2017年のミニアルバム「クォン・ジヨン」以後、約8年ぶりのアルバムであり、YGエンターテインメントを離れてGalaxy Corporation所属としては初めて発売するアルバムでもある。
先行公開シングル「POWER」と「HOME SWEET HOME」を含めた計8トラックが含まれている。タイトル曲「TOO BAD」にはアンダーソン・パークが参加しており、MVにはaespaのカリナが出演している。
「TOO BAD」はグルーヴィーなドラムのビートと中毒性のあるフックが魅力的で、リズミカルなG-DRAGONのラップとアンダーソン・パークのボーカルの調和が印象的だ。歌詞は英語の比重が高く、ボーカル的な部分でも変化が目立つ。サウンド的にはビルボードのトレンドを取り入れながらも、G-DRAGON特有の雰囲気は失われていない。今回のアルバムは前回の「クォン・ジヨン」のようにアルバム全体を通じたストーリーを表現するというよりは、異なる魅力を持つ楽曲にそれぞれフォーカスしており、さまざまなサウンドを聞くことができる。
「HOME SWEET HOME (feat. TAEYANG・D−LITE)」は曲のタイトル通り「楽しい我が家」という意味で、「楽しい我が家」であるファンのそばに戻ってきたという、ファンとの絆を象徴的に表現している。舞台の上で自由に走り回りながら楽しむような歌詞とリズムを通じて聞く人たちに楽しさを与えてくれる曲だが、元々はYG時代にBIGBANGの曲として書かれたものだという。
「DRAMA」はG-DRAGONならではの魅力的で感性的なボーカルが聴けるバラード曲だ。「ドラマクイーンなのは母親譲り」と歌うリリックには韓国語・英語・日本語・中国語が織り込まれている。
「Übermensch」というタイトルに込められた意味
ボーイズ・ノイズのトラックの上に乗るギターソロが心地よい「TAKE ME」は、G−DRAGONらしいメランコリックで甘い告白が盛り込まれている、心躍るような80年代風のレトロな楽曲。
「보나마나 (BONAMANA)」はアコースティックなギターサウンドの上に載せられる語りかけるようなボーカルの繊細な強弱調節が目立つ曲で、さらに深みのある雰囲気を感じさせる。後半部のG-DRAGONの夢幻的なボーカルが曲の感情をリードしながら、聞く人をさらに没頭させる。ラストを飾る「GYRO-DROP」は、G-DRAGONならではのウィットのあるリリックが印象的で一度聞くとハマる中毒性のあるフックが印象的だ。トラック全体のノリの良いメロディと疾走感で、あっという間の25分間のラストを飾っている。
「PO₩ER」のリリックでも「GOAT、生きている伝説」と自称している通り、ソロで活動し始めた初期から、「ミュージシャンズミュージシャン」として様々な国のアーティストをリスペクトし、リスペクトを受ける存在のGーDRAGONだが、今作でもそれは変わらないようだ。「TAKE ME」はディスコの伝説であるナイル・ロジャースのギターソロをフィーチャーし、「DRAMA」ではアメリカのヒットメーカー、ダイアン・ウォーレン(レディー・ガガ、マライア・キャリー等)と共作している。
アルバムのタイトル「Übermensch」は、先行曲で昨年末のMAMAでも披露された「PO₩ER」の冒頭にも登場していた単語で、それ以前からティーザー的に各所で登場していた要素だ。Übermenschとは、哲学者フリードリヒ・ニーチェが人生の目標として提示した人間像であり、永遠回帰や生きている価値がないという事実に無気力になるのではなく、まずはその現実を直視し、自分の運命を愛するという強いニヒリズムだ。いわば「自分史上最高の自分を目指す」と言うことだろう。トラック全体をプロデュースし、各トラックの細部構成からアルバム全体のコンセプトなど全てに自身で参加した今回のアルバムを通じて乗り越えようとするのはまさにG-DRAGON自身であり、まさにアルバムのタイトル自体が今作に込められたテーマと言えるのかもしれない。
【関連記事】G-DRAGON「復活の一年」を総括 K-POP史を塗り替えた歩み、カムバックとこの先の未来

G-DRAGON
『Übermensch』
再生・購入:https://music.empi.re/gdum

CDアルバム国内流通仕様
2025年3月7日リリース
※ブルー・ホワイト・ピンク・レッドの4種類
詳細:http://bignothing.blog88.fc2.com/?cat=563&page=0