2021年の「米ビルボード・ミュージック・アワード」にて、東南アジア出身アーティストとして初めてトップ・ソーシャル・アーティストにノミネートされたフィリピン発5人組ボーイズポップグループ=SB19(エスビーナインティーン)。彼らがこれまでリリースしてきた『Pagsibol』『PAGTATAG!』に続く三部作の最終章を飾る新作EP『Simula at Wakas (SaW)』を完成させた。


今回のインタビューでは、メンバーのパブロ、ジョシュ、ステル、ケン、ジャスティンに本作についてはもちろん、SB19が今どんなグループになっているのか。フィリピンの音楽シーンでどんな存在になっているのか。日本の音楽やアニメなどのカルチャーへの想い、5月31日からスタートした「Simula at Wakas World Tour」への意気込み。そして、A'tin(※SB19ファンの呼称)へのメッセージも語ってもらった。

ーRolling Stone Japan初登場ということで、まずはメンバー5人それぞれに自己紹介をお願いできますでしょうか。

ジョシュ:ジョシュです。メンバーの中ではいちばん年上だけど、最年少に見えるよね。あとは、自分についてなんて説明すればいいんだろう……ゲームが大好き(笑)。それもあってか、いろいろ作戦を練ることも大好きなんだ。

パブロ:僕はパブロです。グループの中で一番格好良いメンバーだよ(笑)。僕は音楽制作とバイクを乗り回すのが大好きで……あとは何があったかな。
あ、バスケをやるのも大好き! そして、SB19のリーダーを務めさせてもらっています。よろしくお願いします。

ケン:ケンです。僕は大の車好き。日産、TOYOTA、マツダなど日本の車も大好きだし、日本のラップやバンドも大好きなんだ。あと、自分で音楽プロデュースや曲作りもしています。

ジャスティン:僕はジャスティン。日本で僕らのプロモーションをしてくれている皆さんとお会いできてうれしいです。自分は最年少メンバーで、アートが好きです。絵を描いたり、脳内でイメージしたものを形にするのが好きなんだ。

ステル:ステルです。自分をどう紹介すればいいか分からないけれど……パフォーマンスが大好き。
歌うことも踊ることも好きなんだ。以上です(笑)!

ー自分たちでは、SB19はどんなグループだと思いますか?

ジョシュ:僕らはメンバー5人全員で歌詞を書いて、自分たちで楽曲のプロデュースも行っている。実験的なことに取り組むことが大好きなグループで、結成当初から新しいことにチャレンジしてきたんだ。流行りや決まりきったスタイルは追わず、独自の場所や道を切り拓いて、音楽や振り付けに関しても最もオーセンティックな手法を心がけている。

パブロ:5人組だからこそ、曲作りにはメンバーそれぞれの得意なスタイルを取り入れて、SB19独自の作品づくりを心がけている。今回の新作『Simula at Wakas (SaW)』もEP全体を通してメンバーそれぞれの持ち味を活かすようにしているので、いろんなジャンルの音楽を楽しめると思うよ。

ーそんなSB19のホームであるフィリピンの音楽シーンでは、どのような音楽ジャンルが今は流行っているのでしょう?

ジョシュ:フィリピンでは多くのジャンルが人気だよ。ポップス、ヒップホップ、インディーバンドもそうだし、最近ではP-Pop(フィリピン独自のポップス)の人気が目覚ましい。一言では言えないほどいろいろな音楽が聴かれているし、フィリピンの音楽業界は今飛躍的に成長していて、僕らもその一員として嬉しいよ。

パブロ:その中でもフィリピンで長らく人気があるのは、インディーバンド、ヒップホップ、バラード系かな。

ーそのシーンの中で、SB19はどのような立ち位置にいるグループだと思いますか?

ジョシュ:フィリピンの音楽シーンと共に僕らは進化を続けて、先ほども言ったように独自の立ち位置も築いている。フィリピン国内でもユニークな作品作りを目指しているグループだと思うよ。
だから、自分たちを何かにカテゴライズするのは難しい。自慢しているように思わないでほしいんだけど、僕らの音楽は多くの人にインスピレーションを与えながら、型破りなスタイルを創造しているんだ。

パブロ:自分たちの音楽をひとつのジャンルで固めたくないんだ。音楽制作に挑む度に、過去に学んだことや経験してきたことを取り入れようとしている。メンバーそれぞれに自分の楽曲のプロデュースを手掛けているからね。それぞれが得意とするスタイルをひとつの楽曲に取り入れようとしている。だから、僕らの曲を聴くとまるでジェットコースターに乗っているような気分になると思うよ。ヒップホップの要素が聴こえてきたり、ボーカル担当に焦点を当てたポップサウンドや、ラップ担当にスポットを当てる要素も入っていたり。つまりSB19は、SB19という新たなジャンルを築いているんだ。

ー世界的ヒットを記録した「GENTO」では、BENTOにかけ、ダンスに弁当箱を指し示すような振り付けも盛り込まれていますが、日本のカルチャーからの影響などがあれば教えてください。

パブロ:ここフィリピンでは、日本のアニメが大人気。

ケン:アニメ大好き!

パブロ:日本食もね。
僕らは日本食が大好き。

ステル:その通り。

ジョシュ:僕は日本食なら毎日でも食べれちゃうよ。

パブロ:僕らのつくる音楽は、いろんな文化から受けた影響の坩堝なんだ。「弁当」を歌詞や振り付けに取り入れたのも、お弁当ってバランスが取れている完全な食事じゃない? お弁当同様、成功も総合的にバランスが取れていて、優れていなければ掴むことはできない。金賞を手にするためには「弁当、弁当」であるべきと歌っているんだ。

ーちなみに、日本のアニメはどんな作品が好きなんですか?

パブロ:選ぶのは難しい!

ケン:僕は『NARUTO』『ONE PIECE』『地獄楽』……たくさんあるけど、僕の中の第1位は『スラムダンク』、2位は『ドラゴンボール』、3位は『NARUTO』かな。他にも好きなアニメはたくさんあるよ!

ジョシュ:『進撃の巨人』。

ケン:僕は『進撃の巨人』の作者の事務所に行ったことがある。

ジョシュ:本当に!?

ケン:作者にも会ったんだ!

パブロ:僕は今『名探偵コナン』を観返している。今、ちょうど新しい劇場版が公開されているよね。

ジャスティン:僕は『ポケモン』と『僕のヒーローアカデミア』が大好きだよ。


ステル:僕はアニメを観ないけど、日本の文化と日本食は大好きなんだ。カレーはメッチャオイシイ。カレーはメッチャオイシイ。メッチャオイシイ!

ー日本のカレーも大好きなんですね! では、日本の音楽シーンにはどんな印象を持たれていますか?

ジョシュ:子供の頃からJ-POPを聴いているし、刺激を受けてきた。アニメを心から愛して観て育ってきた僕らは、そこで知った日本の音楽もたくさんあるんだ。あと、僕は『ダンスダンスレボリューション』でよく遊んでいたんだけど、あれも日本のバンドやアーティストが手掛けたアニメの主題歌が多く使われていた。だから、僕らはK-POPが流行る前から日本の音楽が大好きだったんだよ。

ステル:僕は2014年に日本に半年間住んでいたこともあって、J-POPは馴染み深い音楽なんだよね。日本の音楽を初めて聴いたとき、すごく直球で健全だと感じたんだ。そもそも日本語の響きが僕には音楽みたいに聴こえる。誰かが日本語で話していると、僕の耳には曲のように聴こえる。言語そのものが素敵だし、キャッチーだと思う。
だから、日本の曲を聴くと魅了されるんだよ。日本の曲は有意義で直球だから大好きなんだ。

パブロ:そして、カレーも好き。

ジャスティン:ONE OK ROCKもよく聴くよ。

ステル:あと、新しい学校のリーダーズ。それからAKB48も。

ジャスティン:LiSAも聴く。それから僕は&TEAMとコラボしたときに彼らの曲もよく聴いていたよ。

ーケンはSKY-HIとコラボしていましたよね。今後、日本のアーティストとコラボレーションできたら誰としたいですか?

ケン:千葉雄喜。「チーム友達」が好きなんだ。

ジョシュ:コラボしたい相手はたくさんいる。ワンオクともコラボしてみたいし、僕たちの創作性を評価してくれて、互いに音楽的に貢献できる日本のアーティストだったら誰とでもコラボしたいよ。

ー皆さんの日本のカルチャーへの愛を感じられて嬉しいです。そろそろ新作EP『Simula at Wakas (SaW)』についても掘り下げていきたいのですが、本作のタイトルにはどのような意味やテーマが込められているのでしょう?

パブロ:EPのタイトルは英語に直訳すると「beginning and end」(始まりと終わり)なんだ。このEPの制作に取りかかる際に僕らは「どうすれば今までの作品を超えることができるだろう?」「僕らの可能性の限界を超えるにはどうすればいいのだろう?」と自分たちに問いかけた。そして、その問いに答えるべく、僕らは事前にすべてのプランニングを行い「じゃあこれがすべての終わりだったらどうする? もしくはこれからがすべての始まりだったらどうする?」と自問自答をした。これまでリリースしてきた『Pagsibol』『PAGTATAG!』に続く三部作の最後を飾るこのEPに僕らのすべてを込めたかったんだ。悔いなく全力投球して三部作の幕を閉じたかった。だから、今作では僕らと同じような情熱を持つ頭脳明晰な人たちとのコラボを試みた。僕らの音楽を最大限に活かしてくれる世界中のプロデューサー陣と仕事をした。メンバーも全員振り付けからMVの監督、曲や歌詞づくりなど全力で制作に挑んだよ。

ーその制作の中で、具体的にはどんなところに拘りましたか?

パブロ:長い歳月を通して音楽は僕らの日記のような存在になった。だからこそ、曲のメッセージ性は絶対に妥協しないことに拘ったし、僕らが経験して学んだことがすべて本作には詰まっている。例えば「DUNGKA!」という曲があるんだけど、「あっち行け」とか「出て行け」とか「どけ」という意味なんだよね。僕らの曲が気に入らず、価値を見出せなかったり貶したりしている人たちに向けた曲なんだ。この曲には僕らのフラストレーションが詰まっている。そんな人たちに「僕らの曲が気に入らなければあちらの開いているドアへどうぞ。どうぞ出て行ってください」と伝えている。わざわざ僕らの曲を聴いて貶す必要はない。あと、ケンが作った「Quit」というロックソングは、ネガティヴなことばかり聞こえてくる今のご時世だけど、そんな世の中だからこそ自分の色を消すべきではないという内容なんだ。自分に嘘をつきながら生きたって生きているうちに入らないからさ。このEPを通して、もっと言うならEP三部作を通して自分たちの物語を綴ってきたので、本当にSB19の日記のような作品になっている。

ーその新作の仕上がりを聴いてどんな印象や感想を持たれました?

ジョシュ:ぶっ飛んだよ。ワクワクしたし、いろんなジャンルの楽曲も取り入れていたから気持ちも晴れやかだった。どの曲もタイトルトラックに相応しい出来栄えで、今回は本当に予想を超える素晴らしい作品が出来たと確信した。だから、タイトルトラックをなかなか決められなかったんだよね。どうしても1曲に絞れなかったから2曲を同時にリリースしちゃったんだよ(笑)。

パブロ:どの曲も良すぎてタイトルトラック向きだったから。最終的に僕らの会社の最高執行責任者が「ふたつのMVを同時に出せばいい」という提案してくれて、全員がそれに合意したんだ。ノリの良いパワフルなパーティトラックと、とても悲しいバラードという組み合わせに僕ら全員満足だよ。稀な戦術だとは思うけれど、僕らには合っていると思う。

ーそんな新作EP『Simula at Wakas (SaW)』、日本のリスナーにどのように響いてほしいですか?

ジョシュ:みんなには好きなように感じ取ってもらいたい。僕たちが偽りのない気持ちでつくったこの作品をみんなにも偽りない気持ちで聴いてもらいたい。僕はいつも「事前に何でも分かっている必要はない」って言っているんだ。悲しいときは悲しく感じたっていいんだよ。フラストレーションを感じたって、すべての答えが出ていなくたっていいんだよ。でも、僕たちの音楽を通してみんながインスパイアされたり、愛する気持ちを少しでも広げることができたらいいなと願っている。世界に僕らの音楽を届け、音楽を通じて僕らを覚えてもらえればと願っている。

ジャスティン:もしかしたら僕らの歌詞は日本人には分からないかもしれない。特にフィリピン語で歌っている箇所はね。でも、僕たちの曲を通じてフィリピンの文化や音楽シーンに興味をもってもらい、他のフィリピンの音楽も聴いてもらえたら嬉しい。

ー2025年5月31日から「Simula at Wakas World Tour」がスタートしますが、どんなツアーにしたいですか?

ジョシュ:準備期間が長かっただけにすごく難しい質問だけど、とにかく楽しみたいと思っている。観客の皆さん、パフォーマンス、すべてにおいて楽しみたいと思っている。とにかく行く先々の都市では皆さんに特別な体験をしてもらえるようベストを尽くしたいと思っているので、本当にワクワクしているよ。

パブロ:前回のツアーより今回のほうがより多くの都市へ行って、より多くのファンと出会い、世界各国をまわるからいろんな文化を体験できると思う。皆にフィリピンミュージックとパフォーマンスを体験してもらいたくてうずうずしているよ。みんなと一緒に音楽を楽しみたいね。

ジョシュ:日本にまた行ける日が来ることも願っています。日本は僕らにとって本当に本当に特別な場所だから、日本でパフォーマンスできる日が来ることを本当に心待ちにしている。

ーでは、最後に。日本のファン、今後のSB19に注目してほしい人たちにメッセージをお願いします。

ステル:A'tin(SB19ファンの呼称)の皆さん、未来の僕らのファンの皆さん。ここ7年間、僕らに注いでもらった愛と応援に大変感謝しています。今まで大変でした。僕たちだけでなく、みんなにとっても険しい道のりでした。だけど、僕らは共にこの道を貫き通した結果、長い歳月をかけてひとつの家族になった。単なるアーティストとファンとの繋がりではなく、家族になりました。毎日、毎秒、僕らにいろんな機会を与え続けてくれる皆さんに感謝しています。そして、SB19の新時代の幕開けに、SB19が辿ってきたこの道のりを皆さんにも体験してもらいたく、共に祝すことが出来ればと思っています。単にSB19を祝すだけでなく、僕らと皆さんを共に祝したい。このメッセージが皆さんに鮮明に届き、響いてくれることを願います。A'tinの皆さんはもちろん、皆さんのお友達やご家族にも響いてもらえれば嬉しいです。ツアーを楽しみにしています。そして、日本のファンの皆さんに再度お会いしたく思いますのと、より大きなステージで以前よりも多いファンの皆さんの前でパフォーマンスできる日が来たら嬉しいです。感謝もしていますし、皆さんのことを愛しています。ありがとうございます。アリガトウゴザイマス。アイシテルヨ!

<リリース情報>

フィリピン発ボーイズグループSB19が語る、三部作完結作に込めた想い、日本カルチャーへの愛


SB19
『Simula at Wakas』
配信中
https://smji.lnk.to/SB19SimulaatWakasRS
=収録曲=
1. DAM | ダム
2. Time | タイム
3. 8TonBall | 8トンボール
4. Quit | クイット
5. Shooting for the Stars | シューティング・フォア・ザ・スターズ
6. DUNGKA! | ダンカ
7. DAM (Extended Ver.) | ダム (Extended Ver.)
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