PassCodeが昨年12月にリリースした『REVERBERATE ep.』に続く新EP『GROUNDSWELL ep.』を6月22日に発表した。今回のインタビューは前後編にわかれており、前編では作品の内容について話してもらった。


【前編を読む】PassCodeが語る、『GROUNDSWELL ep.』で示したグループの本質

後編となる今回は、現在行われている全国ツアー「REVERBERATE Plus Tour 2023」の話を通じて、コロナによる規制緩和後に新たに構築しようとしている新しいPassCodeのライブの在り方について、メンバーが自分たちの考えを明らかにしている。さらに、自身初となるアメリカツアーに対する意気込みも語ってもらった。

【写真を見る】PassCodeメンバー

―いま行われているツアーについてお聞きしたいと思います。今回のツアー「REVERBERATE Plus Tour 2023」は、最初は楽しいだけで進むのかなと思いきや全くそんなことはなく、ライブハウスの規制が緩くなったり、コロナ禍の間に4人のパフォーマンス力が上がったり色々と変化があった中で、もう一度PassCodeとしての形を作り直さないといけないというなかなか大変なものになってると思うんです。ツアー初日の仙台公演前、南さんは「ただ楽しみ」みたいなことを話していましたけども。

南 そう、このメンバーになってからのPassCodeのライブというものをもう2年近くやってきて、本数を重ねたことでライブの平均点が上がってる感覚があってライブに対して悩むことも少なくなったし、今回のツアーはすごく楽しみだったんですけど、それと同時に課題がないっていう不安もあったんですよ。
やっぱり、PassCodeって何か試練みたいなものがあってそれを乗り越えて強くなってきたグループだと思ってるんで、それがないことでどうなるんかなって思っていて。もちろん、すごくワクワクしてライブはしていたんですけど。

―うんうん。

南 PassCodeのよさっていろんな音楽ファンが混在してるところにあるなって私はコロナ禍以前から思ってて、フロアにいる人たちがいろんな楽しみ方ができるから、いろんな人がPassCodeを好きでいてくれると思ってて。そんなときにコロナ禍が始まって、コロナ禍前にはライブハウスに来たことがなかったお客さんがライブに来てくれたり、PassCodeの音楽を好きになってくれてるのを見て、その人たちを置き去りにしたくないって思ったんです。表現が難しいですけど、「PassCodeはこういうグループなんでよろしくお願いします」ってライブハウスっぽい盛り上がり方を押し付けるというか、規制が緩和されたからってそういうことを急に始めるのはすごく不親切だなって。
だから、ライブハウスの盛り上がり方が好きな人とちゃんとライブを観たい人が混在できるようなライブを作っていかなきゃいけないなと今回のツアーを始めてみて思ったし、それが今回のツアーのテーマだなって。

―たしかにそういう内容になっていますよね。

南 まあ、いちいち口で説明するのは簡単なことではないし、「もう好きにやってください」って言うほうが楽は楽だしそこまで反感を買わないっていうのはわかってるけど、みんなを連れて再びPassCodeが前に進めるようなライブができたらいいなって思ってます。既に最近、みんなと一緒にPassCodeをもう一度構築していった成果が徐々に出てきてるんですよね。でも、新しいPassCodeのライブのスタイルを作るなんてすぐにできるわけがないってなんとなく思ってるので、1年でも2年でもどれだけ時間がかかってもいいから、コロナ禍以降のPassCodeのライブをゼロから作りたいと思ってます。

全員が楽しめるライブを探求

―何年か前、南さんは「お客さんに注意をしたりすることでライブをあんまり止めたくない」って話してたと思うんですけど、今それができるのはなんでだと思いますか。


南 嫌われてもいいかなって思えるようになったから。昔は、自分に対して批判が向くことですごく悲しくなることが多かったんですけど、今は、「結果的にPassCodeにとってプラスになることが私にとってのプラスになる」と思えてるんですよね。そのときは何か言われたり批判されたとしても、PassCodeの状況にとって一番いいものを選んで、ちゃんとみんなを導いていければそういう批判もなくなっていくのはわかってるから、前よりも思ってることが言いやすくなった。昔は子供やったのもあるし、傷つきやすかったから。感受性が豊かなもんで(笑)。

―はいはい(笑)。


南 だから、みんなの意見をいちいち真に受けて落ち込んでたけど、今はまるっと、ふわっと受け取る。「あ、そういう考え方もあるよね」って。そうやって「全部の意見を通すことはできへん」っていうのを念頭に置いて動くようになったらすごく楽になりました。大人になりましたね。もう27なんで(笑)。

―ゼロからフロアを再構築する上で、客席のエリア分けをすることにならなければいいなと思ってます。


南 うーん、私もできればしたくないんですよ。でも、お互いが間を取ってっていうのが一番難しくて。どうしてもエリア分けしてほしいっていう意見が多くなったら、もしかしたらそうしないといけないのかなと思ったりもするんですけど。

―嫌ですね。

南 ね。私もそっち派です。
コロナ禍前からずっとそう思ってたけど、たとえ観られる場所が端っこになったとしてもそういうゾーンがあったほうが嬉しいですっていうのもひとつの意見やなあって思っちゃうから、難しいよなあ。悩み中。

―今の南さんの話を受けて、どう思いますか?

大上 もう、おんなじ。ホンマにおんなじ。もう、願うはただひとつなんですよ。全員が楽しんでくれることしか望んでないから、難しいかもしれんけど……。まあ、難しいって言っても、ライブを観に来てくれた人が全員楽しいと思えるって別に簡単ちゃ簡単だと思うんですけど。

有馬 思いやりが大事ってことやわ。

大上 そう、そうなの。「僕もあなたも楽しもう」って思ってくれたらな。いろんな見方があると思うけど、みんな楽しめるようになってほしいから……でもそれが難しいんか……。

南 ね。

―PassCodeはいま、新しいカルチャーを作っていると思ってて。メタルシーンだとこう、パンクシーンだとこう、アイドルだとこう、J-POPはこうっていう定型にPassCodeは完全に当てはまらないじゃないですか。だから、PassCodeにはPassCodeの考え方があって、そこから生まれるベストなやり方を貫こうと努力している。ほかのシーンに同じ形はないから本当に大変だけど、そこは4人がお客さんをイチから教育していかないといけない。それを怠らずにやっていけば、きっとPassCodeの形というものはできるし、その形は他のグループにも広がっていく気がしていて。

南 PassCodeってわりとずっとそういうグループで。曲調とか、ライブの見方とか、お話するMCとかもそうやし、そういったことひとつずつ、やり始めた当初はネガティブな意見をたくさんもらったりしたけど、今となっては普通になってることのほうが多いと思うんですよね。それに、ひなちゃんが言ってた「全員楽しい」を諦めるのってステージに立つ人間がやることじゃないって思うんですよ。

突拍子もないことにいろいろ挑戦したりできるようになった

―僕は今回のツアーにすべて帯同して、ステージの表も裏もすべて見ていますけど、今回はバックヤードの雰囲気がすごくよくて、それがパフォーマンスにもいい影響を与えているように見えるんですよね。5月28日に行われたZepp Hanedaでのライブも、始まる前にほかのスタッフと「今日、なんか雰囲気いいですね」って話していたら、それがそのままライブにも出ていて。何か変化があったんですか。

南 私、意外とナイーブじゃないですか。そういう自分のテンション感でその日のライブの雰囲気が左右されるなっていうことをここ何年か思ってたんですよね。それから意識して明るくするようにしてるっていうのはあると思います。

―うんうん。

南 あと、今回はお客さんと一緒に声を出したり、盛り上がったりできるようになったツアーやし、全体的な温度感を上げたいから、ライブ前にメンバーとバンドメンバーと円陣を組むときに、声出しのきっかけをいきなりバンドメンバーに振ったりして、いつもやったら自分1人で完結してたことでも敢えて誰かに頼ったりするほうが全体的な空気感がよくなるってことに最近気づいて。だから、「ここはこうしないと」っていうのをあんまり意識せずに、フリーな感じで楽しくすることを意識しながらやってますね。

―ライブ中にお客さんに自分のスマホを渡してステージを動画で撮らせたり、ハプニング的な仕掛けをするのもその一環。

南 そう。今みたいな状況になってからいろんなライブを観に行ったけど、ステージに立ってる側が楽しそうなライブが一番楽しくて。その空気感が持つ力っていうのは、メンバーだけじゃなくて、バンドメンバーとかチームのみんなを巻き込んでいくことでもっと大きくなるし、メンバーだけじゃなくて、もっと大きい輪を意識して面白いことができたら一体感が出るんかなって思うし、お客さんにももっとライブに参加したいと思ってもらえるんじゃないかなって思うから、今回はそういうことをけっこう意識して雰囲気作りはやってます。

―その手法はかなりハマってると思いますよ。

南 ね。でも、今回みたいなワンマンやったらそういう感じでもいいと思うけど、ピリッとしたライブもやりたいから、そうなるとやっぱり対バンもしていかないとあかんし、これまでよりもライブの本数を増やしたい、もっとライブがやりたい。

―それにしても、観客にスマホを渡すのはすごいですよ。受け取ってそのまま逃げられたら終わりだし。

南 でも、前にトークイベントをやったときに自分の携帯の暗証番号まで言っちゃってるけど、別に見られたところでダメなものはないし好きにやってくれたらいいかなって。それに、もしそのまま持っていこうとする人がおっても、周りのファンが止めてくれるだろうし、信頼関係があるから大丈夫。

―南さんの中で何か吹っ切れたところがある?

南 うーん……今のメンバー編成になる前はライブを完遂できるように導くことが自分の役目やと思ってたけど、メンバー編成が変わったことで自分のやり方も変わったし、グループとしてのライブのやり方も変わった部分があったりして、そんな中で自分のことをもっと考えるようになったところがあって。それに私がちょっと無茶したとしても「ま、大丈夫かな」って思えるから、突拍子もないことにいろいろ挑戦したりできるようになりましたね。

―すごくいいと思います。

南 ね。ライブ感が出ましたよね。

―そうそう。あと、そういう無茶苦茶を許容できるチームになった部分もありますよね。

南 そう。メンバーがっていうだけじゃなくて、バンドもやし、スタッフもやし、ファンの人もみんなが<PassCode>という形に慣れた感じがする。

初のアメリカツアーに向けて

―さて、PassCode初のアメリカツアーが発表されました。

南 PassCodeはYouTubeとかでも海外からのコメントをたくさんもらうことが多いグループで、Instagramにも海外からのコメントとかDMがめっちゃ多くて、いろんな国の方々が「自分の国に来てほしい」って言ってくれてるんですね。日本に住んでても、自分の好きなアーティストが地元に来てライブハウスでライブをやってくれるってすっごいうれしいことだと思うんですよね。実際、私の好きなアーティストが地元に来てくれたときもすごくうれしかったし。でも、国内で遠征できる距離なら頑張ればなんとかなるけど、海外の方からすると日本まで来るってかなり難しいことじゃないですか。だから、自分たちから海外に出向いてライブをすることでこれまでずっと待っててくれてた人たちにやっとPassCodeを見せられるし、コロナが落ち着いてきたっていうことも実感できてうれしいですね。

高嶋 海外でどんなふうに盛り上がるのか気になります。まだ海外は台湾と韓国しか行ったことないけれども、台湾とか盛り上がりがすごかって、日本とは盛り上がり方が違うから、アメリカに行ったらどんな感じなのかな。

大上 ね。最近、めっちゃ楽しみになってきました。海外だと普通に環境が変わるからちょっと怖いなっていうのがあったけど、アメリカっていう人生初の場所も楽しみやし、さっきも南が言ってたように、Instagramとかで海外の方がめっちゃメッセージをくださるんですよ。それを見てて気づいたんですけど、海外の方ってめっちゃ熱いんですよ! だから、自分たちが実際にその土地に行ったときにそれぐらい熱量がある人がもっといるかもしれないって思うと可能性を感じるし、楽しみです。

―海外の人たちの反応って日本人に比べてめちゃめちゃストレートだから、あの熱気を浴びたらかなりテンション上がると思いますよ。

高嶋 正直、不安はあるけど、ライブしたら「楽しい!」ってなるんでしょうね。

有馬 煽ったら全部「フ~ッ!」って盛り上がってくれんで。

南 じゃあ、「フ~ッ!」って言ってもらいに行こうか!

―英語の勉強もして。

南 そう、駅前留学しようと思ってて。

有馬 でも、向こうの人は日本語を聞きたいっていうのもあんで。

―じゃあ、定番の煽り言葉ぐらいは英語で覚えることにして。

有馬 エビバディファッ○ンジャンプ、で大丈夫!

PassCodeが語る、ポストコロナの「ライブ」を再構築する理由

左から南菜生、高嶋楓、有馬えみり、大上陽奈子

<INFORMATION>

PassCodeが語る、ポストコロナの「ライブ」を再構築する理由

『GROUNDSWELL ep.』
PassCode
USM
発売中
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