多くのアーティストにとってそうであるように、go!go!vanillasにとって、日本武道館は非常に思い入れが深い場所である。そして、その思い入れは、回を重ねるごとにいっそう深いものになりつつある。
2025年3月8日(土)、9日(日)の2日間にわたり行われたgo!go!vanillasの3度目の日本武道館公演。1度目は、コロナ禍真っ只中の2020年11月。当時の感染拡大防止のガイドラインに則り、キャパシティ 50%以下での開催だった。2度目は、2022年9月。1度目の時に結んだ 「次は満員の武道館で」という約束を叶え、フルキャパシティでの公演を実現。そして、今回の3度目の公演は、2度目のステージで「次は2days」と宣言したとおり、2日間にわたる開催となった。今回は、2daysの2日目、3月9日(日)の公演をレポートしていく。

【写真】go!go!vanillas、3度目の日本武道館公演(全11枚)

今回の日本武道館公演は、2024年11月にリリースしたアルバム『Lab.』を提げて開催したバンド史上最大規模の全国ツアーのアリーナ編に位置付けられるもの。ライブハウス&ホール編とは異なり、サポートメンバーとして、井上惇志 from showmore(Key)、山田丈造(Tp)、曽我部泰紀(Sax)、Takumadrops(Key)の4名を迎えた特別編成「バニラズエイト」でのステージングとなった。

1曲目の「HIBITANTAN」から、総勢8名によって鳴らされる極上のバンドアンサンブルに息を呑んだ。多彩にして、重層的。8人の音がそれぞれ自由に響き合いながら、同時に、分かちがたく結びつき合い、武道館全体を丸々と包み込むような豊潤なフィーリングをふりまいていく。
最新アルバム『Lab.』における音楽的探求の結実が、ライブの場で、さらにスケールアップ&グレードアップして鳴り渡る展開に、冒頭から深く引き込まれてしまった。

牧達弥(Vo・G)は、1曲目から「みんな、声を聞かせて!」と呼びかけ、勢いよく客席にマイクを託して壮大な大合唱を巻き起こしてみせる。「青いの。」においても、熱いコール&レスポンスが次々ときまり、長谷川プリティ敬祐(B)が「過去最高の日にしよう!」と呼びかけて幕を開けた「デッドマンズチェイス」では、観客の一斉ジャンプが幾度となく巻き起こった。「Super Star Child」では、牧が「日本武道館、俺たちの音、聴こえてるかい?」「君の声で歌ってくれるかい?」と問いかけ、観客は、〈君の声で聴かせて 色褪せないように〉という同曲の歌詞に応えるように、バンドのパフォーマンスに渾身の歌声を重ねていく。続けて、「みんなの人生がビューティフルであるように」という願いの言葉を添えて、「LIFE IS BEAUTIFUL」を披露。そして、柳沢進太郎(G)の「子どもに返れるかい、日本武道館!」「赤ちゃんまで返ろうぜ!」という力強い呼びかけから「クライベイビー」へ。まだ前半戦にもかかわらず、凄まじい一体感と高揚感だ。

go!go!vanillas、3度目の日本武道館公演で刻んだ偉大な通過点

Photo by 西槇太一

ここで牧が、「最高の仲間を加えた『バニラズエイト』でお送りしています」と、今回の特別な編成について触れ、4名のサポートメンバーを、「マブであり、ラブです」とめいっぱいの愛を込めて紹介する。それぞれがソロプレイを炸裂させ合ったメンバー紹介のコーナーを経て届けられた「クロスロオオオード」では、観客が高く上げた両手を左右に振りながら、バンドのパフォーマンスを鮮やかに彩る一幕も。揺れを感じるほどの一斉ジャンプが巻き起こった「マジック」の後に届けられたのは、昨年以降、新フェーズに突入した今のバニラズを最も象徴する新たな代表曲「SHAKE」だ。そこはかとない憂いを帯びたピアノソロが響く中、牧は、「ただただ愛し合いましょう」「ラブを確かめ合おう」と呼びかけ、観客とコール&レスポンスを重ねていく。次第に観客がスマホのライトを点灯し、日本武道館全体が白い光で満たされていく。


go!go!vanillas、3度目の日本武道館公演で刻んだ偉大な通過点

Photo by RENZO

牧は、その光景を前に「美しい!」と告げた後、「完璧! この後も混ざり合っていこう!」と呼びかけ、曲へ突入。牧は、歌い出しの歌詞を〈白々しく光る「東京」の灯りに〉と替えて歌い、また、リズムに合わせてステップを刻み、時おり軽やかにターンをキメながら、上質なダンスフィーリングを共有していく。ロックンロールの根源はダンスミュージックであることを思い起こさせてくれるような、あまりにも素晴らしい名演だった。また、サックスとキーボードによるジャジーなセッションを経て届けられた「Persona」も、既に新たなライブアンセムとしての堂々たる輝きを放っていて、最新アルバム『Lab.』における音楽的探求が、既にライブ表現へと高らかに昇華されていることに驚かされた。

その後も、久々の披露となった柳沢のボーカル曲「Penetration」、牧の「冬から春に向かっていく歌を聴いてください」という言葉を添えて披露された「バイバイカラー」が立て続けに届けられ、また、コロナ禍真っ只中の2021年に制作したアルバム『PANDORA』から、「手紙」「馬の骨」が2曲続けて披露される展開も用意されていた。リリース当時は、キャパシティが制限されたり、声出しがNGとなっていたが、今回は、満を持して、満員の武道館での披露となった。この2曲を披露する時のメンバーの晴れやかな表情が忘れられない。

1度目、2度目、そして、今回の3度目の武道館公演。一つひとつ夢を叶えてきた軌跡を振り返った牧は、「夢って叶うよ」と深い実感を噛み締めるように呼びかけた。ジェットセイヤ(Dr) は、「次は5days」と新たな夢を語り、牧は「だったらもう7daysいっちゃおう」と返し、すかさずセイヤは、「東京ドームやりたい」「夢は叶う。お前と、お前と、お前と、やりたーい!」と叫んだ。会場全体から温かな拍手が巻き起こる中、いよいよライブは終盤戦へ突入。
「平安」では、熾烈な炎の特効がステージを熱く彩り、牧の「さぁ、今日一番のぶち上がりみせてくれ!」という豪快なアジテーションを受けて、並々ならぬ熱狂が会場全体に巻き起こる。続く「one shot kill」でも炎の特効が容赦なく炸裂し、「来来来」では、武道館の天井に曲名の三文字が大々的に映し出されるダイナミックな演出も。これまで幾度となく披露されてきた「エマ」が「バニラズエイト」のパフォーマンスによって新しい響きを放ち、続く「平成ペイン」では、曲の終盤、柳沢が、練習を重ねてきたサックスを高らかに響かせるスペシャルな一幕も。一番最後のソロパートもばっちりキマっていた。

go!go!vanillas、3度目の日本武道館公演で刻んだ偉大な通過点

Photo by 西槇太一

本編を締め括ったのは、温かく優しい響きを放つバラード「Leyline」。牧は、「この世界に、絶対に幸せになる場所はあるから」と深い確信を伝え、しんどくなったり、孤独を感じたりした時に、「この曲を聴いてほしい」と語った上で、同曲の一つひとつの歌詞を丁寧に歌い届けてくれた。〈You & I ひとりぼっちじゃない〉〈You & I 悲しみも全部半分こで ひとりとひとりがひとつになったなら 無念だ 無念だって あきらめかけていたコトをしようよ〉不条理や不平等に満ちたこの時代において、そうしたストレートな希望のメッセージを、まっすぐ、衒いなく伝え抜いていく姿に、強く心を震わせられた。深く胸を打つ感動的なクライマックスだった。

アンコールでは、まず、中盤に続き、『PANDORA』から「ロールプレイ」を披露。牧は、「曲の数だけで言ったら、5daysできるんじゃないかな」とこれまでの軌跡を振り返りつつ、「おもしろいことたくさんしていきましょうね、みんなで」と観客に呼びかけた。悔しいこと、悲しいこと、もう立ち直れないと思うこともたくさんあるかもしれない。牧はそう前置きしつつ、だからこそ、「優しく自分を労ってあげましょう」「自分を大事にしよう」と語りかけた。


「まだまだ続けてたいからさ、元気でいてくれよ」「死ぬまでやろう」「君とやろう」。優しくも、力強いトーンでそう呼びかけた後に披露されたのは、アルバム『Lab.』のラストを飾る快活なロックンロールナンバー「Moonshine」だった。曲の終盤、スクリーンにエンドロールが流れる中で歌い届けられた〈死ぬまでやろう〉という渾身の一節に、メンバーのバンドに対する深い覚悟とファンへの並々ならぬ愛を感じた。ラストは、全てのライトが点灯し、会場全体が明るく照らし出される中で披露された「FUZZ LOVE」。去り際に牧が残した「まだまだやろう!」「死ぬまでやろうぜー!」という熱烈な呼びかけの余韻が、いつまでも心に残り続けている。3度目の武道館公演は一つの偉大な通過点に過ぎず、これからもバニラズは、愛するファンと共に次の夢を追いかけ続けていく。これから先のバニラズの未来への期待が際限なく高まるような、あまりにも素晴らしい一夜だった。

セットリスト
SE Lab.
1. HIBITANTAN
2. 青いの。
3. デッドマンズチェイス
4. Super Star Child
5. LIFE IS BEAUTIFUL
6. クライベイビー
7. クロスロオオオード
8. マジック
9. SHAKE
10. Persona
11. Penetration
12. バイバイカラー
13. 手紙
14. 馬の骨
15. 平安
16. one shot kill
17. 来来来
18. エマ
19. 平成ペイン
20. Leyline
EN1. ロールプレイ
EN2. Moonshine
EN3. FUZZ LOVE

プレイリスト:https://lnk.to/ggvLab.TOUR_Budokan2PL

<ライブ情報>

go!go!vanillas Hall Tour 2025-2026
2025年10月14日(火)【埼玉】大宮ソニックシティ 大ホール
2025年10月23日(木)【栃木】宇都宮市文化会館 大ホール
2025年10月31日(金)【名古屋】Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
2025年11月1日(土)【大阪】大阪オリックス劇場
2025年11月14日(金)【長野】長野市芸術館メインホール
2025年11月24日(土)【宮城】東京エレクトローンホール宮城
2025年11月28日(月)【北海道】カナモトホール
2026年1月11日(日)【広島】上野学園ホール
2026年1月12日(月)【香川】サンポートホール高松 大ホール
2026年1月30日(金)【福岡】福岡市民ホール 大ホール
2026年2月2日(日)【熊本】熊本県立劇場 演劇ホール

go!go!vanillas Arena Tour 2026
2026年3月22日(日)【兵庫】GLION ARENA KOBE
2026年4月19日(日)【東京】TOYOTA ARENA TOKYO

特設サイトURL:https://ggvtour2026.jp
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