Photo by Oscar Lindqvist
「バンドの神話性」を引き受ける
エリー・ロウゼルはレザーのワンピースを身にまとい、まるでスティーヴィー・ニックスを憑依させたかのように送風機にまたがり、床に座り込んでいる。暗い髪が後ろへと扇のように広がっていくのを見つめながら、ジョエル・エイミー、ジェフ・オディ、セオ・エリスの3人は──全員が大量のデニムをまとっている──誇らしげに笑みを浮かべ、エリーを応援しながらスマートフォンで写真を撮っていた。
最近、ウルフ・アリスは「バンドという存在をめぐる神話性」について考えているという。それもごもっともだ。北ロンドン発の愛される4人組は、すでに10年以上も共に活動を続けているのだから。どんな仕事でも、それだけ長く続ければ振り返ることは避けられない。30代に差し掛かると、自分はいまどこに立っているのか、時間をどう費やしているのか、そして本当に幸せなのかを確かめるような立ち止まりの瞬間が訪れるものだ。
「僕たちは、”バンドであることを真に引き受ける”というアイデアを膨らませていたんだ」とベーシストのセオは撮影の翌週に語る。出回り始めたプロモーション写真について話していた時のことだ──その中には、”Wolf Alice”とスタッズであしらわれたレザージャケットを着た彼の姿も含まれていた。ウェンブリーにある現在のリハーサルスペースでややぎこちなくスツールに腰掛けながら、セオは続ける。
言うまでもなくRolling Stone誌のルーツも、セオが語る60年代後半~70年代のロックンロール文化に根ざしている。だが2025年のチャートを見れば、新しい音楽の主流は明らかにソロアーティストが占めている──縮小する音楽経済の中で、バンドに十分なリソースが回らないことも一因だ。ドラマーのジョエルが言うところの「バンドらしいバンド」を目にすることは、ますます珍しくなっている。だからこそ、この4人組の新しい時代(new era)が、ある意味で自分たちの系譜へのオマージュとなるのは理にかなっている。これは過去への敬意であるのと同時に、ウルフ・アリスが困難を乗り越えてなお前進し、ますます力強さを増しているという事実の表明でもある。

親密で奇妙な共同体
2021年の終わり──大きな成功を収めた3作目の前作『Blue Weekend』をリリースした直後に、バンドのソングライターでありシンガー/マルチ・インストゥルメンタリストでもあるエリーは、ピーター・ジャクソン監督によるドキュメンタリー『ザ・ビートルズ: Get Back』を観た。彼女はこう説明する。「彼らが作り出していた音楽そのものにインスパイアされたわけじゃないんだけど……”ああ、私もまたあの部屋に入って、あんな風にやりたいな”って思ったの。ちょっとオタクっぽい感覚だけどね……」
史上最も尊敬されるバンドが、ただ集まって楽器を弾いたり、ふざけ合ったりしている姿に、エリーは普遍的な安心感を覚えた。
「キャリアの初期は、大きな音を出して飛び跳ねることで注目を集めていたんだ」とギタリストのジェフは振り返り、こう付け加える。「でも前作では、『The Last Man on Earth』や『Delicious Things』といった、より”ソングとしての完成度が際立つ”曲で自信を持てるようになった。みんなそういう曲にこそ強く反応してくれたからね。いい曲っていうのは時代を超えて残るもので、どんな形に装飾しても通用する。だって名曲は名曲だから」
こうして、4作目『The Clearing』に向けた大きな目標が形づくられた。これは、Dirty Hitとの契約が終了し、メジャーのコロムビアと契約してから初めてのリリースである。収録曲は依然としてスケール感にあふれているが、その核にはエリーがピアノに向かって書き上げた楽曲があり、キャロル・キングやフリートウッド・マック、さらにはELOを思わせる色合いが漂っている。ウルフ・アリスがこれまでしばしば受けてきた批判は、影響源をあまりに前面に出しすぎること、そしてアイデアが散漫になりがちなことだった。だが『The Clearing』では、確かにルーツが透けて見えるものの、これまでで最も統一感のあるアルバムを完成させている。

Joel wears jacket by Atika, T-shirt by The Vintage Showroom, trousers by House of Leather, shoes by Manolo Blahnik, belt Joels own. Joff wears jacket by The Vintage Showroom, shirt by Farah, trousers by House of Leather, shoes Joffs own. Theo wears top by The Vintage Showroom, trousers and belt Theos own, shoes by Manolo Blahnik. Ellie wears jacket by Atika, trousers by Rokit, belt stylists own, shoes by Untitlab.
ポップ界の名匠グレッグ・カースティンをプロデューサーに迎えた今作は、壮大で華麗なメロディに満ち、艶やかなハーモニーや、夢幻的でシネマティックなストリングスがふんだんに盛り込まれている。
同世代のイギリスを代表するバンドのひとつとして長年尊敬を集めてきたウルフ・アリスだが、今回はあくまで”原点回帰”を志向している。ただしそれは、テクノロジーやAIをめぐる議論への反動ではない。むしろ彼らはTikTokや音楽プラットフォームに対してもオープンな姿勢を持っている(「年齢の違いを理由に反射的に拒絶するのは、歳を重ねるにつれて陥りがちな罠だ」とセオは言う)。むしろ『The Clearing』におけるアプローチは、前作の密度を経た後で、バンド体験に内在する本質へと立ち戻るための方法としてある。
「『Blue Weekend』の曲のステム音源を受け取ったとき、”すごく好き!でも、アイデアが多すぎて聴き取れない”って思ったんだ」とエリーは振り返る。「だから今回は、すべてのアイデアが最高のものであることを確認して、それが聴き取れないなら削ぎ落とすべきだ、って考えたの」
これまで彼らは、アルバムごとに新たな音世界を開拓し、可能な限り複雑なアレンジで技術を示さねばならないというプレッシャーを感じていた。だが今回は、シンプルであることの持つ大胆な可能性に気づいたのだ。ジェフが言う。
「引き算することで力が生まれるんだ」とジョエルも同意する。「もちろん、多くのバンドにとってはギターを持って部屋に集まって曲を書くのは普通のこと。でも僕らにとってそれは新鮮で、すごくワクワクした。『Get Back』みたいに、お互いの目を見つめ合いながら、何が起きているのかを確かめ合う。そこには親密さがあるんだよ」

Ellie wears catsuit by Rellik, boots stylists own

Joel wears jacket by Atika, T-shirt by The Vintage Showroom, trousers by House of Leather, shoes by Manolo Blahnik, belt Joels own. Joff wears jacket by The Vintage Showroom, shirt by Farah, trousers by House of Leather, shoes Joffs own. Ellie wears jacket by Atika, trousers by Rokit, belt stylists own, shoes by Untitlab. Theo wears top by The Vintage Showroom, trousers and belt Theos own, shoes by Manolo Blahnik.
それは、バンドという特殊で唯一無二の関係性に根ざした親密さだ。彼らが互いに強い愛情と敬意を抱いているのは明らかである(「世界に曲を発表するより、この3人にデモをメールするときの方がよっぽど緊張するんだ」とジョエルが語る場面もあった)。外部の人間がその関係性に踏み込むのは奇妙に思えるかもしれないが、1週間にわたって彼らに取材をしていると、この4人が周囲の人々とも自然な親密さを育んでいることがすぐに分かる。
たとえばウェンブリーのリハーサルスタジオ。バンドは、BBC Radio 1's Big Weekendやグラストンベリーといったフェス出演に向けてライブの準備を進めている最中にもかかわらず、PAエンジニアであるジョニー・ドドキンズの誕生日を祝うため、ミキシングデスクの周りを旗飾りやスパークリングワインで彩っていた。彼らはツアー・キーボーディスト、ライアン・マルコムの姪っ子の写真を見て一斉に声を上げて喜び、私が到着したときには、ジョエルが「インディ・ジョーンズ観たことある?」と冗談を飛ばしながら、シュールで巨大な倉庫の中を案内してくれたうえに、最終的にお茶まで差し出してくれたのだった。
これこそが、バンドとしての彼らの姿だ。温かく、歓迎的で、本当にユーモアにあふれている──とはいえ、完全に控えめではないにせよ、思慮深さも兼ね備えている。
「家族に近い関係性なんだけど、家族とは違う」とセオは仮説めいた言葉を口にする。「仕事ではあるけれど、友情でもある──でも同時にアートでもあるのかな? いろんな要素をまたいでいるんだ。お互いのことを、たぶん誰よりもよく知っていると思う。とても奇妙な形でね」
ホームとしての北ロンドン
もしウルフ・アリスがテレビドラマだったなら、批評家たちは「北ロンドンこそが5人目のキャラクターだ」と真剣に書くだろう。
2010年当時、アーチウェイ生まれのエリーはカムデンで学業を終えたばかりで、10代の頃からギターやGarageBandを使って詩や物語、曲を書き続けていた。彼女は「バンドメンバー募集」のネット掲示板を通じてコーンウォール出身のジェフと出会い、ジョニー・フリン(※2000年代後半のロンドンのフォーク・リバイバルを代表するシンガーソングライター)などに触発されながら音楽制作を始め、地元のオープンマイクに出演するようになった。友人のサディ・クリアリーとジェームズDCが加わり、ハイズベリー・ガレージで「Wolf Alice」として初ライブを敢行。対バンはイズリントンのパブ「Hope & Anchor」で知り合ったApril in the Shadeだった。その後、クリアリーとDCが脱退すると、友人のつながりでセオ・エリスとジョエル・エイミーが加入。
当時、ジェフはロンドン南西部で教職課程を受けていたものの、首都そのものにはあまり魅力を感じていなかったという。しかしバンド活動でカムデンに通ううちに「ここは最高だ!本当に自分のホームだと感じるようになった」と熱っぽく語る。いまや彼ら全員が一度は北ロンドンに暮らしており(現在もジョエルを除く3人は北ロンドン在住。ジョエルは現在ヘイスティングスに拠点を置いている)、その土地との結びつきは確かなものになった。
2018年、2作目『Visions of a Life』でマーキュリー・プライズを受賞した夜、バンドはカムデンの悪名高きパブ「Hawley Arms」で店を貸し切って祝杯をあげた。2000年代ブリティッシュ・インディーの代名詞的スポットである(バーに立ったロウゼルがトロフィーを使って、ドミノのように並んだイェーガーマイスターのショットを次々とレッドブルのグラスへ倒し込み、店中の歓声を浴びる──そんな映像も残されている)。

Joel wears T-shirt, jacket and jeans by The Vintage Showroom, shoes and belt Joels own. Theowears denim jacket and jeans by Rokit, T-shirt by The Vintage Showroom, shoesby Manolo Blahnik. Joffwears jacket, jeans and belt Joffs own, T-shirt by The Vintage Showroom. Ellie wears catsuit by Rellik, boots stylists own.
2度目のインタビューの場として彼らが選んだのは、トッテナムにある緑と黄色で彩られた折衷的なアイリッシュ・パブ「Mannions」だった。セオが言うように、「ウルフ・アリスの人生のかなりの時間、この通りを歩いてきた」からだ。彼の現在の住まいにも近く、かつてはジョエルと共に近所の倉庫で暮らしていたこともある。『Blue Weekend』の大半は、このパブから徒歩3分のスタジオCargo Roomsで録音され、『The Clearing』のセッションは隣接するスタジオTen87で始まった。エリーは、このパブでカラオケを楽しんだこともあるとほのめかすが、過去のエピソードや次の出演予定について詳しく語ることはなかった。
多くの意味で、北ロンドンこそが彼らが成長してきた場所なのだ。『The Clearing』のラストを飾る楽曲「The Sofa」では、エリーは自分が地理的にどれほど深く根付いているかを思い巡らせている。〈カリフォルニアには行けなかった/あそこで人生をリセットできると思っていたのに/セブン・シスターズに縛られているように感じる/ノース・ロンドン、ああ、イングランド/でもそれでいいのかもしれない〉

Ellie wears jumpsuit by Acne Studios, shoes by Kalda
「変わり続けること」を受け入れる
『The Clearing』全体を通じて流れているのは、幻想と現実の狭間に揺れる感覚だ。人生の”もしも”の瞬間を思い返し、自分の選択が正しかったのかを考えるような感覚である。パブでクリスプスをつまみ、炭酸飲料を片手に語る彼らは、自分たちが好きなことを仕事にできている幸運を自覚していると同時に、「ほかの道を選んでいたらどうなっていたのか?」という思いを抱き、息つく間もなく進み続ける時間の歩みに小休止を求めている。「The Sofa」では、その思いが「ただ横になって、テレビの再放送を観ていたい」という願望として表れている。
成長の痛みは、常にウルフ・アリスの作品に刻まれてきたテーマだ。しかし、メンバー全員が30代となった今、その感覚には受容のニュアンスが加わっている。「若い頃は、歳を重ねれば自分のことや周りのすべてをもっと理解できるようになるんじゃないかと思っていた。でも実際には、歳を重ねるっていうのは”一生わからないままかもしれない”って理解することなのかもしれない」とエリーは語る。そして少し間を置いて、こう付け加えた。「自分を完全に理解することなんてない。だって私たちは常に変わり続けているから」
絶え間ない変化や不確実性を受け入れるというテーマは、このアルバムの中心を成している。たとえばシルヴィア・プラスの『ベル・ジャー』に出てくるイチジクの木の比喩のように──語り手は人生が差し出すあらゆる選択肢を味わいたいと願うが、選ばなければそれらは腐った果実のようにやがて消えてしまう──『The Clearing』は可能性を生き切りたいという欲望を描いている。
エリーの描く主人公は、愛に満ちた関係に落ち着きたいと思う一方で、ただ誰かとセックスしたいとも思っている。自分に悪影響があるとわかっていながら快楽に身を委ねたいと願いながらも、健やかで滋養のあるものも求める。子どもはいらないとわかっていても、廊下のベビーカーから聞こえる赤ん坊の泣き声に付きまとわれる(後者は、疑似子守唄のようなハイライト曲「Play it Out」で表現されている)。さらに「Just Two Girls」では、女性同士の肯定的な友情に捧げるきらびやかなオードが展開され、〈youre so right(あなたの言う通り)〉という共感のリフレインが響く。
エリーにとって、この感覚はミランダ・ジュライから引用したアイデアを思い出させるという──「20代は”本当の友達”が現れるのを待って過ごし、30代になると、その友達はすでに自分の周りにいた人たちだったと気づく」というものだ。
かつては曖昧さを好んでいたエリーだが、いまの彼女はストーリーテリングや歌詞における脆さを、より心地よく受け入れているように見える。愛の歌に対する率直さや愛着を抱きながら、堂々たるフロントパーソンとしての立場も同時に引き受けているのだ。彼女はこう語る。「”これは自分について書いているんじゃないか”って思われても気にしない、そういう自信がついてきたの。自分の作品を好きになればなるほど、自信を持つのも簡単になる──前の作品が嫌いというわけじゃなくて、あの頃はただ学んでいたんだと思う」
他のメンバーにとっては、ソングライターとして成長を続けるエリーを支えることが最優先だ。プロデューサーとのコラボレーションでも彼女の作品を守る姿勢を強調する。「もし誰かがフックを強調する方向に持っていこうとしても、感情の部分は絶対に守らなきゃいけない」とジョエルは言う。彼自身も今回、「White Horses」でリードシンガー/ソングライターとしての挑戦を果たしている。
エリーにとって、それはすべて”自分たちが楽しみ続けるための方法”だという。「常に自分を挑戦させて、新鮮さを保たなきゃいけない。年齢や時間、経験とともに自然と自信は育っていくものだから」と彼女は笑顔を見せ、腕を抱きしめながら話す。「昔は”うまくいかなかったら恥ずかしい”って思っていたけど、今は”まあいいや、恥ずかしさが成長を止めることはない”って思えるようになったの」
今の時代にバンドは成り立つのか?
自分たちの経験を認めることは、別の視点を考えるきっかけにもなった──もし今の時代に活動を始めていたら、果たして自分たちはバンドとして存在できていただろうか?
2025年のグラミー賞ロック部門の候補に名を連ねたアーティストのうち、過去20年でデビュー作を出したのはアイドルズとフォンテインズD.C.のわずか2組だけだった。音楽業界の上層部が新しいロックの才能を支えることに消極的なのは明らかだが、さらに深刻なのは、基盤レベルで新しいバンドを育てる土壌が壊滅的になっていることだ。アンダーグラウンドには魅力的なアクトが多数存在する一方で、バンドを続けるために必要なコスト──ツアー、リハーサルスタジオも含めて──は年々上昇し、小規模な会場は姿を消し、音楽から得られる収入は減少している。しかも、それを(バンドで活動するとなったら)数人で分け合わなければならない。
これに加え、コロナ禍の余波やブレグジット、そしてトランプ時代に端を発するビザ問題が依然として続いている。そうなれば、多くの新進アーティストにとって「ソロで活動する」あるいは「そもそもミュージシャンを目指さない」という選択肢を選ぶのも無理はない。
「初期のキャリアを振り返って、”あの頃やっていたことを今でもできるだろうか?”と考えると、正直なところ自信はない」とジェフは、現在のバンドを取り巻く環境について語る。「僕たちは本当にギリギリでやっていた。今はコストが跳ね上がって、リハーサルできる場所もなくなってしまった。昔は半日で50ポンドくらいのスタジオを借りられたけど、今はそんな場所はもう存在しないと思う」
「その価格帯では無理だね」とセオも同意する。「しかも多くのスタジオが閉鎖してしまった」
ジェフは続ける。「僕が本当に心配しているのは、イギリスの音楽を世界的に有名にしてきた”労働者階級の声”が失われてしまうことなんだ」

Joel wears jacket by Atika, T-shirt by The Vintage Showroom, trousers by House of Leather, shoes by Manolo Blahnik, belt Joels own. Joff wears jacket by The Vintage Showroom, shirt by Farah, trousers by House of Leather, shoes Joffs own. Theo wears top by The Vintage Showroom, trousers and belt Theos own, shoes by Manolo Blahnik. Ellie wears jacket by Atika, trousers by Rokit, belt stylists own, shoes by Untitlab.
政治的であること、共同体としての誇り
そんな中で、バンドは状況を改善しようと試みている。彼らはグラスルーツの音楽会場を支援するための募金活動を行い、さらにインタビューの数日後には、ジェフが音楽におけるアクセシビリティの欠如について政府の公聴会に参加した。
2019年にはジェレミー・コービンを支持し選挙活動にも加わったウルフ・アリスだが、音楽そのものが強く政治色を帯びることはこれまであまりなかった(ただし「Last Man on Earth」でエリーが”男性的天才”という概念を痛烈に批判しているのは例外で、むしろ今の時代にこそより響く楽曲かもしれない)。
彼らは音楽業界におけるジェンダーの力学についても意識を向けている──極端な例では、2021年にエリーがマリリン・マンソンにフェスで盗撮されたと告発した件もあれば、日常的にチームと関わるなかでの問題もある。「少なくとも今は、みんなが”チームを多様化させたい”って意識してるよね。バンドを始めた当初は、そういう会話を耳にすることはなかった」とエリーは語る。
彼らはまた、ほかの形でも世界をより良くしようと取り組んでいる。これまでにNHS(英国国民保健サービス)や難民支援のために資金を集めたほか、ジェフは地元のフードバンクでボランティア活動を行い、セオとエリーはガザへの寄付情報をSNSで頻繁にシェアしている。
とはいえ、世界の現状について短絡的なサウンドバイトを発することには慎重な姿勢を見せるのも自然だろう。ジェフはこう語る。「声を上げるよう迫られることと、実際に政治に関わることは違うと思う。そして僕は、誰もが政治的に関与することを勧めたい。発言することと、実際に行動すること……大切なのは、十分に理解していないことについて”何か言わなきゃ”と感じるのではなく、日々の暮らしの中で情報に基づいた選択をしていくことだと思うんだ」
「その通り!」と、他のメンバーもきょうだいのような打ち解けた調子で口を揃えた。
ウルフ・アリスがいまも音楽をリリースし続けているのは、運やタイミングのおかげだけではない。共有する精神への揺るぎないコミットメント、そして互いへの信頼の証でもある。セオはこう語る。「30代で自分の時間をどう使うかって、より大きな意味を持つように思うんだ。僕らの共通の友人のなかには親になる人も増えてきている。でも僕らは、その多くの時間を”共同作業”に費やすことを選んだ。その選択を誇りに思っているし、ここまで一緒に辿り着いたという事実をとても大切にしているんだ」
その結果生まれたのが、大人びていて光り輝くアルバムだ。それはまるで、偶然見つけた古いポラロイド写真のよう──胸が高鳴り、ノスタルジックで、きらめいている。『The Clearing』は、人生を大きく感じさせてくれるクラシックで力強いポップソングを携えたロックバンドという存在の持続的な魅力を証明する作品だ。ジョエルが率直に語るように、「普段ならプロモーションの期間中は、アルバムを聴きすぎて逆に嫌になってるんだけど、今回はリハや聴き返すのが本当に楽しかった。心から喜びを感じたんだ」

Ellie wears jumpsuit by Acne Studios, shoes by Kalda
From Rolling Stone UK.
Photography by Oscar Lindqvist
Styling by Gary Moore
Stylist Assistant: Leonor Carvalho
Hair by Yumi Nakada-Dingle using Bumble and bumble.
Hair assistant: Erika Kimura
Make-up by Anna Payne at C/O Management using CHANEL Les Beiges Golden Hour Collection and No.1 de CHANEL Body Serum-In-Mist

ウルフ・アリス
『ザ・クリアリング|The Clearing』
発売中
再生・購入:https://WolfAliceJP.lnk.to/TheClearingRS

rockin'on sonic 2026
2026年1月4日(日)幕張メッセ国際展示場
開場 12:00 / 開演 13:30
第1弾出演アーティスト:PET SHOP BOYS、UNDERWORLD、KNEECAP、TRAVIS、WOLF ALICE
https://rockinonsonic.com/