East Of EdenはAyasa(Vn)が中心となり結成されたバンドだ。彼女はメンバーを集めるにあたって、全員が自立した女性ミュージシャンであることを条件にしていたという。
3月19日に行われた「East Of Eden Spring Tour 2025 ~ Seeds Of Hope」のZepp DiverCity公演を観たことで、その狙いが正しかったことがよくわかった。

【ライブ写真ギャラリー(8点)】「East Of Eden Spring Tour 2025 ~ Seeds Of Hope」Zepp DiverCity公演

初ライブからまだ1年と少ししか経っていないにもかかわらず、アンサンブルの安定感がずば抜けている。それでいてメンバー個々の個性で成り立っているのではなく、5人が上手く融和している様子が見て取れる。

ただ、興味深かったのは各楽器の関係性だ。やはり、アンサンブルにヴァイオリンがいるということが特殊。通常、バンドサウンドの中では添え物的な扱いを受けがちな楽器だが、このバンドではリードギターのように全力で疾走する。ロックバンドにおける新たなヴァイオリンの使い方を堂々と提示していると言える。この形は、今後ヴァイオリンありのバンドを組みたいと考えているプレイヤーにとって指針となるのではないだろうか。

その一方、Yukiのギターはリズムギター的な立ち位置だろうか。リード的なヴァイオリンに比べると、バッキングに回る場面が多いように見える。しかも、新加入のMINAも自らが描き出すグルーヴに合わせて、踊るように華やかな演奏を見せるベーシストなので、ベースすらYukiのギターが全体を支えているように見える。派手に動き回らない彼女のプレイスタイルがそう思わせるところもあるのかもしれないが、このバンドの演奏面における屋台骨はYukiなんじゃないかと思わせる。
彼女のプレイが5人の接着剤になっているのだ。「Chasing the moon」でAyasa、Yuki、MINAがセンターに集まりアンサンブルを奏でる光景は、圧巻というよりも、非常に華やか。もちろん、音は重いのに、だ。

East Of Edenライブレポ 音に宿るタフネスと品格

Ayasa(Vn)「East Of Eden Spring Tour 2025 ~ Seeds Of Hope」19日公演 ©East Of Eden

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Yuki(Gt)「East Of Eden Spring Tour 2025 ~ Seeds Of Hope」19日公演 ©East Of Eden

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MINA(Ba)「East Of Eden Spring Tour 2025 ~ Seeds Of Hope」19日公演 ©East Of Eden

先日行ったインタビュー中もカラカラとよく笑う姿が印象的だったMIZUKIのドラミングは、彼女の性格を現しているかのようにすべてを笑い飛ばすかのように爽快。観ていて気持ちがいい。ライブ中盤に披露されたインスト曲「YELLOW CARD」は彼女の作曲。あまりに盛り上がったので、のちのMCで、この曲のパフォーマンスに参加していない湊あかね(Vo)は、「いいなー、混ざりたいなー」と羨ましげだった。演奏面でもうひとつ目を引いたのは「鈍色のラビリンス」。それぞれのパートに見せ場があり、特にAyasaとYukiの絡みはさらなる興奮を煽った。

East Of Edenライブレポ 音に宿るタフネスと品格

MIZUKI(Dr)「East Of Eden Spring Tour 2025 ~ Seeds Of Hope」19日公演 ©East Of Eden

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湊あかね(Vo)「East Of Eden Spring Tour 2025 ~ Seeds Of Hope」19日公演 ©East Of Eden

そして、こんな特殊なスタイルの演奏陣が奏でる音を背負って歌うのが湊だ。まず、歌が上手い。しかし、それだけでこのバンドでセンターに立つことは許されない。
彼女はライブのオープニングで「(前回立ったときに比べて)小さく見える」と言い放った。もちろん、それはバンドの成長の証でもあるのだろうが、なかなか言えることではない。湊のすごいところは、このコメントに代表される度胸。だからこそ、そこに立っているだけでも、その佇まいからパワーが放射されている。

湊の歌唱面に関して改めて言うと、パワフルなボーカルなのだが、決して独りよがりにはならない。気分のままに突っ走るのではなく、しっかりバンドとの調和を意識しているように見える。序盤過ぎの「CROSS∞ROADS」でそのことに気づき、その後も随所でフロントウーマンとしての彼女のあり方に唸ることになる。「Red Line」の途中で急病人が出たときの、すぐさま演奏を止める判断も見事だった。しっかりと周りが見えているのは長年にわたるキャリアのなせる技なのだ。

しかし、パフォーマンスは硬派だが、MCはユルユル。このグッズが売れてないとか、こんなグッズが作りたいとか、次の曲の煽りは誰がやるんだとか、まー、自由。でも、それがライブ全体にいいバランスを生んでいたのだろう。
そして、何より品がある。ロックバンドのライブには欠かせない「お前ら行けるかー!」というセリフがこんなにもギャップがあるバンドがほかにあるだろうか。この雰囲気も唯一無二だ。

湊の誕生日に行われた翌日のライブには、体調不良のためMINAがステージに立つことができなかった。しかし、East Of Edenはただでは転ばない。5人がきちんと揃う場所を、ということですぐさま新たな日程を調整し、4月8日のKT Zepp Yokohama公演の開催が決定。先ほど、品があると書いたが、それ以上に5人はタフだ。本ツアーはKT Zepp Yokohama公演で終わるが、彼女たちは虎視眈々と上を目指している。

East Of Edenライブレポ 音に宿るタフネスと品格

「East Of Eden Spring Tour 2025 ~ Seeds Of Hope」19日公演 ©East Of Eden
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