監督やマーリー家を釘付けにした理由
今は亡きレゲエ界のアイコンを映画化するにあたり、イギリスの俳優キングズリー・ベン=アディルに白羽の矢が立った。しかしベン=アディルがボブ・マーリーの息子ジギーから主役を打診された時、彼はきっぱり断ろうと心に決めていた。永遠のレゲエの神様を自分が演じて映像に残すなど、とても想像できなかったのだ。「最初は”ノー”と言おうと決めていた」と彼は振り返る。「自分は歌えないし踊れない。容姿も全然似ていないし、僕がボブ・マーリーだと誰にも納得してもらえないだろう。だから初めは、僕が適任だとは全然思わなかった」。
ベン=アディルは週末いっぱいかけて、ボブ・マーリーが1977年にロンドンのレインボー・シアターで行った伝説のライブを見た。そこで彼は、ボブ・マーリーと自分とが一体化する「超越」の世界を体験した。レゲエを世界へ広めた男との深いつながりを感じたベン=アディルは、オーディションの場でマーリーの家族をも魅了することとなる。「ボブ・マーリーの家族に直接、彼を演じてほしいと言われたら、一人のアーティストとして断る訳にはいかなかった」と37歳のベン=アディルは言う。
Kingsley wears jacket, shirt and tie all by Gant, jeans by Paul Smith, trainers by Reebok at Schuh, watch by Omega (Photo by Danny Kasirye)
ベン=アディルは2023年12月、ロンドンのホテルで本誌UK版のインタビューに応じてくれた。物静かでフレンドリーな彼が時折見せる笑顔の奥には、これがキャリアの中で最も大きな役であり、世界中に今なお多いファンの前で音楽の巨匠を演じるチャンスだという、十二分な覚悟が感じられた。
ロンドン北部で生まれたベン=アディルの顔は、近年数々の映画で見かけるようになった。彼が世に出たのは、イギリスの犯罪ドラマTVシリーズ『ヴェラ~信念の女警部~』や『バーナビー警部』だった。ところが最近は、ハリウッド作品にも多く登場している。レジーナ・キング監督の映画『あの夜、マイアミで』のマルコムX役で称賛を受けた彼は、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)のDisney+TVシリーズ『シークレット・インベージョン』では主役級を演じた。さらに2023年の大ヒット作『バービー』では、バスケットボール・ケンを演じている。とはいえ、そんな彼の名を何よりも世界に知らしめたのは『ボブ・マーリー:ONE LOVE』だ。本作はボブ・マーリーの息子ジギー・マーリーと、その妻オーリーがプロデュースした。ベン=アディルの演技に関しては、ボブ・マーリーの妻リタや娘の一人セデラといったレゲエ・アイコンの家族からも、すでに認められている。
マーリー家に支持された理由のひとつは、本作のポイントが単にボブ・マーリーを模倣することではないと、初期の段階でベン=アディルが理解したからだという。「話を詰めていくうちに、ボブ・マーリーのイミテーションを作り上げたり彼を真似するのが目的ではないし、そうすべきではないと理解した。
キングズリー・ベン=アディル演じるボブ・マーリー
(C) 2024 PARAMOUNT PICTURES
『ドリームプラン』でも知られる監督のレイナルド・マーカス・グリーンは、ベン=アディルに出会うまでは、音楽界のアイコンを演じる主役にふさわしい人物を探すのに苦労した。映画製作のプロジェクト自体が泥沼にはまるところだったという。「長い時間がかかった。決して諦めたわけではないが、ふさわしい俳優が現われずに計画が実現しない可能性も感じ始めていた。我々はオーディション用の映像を山ほどチェックした。いい役者もいたが、役にマッチする人間に出会えなかった」とグリーンは振り返る。
「ところがキングズリー(・ベン=アディル)の映像を見たとき、初めて何かが違うとひらめいた。彼に会ったことがある人なら、キングズリーの持つものすごい存在感を知っているだろう。彼は聡明で感性の豊かな人間だ。
もうひとつ重要なのは、マーリー家の人々にも共感してもらえることだった。ジギー・マーリーは当初、イギリス出身の俳優を提案されたことに驚いたという。「僕らとしてはジャマイカ人か、我々の言葉を話せる人間を予想していた。しかしキングズリーのオーディション映像は、我々を釘付けにした。家族である僕らから見ても、キングズリーは決してボブをコピーしようとしていなかった。
「僕の友人たちにも映画を見せたが、誰もキングズリーの演技に疑問を投げかける者はいなかった。彼は、僕らの期待通りの仕事をしてくれた」。
実際、どのシーンを取っても、ベン=アディルはボブ・マーリー役に驚くほどフィットしている。ステージでのパフォーマンスを演じながら、ベン=アディルは、ボブ・マーリーの持つ抑えきれないスピリットと弾け出すバイタリティを見事に表現した。
ベン=アディルと過ごした1時間は、彼が配役された大きな理由が彼のスピリットにあったのだろうと確信するに十分だった。じっくり考えながら慎重に受け答えする彼の言葉は、驚くほど明快で洞察力に満ちていた。亡きボブ・マーリー自身のインタビュー映像と比べてみると、ベン=アディルからはマーリーと同じ匂いを感じる。
ところが2022年1月にベン=アディルの配役が発表されると、ボブ・マーリーの母国ジャマイカでは物議を醸した。自国の誇る世界的な有名人が、イギリス人に演じられることに反発する声もあった。「1年間もかけたのに、ジャマイカ人を配役できなかったのか」とソーシャルメディアへ投稿した批評家もいる。「生粋のジャマイカ人やジャマイカ系の人間と同じようにはできない。ジャマイカン・パトワ(ジャマイカ訛り)でなければ、本物の雰囲気は伝わらない」。
批判の声に対してベン=アディルは、演技で応えている。そして何よりもボブ・マーリーの家族が認めたという事実が、最終的な決め手となった。「ボブの家族のサポートがなければ、僕はやり遂げられなかっただろう」と彼は言う。「キャスティングされた理由を僕自身が説明するのはおかしいけれど、レイ(マーカス・グリーン/監督)と(ボブ・マーリーの)家族が納得して決めたことだと思う。彼らの愛情と信頼のおかげで、僕は”100%をつぎ込んで全力投球しよう”という覚悟ができた。」
「パラマウントの幹部と打ち合わせした時に、僕は”いつでも準備ができている”と宣言したんだ。”やると決めたら、メールでやり取りをしながらアイディアを出し合って、ノンストップで役作りに取り組むつもりだ”と告げた。すると彼らは”こいつになら任せられる”と思ったようだ。」
ボブ・マーリーを深く解釈するために
ベン=アディルが撮影でボブ・マーリーの地元を訪れた際には、間違いなく責任の重さを感じたはずだ。
ベン=アディルは宣言どおり役作りに没頭し、ジャマイカの言葉も完璧にマスターした。「ジャマイカン・パトワは、訛りとか方言ではない」と彼は言う。「完全にひとつの独立した言語だから、ちゃんと通じるように話せないといけない。(海外では)字幕なしの外国語映画なので、言語は特に重要だ。ボブと彼を取り巻くカルチャーに忠実であり続ける必要があった。あらゆる視聴者にとって、ストーリーのはじめから終わりまでを感情的に紡ぐのが言語だからね」。
ジャマイカン・パトワをマスターするために彼は、ボブ・マーリーの娘セデラの協力を得て、ボブの貴重なインタビュー映像のアーカイブを徹底的に見まくったという。ベン=アディルはジャマイカでの撮影中に、地元のジャマイカ人や映画の中でザ・ウェイラーズの楽曲を演奏した地元ミュージシャンらのレクチャーも受けながら、ひとつひとつの発音を丹念に覚えていった。「事前に7、8カ月間かけて予習していったが、現地ではザ・ウェイラーズ直系のミュージシャンたちが、いきなり本物を聞かせてくれたんだ! あっという間にひとつのコミュニティが出来上がり、親身になってサポートしてくれた。常に周囲には、誰かしら答えてくれる人がいた。最近亡くなってしまったが、ボブの親友だったネヴィル・ギャリックも来てくれた。”そこはそうじゃない、ボブはこんな風にやっていたぜ”という感じで、アドバイスをもらった。僕が単なる物真似を目指しているのではないと理解してもらえて、本当に嬉しかった。僕を通してボブのスピリットが輝く。ボブという人間を、僕なりに解釈した結果だ」。
ギターの演奏も、ひとつの課題だった。ベン=アディルは、YouTubeに上がっている基礎技術の解説動画を見ながら1日に何時間もかけて独習し、熟練と言えるレベルにまで達した。歌も同じだ。映画の最終カットでは、ベン=アディルのボーカルとボブ・マーリー本人の歌声がブレンドされている。2つの世界の奇妙な交錯は、グレタ・ガーウィグ監督の大ヒット映画『バービー』での、ピンク色をした作り物のファンタジーの世界から始まった。同作でベン=アディルは、ケンの化身の一人を演じている。「ボブを演じるのは感情的に強烈な経験だったが、実はバービーの時も同じような感じだった」とベン=アディルは、意外な告白をした。「僕の演じたケンは、映画のなかで大きな争いに巻き込まれた。そして親友であるビッグ・ケンの命まで失いそうになる」。
(C) 2024 PARAMOUNT PICTURES
(C) 2024 PARAMOUNT PICTURES
『One Love』の方が間違いなく殺伐としているが、『バービー』とは人間の運命という共通のテーマがある。『One Love』は、ボブ・マーリーが命を落としかけた1976年12月の暗殺未遂事件のシーンから始まる。それから劇中では、独創的で影響力の大きかったアルバム『Exodus』の、ロンドンでの制作過程を描いている。さらに、ジャマイカのキングストンで行われた、ワン・ラヴ・ピース・コンサート(1978年4月)における歴史的なパフォーマンスもフォローする。政情不安が渦巻く不安定な時代に、人々に結束を呼びかける目的で開催されたコンサートだった。
マーカス・グリーン監督は、一昔前のリオデジャネイロのギャングを描いた犯罪大作映画『シティ・オブ・ゴッド』が、思いもよらぬヒントになったと語る。「自分たちのオリジナル版『シティ・オブ・ゴッド』を作ろうと思いついた。音楽を活かした、生々しく骨のある映画を作りたかった。『シティ・オブ・ゴッド』は政治に直接触れることなく、視聴者にブラジルの政情を理解させるヒントを多くもたらした。そういう意味で、本当の試金石的な作品だ。私たちは、ジャマイカを舞台に同じことを実現したいと思った。スケールの大きな映画でありながら、親近感の湧く作品にしたかった」。
Kingsley wears blazer, top and trousers all by AMI PARIS, overcoat by Florence Black, boots by Jimmy Choo (Photo by Danny Kasirye)
監督の目指した親近感は、ボブ・マーリーの描き方にも影響しているとベン=アディルも主張する。映画のなかでは主にアルバム『Exodus』の制作過程にフォーカスが当てられているが、同時にマーリーの人間臭さにも目を向けている。「詳しくは言えないが、ボブ・マーリーの家族とは多くのプライベートな話をした。でもおかげで、彼が子ども時代に経験した苦悩を理解するのに役立った」とベン=アディルは言う。「ボブは診断未確定ながら、複雑性PTSDを患っていた。決して家族の愛情が足りなかったわけではない。街の治安が酷かったせいだ。それほど当時のジャマイカは生きていくのが厳しい場所だったんだ。特に、周りよりも肌の色が薄く小柄な少年にとっては、タフな生活だっただろう。僕もボブと同じく両親の人種が違うので、彼の状況が理解できる。でも、誰もが理解しているわけではない」。
「逆境の中で揉まれたボブは、タフガイに育った。彼には、西洋化したインテリのイメージもあるが、ボブはボスだった。彼は本当のタフガイだ。ザ・ウェイラーズのメンバーには”スキップ(キャプテンの意)”と呼ばれていた。将軍とも呼ばれた。スタジオでの彼は絶対的な存在だった。ボブは、自分の面倒は自分で見られる人間だった」。
最高の俳優であるための「勇気と情熱」
映画の撮影は、2022年の年末にロンドンで始まった。その後、2023年初めにジャマイカへ渡り、最も重要ないくつかのシーンを撮影した。その中のひとつは、ワン・ラヴ・ピース・コンサート(1978年)の最中にボブ・マーリーが、マイケル・マンリー(ジャマイカ人民国家党の当時の党首)とエドワード・シアガ(ジャマイカ労働党の当時の党首)の政敵同士をステージへ上げ、握手させた有名なシーンだ。
撮影中のクリスマス休暇を利用して、ベン=アディルは、ステージでのボブ・マーリーの動きを細かく研究した。その結果、思いがけない発見があったという。「ボブのダンスは振り付けられたものではないので、まずは彼の動きを理解しようとがんばってみた。最初は、ワイルドで自由で本能的に動いているように見えた。ところがテクノロジーを使って楽器を分離してみると、ボブはドラムに指示を出して操っていることがわかる」とベン=アディルは証言した。具体的に説明しようと、ベン=アディルは椅子から立ち上がり、マーリーの動きを再現してみせた。プライベートライブが突然始まった感じだ。「ボブの動きが楽曲ごとに異なるのは、ドラム・パターンが曲ごとに違うからだ。ドラム・ビートと歌だけでリハーサルしてみると納得がいった。ボブはステージ上の動作で、ドラマーに細かい指示を出していたんだ。それがわかった時は、とても驚いたよ。ボブは体全体を使ってバンドを指揮していたのさ」。
ベン=アディルは『ストップ・メイキング・センス』を観て、さらなるひらめきを得た。アート・ロック・バンドのトーキング・ヘッズが、ハリウッドのパンテージ・シアターで行なった3夜のライブを収録した、ジョナサン・デミ監督のドキュメンタリー映画だ。「ステージ上で、デイヴィッド・バーンがボブと同じようなことをしていたのに気づき、びっくりした。”これだ!”と思った」とベン=アディルは言う。『One Love』のリハーサル中に、ザ・ウェイラーズのカールトン・”カーリー”・バレット役を演じたヘクター・ルーツ・ルイスにドラムを叩いてもらい、ジェームス・ブラウンのファンク曲を俳優たちのウォーミングアップ代わりに演奏したことがあったという。「とにかく楽しかった。ダンスもギターもボーカルも、恥を捨てて馬鹿になれれば非常に楽しめるのがわかった」。
馬鹿になる、とはどういうことだろうか。「目標に達するまでには、過ちも乗り越えなければならない」と彼は解説する。「最高の俳優とは、勇敢で勇気を持つべきだ。だから人前で恥をかくのを恐れない。僕も笑いものになるのは得意になった。歳を重ねるごとに、人目など気にしていられなくなっているからね。今はもはや”僕にどうしてほしいか言ってくれ。ストーリー上必要なことなら何でもやるよ”というスタンスだ」。
Kingsley wears top by Wales Bonner at Selfridges, trousers by Amiri, shoes by Russell & Bromley, watch by Tag Heuer (Photo by Danny Kasirye)
ベン=アディルの自信は、20世紀を代表するもう一人のアイコンを演じた経験からも来ている。「レジーナ・キング監督のおかげでマルコムXを演じることができ、そのおかげで僕は大きな経験を積めた。監督は僕を信頼してくれて、僕が周りのアドバイスに反するやり方をしても見守ってくれた。クリエイティブに関して、監督は僕に完全な自由を与えてくれた。当時の監督自身は、僕がどのように受け止めていたかは知らなかっただろう。でもキング監督は、僕が16歳の頃から夢に描いていたチャンスを与えてくれた。彼女は僕を自由に羽ばたかせてくれたのさ」とベン=アディルは、自らがハリウッドでブレイクした作品を振り返った。
マルコムX役に取り組んでいたときに、誰か自分を中傷する人間はいたかとの質問には、突然前かがみに座り直して、しばらく考え込んだ。「制作陣にはアフリカ系アメリカ人の俳優をキャスティングしなければならない、というプレッシャーがあった。ところがある有名なアフリカ系アメリカ人俳優が、2週間前に降板してしまった。もしもこの話を記事にするなら、前後関係を含めた全体の説明が重要だ」と彼は明かした。
「その後も3、4人に断られるという緊急事態だった。撮影の開始予定日が3~4週間後に迫り、監督もマルコム役にふさわしい俳優をすぐに必要としていた。僕のスケジュール的には問題なかったが、何よりも重要なのは、監督が僕のことを信頼してくれるかどうかという点だった。現場で試行錯誤しながら、穏やかな心の持ち主としてのマルコムを、違った視点から描きたかった。その点で監督と僕は、意見が一致した」。
1時間のインタビューを通じて、ベン=アディルという俳優がキャリア最大の役を通じて、自分の力量や価値を証明してみせたのだと感じた。ボブ・マーリーの個性の細かい部分まで追求しようとした姿勢は、俳優という仕事に対する彼の献身性を表わしている。ただひとつ彼が避けたのが、最近一部の俳優が伝記映画で採用しているメソッド演技だ。有名な例を挙げると、映画『エルヴィス』の撮影が続いた3年間、主役のオースティン・バトラーは自分の家族とも会わず、撮影中はずっと”キング(エルヴィス・プレスリー)”ばりのメンフィス訛りで話し続けたという。「誤解してほしくないが、誰もがそれぞれ自分のやり方を持っているということだ。最高のパフォーマンスを発揮する俳優とは、仕事がしやすい。オースティン(・バトラー)もあの映画で、間違いなく彼の持つ最高の演技を見せた」とベン=アディルは、言葉を選びながら慎重に答えた。彼は誤解を避け、見出しに大げさに取り上げられるのを明らかに嫌っていた。
「オースティンは、彼が必要だと感じたやり方で、あの素晴らしい演技を作り出した。僕の場合は、プロジェクト全体を通じてより深い集中力を保とうと努力している。僕はスタートの声がかかる5分前から集中して、本番に臨みたい。朝の7時に最も重要なシーンの撮影が行なわれてもいいように、いつでも準備している。例えばサッカー選手は、審判が笛を吹いた瞬間に動き出せる準備ができている必要がある。僕の場合も同じような感じさ」。
映画『One Love』には、ボブ・マーリーを演じるベン=アディルの他にも、イギリスの才能豊かな俳優たちが名を連ねている。TVドラマ『ハッピー・バレー 復讐の町』で主役を務めたジェームズ・ノートンがアイランド・レコードの創業者クリス・ブラックウェルを演じ、ボンド映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』でMI6エージェントのノーミを演じたラシャーナ・リンチが、ボブ・マーリーの妻リタ役として出演している。実際のボブとリタは、お互いに不倫を重ねながらも、最後まで寄り添い続けたという。スクリーンの中ではベン=アディルとリンチが、そんな二人の情熱的な化学反応を再現している。「ラシャーナ(・リンチ)がどんなに素晴らしい仕事をしたかは、作品を見てもらえばわかる」とベン=アディルは言う。「信じられないことだが、ラシャーナが現場にいると、いつも雰囲気が一層明るくなった。彼女は全ての立ち居振る舞いに、知性と安定感のある感受性を込めている。そして現場では、常に主役である僕に気を配ってくれた」。
ジャマイカ系イギリス人のラシャーナ・リンチもまた、ボブ・マーリーの真の姿を包括的に表現しようと、ベン=アディルが非常に苦心している姿を見ていた。「彼には伝えていないけれど、ボブ・マーリーや私のルーツであるジャマイカのカルチャーに対する彼の献身的な姿には、とても感動する」と彼女は証言している。「自分が演じる人物のイメージを壊さないように、普段の息遣いから食事の仕方まで、あれほど繊細に気を遣う俳優には初めて出会った。撮影現場では、キングズレーのそんな姿勢に寄り添いたいという想いから、私自身がリタになった瞬間が何度もあった。彼は、自分の仕事に対して信じられないほどのエネルギーを注ぎ込んでいる。だから何があっても彼を守ることが、私の役割のひとつだった。ボブ・マーリーをエネルギッシュに体現しようと努力する彼の姿は、最高だった。私は彼に、永遠の拍手を送りたい」。
当然のことながら、作品を通じてベン=アディルと音楽界の偉人との関係は180度変わった。「おかしな話だが、この映画に出演する前に、僕がボブ・マーリーや彼の音楽に対して抱いていた感情を、少しも思い出せないんだ。1年半の間、彼のことだけを考え、同じ空間で過ごした時間はとても楽しかった。良い経験だったと心から思う」。
From Rolling Stone UK.
Photography by Danny Kasirye
Creative Direction by Joseph Kocharian
Grooming by Liz Taw at The Wall Group using Omorovicza
Fashion Assistant: Scott Cruft
『ボブ・マーリー:ONE LOVE』
5月17日(金)全国公開
配給:東和ピクチャーズ
(C) 2024 PARAMOUNT PICTURES
公式サイト:https://bobmarley-onelove.jp/
ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ
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