11月3日に幕張メッセで開催される「NEX_FEST(ネックスフェスト)」。英シェフィールド出身のバンド、ブリング・ミー・ザ・ホライズンがキュレートする同フェスはその内容もさることながら、ラインナップやクリエイティブなど、海外アーティストがディレクションに関わってるという点でも、2023年を象徴するイベントの一つになるだろう。
主宰者であるオリヴァー・サイクス(Vo)のインタビューは既にお届けしたが、出演者のYOASOBIからAyaseに今回話を聞くことができた。ブリング・ミーへのリスペクトを公言しているAyaseが、NEX_FESTへの想い、ブリング・ミーの音楽について熱く語ってくれた。

【写真を見る】英ローリングストーンで表紙を飾ったブリング・ミー・ザ・ホライズン

ーNEX_FESTのオファーの話を最初に聞いたとき、どう思いましたか?

Ayase:「ブリング・ミー・ザ・ホライズンが日本でフェスをやるんだ、すごい!」と思いましたし、僕らもそこに出させてもらえることが、とにかく純粋にうれしかったですね。

—こういうタイプのイベントに出るのって、YOASOBI的には初ですよね?

Ayase:はい。アーティストが主宰するフェスに出るのは初めてです。

—Ayaseさんは元々メタルコアのバンドで活動していたわけですし、そういう意味で言うと、ホームグラウンドに帰ってきたみたいな感慨とかありますか?

Ayase:いえ、あくまでも僕個人が元々そういうバンドをやっていて、そういう音楽が好きだというだけで、今やってるYOASOBIに関してはポップスなのでホームに帰ってきたぞ感はむしろ全くないです。


ーなるほど。Ayaseさんはブリング・ミーのどういうところが好きですか?

Ayase:音楽性ももちろん大好きですが、ブリング・ミー・ザ・ホライズンの何が好きかって言われたら、Vo. オリヴァー・サイクスなんです。それが一番。僕自身がバンド時代にボーカルだったこともあって、彼のステージに立つ人間としての圧倒的なカリスマ性に惹かれます。「そこに立っているだけで、ライブが成立してる」っていう状態にさせられるボーカリストって、世界中に他にもいると思いますけど、その中でもオリヴァーのカリスマ性は屈指のレベルだと思ってるので。

—バンドの存在を知ったきっかけは?

Ayase:昔一緒にバンドをやってたギタリストが、ブリング・ミー・ザ・ホライズンにハマりだしたことがきっかけで存在を知ったんです。
2ndアルバム『Suicide Season』(2008年)を皆で移動中に車でよく聴いてました。デスコアの延長線みたいな感じで最初は聴いてたんですけど、ミュージックビデオとかチェックしていくうちに、「シャウトしてるけど、声そのものがめちゃくちゃカッコいいな。そもそも、この人がカッコいい」と思い始めて、4thアルバム『Sempiternal』(2013年)が出て、シンセサイザーやポップな要素にも惹かれて、そこでガッツリ好きになった感じです。

—確かに最初はいわゆるメタルコアのバンドの人たちってイメージだったけど、『Sempiternal』でガラッと変わった印象があります。

Ayase:そうですね。だから「Shadow Moses」(『Sempiternal』収録曲)が大きかったです。
あの曲を聴いて「ヤバい!」って思ったのが最初かもしれないです。

—僕も「Shadow Moses」のミュージックビデオ、大好きなんですよ。

Ayase:カッコいいですよね。

—あの映像の感じも妙にハマって、当時は繰り返しずーっと見てました。それまでもメロディアスな要素は少しあったけど、『Sempiternal』からしっかり歌うパートが出てきた印象で。さっきAyaseさんが「声がカッコいい」って言ってましたけど、デスボイスだけじゃなく歌声もカッコよかったという。


Ayase:ライブで間近で見られるのが楽しみです。

テーマはシリアスなのにメロディはポップだからこそ、怖さとか寂しさが際立つ

—Ayaseさんから見て、ブリング・ミーのメロディってどのへんが特徴的だと感じますか?

Ayase:暗そうな曲でも、メロディのラインは明るいものが多いなって思います。僕はメロディで言うと、「Follow You」が特に好きなんです。「Follow You」も厭世的でチルな雰囲気だけど、メロは明るいんですよね。ブリング・ミー・ザ・ホライズンのライブ映像で一番好きなのが、「Drown」をやったとき、むちゃくちゃいい顔をしたロン毛のお兄さんがブリング・ミー・ザ・ホライズンのTシャツを着て、最初の歌い出しで一緒に歌ってるのが映るところ。ああいう感覚というか、開放的でハッピーなのに、なんでこんなに切なくなっちゃうんだみたいな、そのギャップがいいなって思います。
テーマはシリアスなのにメロディはポップだからこそ、怖さとか寂しさが際立つみたいな手法は、特徴的な気がします。

—なるほど。Rolling Stone Japanでオリヴァーに「DiE4u」で取材したとき、「歌詞がどれだけ絶望的であっても、寝るときに『Id die for you』ってメロディを口ずさめば、もうまるで神様に向けて歌うアンセムみたいになるんだよ」って話していて。それって今Ayaseさんがおっしゃったことにも通じるなと思って。

Ayase:確かにブリング・ミー・ザ・ホライズンの曲からは祈りみたいなものをすごく感じます。何かを捧げてる感じは昔からありますね。


—サウンド的には、メタルコアやラウドミュージックをアップデートさせて、ポップ・ミュージックやエレクトロニック・ミュージックなど、いろんなフィールドにクロスオーバーさせてる。そういったスタンスについてはどう思いますか?

Ayase:柔軟ですよね。自分たちを評価してもらえるフィールドから一歩飛び出して、大きく変えていくのは勇気がいることだと思うんですけど、そこに対して、怖いと思ってる様を感じさせず突き進んでいる姿に、同じミュージシャンとしてすごくリスペクトしてますし、勇気をもらえます。

—僕は一人のリスナーとして、もともとハードコアやメタルコアやエモが好きなんですけど、そういった音楽をルーツに持つ彼らが、より多くの人に知られるようになっていく姿はシンプルにうれしいし、しかもカッコよく進化していってるところが最高だなと思って。

Ayase:結果的にラウドミュージックの入り口になってると思うし、「Medicine」もTVCMで使われていたりして。ラウドとかまったく聴かない人も「あ、これ知ってる。いい曲だよね」ってなってるのが、すごいなと思って。

—そうですよね。「Follow You」以外で、Ayaseさんが昔から好きな曲って他にありますか?

Ayase:「Throne」ですね。タイトルの通り、玉座(Throne)に座られた感があったというか。衝撃を受けました。他にも沢山あって、「Can You Feel My Heart」も好きだし、「Sleepwalking」「Antivist」も好きです。『Sempiternal』はレコードも買って部屋に飾ってるぐらい、自分にとっても大切な作品です。最近の「LosT」「Parasite Eve」もめちゃくちゃ聴きました。MVの映像もカッコいいし、オリヴァーは日本の文化をすごく好いてくれているのが伝わってきますよね。

ーあと「Happy Song」みたいにキャッチーなフックを効かせたポップな曲もありますよね。ちなみにAyaseさんがご自身の曲でポップさを表現する上で大切にしていることって何かありますか?

Ayase:曲を書く上では、メロディを大事にしていて。もともとキャッチーなメロディが好きで、でもただキャッチーなだけじゃなくて、何回も聴きたくなってしまうような中毒性だったり、一回聴いたら頭から離れないような、クセになるような曲であってほしいといつも思ってます。それをどうやって作れるかは、僕も知りたいですって話ではあるんですけど、作曲の話で言うと、手癖で書かないようにはしてます。あんまり考えずに作ると、どうしても似たようなメロディや構成になりがちなんですけど、そうならないように一度自問自答するし、通ったことのない道を選ぼうとはしてますね。それが結果的にみんなにとっても聴いたことがないサウンド感になって、刺激的だからもう一回聴きたいってなってくれていたら嬉しいなと思います。

—手癖って部分で言うと、編曲とかアレンジ、ミックスのアプローチも、決まったパターンに陥らないように意識してるんですか?

Ayase:はい。特にアレンジはめっちゃ考えますね。一回使った音は使わないようにしたいって気持ちがあります。スネアは絶対変えたいし、リヴァース、シンバル、クラッシュも毎回違うものを拾ってくるようにしてる。ミックスに関しては、やったことない試みもその段階でやってみます。歌とかは特にそうです。例えば「歌は、ikuraがいろんなところにいるようなバランスにしましょう」とか、同じボーカリスト、同じ作曲家が作ったものでも、聴いた感触が変わるだけで全然違うと思ってるので、その辺はかなりこだわってますね。

「ブリング・ミー・ザ・ホライズンとこうやって一緒にやれる日が来るなんて、俺ら頑張ったな」

—Rolling Stone Japanで前回Ayaseさんに取材したときって、2021年11月だったんですけど、そのときに「K-POPが世界に広がっていく中で、J-POPも大きな枠を世界で勝ち取れる兆しが見えてきた気がするから、海外に向けて面白いことをしていきたい」って話をされていて。そこから2年弱ぐらいが経って、今年の「アイドル」の反響や「Head In The Clouds」のフェス出演とか、有言実行されてきてるなと思います。でもAyaseさん的にはまだ足りないという感覚はありますか?

Ayase:やっとスタート地点に立った感じです。むしろ自分、2021年時点で「J-POPに可能性が見えてきた」とかって言ってたんだなと思って、生意気なやつだなと思いました(笑)。今年は「アイドル」で一つ扉を開いたと思いますし、それをもってビルボードで1位を取ったり、海外からオファーをもらえる機会が増えたりはしているので、やっと参加権を得たような気がしています。ここからどうしていくかが一番大事で、行けるタイミングで行かないと開かないと思ってるので、慎重にはなりつつ大胆に攻めていきたいです。世界中に名を轟かせられるか。この1、2年が勝負だと思ってます。

—この間も韓国の音楽番組「M COUNTDOWN」に出てましたよね。どうでしたか?

Ayase:こだわりがすごいなと思いました。カメラの画角もそうだし、セットに対してもそうだし、一つひとつにめちゃめちゃこだわってて、スタッフの数もすごく多い。ここからニューカルチャーを発信していってるんだなって感じました。

—先日リリースしたEP『THE BOOK 3」では、単独ライブやサマーソニックでも披露していたインタールードも作品に収録したことで、EPのフォーマットにYOASOBIの魅力が凝縮されていて、それがすごくいいなと思いました。

Ayase:基本的にはシングル単発で出し続けているので、アルバムのために新曲を何曲も書いて、新しいアルバムとして出すことは毎回はしてないですけど、曲が並んだときに、ライブを観てるのと近い感覚があるというか。僕らがやってるのはストーリーミュージックなので、そういったストーリー性が連なることで、今までと違った聴こえ方や見え方ができるのが面白いところだなと思ってます。やっぱりアルバムっていいなって思いますね。

ーNEX_FESTに話を戻すと、Paleduskも出るんですよね。

Ayase:PaleduskのボーカルのKaitoに関しては、彼が中学生ぐらいのときに、僕が当時やっていたバンドのライブに遊びに来てくれてた後輩だし、ギターのDaisukeは一緒に何度もお泊まりしたり、バーベキューしたりしてた、16~17歳ぐらいからの友達なんです。「ブリング・ミー・ザ・ホライズンとこうやって一緒にやれる日が来るなんて、俺ら頑張ったな。熱いよな」って、よくLINEで話してます。

—いい話です! 当日はいろんな客層が入り混じったオーディエンスになりそうですが、NEX_FESTを楽しみにしている人たちに向けて、Ayaseさんからコメントを最後にいただけますか?

Ayase:もちろんラウドミュージックを愛している人たちの中にもYOASOBIを好きだと言ってくれたり、普段から聴いてくれている人もいると思うので、そういった方は何も心配せずに楽しんで見てください、僕らカマしますんでって気持ちです。その一方で、僕らのことを全く知らない人たちに対しても、僕らが一番デカい音を出すんで、よろしくお願いしますって気持ちです。全く負けてると思っていないし、むしろ同じミュージシャンとして、音楽を志す愉快な仲間の一人として、みんなで最高のフェスにできたらいいなって思っています。

<NEX_FEST>  *SOLDOUT!
●開催日程:11月3日(金・祝)  OPEN 10:00 / START 11:00 
●会場:幕張メッセ 
●出演アーティスト: 
BRING ME THE HORIZON / BABYMETAL / YUNGBLUD / マキシマム ザ ホルモン/ YOASOBI / I PREVAIL  
PALEDUSK / CVLTE / 花冷え。/VMO / KRUELTY / Alice Longyu Gao

オフィシャル・サイト:http://nexfestjapan.com/ 
企画・制作・招聘:クリエイティブマンプロダクション

YOASOBIのAyaseが語る「NEX_FEST」への想い、ブリング・ミー・ザ・ホライズンの音楽的魅力

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