2024年10月15日からスタートしたTHE YELLOW MONKEYの全国ツアー『THE YELLOW MONKEY TOUR 2024/25 ~Sparkleの惑星X~』が6月13日、Kアリーナ横浜にてファイナルを迎えた。

【ライブ写真ギャラリー】『THE YELLOW MONKEY TOUR 2024/25 ~Sparkleの惑星X~』FINAL BLOCK

昨年5月にリリースされた5年ぶりのニューアルバム『Sparkle X』を携え、約8カ月という長い期間に4つのブロックに分けて実施された今回のツアーは、各ブロックごとに趣向を凝らした選曲を用意。
”BLOCK.1”(2024年10~12月)では『Sparkle X』と3rdアルバム『jaguar hard pain』(1994年)、”BLOCK.2”(2025年1~2月)では『Sparkle X』と4thアルバム『smile』(1995年)、”BLOCK.3”(同年3~4月)では『Sparkle X』と5thアルバム『FOUR SEASONS』(1995年)と、新作と30周年を迎えた各アルバムの楽曲を織り交ぜて進行する内容で、ファンの間で大反響を呼んだ。

そんな中、ツアーの最終ブロックとなる”FINAL BLOCK”はどんな内容になるのか、スタート前から予想合戦が繰り広げられたが、いい意味でその予想を裏切られるセットリストになったのではないだろうか。

ツアーファイナルの会場に選ばれたKアリーナ横浜は、バンドにとっても初めてであると同時に、本ツアーにおける最大キャパの会場。往年のクラシックロックが流れる中、開演時間を迎えると客席からクラップが自然発生する。今回のツアーに何度も足を運んでいる猛者、この日が初めてのTHE YELLOW MONKEYのライブというビギナーなど、会場を埋め尽くすオーディエンスは年代もさまざまで、2016年の再集結以降もバンドが単なるレジェンドではなく現在進行形の存在として幅広い世代に受け入れられている事実に改めて気付かされる。

フロアの熱気が徐々に増していく中、会場が暗転すると大歓声が湧き起こる。そして、オープニングSE「考える煙」に合わせて再びクラップが発生し、ブルーの照明が会場内を照らしていく。すると、ステージを覆う紗幕に紅色の照明が当てられ、美しいピアノの音色に吉井和哉(Vo)の歌が重なっていく。”FINAL BLOCK”の幕開けを飾るのは「アヴェ・マリア」。バンドが1996年に実施したホールツアー『TOUR '96 FOR SEASON ”野生の証明”』のオープニングナンバーにして、現在までスタジオ音源化されていない幻の1曲だ。紗幕に浮かび上がるシルエットと、どこか祈りを捧げるようにも聞こえる吉井の歌声は、強烈な熱気に包まれた会場に神聖さを漂わせる。

曲のエンディングでバンドメンバーがステージに登場すると、吉井の「ようこそ!」を合図に幕が下され、激しいサウンドとともに「SPARK」に突入。
パワフルさとしなやかさを兼ね備えた菊地英二(Dr)のビートに乗せて、ゴリゴリしたベースサウンドでグルーヴ感を作り上げる廣瀬洋一(Ba)、豪快さや艶やかさが混在するギタープレイの菊地英昭(Gt)、華麗なピアノサウンドでバンドアンサンブルに華を添えるサポートメンバー鶴谷崇(Key)が、息の合ったプレイを響かせていく。昨年4月の東京ドーム公演『THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2024 ”SHINE ON”』以降、喉の不調も徐々に回復しつつあった吉井の歌声もこの日は好調のように映り、エネルギーに満ち溢れたパフォーマンスを交えながらライブを進めていく。「SPARK」から矢継ぎ早に「Chelsea Girl」へとつなげる構成も『TOUR '96 FOR SEASON ”野生の証明”』当時と同様の流れで、あの頃を知る者にはTHE YELLOW MONKEYのコアな部分が再現されているように見え、また初めて観る者には結成35年以上を経てもなお衰えることのないバンドの勢いを目の当たりにする貴重な機会になったことだろう。

THE YELLOW MONKEYの旅路に立ち会う――「祈り」と「ロックンロール」のはざまで

Photo by Masato Yokoyama

MCで吉井が「今日は俺たちが一番やりたかったメニューでお届けします。THE YELLOW MONKEYのど真ん中をお見せします!」と述べたように、『TOUR '96 FOR SEASON ”野生の証明”』はTHE YELLOW MONKEYにとっても非常に重要な時期に行われたホールツアー。「太陽が燃えている」「JAM」「SPARK」といったヒットシングルを続出し、5thアルバム『FOUR SEASONS』も初めてチャート1位を獲得するなど、バンドが”確変”期に入ったタイミングであり、現在まで続くTHE YELLOW MONKEYのスタイルがひとつ固まっていく時期のツアーでもある。そんな29年前の伝説的ツアーに最新作『Sparkle X』で見せた現在進行形の姿を重ねることで、何が見えてくるのか……それが吉井が言うところの「THE YELLOW MONKEYのど真ん中」なのだろう。

THE YELLOW MONKEYの旅路に立ち会う――「祈り」と「ロックンロール」のはざまで

Photo by Masato Yokoyama

事実、この日はメジャー1stアルバム『夜行性のかたつむり達とプラスチックのブギー』(1992年)からの「This Is For You」や2ndアルバム『未公開のエクスペリエンス・ムービー』(1993年)収録の「VERMILION HANDS」、「JAM」との両A面という形でシングルリリースもされた『FOUR SEASONS』収録曲「Tactics」に、『Sparkle X』からの「罠」「Beaver」「Make Over」を交えながら披露されたが、スタジオ音源以上に深みや艶が増した往年の名曲と無駄を削ぎ落とした生々しさが際立つ最新曲が並んでもまったく違和感がなかったことが印象的だった。つまり、シンプルさを突き詰めた『Sparkle X』がバンドの「ど真ん中」を見せる作品集だという表れでもあるのだろう。ツアーを重ねていく中でメンバーの体に馴染んだ新曲群は、もはやTHE YELLOW MONKEYのクラシックナンバーと並列にあり、これこそライブバンドの真骨頂なのだとこの日のライブを通して見事に証明してみせた。

ライブ中盤に演奏された「天国旅行」と「Four Seasons」は、この日のハイライトというべき名演だった。『TOUR '96 FOR SEASON ”野生の証明”』当時、「天国旅行」は翌年リリース予定の6thアルバム『SICKS』(1996年)から先行披露された新曲として話題となったが、この曲における吉井の激情的ボーカルと菊地英昭のエモーショナルなギターは年を重ねるにつれて凄みを増していき、この日も心をえぐるような表現で観る者を圧倒。
10分を超えるパフォーマンスながらも長尺さを一切感じさせない、没入感の強い演奏でオーディエンスを魅了した。その流れから披露された「Four Seasons」も、廣瀬と菊地英二と生み出す極上のグルーヴ、菊地英昭の緩急に富んだギタープレイとともに、絶唱と呼ぶにふさわしい吉井の歌が会場の空気を掌握。長期にわたるツアーを重ねる中で、吉井の喉もどんどん強さを取り戻しており、若干掠れ気味ながらも黄金期にも匹敵する歌声を最後まで響かせ続けた。

THE YELLOW MONKEYの旅路に立ち会う――「祈り」と「ロックンロール」のはざまで

Photo by Masato Yokoyama

THE YELLOW MONKEYの旅路に立ち会う――「祈り」と「ロックンロール」のはざまで

Photo by Masato Yokoyama

「皆さんの暗闇を見せて」と呼びかける「ソナタの暗闇」とともに、ライブは終盤戦に突入する。鶴谷が弾くベートーヴェン「月光」に乗せて吉井が「俺たちと君たちは死ぬまでひとつさ。この会場にはスピード違反はないぜ。どこまでも行こうぜ、月光のドライブ!」と語りかける導入が印象的な「MOONLIGHT DRIVE」、吉井の独特なダンスと観客のシンガロングが非常に油の乗った状態の「ラプソディ」と、曲を重ねるごとにライブはクライマックスへと近づいていく。そして、「THE YELLOW MONKEY結成以来ずっと歌いたかったものに通じるというか、身をもってその世界をのぞかせていただくことができた楽曲です」というメッセージとともに、スカビートが心地よい「ホテルニュートリノ」で会場の空気をひとつに束ねてライブ本編を終えた。

アンコールでは「THE YELLOW MONKEY史上もっとも凶暴で血みどろな歌詞でございます」というメッセージとともに、直前の神戸公演で初披露されたばかりの新曲「CAT CITY」を披露する。アルバム『Sparkle X』の流れを汲む、ハードサウンドのロックチューンだが、7月からスタートするテレビアニメ『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』のオープニングテーマということもあってか〈ネコニャンパリ〉など独特のワードセンスが散りばめられており、そのキャッチーさは格別。スクリーンに歌詞が表示されていたことも大きいが、初見のファンも早くも一緒に歌っており、アニメのオンエア後はさらなる人気の拡散が期待できそうだ。

そんな和やかな空気も、続く「SUCK OF LIVE」で一変。
初期THE YELLOW MONKEYならではのグラマラスさが色濃く表れたこの曲では、菊地英昭のギターネックに吉井が自身のマイクを当ててスライドギターのような音を奏で、クライマックスでは両者がキスをして客席から悲鳴のような歓声が湧き上がる場面もあった。「CAT CITY」からの高低差が激しいものの、そこも含めて実にTHE YELLOW MONKEYらしいステージではないだろうか。

メンバー紹介を終え、スタッフやツアーに参加したオーディエンスにも感謝の言葉を送ると、吉井は「正直、去年の10月は今よりも全然声が出なくて、ツアーを続けられるのか不安だったけど、皆さんの祈り、願い、そして歓声、いろんな周波数が、この細胞を活性化させてくれて、どんどん声が出るようになってきました」と改めて感謝を伝える。そして、「THE YELLOW MONKEYの本編は始まったばかりなので、与えられた使命もここからもっと明確になっていく気がしますし、何よりまだまだ俺たち元気なんで。このメンバーの波長と皆さんの波長がぴったり合って、この素敵な空間が生まれていると思うんで、また集まって素敵な波長を生みましょう!」とポジティブなメッセージを届けると、「最後に1996年の重要なロックンロールをお届けします」の一言を添えてラストナンバー「JAM」をプレイ。観客の大合唱を交えながら会場の空気は最高潮に到達し、全35本に及んだ『THE YELLOW MONKEY TOUR 2024/25 ~Sparkleの惑星X~』は完結した。

THE YELLOW MONKEYの旅路に立ち会う――「祈り」と「ロックンロール」のはざまで

Photo by Masato Yokoyama

35年以上のキャリアを持ちながらも、長期にわたるツアーを通じて実にライブバンドらしい生き様を我々に見せてくれたTHE YELLOW MONKEY。このあとも通算26枚目、フィジカルでは約9年ぶりのシングル『CAT CITY』を7月9日にリリースするなど、さまざまな形で我々を楽しませてくれそうだ。

SET LIST
01. アヴェ・マリア
02. SPARK
03. Chelsea Girl
04. 罠
05. Tactics
06. VERMILION HANDS
07. This Is For You
08. Beaver
09. Make Over
10. 天国旅行
11. Four Seasons
12. ソナタの暗闇
13. MOONLIGHT DRIVE
14. ラプソディ
15. ホテルニュートリノ
16. CAT CITY
17. SUCK OF LIVE
18. JAM

「THE YELLOW MONKEY TOUR 2024/25 ~Sparkleの惑星X~」
FINALBLOCKプレイリスト
https://tym.lnk.to/sparkle_final

THE YELLOW MONKEYの旅路に立ち会う――「祈り」と「ロックンロール」のはざまで

『CAT CITY』
THE YELLOW MONKEY
ワーナーミュージック・ジャパン
7月9日発売
予約サイト:
https://tym.lnk.to/26th_Sg

【通常盤】
品番:WPCL-13659 ¥1,100(税込)

M-1:CAT CITY
M-2:CAT CITY(Anime Size)
M-3:CAT CITY(Instrumental)

【初回生産限定盤】
品番:WPCL-13660 ¥1,650(税込)

M-1:CAT CITY
【LIVE TRACKS】( TOUR 2024/25~Sparkleの惑星X~より)
M-2:SHINE ON -福岡サンパレスホテル&ホール- (2025.2.14)
M-3:罠 -広島文化学園HBGホール- (2024.11.7)
M-4:ホテルニュートリノ -神奈川県民ホール 大ホール- (2024.10.15)
M-5:Exhaust -やまぎん県民ホール 大ホール- (2025.4.13)
M-6:ドライフルーツ -熊本城ホール メインホール- (2025.3.7)
M-7:Beaver -愛知県芸術劇場 大ホール- (2025.4.22)
M-8:Kozu -けんしん郡山文化センター 大ホール- (2025.2.11)
M-9:ソナタの暗闇 -札幌文化芸術劇場hitaru- (2024.12.1)
M-10:ラプソディ -フェスティバルホール- (2025.3.17)
M-11:Make Over -倉敷市民会館- (2025.2.23)
M-12:復活の日 -大宮ソニックシティ 大ホール- (2025.1.24)
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