【写真】その姿はベールに包まれている
ー13歳から独学でDTMによる作曲を始めたそうですが、きっかけはあったんですか?
magicHour:姉が歌手をやっていて、その活動の手伝いという目的と、昔から音楽が好きで曲作りにも興味を持ちました。生活の中に常に音楽が流れているような家庭環境だったんです。母がピアノを弾いていて、僕もずっとピアノを弾いてました。父親はギターを弾くんですが、サンタナとかレジェンドのギタリストの曲がよく流れてましたね。ジャズもよく流れていました。姉が曲を作っていて、父もたまに歌詞を書いていたので「自分もできるかな」と思って、曲を作ることを始めてみました。その後、自分の家庭教師だった方への結婚祝いに曲を書いてみたら、その曲を聞いた周りの人たちから良い評価をいただき、音楽を通じて人を喜ばせることの楽しみがよりわかるようになったことが本格的に作曲を始めたきっかけだと思います。
ー最初に好きになったアーティストは誰だったんですか?
magicHour:マイケル・ジャクソンですね。
ーどんな風に曲ができていくことが多いんですか?
magicHour:常に頭の中にメロディが流れていて、それを形にしようとして作ることが多いです。「さあ作ろう」と思って作る時もありますね。15歳くらいの頃、DJをやっている友達がいて、一緒にDJをやりながら曲を作ってみました。DTMっていうこともあってエレクトロミュージックを作ってみたら良い感触があって。
ーmagicHourとしての活動を始めたのは?
magicHour: DJをやりながら曲を作るとなるとハウスミュージックやフューチャーベースの曲が主でしたが、それとは違うポップスのような曲も頭に浮かぶことが多かったので、そういったアイデアも形にしていこうとしたのがmagicHourの始まりでしたね。
ーmagicHourの曲は英詞と日本語詞と両方が混ざったものがありますが、意図しているのかそうではないのか、どうなんでしょう?
magicHour:最初に浮かぶのは英語が多いです。でも僕は日本人ですし、英語っぽく日本語を歌うのも面白いなと思っているので、意図的に混ぜることもありますね。
ーアルバム『MAGICHOUR』の1曲目でもあるデビュー曲「Feel The Same」は日本語詞と英詞が混ざった80sなエレクトロチューンですが、どういうイメージで作った曲なんでしょう?
magicHour:magicHourとして活動を始めた初期にできた曲で、ディスコサウンドの曲を作ろうと思ってできました。音楽家としてハリウッドで活躍したいという夢があるのでThe Weekndに提供したいと思って作った曲でもあるんです(笑)。でもThe Weekndにどう曲を送ればいいかわからなかったので自分で歌ってみました。
ーDJだけでなく、バンドやヒップホップクルーを組んだ経験もあるそうですが、magicHourの1stアルバムとしてエレクトロサウンドのポップミュージックを作った理由というのは?
magicHour:サイバーパンクの世界観でアルバムを作りたい気持ちがあって、だったらエレクトロがマッチするだろうなと思いました。
ー「Feel The Same」から始まって、これまでの曲のMVやアートワークはすべて『AKIRA』や『ブレードランナー』を思わせるサイバーパンクテイストになっています。
magicHour:英語と日本語が混ざっている曲が多いですし、僕のエレクトロサウンドにはサイバーパンクの世界観がマッチするんじゃないかと思ったんですよね。これまでのMVは全て、林宋其さんという新進気鋭のクリエーターに作ってもらっているんですが、最初彼がAIでサイバーパンクっぽいイラストの画像を生成してくれて、僕の曲にマッチするんじゃないかと思って、その画像を発展させてMVを作っていきました。『ブレードランナー 2049』は僕の好きな映画のひとつでもあって。機械に感情があるかないかっていうことがテーマになっていて面白いなと思いました。50年後、60年後には、そういったテーマがもっと身近になっていくんじゃないか、でもそれが良いことなのか悪いことなのかっていうことに興味がありますね。
言いたいことは音楽で表現するべき
ー曲ごとに、何かを失っていたり、葛藤していたり、人を強く求めていたり、さまざまな物語が描かれています。架空の物語を作っている感じなのか、実体験を反映したノンフィクションのようなものなのか、どういう想いが反映されているのでしょう?
magicHour:どちらもありますね。実体験が盛り込まれている曲もありますし、人から聞いた話を膨らませている曲もあります。自分をそのシチュエーションに落とし込んだらどう考えるのか、どう思うのかっていうことが主なインスピレーションになってます。だからどちらかというと想像した体験が多いのかもしれないです。今回のアルバムにはサイバーパンクの世界観の中で生活する人々っていうイメージがありました。どんな人がいて、どんな考え方を持っていて、どんなことが起きるのか。そういう視点で歌詞を膨らませていきました。
ー9曲目の「Back to U / Remind Me」という2部構成の楽曲の後半から前向きな曲が続く構成のアルバムになっています。ここで切り替わるということは意識したのでしょうか?
magicHour:意識しました。9曲目の途中から元カノへの未練から前進するみたいな切り替わる感じにしたかったんですよね。そこからどんどんアルバムが前向きになっていく。
ー最後に入っている「MAGIC HOUR」はアルバムを象徴する曲として作ったそうですね。
magicHour:はい。この曲が最終的な結論なんじゃないかと思います。アーティスト名と同じ曲名になっていますが、夕日のマジックアワーを意識して書いた曲です。
ー時空がゆがむようなノイズ混じりのイントロが印象的ですが、それもマジックアワーのイメージから来ているんでしょうか?
magicHour:そうですね。僕が住んでいるバンクーバーは夕日がとてもきれいなんです。その夕日を見て、時空が歪むような、何か感じるものがあって音で表現しようとしました。
ーさまざまなものや情報が溢れ、次から次へと流れていく世界で一番大切な「君」や変わることのない心を歌ったラブソングだと感じました。
magicHour:そうですね。いろいろなことに対する答えが書かれた曲だと思っています。
ーいつ頃からそういった想いを音楽で表現したいと考えていたんですか?
magicHour:昔から考えていたことではあるんですが、それを言葉にしてソーシャルメディアとかにポンと上げてしまったらそれで終わりになってしまいます。そうせずに溜め込んできたからこそ「MAGIC HOUR」という曲ができたんだと思います。言いたいことは音楽で表現するべきだと思ってて。この曲はアルバムの最後にできた曲なんですよね。この曲ができたことでアルバムが完成したなと思いました。
ー初のアルバムを作ってみて、次のビジョンは生まれましたか?
magicHour:いろいろな人に自分の音楽を楽しんでもらいたいということが僕の目標なので、さまざまなインスピレーションをポップな音楽に落とし込んでいきたいですね。出してない曲の中にはエレクトロじゃない曲もたくさんあるので、いろいろなサウンドに挑戦していきたいと思ってます。
ー東京とバンクーバーだけでなく、ニュージーランドや中国に住んだこともあるそうですが、さまざまな場所に住んだ経験はご自身の楽曲に影響を与えていると思いますか?
magicHour:与えていると思います。国によって常識や文化は違いますし。特にバンクーバーにはいろいろな人種が住んでいるので、多様な人種がどう共存していくかっていうことが街のひとつのテーマでもあって。いろいろなカルチャーがありつつも、結局みんな同じ人間だっていうことを感じられるのがバンクーバーが好きな理由でもあります。そういった感覚は今回のアルバムにも反映されていると思いますね。

magicHour
1st Album『MAGICHOUR』
配信中
https://orcd.co/mh_magichour
01. Feel The Same
02. City of Desire
03. Joker (Just Like You)
04. In The City
05. Temporary Lover
06. Blame
07. ILLUMINATION
08. If You Ever
09. Back to U / Remind Me
10. Alright
11. Sunday, Monday
12. Wonderful World
13. MAGIC HOUR