大阪・関西万博の開催に伴い、吹田市の万博記念公園で行われたサマーソニック大阪2025。昨年から従来の舞洲から1970年の大阪万博の跡地に余儀なく移転されたものの、蓋を開ければ「木陰が多くて快適」「芝生の上で寝っ転がりながら観るのが最高」「海外のフェスみたい」と高評価の声が続々。同様に今年もSNSでトレンド入りするなど、概ね好評だ。筆者はサマソニ東京はほぼ毎年参加してきたけれど、サマソニ大阪はこれが初めて。万博記念公園でのサマソニ大阪の初体験をレポしたい。

©︎SUMMER SONIC All Rights Reserved.

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まず気になっていた「海外のフェスみたい」というのは、PAVILION STAGEを除く4ステージが全て屋外にあり、公園内の平原に設営されているためではないかと。中央にそびえる太陽の塔は、公演内のどこから見てもアイコニックだし、会場外ではあるけれど最寄駅反対側の商業施設の大観覧車が、これまた海外フェスでよく見かける光景にそっくり。否応なくフェスムードを盛り上げる。

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とりあえず到着してから、グルッと会場を一周。かなりの広さだが、そもそも公園なので木陰や芝生が多いのと、人混みから少し離れればベンチがあったりテーブルもあり、居場所に困ることはまずないだろう。1日目は太陽の塔がある中央から東側を重点的に、SONIC STAGE、AIR STAGEを行き来したのだが、勝手気ままに動線を決めて、芝生の上を歩けるのは、さすが公園。なんだか移動もすこぶる楽しい充実の時間だった。

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とはいえ、この時期の真昼間の日差しは侮れない。それをしっかり見越してなのか、通路や芝生の木々を跨いで大小テントが張り巡らされていたり、運営側のおもてなしに感謝。日陰探しで困ることはまずなかった。ただステージ前方に行こうとすると、容赦なく直射日光に晒される。ステージ上の出演者もまったく同様だ。ネッサ・バレット(SONIC STAGE)は、上はブラで下はホットパンツという水着のような出立ちだったが、ジリジリと焼けつくような真昼の太陽と対面。ため息混じりな歌と、ポールダンサーのような艶かしいダンスは、ラナ・デル・レイのもっと深夜版、もしくはデヴィッド・リンチの映画から抜け出したかのような妖しいムードだが、炎天下にも屈することなくショーガールぶりを発揮。小学低学年くらいの女の子が興味津々だったのを、お父さんが慌てて引きずって退散していたが、本当はお父さんももっと観たかったのではないかと。ポーティスヘッドの「Glory Box」のカバーが出色だった。

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続いて登場したソンバー(SONIC STAGE)は、「TOO HOT」「暑い(日本語で)」と言って、なかなかパフォーマンスに集中できない様子。まだ新人なので、場数をあまり踏んでいないかもしれない。次週8月22日にリリースされるデビューアルバム『I Barely Know Her』からの未発表曲を交えつつ、ザ・ストロークスの一人版といった躍動感溢れるポップロックで魅了。
炎天下の過酷な状況を味方に引き寄せるバイタリティをもっていたのが、AIR STAGEでのJ・バルヴィンと、その後のカミラ・カベロだ。両者ともラテン系なので、暑い気候に慣れているのかもしれないが、それぞれ異なる魅せ方でショーを展開。Jは、DJやダンサーを引き連れて、みんなで楽しむお祭りのような気取らない演出で、一方のカミラは、計算されたコレオ・ダンスとラスベガス風の巨大なセットでディーバぶりを発揮。後者はフィフス・ハーモニー時代と比べて、かなり貫禄がついた印象だ。大映し映像が常にセクシーなのは、ラティーナならではの使命感というかプレッシャーを感じたりも。「Señorita」で別れた恋人のショーン・メンデスのボーカルをそのまま使っていたのには驚かされた。
ちゃんみな、JVKE(ジェイク)をチェックしつつ会場内を彷徨っていると、夕刻になり次第にあたりが薄暗くなってきた。すると木々の枝からライトが吊るされていたり、通路の上にさまざまな動く模様が投影されたり、ライトアップされたカラフルなオブジェなどが、あちこちから浮かび上がって、なんとも幻想的。どこかのテーマパークのようでもある。日が落ちてからは、かなり涼しいのにも驚かされた。都会のど真ん中だが、アスファルトと違って土だからなのか。

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この日はR&B系のラインナップが充実しており、ティナーシェやジョルジャ・スミスも観たかったが、タイミングが合わずに断念……。だが久方ぶりのアリシア・キーズ(AIR STAGE)は、相変わらず素晴らしかった。メリハリを付けた構成と、生演奏と生歌だけで聴かせるライブの迫力にひたすら圧倒された。お揃いの髪型とコスチュームを着込んだダンサーが大勢登場するのは、自身の半生を基にしたNYブロードウェイミュージカル『Hells Kitchen』を手がけた影響だろうか。途中でちゃんみながゲスト参加。そのシスターフッドも最高だったし、あらゆる人を繋ぐ歌の力に改めて感動させられた。後方の芝生に座って鑑賞していた人も多数。少し贅沢すぎるんじゃないかというほど快適な時間を過ごし、最後はこれでもかというほど沢山の打ち上げ花火を見上げながら帰宅の途へ。
大阪2日目:雷で一時中断も驚くほど快適
2日目は、太陽の塔からその西側を中心にブラブラ歩いていると、次々とアトラクションに遭遇。アスレチックやBBQなどの施設、池で遊べるサイクルボートなど、公園内に常設されている施設が有料で開放されている。テントを張っている人たちもいれば、水路に足を漬けて涼んでいる人たちも。

サマソニ大阪ではフリーテントエリアや、園内の日本庭園の中央休憩所が利用可能 ©︎SUMMER SONIC All Rights Reserved.

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マッチョパワー漲るTHE RAMPAGE、マンチェスター出身のホット・ミルクなどをMOUNTAIN STAGEでチラ見しつつ、その奥にあるMASSIVE STAGEをチェックしてから、SONIC STAGEでブロック・パーティを鑑賞。デビュー20余年ともなれば、昔の曲をプレイしても性急さよりも、堂々たる落ち着きの方が印象的だ。もっとも若さと刺激なら、ヤングブラッド(AIR STAGE)が突出だろう。最新アルバム『Idols』では、オアシスを思わせるブリットポップを鳴らしていたが、ステージングに関してはイギー・ポップの再来と言うしかない。半ケツを見せたり、腰をクネらせたり、究極のB級ロックのスピリットを振り撒いていた。

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途中、みるみるうちに雨雲が立ち込めると、遠くの方から稲妻がピカリ。そのうちバリバリ、ゴロゴロと雷が鳴り始めたものだから、周囲の人たちも違いに顔を見合わせたり、そわそわと……。結局、小雨だけで済んだが、ドミ&JD・ベック(SONIC STAGE)の開演時間がズレ込み、セットが短縮されたりも。とはいえ、彼らの小気味良い演奏に釘付け。

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ビーバドゥービー(SONIC STAGE)の頃には、さっきの雷が嘘のように、空には綺麗な夕焼けが。自然と音楽が調和した、これぞ野外フェスといった、まったり気分の瞬間だった。フォール・アウト・ボーイの変わらぬ人気をAIR STAGEで確認した後、再びSONIC STAGEへと舞い戻り、クロージングアクトのゲサフェルスタインでフィニッシュ。レディー・ガガの新作『MAYHEM』参加でも注目の彼は、『スーパーマン』のクリプトン星を思わせるセットの中で、黒光りするメタリックなマスクとコスチュームを身に着け仁王立ち。フランス出身ではあるが、その名といい、打ち鳴らされる鋼鉄質なサディスティックなビートからは、ドイツ的ニュアンスが感じられる。太陽の塔の後ろ側で、世紀末を思わせるデカダンスパーティという背徳感が堪らない。ノスタルジックな未来観を体現したサウンドという意味では、1970年の大阪万博と見事に繋がったという気もする。
打ち上げられる花火にうっとり見惚れながら、また来年もここで開催してほしいものだと切願。音楽フェスに付きもののストレスや、人混みやイライラとは無縁のサマソニ大阪なのだった。
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