彼らがアリーナツアーを行ったのは、今回が6年ぶり。
その流れを受けて行われた今回のアリーナツアーは、これまでの数年間を通して深めてきた、ファンやバンド仲間をはじめとした4人にとって大切な人たちとの絆を、アリーナという大きなスケールの中で確かめ合い、そして、さらに深めていく機会となった。この記事では、4月13日(日)に開催された横浜アリーナ公演2日目の模様をレポートしていく。
【画像】THE ORAL CIGARETTES、アリーナツアー(全27枚)

Photo by Ryotaro Kawashima
恒例の4本打ちの後、オープニング映像へ。スクリーンに映し出されるのは、地球を支配することを企む侵略者たち。彼らからしたら、人類は、自ら滅亡へと向かってゆく愚かで醜い生き物に見えているらしい。そこに、警報がけたたましく鳴り渡り、侵略者たちのほうへ、人類の生き残りである4人の男たちが攻め込んでいることが伝えられる。そして、スクリーンにバンドのロゴと4人のシルエットが大々的に映し出される。まさに、救世主(Savior)の登場だ。メンバー紹介映像に観客の大らかなハンズクラップが重なり、そして、山中拓也(Vo・G)が「横浜、かかってこい!」と力強く叫び、最新アルバムのオープニングナンバー「Bitch!!」へ。大量の炎がステージを覆う中、山中は、「横浜、声だせ!」「おい、聞こえねえぞ!」と豪快に観客をアジテーションしながら熱烈な大合唱を巻き起こしていく。
続けて、アルバム序盤と同じ流れで「DIKIDANDAN」へ。スクリーンに映し出されるのは、大量にはびこる異形のクリーチャーたち。観客は、4人と共に、そうしたクリーチャーと激闘を繰り広げるように、懸命に歌声と手拍子を重ね、ヘドバンを繰り返していく。「席あるとかないとか関係ないぞ」「いつもどおり遊べ!」。山中は、そう呼びかけながら花道を闊歩し、会場全体をさらなる熱狂へと導いていく。続く「BUG」における、観客による合いの手のコールや、腕を上下交互に振るダンスが次々ときまっていく展開も圧巻だった。

Photo by SHOTARO
最初のMCで、山中は、この数年間、ライブハウスを中心に周ってきたことを振り返りつつ、「6年越しに皆さんが(アリーナに)集まってくれたこと、すごく嬉しく思っています。本当にありがとうね」とバンドを代表して感謝の想いを伝えた。続けて、今回の横浜アリーナ公演に対する意気込みを語る。山中は、3月、MY FIRST STORYの神戸公演にゲスト出演した日、気持ちが前のめりすぎて間違えて一度横浜アリーナに向かってしまったという。そして、そのエピソードに繋げて、「というわけで、大好きな親友を呼んでます」と告げ、MY FIRST STORYのHiroを迎え、共に「BLACK MEMORY」を披露。どよめきにも似た大歓声が巻き起こる中、山中とHiroによる熾烈なマイクリレーが鮮やかに展開していく。
序盤から大きなサプライズがかまされたが、まだまだライブは始まったばかり。今回のライブにおいて特に大きな存在感を放っていたのが、冒頭の3曲を含む最新アルバム『AlterGeist0000』の収録曲たちだった。「OD」では、ダークでメルヘンチックな世界へと観客を深く誘い、一転して、「SODA」では、まるで深淵から晴れやかな空へ向けて一気に飛翔するかのような晴れやかなフィーリングを会場全体に満たしていく。観客が高く上げた手を左右にウェーブさせながら4人のライブパフォーマンスを鮮やかに彩った「UNDER and OVER」も、深く胸を打つ名演だった。
山中は、即完となった1月のライブハウスツアーには来たくても来れなかった人がたくさんいたことを振り返りつつ、今回のアリーナツアーで、そうした人たちとやっと会えたことの歓びを伝えた。続けて、昨年10月以降のライブ活動休止中も応援し続けてくれた一人ひとりのファンに向けて、「ただいまって改めて言いたい」「帰ってきました、オーラルです」と告げた。会場全体から届けられる大きく、温かな拍手。メンバー4人の深い感慨に満ちた表情が忘れられない。山中は、涙を手で拭いながら、「めっちゃ嬉しい、ありがとう!」と改めて感謝の想いを伝えた。そして、ライブ活動休止中を含めてずっと支え続けてくれた大切なファン、また、信頼するバンド仲間やスタッフに対して、これまで受け取ってきた愛を音楽で返していくことを宣誓。
ここから後半戦へ突入。ハイライトの連続であったが、「『AlterGeist0000』から、あなたのヒーローに捧げます」という言葉を添えて披露された最新アルバムの収録曲の一つ「Savior Of My Life」は、今回の公演の中でも屈指の名演だったように思う。「DIKIDANDAN」の時と同じように、異形のクリーチャーたちがスクリーンに大量にはびこる中、4人の歌と音塊が、まるで熾烈な闘いに身を投じていくような熱烈な気迫をもって轟いていく。やがてスクリーンにバンドのロゴが高らかに映し出され、中西雅哉の鮮烈なドラムを受けて、山中、鈴木重伸(G)、あきらかにあきら(B・Cho)の3人が花道の先端へと繰り出していく。曲の最後に歌い届けられたのは、〈You were my savior〉という渾身のライン。4人がファンの存在に救われていたように、一人ひとりのファンも4人の存在に救われている。そうした救い合いの輪を、横浜アリーナの巨大なスケール感をもって感じられて、強く心を震わせられた。

Photo by Ryotaro Kawashima
山中は、「どんどんどんどん、ほんまに満たされていってますわ。
大量のスモークが炸裂した「DUNK feat.Masato (coldrain)」、大量の炎が飛び交った「Red Criminal」を経て、本編ラストのMCパートへ。山中は、20代の頃は、漠然と上を目指したい、規模を大きくしたい、とがむしゃらになっていて、近くにいる大事な人たちのことがしっかり見えていなかったと振り返った。「やっぱり、近くにいる人を大切にしないと意味がない」。そう告げた山中は、昨年のライブ活動休止中、いろいろな仲間のバンドが、自分たちの代打を務めてくれたり、オーラルの曲をカバーしてくれたりしたことを振り返った。「一番辛い時に書いた曲を、みんながこぞってカバーしてくれた」「苦しかった20代が報われた気がした。本当に感謝しかない」。
ワンマンライブのアンコールにおける恒例となっている中西の「まさやんショッピング」を経て、山中がバンドを代表して、「みんなとこれからも長い間一緒にいたい」「浅い関係じゃなくて、深い関係でいたい」「好きな人と一緒に仕事する、好きなファンと一緒にライブする、そういうバンドでいたい」と告げ、「優しさの輪」「信頼の輪」を大きくしていくことによって、みんなと一緒に上を目指していきたい、と自分たちのロックバンドとしてのビジョンを語った。そして、アンコールとして「YELLOW」を披露。一人ひとりの観客がスマホの光を存在証明として掲げ、会場全体が眩く照らし出される中で迎えた、あまりにも感動的なクライマックスだった。

Photo by SHOTARO
「これから先もあなたたちと一緒にいたい!」「今日はありがとうございました!」最後に山中が伝えた言葉の熱い余韻が、いつまでも心の中に残り続けている。仲間のバンド、信頼するスタッフ、そして、4人を信じて応援し続けるファン。大切な人たちからもらった愛を、音楽を通して大きくして返していく。そうしたオーラルの旅路は、またここから続いていく。
セットリスト
1. Bitch!!
2. DIKIDANDAN
3. BUG
4. BLACK MEMORY feat.Hiro (MY FIRST STORY)
5. ワガママで誤魔化さないで
6. OD
7. SODA
8. GET BACK
9. UNDER and OVER
10. 愁
11. A-E-U-I
12. PSYCHOPATH
13. Savior Of My Life
14. 狂乱 Hey Kids!!
15. カンタンナコト feat.SKY-HI
16. DUNK feat.Masato (coldrain)
17. Red Criminal
18. 5150
19. See you again
EN1. YELLOW