【ライブ写真ギャラリー】「HYPER PLANET 2025」
夢のようなフェスだった!
2025年2月2日にCrossfaith主催のもと幕張メッセで開催された「HYPER PLANET 2025」は、ヘヴィ・ミュージックを軸にした多様な音楽が様々なアーティストを繋ぐという、現在の音楽シーンの豊かさをそのまま鮮やかに切り取ったようなすばらしいイベントだった。
このフェスのラインナップを見て真っ先に思い出したのは、2023年11月に同じく幕張メッセで開催された「NEX_FEST」である。ブリング・ミー・ザ・ホライズンが先導する形で実現したヘヴィ・ミュージックの記念碑的な祭典だったが、同様に、「HYPER PLANET」はCrossfaithが主催したことにこそ大きな達成がある。フェスの構想自体はずっと前からあったそうだが、近年の彼らのシーンにおける立ち回りは、そのゴールを確実に手繰り寄せるものだった。事実、このフェスはCrossfaithが曲制作などで共演してきた面々がラインナップの基軸になっている。気になるバンドやラッパー、DJをただ連れてくるのではなく、きちんと音源を作り関係性を築き上げた人たちが集うフェス。この数年間で、Crossfaithが大きな理念を掲げながらも、どれだけ地に足をつけた活動を継続してきたかが分かるだろう。しかも、その範囲は国内にとどまらない。彼らの絆は海外にも多く根を張り、実に様々なアーティストが招聘された。まさにジャンルも世代も国境も超えた多様な人が集まった、夢のようなフェスだったのだ。
さて、それでは実際のフェスの様子をレポートしていこう。HYPER PLANETはメインとなるHYPER STAGE、サブとなるNOVA STAGE、そしてDJを中心に組まれたAREA BLACK HALLという3つのステージから構成される。
まずはLUTEZのDJを聴きながら会場を散策。どうしても他ジャンルのフェスと比べてしまうのだが、毎度ながらヘヴィ・ミュージックのファンは早い時間帯の集まりがすこぶる良い。一組目でほぼ時間通りに多くの人が集結しており、しかも見渡す限り服装は黒! とは言え、昔のメタルフェスのように黒のバンドTシャツ一辺倒というわけではなく、それぞれ思い思いのファッショナブルな装いに身を包んでいるのが印象的だ。お客さんの女性比率も高いように感じた。
そうこうしているうちに、HYPER STAGEにcoldrainが現れる。クロークが長蛇の列だったため、一部の人は列から離脱してcoldrainを観に走っていく。まだ11時台とは思えない熱気で、しかも「MAYDAY」ではKNOSISのRyo Kinoshitaが登場するサプライズも。6曲のパフォーマンスが終わりNOVA STAGEへ足を運ぶと、View From The Soyuzが会場を揺らしていた。非常に演奏レベルが高く、ステージ運びも巧みだ。最後の「Ättestupa」まで、日本語詞で歌っているとは思えないユニークな発声で、強靭なメタルコアをプレイしてみせた。

coldrain(Photo by Takeshi Yao)

View From The Soyuz(Photo by Piikann)
続くPaleduskは、ダンスミュージックの華やかさが一気に開花。「HYPER PLANET」は、DJのステージが設けられていることからも分かる通り、メタルコア以降のヘヴィ・ミュージックにおけるダンスミュージックの文脈を強く意識してキュレーションされている。そういった流れにおいて、Paleduskの存在感は大きい。「Q2」ではKoie(Crossfaith)が、「RUMBLE」ではMasato(coldrain)が登場しコラボレーション。改めてライブで聴くと、昨年のアルバム『PALEHELL』の曲群はとてもステージ映えするナンバーが多く、ダイブがさかんに起きていた。続いては、NOVA STAGEでENTHだ。「出演バンドで唯一のスリーピース!」という掛け声で「ムーンレイカー」から始まったグッド・バイブスな演奏に、多くの観客が歌いながら踊る。ヘヴィなメタルコアの中にあって、彼らのようなメロディックなパンクバンドがいるのはやはり魅力的である。

Paledusk(Photo by cazrowAoki)

ENTH(Photo by Takeshi Yao)
そして、このフェスのエレクトロニックな側面を全面に押し出し表現したのは、HYPER STAGEでプレイしたイギリスの2人組・ウォーガズム。以前、coldrain主催のフェス「BLARE FEST. 2023」でも来日していただけに、この日のメンツは顔馴染みといったところだろう。リラックスした空気で冒頭の「Circle Pit」から10曲も披露し、しかも曲を重ねるごとに熱量は高まるばかり。サム・マトロックは、はじめに着ていたマシーン・ヘッドの服を脱ぎ、興奮に満ちたパフォーマンスを提供した。

WARGASM(Photo by SHOTARO)

Jin Dogg(Photo by SHOTARO)
続くSiMは、MCも多く絡めたステージで、笑いと激情に会場全体が大歓喜。MAHが「KiLLiNG ME」でDJ KiLLiNG ME(CrossfaithのTeru)を呼んだシーンでは大きな笑いが起きる。また、MAHは「海外アーティストも呼んだ大きいフェスをやりたいって10年以上前から聞いてたから、それがようやく実現して嬉しい」とも話していた。SiMとCrossfaithの強固な関係性が浮き彫りになった一幕だった。

SiM&DJ KiLLiNG ME(Photo by cazrowAoki)
その後はNOVA STAGEのralphと、AREA BLACK HALLのVMOを交互に楽しむ。ralphの低い声でのラップは、ドリルのビートと組み合わさることでメタルやハードコアに近い重さを感じさせる。特に「Selfish」は、身体に響く重低音で圧巻だ。

ralph(Photo by SHOTARO)
さて、VMOのエレクトロニックなムードを継承し、HYPER STAGEにて見せつけたのはエンターシカリ。最初は音響面のトラブルなのかやや出音が悪かったが、それでも最後はお決まりの人間ピラミッドが完成する熱狂で、会場をひとつにした。「エンターシカリが日本に来たよ」といったゆるいMCと、バキバキの音像というギャップがユニークだ。そのままFUJI TRILLのDJになだれこみ、フロア一体となってダンス。ブルータルな音を繰り出しつつも、一定の躍れるビートで組んだセットが高揚感を高めていく。

エンター・シカリ(Photo by cazrowAoki)
さて、フェスも次第に終盤へ。ここからはAge Factoryとマキシマム ザ ホルモンというミクスチャー勢の出番だ。Age Factoryは、いつ見ても涙腺を刺激するパフォーマンスである。ENTHもそうだったが、ラフな演奏とボーカルによって感情をそのままキャプチャするようなアプローチは、こういったフェスにおいては良い緩急になる。何よりも、「向日葵」をはじめとした情緒的なメロディには抗しがたい魅力を感じた。


マキシマム ザ ホルモン(Photo by 浜野カズシ)
朝から通しの開催ということもあってそろそろ会場では座りながらライブを楽しむ人も目立ってきたが、HYPER PLANETは手をゆるめない。次はNOVA STAGEのZardonicが、ドラムンベースやダブステップを通過したメタルを高速ビートで繰り出す。その後、Zardonicは会場で様々な人と写真も撮影しファンとの交流を図っていた。

Zardonic(Photo by cazrowAoki)
HYPER STAGEのトリ前を務めたのは、アンダーオース。ジャパンツアーの際にCrossfaithがオープニングアクトを務めたこともある関係性で、エモ/スクリーモのレジェンドが降臨するということもあり多くの観客が詰めかける。ブリング・ミー・ザ・ホライズンの最新アルバムでフィーチャーされ、昨今また改めてリスナーが増えている印象だが、この日は歴史的名盤『Theyre Only Chasing Safety』から近作に至るまで新旧織り交ぜた選曲で老若男女を楽しませた。実は、Crossfaithが活動を開始した2006年は、アンダーオースが伝説のエモ/スクリーモツアー「Taste Of Chaos」で初来日した年でもある。あれから20年近くが経ち、どういっためぐり合わせか、Crossfaithが主催するフェスでパワフルな演奏をプレイする時代が来るなんて誰が想像しただろうか。初来日した頃は粗削りだった演奏も、非常に成熟し安定感あるステージになっていた。

アンダーオース(Photo by Takeshi Yao)
そして、熱狂のフェスはいよいよヘッドライナーへ。

Sable Hills(Photo by Leo Kosaka)
いよいよ感動が止まらない。HYPER STAGEにて、Crossfaithの登場だ。「Monolith」から始まったステージにて、耳をつんざく歓声とともに激情の炎が燃え上がる。そこからは怒涛のコラボレーション祭りが開始。ウォーガズムが参加した「God Speed feat. WARGASM」では、炎の演出の背後でエレクロニックな爆音を噴射。その後はエンターシカリのRou Reynoldsを呼び、酩酊するような映像とともに「Freedom」をプレイする。

Crossfaith&Wargasm(Photo by SHOTARO)

Crossfaith&Enter Shikari(Photo by SHOTARO)
次はヒップホップとのクロスオーバーだ。Jin Doggとともに「None of Your Business」を、ralphとともに「Gimme Danger (feat. ralph)」を披露し会場を揺るがせた。続いて、さらにサプライズ! なんと、HEY-SMITHが乱入し「Come back my dog」で共演が実現する。このあたりになると、もはやフロアは地鳴りのような歓声が鳴り響き人も動き回り、とんでもない宴と化していた。

Crossfaith&Jin Dogg(Photo by SHOTARO)

Crossfaith&HEY-SMITH(Photo by SHOTARO)
夢のようなフェスはラストスパートへ。「Warriors」ではMAH(SiM)とMasato(coldrain)が、「Countdown To Hell」ではKaito(Paledusk)とTakuya(Sable Hills)が参加しステージは狂喜乱舞の宴に。負けじと、フロアではウォール・オブ・デスが行われ、最後は名曲「Leviathan」でジ・エンド。異常な盛り上がり、最高の汗、最高の涙、最高の笑顔。夢のようなフェスは、大成功のうちに幕を閉じた。

Crossfaith&MAH(SiM)&Masato(coldrain)(Photo by cazrowAoki)

Crossfaith&Kaito(Paledusk)&Takuya(Sable Hills)(Photo by cazrowAoki)
それにしても、熱い一日だった。「HYPER PLANET 2025」を体験したことで、2000年代のメタルコア以降を起点としたヘヴィ・ミュージックが実に大きな可能性を生み出してきたことを改めて痛感したのも事実だ。そこではエレクトロニックミュージックもヒップホップも重低音のもとでひとつの轟音サウンドと化し、すでに新しいひとつのカルチャーとして定着していることが可視化された。そして、その文化を作り上げたのは、他でもないCrossfaithをはじめとしたバンドたちである。「HYPER PLANET」は、様々な壁が取り払われ、ヘヴィ・ミュージックという観点であらゆるボーダーレスを体現したフェスとして、歴史に名を残すに違いない。最後、Koieは力強く宣言した――「次もまたやるよ」と。「HYPER PLANET 2025」は、これまでのCrossfaithの集大成でありながら、記念すべきスタートにもなるはずだ。今後まだまだ続くであろう、輝かしいヘヴィ・ミュージックの未来へとつながる、第一歩としての。

Crossfaith(Photo by takeshi yao)