【画像】WurtS×PEOPLE 1×Chilli Beans.(全54枚)
1番手は、PEOPLE 1。Deu(Vo, G, B, Other)の体調不良のため、2月以降、バンドとしての活動を休止していたPEOPLE 1にとって、今回のステージは約5カ月ぶりの復活ライブとなった。冒頭、スクリーンに映し出されるのは、「Deuの活動休止から10年」「PEOPLE 1、自然消滅か」というネットニュースの記事の見出し、そして、それを部屋の中で見つめるDeuの姿。脳内で何度もリフレインする「しょうがない」という諦念の言葉。「お前は十分がんばった」「あの時の自分はあれしかできなかった」。そして、そうした言葉たちの狭間を縫うように脳裏に浮かぶ「本当に?」という自問の言葉。

PEOPLE 1(Photo by 小杉歩)

PEOPLE 1(Photo by 小杉歩)
会場全体から送られる「おかえりー!」の声。
MCパートで、Deuは、バンド活動の再開をずっと待ってくれていた観客に丁寧に感謝を伝えた。いつまでも鳴り止まない温かな拍手。そして、「待っててくれたのは、PEOPLE 1の曲が好きだからだと思うので、これからとんでもない曲作っていきます」と宣言。「もうこれからの僕は強いので、どうか、作る作品についてきてくれると嬉しいです。よろしくお願いします」。再び送られる温かな拍手。そして、「強い自分になって、弱い心をもっともっと多くの人につれていこうと思うので」という言葉から、「僕の心」へ繋ぐ。

PEOPLE 1(Photo by 小杉歩)
2番手は、Chilli Beans.。オープニングナンバーは、「See C Love」。Lily(G・Vo)によるエッジーなカッティングに、Maika(B・Vo)が奏でる深くうねるベースラインが分かちがたく絡み合っていき、やがて、激情が滲む重厚なバンドサウンドへと展開。そしてその上に、Moto(Vo)の切実さを帯びた歌声が重なる。先ほどのPEOPLE 1のステージによって熱し切っていた会場の空気が、彼女たちのライブパフォーマンスによって瞬く間に変わっていくのが分かる。
「元気ですか」「盛り上がってますか」「一緒に最後まで楽しんでいってください」。Motoの簡単な挨拶を挟んだ後に届けられたのは、「rose feat. Vaundy」。広大な会場を満たしていく豊かなファンクグルーヴ。MotoとMaikaのマイクリレーが展開していき、さらにその上に観客の歌声が重なっていく。3人のライブパフォーマンスは、会場の広さを感じさせないような温かな親密さを帯びていて、どんなに会場が広くてもいつものように自然体で歌唱&演奏する彼女たちの姿に、彼女たちのロックバンドとしての懐の大きさを感じる。

Chilli Beans.(Photo by Takeshi Yao)
ここでMaikaが、「アーティストがあったかいから、みんなもあったかいですね」「PEOPLE 1の復活ライブ、みんな待ち望んでたんじゃない?」と語り、観客から大きな歓声と拍手が送られる。続けて、Motoが、今回のイベントのタイトル「UPDATE」について、「いいなって思って」「安心した、未来があるって言われてるみたいじゃない」「未来があって、成長できるって感じがしたんです」と告げ、再び温かな拍手が届けられる。そしてMaikaが、「アップデートしていこう」と呼びかけ、海の波音のSEが響く中、力強くホイッスルを吹き、ラテンのテイストを色濃く打ち出した新機軸の楽曲「pineapple!」へ。観客は、Motoの〈楽しもう?〉という問いかけに応えるように、自由に身体を動かしながら、とびっきりロマンチックなフィーリングを3人と共に謳歌していく。リリースされたばかりの楽曲だが、既に彼女たちの新たなライブアンセムと化していて驚かされた。

Chilli Beans.(Photo by Takeshi Yao)
Motoがギターを担ぎ、ここからロックモード全開に。「Mum」では、サポートドラマーを含めた4人が重厚なバンドサウンドを轟かせ、それに刺激されるようにMotoの歌がエモーショナルな昂りをみせる。
ラストを締め括ったのは、最新の2曲。儚く美しいドリーミーな轟音から幕を開けた「just try it」では、Lilyの美しいアルペジオによって観客を深く魅了し、そしてサビでは、まるで自由な風に身を任せてどこまでも飛んでいけそうな軽やかなフィーリングを会場全体に共有してみせる。ラストの「ひまわり」では、イエローのライトが会場を燦々と照らし出す中、3人の美しいコーラスワークが光り、不思議とどこか懐かしい風情がめいっぱいに広がっていく。MCでMotoが語っていたように、バンドの成長を高らかに示した素晴らしいステージだった。

Chilli Beans.(Photo by Takeshi Yao)
2組からの熱いバトンを受け取る形で最後にステージに立ったのは、今回のイベントの舵取りの役割を担ったWurtS。1曲目は、「SWAM」。両手を大きく横に広げ、高らかな歌声を届けてゆく彼の堂々たる勇姿に、さっそく胸が熱くなる。無数のレーザーによって会場全体が鮮烈に彩られていき、ドロップパートでは観客の一斉ジャンプによって客席が激しく波打つ。
「こんばんは、WurtSです!」という力強い挨拶を挟み、直情的なロックナンバー「マイティーマイノリティ」へ。みるみる沸き立つ熱気は、続く「僕の個人主義」へと引き継がれていく。観客の熱さに負けじと、DJのウサギも左右に頭をふりまくる。何より、前の2組に刺激されたのか、WurtSの歌もバンドメンバーによるサウンドも、いつになくエモーショナルなように感じる。
熱烈なオープニングパートを経て、WurtSは、2組のライブを「すごくかっこいいライブ」と称し、そして、「真横で観てすごくエネルギーをもらったし、こっからみんなと楽しんでいきたいと思います!」とパワフルに宣誓した。次に披露した「ブルーベリーハニー」では、歌で心を震わせ、ビートで身体を躍らせながら、会場全体の高揚をさらに高めていき、「タイムラグ!feat.Moto (Chilli Beans.)」では、ゲストとしてMotoをステージに呼び込み、時おり2人で向き合いながらロマンチックなフィーリングが漂うデュエットを展開していく。拍手と歓声が鳴り止まぬ中、WurtSは、今回の「UPDATE」の初開催に込めた想いについて語り始めた。コロナなどの様々な事情があったこともあり、もともと横の繋がりがあまり多くなかった。それでも、同世代の横の繋がりを大切にしていきたい。そうした繋がりを広げながら、音楽の今を届けていきたい。そうした想いのもと声をかけたのが、Chilli Beans.とPEOPLE 1で、2組とも快く出演を決めてくれたという。観客から送られる温かな拍手を受け、彼は「僕はね、『UPDATE』を、もっとアップデートしていきたいと思ってるんですけど!」と叫び、ここからライブは後半戦へ突入していく。

WurtS(Photo by Takeshi Yao)

WurtS(Photo by Takeshi Yao)
新しく加わったホーンセクション(トロンボーン/トランペット/サックス)とキーボーディストを交えたバンドセッションが展開。その中央で鎮座するWurtSが、大きく横に広げた両手を少しずつ上げていき、熱いエモーションが際限なく高まる中、「ソウルズ」へ。特別編成によってWurtSの音楽世界の奥行きと深みが一段と増し、サビの〈Oh Yeah〉のシンガロングに合わせて視界が一気に晴れやかに広がってゆくような感動が押し寄せてくる。続く「ライフスタイル」では、ステージ上手の床に設置されたミラーボールが煌びやかに回転する中、フィリーソウルを彷彿とさせる優美で絢爛なサウンドが会場全体に響き、観客のダンス欲求を鮮やかに解放していく。なんてゴージャスなライブ体験なのだろう。ライブ定番曲「Talking Box (Dirty Pop Remix)」も、ファットな響きを放つホーンセクションに彩られることによっていつも以上にパワフルに轟いていた。
そして、豪快な特別編成に、さらにゲストとしてItoを迎える形で「リトルダンサー feat. Ito (PEOPLE 1)」を披露。曲中には、WurtSが「PEOPLE 1、復活おめでとうございます」と告げ、Itoが「ありがとう!」と力強く感謝を伝える一幕も。そして2人は、曲のラストで、お互い背中を重ね合いながら渾身の歌声を響かせてくれた。ここでホーンセクションとキーボーディストが退場し、本編ラストを飾ったのは、リリースされたばかりの新曲「どうかしてる」。観客によるタオル回しによってカラフルに彩られた大団円だった。

(Photo by Takeshi Yao)
そしてなんと、アンコールでは、Deu、Ito、Motoを迎え入れ、今回のために作った新曲「UPDATE feat. Deu & Ito (PEOPLE 1), Moto (Chilli Beans.)」をサプライズ披露。それぞれ独自の声色とフロウが浮き彫りになる4人のマイクリレーを経て、最後はステージ中央に4人が集まり、共に大熱唱。改めて、3組の絆の深さと熱さが伝わってくるスペシャルな名演だった。3人を見送った後、最後に披露されたのは、「分かってないよ」。会場全体を巻き込んだ壮大な大合唱をもって、初開催の「UPDATE」は熱烈なフィナーレを迎えた。
終演後には、来年7月に2回目の「UPDATE」の開催が発表された。そのことが示唆しているように、このイベントは決して単発のものではなく、3組の戦友としての関係はこれからも変わらずに続いていくのだろう。お互い刺激し合いながら前進していく3組によってアップデートされ続けていく音楽シーンの未来に、とても大きな可能性を感じる。あの日、あの場に立ち会った人は、そうした熱い予感をきっと胸に抱いたはず。来年の再集結のステージに、今から期待が高まる。

WurtS(Photo by Takeshi Yao)
セットリスト
PEOPLE 1
1. 怪獣
2. フロップニク
3. 銃の部品
4. DOGLAND
5. DALMATIAN
6. メリバ
7. 僕の心
8. 鈴々
Chilli Beans.
1. See C Love
2. rose feat. Vaundy
3. pineapple!
4. lemonade
5. Mum
6. pain
7. tragedy
8. シェキララ
9. just try it
10. ひまわり
WurtS
1. SWAM
2. マイティーマイノリティ
3. 僕の個人主義
4. ブルーベリーハニー
5.タイムラグ!feat.Moto (Chilli Beans.)←半角()に修正
6. ソウルズ
7. ライフスタイル
8. Talking Box (Dirty Pop Remix)
9.リトルダンサー feat. Ito (PEOPLE 1)←半角()に修正
10. どうかしてる
EN1. UPDATE feat. Deu & Ito (PEOPLE 1), Moto (Chilli Beans.)
EN2. 分かってないよ