アクロバティックな奏法の裏側、Ibanezとのギター開発、角野隼斗とのコラボレーション。そして「完全新型パフォーマンス」を世界初披露するというフジロックと、12月に開催する東名阪ジャパンツアーの展望まで。変革の渦中にあるマーシンに、今の心境を語ってもらった。(質問作成:s.h.i. 取材・構成:小熊俊哉)
パーカッシブなギター奏法の裏側
─昨年5月の初来日公演では、演奏の素晴らしさに加え、日本語を交えたMCでの観客とのやり取りも印象的でした。ご自身ではどんな手応えを感じていますか?
マーシン:あの日本公演は、僕にとって初めての海外でのヘッドライン・ライブだったんだ。それまでも海外で演奏したことはあったけど、多くはゲストとしての短い出演で、単独ライブっていうのは初めてだった。だから僕にとっても大きなチャレンジだったんだよね。90分のステージをどう構成するか、選曲にも気を配ったし、来てくれたみんなと心のつながりを持ちたいっていう思いも強かった。ライブって演奏するだけじゃなくて、人と人とのコネクションが本当に大事だと思う。
最初は全体をもっと細かく計画してたんだけど、やっていくうちに「これちょっとやりすぎかも」って思い始めて。MCもガチガチに決めずに、セットリスト以外は流れに任せて自然にやるようにした。その結果、最高の思い出になったね。お客さんが声援を送ってくれたり、スカーフを投げてくれた人もいて。それがまた可愛くて、今もベッドルームに飾ってあるよ。

昨年5月、渋谷クラブクアトロにて撮影(Photo by 大瀬良匠)
─あのときは、Ichika Nitoさんとの生共演も実現しましたよね。
マーシン:本当に楽しかったよ。ビデオでは何度か一緒に演奏してたけど、ああやって生で演奏するのは初めてだったから、すごく特別な思い出になった。Ichikaは本当に地に足がついた人で、一緒に仕事しててすごくやりやすいんだよね。彼とはずっと友達としてつながってて、1~2カ月に一度は連絡取り合ってる。お互い英語や日本語も上達してきたから、去年よりもずっとスムーズにやり取りできるようになったよ。
マーシンとIchika Nitoのコラボ曲「I Don't Write About Girls」(『Dragon in Harmony』収録)
─「日本語が上達」といえば、マーシンさんはなぜそんなに日本語が達者なんですか?
マーシン:言語って、日本語で何て言うんだっけ?……ああ、「コトバ」だね。日本語ってさ、ヨーロッパの言語と全然違ってて、そこが本当にユニークで面白いんだよね。フランス語とかイタリア語、スペイン語は似た部分もあるけど、日本語はもう、完全に別世界。
勉強の仕方はけっこうオールドスクールで、テキストを読んで学んでる。日本語を完璧に話せる友達がいて、彼女がテキストブックをくれてさ、それを使ってるんだ。喫茶店に行って、子どもみたいに日本語の本を読んでるよ。本当に初歩のところからやってるし、流暢に話せなくても別にいいかなって。もちろん先生についた方がいいのかもしれないけど、何より「学ぶこと」自体がめちゃくちゃ楽しいんだよね!
─先の来日公演では、あなたの代名詞であるギターボディを叩くパーカッシブな奏法に感銘を受けました。伝統的要素に根ざしつつ、トラップやドラムンベース、インドネシアのケチャも思わせる独自のリズムが印象的でした。そうした多彩なリズム表現は、どんなことを意識してプレイしているのでしょうか?
マーシン:曲をアレンジするときは、いつも「レイヤー(層)」で考えてる。ベースとメロディ、それぞれが一つの層なんだけど、別々のものとして意識してるわけじゃなくて、全体を一つのアイデアとして捉えてる感じなんだ。昔、ライブで作曲プロセスを説明するパフォーマンスをしたときもレイヤーの話をして、それが結構バズったんだよね。
作るときも、まずは大きなイメージを掴んで、それを少しずつ組み立てていく感じ。ドラムンベースっぽくなるのは、そのビートが一番しっくりくるから。別に狙ってそうしてるわけじゃないんだ。ブレイクを入れてみたり、コードがハマらなかったら外して、別のパーカッションを加えてみたり……ジグソーパズルを埋める感覚に近いかな。
数学の問題を解くのにも似てるかもしれない。でも僕の考え方としては「正解はひとつだけ」。たとえばベートーヴェンの交響曲第5番をギター用にアレンジしたとき、もし全部忘れてもう一回ゼロから作ったとしても、同じアレンジになると思う。それくらい”フィットする形”って明確なんだ。曲ごとにスタイルが変わるように見えるのは、その「答え」が違うだけ。でも、そこに映ってる自分のスタイルはいつも変わらずにあると思ってるよ。
マーシンがウィル・スミスに自身のギタースタイルを解説する動画
─来日公演での「Carmen」の映像を見返して気になったのですが、マーシンさんの右手と左手は、メロディ、コード、リズムと役割が絶えず変化していますよね。
マーシン:何も考えてないんだよね。そもそも右手・左手で分けて考えてるわけじゃないんだ。もちろん「今どの曲を弾いてるか」は意識してるけどね。今年に入ってからはライブのために、練習量もリハもどんどん増やしていて。そのぶんマッスルメモリーも活性化していて、ステージ上では音に集中できてる感覚がある。演奏そのものは無意識でも、頭の中では勝手に自動コーディングされてる感じ。だからこそ、感情やパフォーマンスの「ヴァイブス」に集中できているんだと思う。
僕としては、テクニックよりも「体験」の方が大事なんだ。テクニックはあくまで、何かを伝えるためのツールにすぎない。ライブを重ねるたびに、その思いがどんどん強くなってる。今年はもうすでに35公演くらいやってるけど、毎晩「何をどう弾くか」を細かく考えるのは無理だよ。そんなの毎晩テストを受け続けるようなもので、音楽は試験勉強じゃないからね。
「弦の響き」とギターへのこだわりを明かす
─ボディタッピング奏法を習得するためのコツはあったりしますか?
マーシン:一番大事なのはメトロノームを使った練習だね。これは絶対。メトロノームなしでリハーサルしても、何も身につかないと思う。少し厳しい言い方かもしれないけど、それくらい重要なんだ。パーカッシブなリズムを自分と楽器だけで練習してると、ただリズムを刻むだけになっちゃう。でも僕にとっては、リズムとベースラインを同時に鳴らすことが重要で、そのためには頭の中で全然違う領域を使う感覚が必要になる。つまり、マルチタスクが求められるんだ。
だからこそ、メトロノームをゆっくりに設定して、他の要素と組み合わせながら練習するのが大事なんだよね。猿みたいに無意識で手を動かすのではなく、人間らしく考えながら練習すること。その積み重ねで、自然にできるようになっていくと思うよ。
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メトロノームと一緒に演奏するマーシン
─ボディタッピング奏法って、手や爪は痛くなったりしないんですか?
マーシン:その質問はよくされる(笑)。答えはNO。爪も手も全然痛くならない。毎日演奏するたびに痛かったら大変だよ(笑)。そういえばツアー前に「痛い」っていう言葉を日本語で覚えたんだけど、忘れちゃったな……あ、「イタイ」だ!
僕の奏法は、円を描くような丸い動きなんだ。ぐるぐると機械みたいに回転してる感じで、一箇所をずっと打ち続けるわけじゃない。叩く場所をスムーズに移動させながら演奏してるから、インパクトが一箇所に集中しないんだよね。だから爪もまったく問題ない。
ただ、最近ちょっと痛くなったのが手首。キックドラムのパートで手首を使うんだけど、ツアー中に酷使しすぎたら、あと少しで出血しそうなくらい痛めちゃって。テーピングをして演奏したんだけど、ライブが終わる頃にはそのテープがマイクスタンドとかギターとか、観客の方にくっついてたりして。ちょっと改善しないといけないなと。
手首を使ったキックドラム、円を描くようなボディタッピング奏法についても解説した「Guitar World」の動画コンテンツ
─来日公演でもうひとつ驚いたのがナイロン弦の音色、その艶やかな美しさです。「弦を鳴らすこと」については、どんな点にこだわっていますか? チューニング、弦の押さえ方、ボディの共鳴、もしくは材質など、いろんな要素があると思いますが。
マーシン:その質問なら2日間くらい語れるよ(笑)。本当に良い質問だね。まず正直に言うと、僕みたいなパーカッシブ・プレイヤーにとって、音色づくりやサウンドデザインは一番楽しくない作業なんだ。たくさんの技術的な問題と向き合わなければいけないから。たとえば、ハウリングをどう防ぐか、ベース音がブーミー(※過剰に響いてモコモコした低音)にならないようにするにはどうするか。そういったことを会場ごとに調整しないといけない。今度のシンガポール公演はクラシック系のホールだけど、シドニーはロック寄りのヴェニューだったりして。そういう環境によっても全然変わってくるから。
僕にとって理想的なギターの音域は、ピアノに近いんだよね。特にホールで演奏するときは、温かみのある響きを出しやすい。ナイロン弦でも、ブリッジの近くで弾けばシャープで明るい音が出るし、低めの位置をタッピングすればフラメンコっぽい音も出せる。でもそれには、ギターの木材の厚みとか構造が重要で、壊れない強度とのバランスも取らないといけない。
その話でいうと、いつかは自分のギターラインを持ちたいなって思う。でも、ストラディバリウスみたいな、エリートしか手にできないギターにはしたくない。そんなのつまらないでしょ? それよりキッズでも弾けるような形で、僕のスタイルを学べるギターにしたい。そのためには、僕のサウンドを再現するためのバランス設計が必要で、今はIbanezと一緒にすごく良いものを開発してるよ。
─それは気になりますね。
マーシン:ギターのボディは少し広めに設計してあって、奥行きにアシンメトリー(非対称性)を持たせている。ネック側は薄くて、下の方に向かって広がっていく形だね。これによって、温かみのある音色が得られるんだ。僕はなるべく温かい音を出すことを意識してる。ナイロン弦の音ってすごくシャープで、耳障りにもなりがちだから。
それに、フジロックみたいな大音量の環境では、音が埋もれないようにアタックの強さも必要。でも、ボディを叩くときには逆に柔らかい音がほしくなる。だから、素材や構造がとても大事なんだ。今使ってるのは、ブラジル産のパンフェローって木材で、硬さがありつつも音を丸くしてくれる特性がある。僕みたいにハードなプレイをしても、音が厳しすぎないように抑えてくれるんだよね。あと、弦高(弦と指板の距離)はかなり低めにしてる。タッピングをするときは、低い位置のほうが弾きやすいから。
ちなみに、リグ(音響機材のセットアップ)も、去年の東京公演から大幅にアップデートしてる。ペダルボードもすでに2回アップデートしたし、フジロックでは新しいボードをデビューさせる予定。今度のはアウトプットが10系統あって、PAエンジニアがもっと細かく音をコントロールできるような設計になっているんだ。そのおかげで、去年よりも音の密度や明瞭さは確実にアップしてると思う。
角野隼斗を「天才」と呼ぶ理由
─今年3月には、角野隼斗さんとのコラボ曲「I Wish」(原曲はスティーヴィー・ワンダー)もリリースされました。まず、彼と出会ったきっかけは?
マーシン:実は彼と最初に出会ったとき、すごく恥ずかしい姿を見せちゃったんだよね。去年の夏、アルバムのプロモーションで何度かニューヨークに行ってたんだけど。特にアメリカでは「クラシックギターボーイのリサイタル」みたいに誤解されやすくて、「そうじゃないんだよ」って説明するのが本当に大変なんだ。
そんなとき、レーベルの提案で「セントラルパークで無料ライブやろう」となって。最初は「面白そうかも」って思ったんだけど、現地に行ってみたら、まわりは観光客だらけで、スパイダーマンのコスプレしてる人までいて。正直気が進まなかったけど、レーベルの熱心な勧めもあってやることにしたんだ。結果はもう……悲惨だった。人生で一番ひどいパフォーマンスだったと思う。
で、そこに隼斗が来てたんだ! 彼が僕のライブを観るのはそのときが初めてで、「なぜこのタイミングで……」って本当に頭を抱えたよ(笑)。でも、彼はやさしい人で、終演後「飲みに行こうよ」って誘ってくれたんだけど、そのときは恥ずかしさが限界すぎて。こっそり帰っちゃったんだ。
─そんな経緯があったとは。そこから共演に至った経緯は?
マーシン:ポーランドに帰ったあと、彼の音楽を全部聴いたんだ。本当に美しくて心から感動した。もともと僕らはInstagramでお互いフォローし合ってたし、レーベルも同じで、僕は何度も日本に来てるわけだから、一緒に何かやるのは自然な流れだったと思う。
今回はあまり時間がなかったから「ファンクとかジャズっぽい曲で、インプロできるやつにしよう」って話になって、それで「I Wish」を選んだんだ。アレンジは前日に僕のほうで少しだけ用意して、当日、彼の東京のスタジオで3時間くらいセッションした。とても面白い空間で、音楽だけに特化した秘密基地みたいな感じ。あの日、撮った映像は20GBくらい。即興しながらアイデアを出し合い、スタジオのホワイトボードにアレンジとかフレーズを書き込んでいって……ほんとに楽しかったし、すごくやりやすいコラボだったよ。
─実際にコラボしてみていかがでしたか?
マーシン:本当にいい出来になったと思う。でも、セッションそのものはかなり大変だった。僕はジャズ・プレイヤーじゃないし、即興にもあまり慣れてない。だから、一発録りのライブ・レコーディングは、普段のスタジオ制作と全然違う経験だった。僕は細かいアレンジまでじっくり考えてから録るタイプだから。
隼斗はその点、本当にすごかった。彼は天才だね。あそこまで音楽的に発達しているミュージシャンと仕事したことは過去になかったと思う。以前、ジェイコブ・コリアーと少し話したことがあるんだけど、隼斗には彼に近いヴァイブスを感じた。異次元的なものというか。だから圧倒されつつも、彼に食らいつこうと演奏するのに必死だったよ。

角野隼斗×マーシン「I Wish」アートワーク
─マーシンさんと角野さんのプレイスタイルには共通点と違いがあり、それが今回のコラボに良い効果をもたらしているように感じました。どちらもクラシック出身で、グリッドを伸縮させながら呼吸を合わせるリズム処理に長けていますよね。「I Wish」原曲のビートはグリッドを揺らさないファンク的なものですが、そんなお二人のスタイルとの対比が調和を生んでいるように思います。いかがでしょうか?
マーシン:グリッドって観点でいうと、僕のキックドラムにはディアンジェロの影響(=よれたビート)が入ってるね。この曲を作ってた頃に『Voodoo』をよく聴いてたんだ
ご指摘の通り、ファンクってリフの繰り返しが多くて、それが面白さでもある。ジェームス・ブラウンとか、まさにそうだよね。でも今回は、それとはまた違う方向から面白い仕上がりにしたかった。実際、インストのファンクって難しいんだよ。グリッドにがっちりハマりすぎちゃうと面白くなくなっちゃうし。だから今回はクリックも使わず、完全にライブ録音。繰り返しがちょっと多くなったかもしれないけど、それも含めて良い経験だったね。
隼斗に関しては、クラシック寄りのクロスオーバーという印象で、ソロライブを観ると特にそう思う。もちろん、いろんなジャンルに長けているけど、彼の本質はクラシックだと思う。一方で僕は、そこから少し距離のあるところにいて。でも、だからこそ、いいコンビだったんじゃないかな。もしまた一緒にやれるなら、もう少し時間をかけて準備して、即興の要素も活かしつつ、もっとサウンドデザインにこだわったものにも挑戦してみたいね。
─「I Wish」は、フィギュアスケーター・鍵山優真さんの今シーズンのショートプログラムにも使用されています。
マーシン:実は鍵山さんのこと、前から知ってたんだよね。たしか2年くらい前、Instagramでタグ付けしてくれたんだ。とても嬉しかったし、よく覚えてる。他の国にも、僕の曲で滑ってくれたスケーターが何人かいるみたい。こういうクロスオーバーも素敵だよね。いつか僕の曲で滑って、オリンピックで金メダル取ってくれたりしたら最高だなって思う。
フジロックでは「完全新型パフォーマンス」を世界初披露
─『Dragon in Harmony』は素晴らしいデビュー作で、幅広い音楽ファンに響くアルバムだったと思います。リリース後の反響について、どのように受け止めていますか?
マーシン:反応はかなり良かったね。ライブを終えたあと、ヴァイナルにサインを求められることも多くて感無量だよ。パーカッシブなギターの世界で、ここまで野心的な作品はなかったと思うし、よくあるアコースティック・ソロ作品とは一線を画す内容になったことを誇りに思っている。
今回の作品における一番の目標は、「自分はコンテンツ・クリエイターではなく、アーティストなんだ」って証明することだった。その結果、モントリオール国際ジャズフェスティバル、スロバキアのPohoda Festival、そしてフジロックと、世界的に権威あるフェスから声をかけてもらえるようになった。とある有名アーティストからも連絡が来たりして、夢がひとつ叶ったなって。ツアーに関しても、アルバムがあることでレパートリーに軸ができて、すごくやりやすくなった。リリース以降、人生がうまく回り始めたというか。レディオヘッドで言うところの「Everything in Its Right Place」、全てがあるべき場所に収まっていくような感覚がある。
レーベルからの期待もあり、ボーカル曲やポップス寄りの楽曲でヒットを狙ったりもした。挑戦してよかったと心から思っている。ただ、結果的に一番成功したのは(ギター・インストの)「Classical Dragon」や「Bite Your Nails」だった。特に「Bite Your Nails」はカバーされることも多く、インドネシアのキッズがTikTokで数百万ビューを記録したり、テレビ番組で僕の曲を弾いてくれたりもした。Ichikaとの「I Dont Write About Girls」もコアファンにすごく響いたと思うし、「When The Light Goes」は、ポーランドで散歩してたときに公共の場で流れてきて驚いたよ。
─フジロック出演に向けての意気込みを聞かせてください。
マーシン:今回のフジロックは、完全に新しいパフォーマンスになるよ。みんなの気を引くためにそう言ってるわけじゃなくて、本当にそうなんだ。今、自分のサウンドを大きくシフトしている真っ最中で、次のアメリカ~アジアのツアー、それからフジロックのあとにやる12月の日本公演でも、まったく新しいコンセプトを打ち出すつもり。内容についてはまだ詳しくは言えないけど、フジロックで初披露する予定だよ。
セットリストもこれまでとはまったく違うものになる。もちろん『Dragon In Harmony』の曲も演奏するけど、今まで弾いたことのない曲や、これまでとは違うリミックスの曲もやってみたい。ちなみに昨日(取材日の前日)も、「Bite Your Nails」のリミックスを手がけたところで、これまでのスタイルとは全然違う、かなりヘヴィな仕上がりになると思う。
さっきリグについて、アウトプットが10系統あると話したけど、それもヒントになるかもね。なんでそんなにたくさんの出力が必要なのか? エンジニアにそれだけの情報を流す必要があるのか? ぜひ想像してみてほしい。これは僕にとってビッグチェンジであり、ビッグチャレンジでもある。今も世界ツアーの途中で、練習する時間もほとんどないけど、とにかく全力で挑もうと思ってるよ。
最新シングル「Art of Guitar」はニューヨーク拠点のギタリストのRJ Pasinとのコラボレーション
─過去にもクラシックの名曲から、システム・オブ・ア・ダウン「Toxicity」、シャーデー「Smooth Operator」などいろんな曲を取り上げていますよね。今後、特に挑戦してみたい音楽ジャンルはありますか?
マーシン:R&B寄りのカバー、例えばエリカ・バドゥのような路線に挑戦してみたいね。最近よく聴いているディアンジェロの影響もあると思う。でも同時に、これまで以上にオリジナル曲を書き進めていて、実際にやってみたら反応も良くて、僕のSNSでもバズったりして。「カバーじゃなくてもいいのかも」とも思い始めている。だから今は、基本的にオリジナル中心に進めていくつもり。
さっき話したサウンドの変化も、そこにつながっていて。この新しいスタイルにクラシック音楽がどうハマるのかも興味深いね。クラシック楽曲のカバーもいいなとは思うけど、これまでみたいな「壮大なアレンジと一本のギター」っていう路線ではなくなっていくと思う。
もちろんギターは100%使うけど、こういう形のクラシックミュージックって、たぶん誰もやってないんじゃないかな。だから今は、あまり考えすぎずに、まずは実践あるのみ。うまくいけばマーシンの新時代が到来するんじゃないかな。

モントリオール国際ジャズフェスティバル出演時の写真(Photo by Jean-François Gosselin)
─フジロックの出演者で気になるアーティストはいますか?
マーシン:特に気になるのは、HYUKOH & Sunset Rollercoaster。彼らのコラボアルバムは、実験的で本当に素晴らしかった。僕と同じ金曜日に出演するのもクールだし、観ることができたら嬉しいな。カトリエル&パコ・アモロソも気になってる。彼らの音楽はとにかく楽しいし、プロダクションもパフォーマンスも完璧だよね。カトリエルはギタリストでもあって、インスタで僕のことフォローしてくれてるんだ。彼らと同じ土曜日にJane Removerが出るのもいいよね。
─フジロック以外ではどうでしょう?
マーシン:tricotの名前は今後も日本のインタビューでずっと叫び続けると思う。一番好きなジャパニーズ・バンドだから。今度東京に行ったときは、たぶん、(中嶋)イッキュウとビールを飲むことになるんじゃないかな。最近のお気に入りは柴田聡子。『Your Favorite Things』は本当に美しいアルバムだね。にしなの「bugs」って曲も大好き。
日本以外だと「from China to Applachia」っていうプロジェクトが面白かった。アパラチア地方の60代くらいの女性ふたりと、中年の中国人女性がバンジョーと中国の伝統楽器を演奏していて。TikTokでたまたま見つけたんだけど、本当にすごいんだ。

マーシン単独公演
Art of Guitar Tour - Japan 2025
2025年12月12日(金) 大阪・サンケイホールブリーゼ
2025年12月13日(土) 名古屋・THE BOTTOM LINE
2025年12月14日(日) 東京・The Garden Hall
詳細・チケット情報:https://smash-jpn.com/live/?id=4498

FUJI ROCK FESTIVAL '25
2025年7月25日(金)、26日(土)、27日(日)
新潟県・湯沢町 苗場スキー場
※マーシンは7月25日(金)出演
https://fujirockfestival.com
マーシン & RJ Pasin 「Art of Guitar」
再生:https://sonymusicjapan.lnk.to/Marcin_ArtofGuitarRS
マーシン×角野隼斗「I wish」
再生:https://SonyMusicJapan.lnk.to/IWishRS
マーシン入門プレイリスト
再生:https://sonymusicjapan.lnk.to/ThisIsMarcin_PlaylistRS
デビューアルバム『Dragon in Harmony』
再生・購入:https://sonymusicjapan.lnk.to/DrogonInHarmonyRS