探して、駐車場みたいな場所でライブをやったんだけど、大体のライブは2曲ぐらいやるとFSB(ロシア連邦保安庁)とか警官が来るんだ。どの都市でライブをやっても妨害されたし、手錠をかけられ、パスポートを没収され、警察署に連行されて、4時間拘留されることもあった。僕的には、最初は面白いと思ってたんだ。純粋にアドレナリンが溢れたし、自分たちは間違ってないと思ったし、人々やメディアからのサポートもどんどん大きくなっていったからね。ただ、その後に本当の危険が僕たちに迫ることになるんだけど。
ナスチャ 私が「Death No More」のフックを書いたのは、プーチンの演説を見た後のことで。困難があったとしてもロシアは強い国だから生き残っていくみたいな内容の演説で、私たちに耐えろって言ってる。私は涙を流した後、この曲で様々なメタファーを使って、今何が起こってるのかを伝えようとした。
「どうやったら不思議な声を出せるのか、グロウル、スクリームの研究もした」
ー最近の曲「Dead but Pretty」、「Kiss of Death」を聴くと、音楽的にはよりロックなアプローチで、メタル・ギターの音も入っているし、アップビートだったりしますよね。
ニック 去年出したアルバム『Kiss of Death』は、ニュー・メタルにインスピレーションを受けてるね。何年間もギターの音楽を聴かなかったけど、再びメタルがちょうどいい感じになってきたからだ。15年経った今聴いたら、超フレッシュでクールなんだよ。
ナスチャ 私の場合、新しいボーカルのテクニックに興味があった。メタルに限らず、どうやったら不思議な声を出せるのか、グロウル、スクリームの研究もして、フォークロワ的な歌い方とメタル的なグロウルのミックスをやってみた。ロシアでは葬式の時、死者のために泣く女性が呼ばれるんだけど、その人は泣くことのできない人に代わって泣いてくれる存在で。その泣き声をいろいろ調べて研究していくうちに、自分でも納得がいく声が生まれた。『Kiss of Death』のリリックは、死がテーマの一つになってるんだけど、例えば恋人と別れた時も、突然その人がいなくなったらある意味死別の感覚に近いなと思って。スゴくパーソナルなものをメタファーと詩的な表現を使ってリリックにしている。
ー5年後、10年後の夢は?
ニック 人類がAGI(汎用人工知能)と同盟を組んで、核戦争をなくすこと。あとは、音楽を作り続けることだね。
ナスチャ 今はまだ戦争が続いてるから、夢については何も浮かばない。一つ夢があるとしたら、ロシア・ウクライナ戦争が終わること。ニックの夢にも共感できるな。
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