アルバム『DETOX』を引っ提げ、南米と北米を周ったONE OK ROCKのスタジアムとドームを織り交ぜた日本ツアーの日産スタジアム2デイズの2日目。凱旋公演でもあり、結成20周年だからこその特別なライブとなった。


【ライブ写真ギャラリー】日産スタジアムで『DETOX』の世界を体現

アルバム『DETOX』に込められたメッセージがSEとして流れる。平和な国があるのは平和でない国があるからであり、神様は平等にしようと謎の細菌を世界に撒き、奇病が蔓延する。AI、戦争、貧富の差といった、いま世界が抱える問題をはらんだストーリーが展開され、ONE OK ROCKは歌で世界に訴えかけるのだ、と。「その歌はやがて世界中の人々に届きます。言葉だけでは伝えられなかった真実を、音楽を通して気づかせるのです。うわべのことばではなく、魂に触れる音楽として」。

既にステージにはTAKA(Vo)、TORU(Gt)、RYOTA(Ba)、TOMOYA(Dr)の4人がいる。「毒された思想に覆われたこの世の中を、⾳楽の⼒で浄化(デトックス)するために」というメッセージの後、「Puppets Can't Control You」のイントロが演奏された。「Puppets Can't Control You」=「操り人形たちはあなたをコントロールできない」。権力者の操り人形には屈するな、自分の意志で生きろ、ということだろう。約7万人のオーディエンスがTAKAの伸びやかな歌声に合わせて腕を前後に振った。ステージから勢い良く炎が上がり、『DETOX』に込めた今の世の中に対する警鐘を鳴らすためのライブの火ぶたが切って落とされた。


TOMOYAがオーディエンスに「ただいま!」と言った後、「気付いたら俺らも20周年です」と感慨深げに伝えた。「20年経ってこの景色を見られるのが本当に幸せです。今日は20年の重みをしっかり感じながらみんなと楽しい時間が過ごせたらいいなと思うんですけど。俺が加入してちょうど19年です。1年分音で足しという!」と言って笑いながらドラムを鳴らした。

RYOTAは「日産にかける思いがあまりにも強すぎて昨日のライブはテンションがコントロールできなくて前半戦で出しきって手がパンパン。でも調整したので昨日より絶好調」と伝え、本番前にメンバーとスタッフが9月4日の誕生日を前倒しで祝ってくれたという。TORUはそんなRYOTAに「昨日暴れ狂って変になってた(笑)」と突っ込みつつ、「この景色が見られて嬉しいです。これまで一緒にやってきてくれてありがとう!」とメンバーへ向けて叫ぶと、TAKAが満面の笑顔で拍手を送った。

TAKAは「TORUが『ありがとう』って言うのとかエモいよな。序盤でそういうこと言うのやめろよ。俺、結構テンション変わってきちゃう。
37歳になると涙腺が弱くなって。俺もメンバーと一緒にやれて嬉しいよ。仲の良いままで20年間やってこれたのは皆さんのおかげです」と照れ臭そうに言った。この日のONE OK ROCKは4人の絆が序盤から全開だった。

ONE OK ROCK、20周年『DETOX』ツアーで炸裂 揺るがぬ絆と未来へのメッセージ

Photo by MASAHIRO YAMADA

TAKAが「『DETOX』の曲は全部やろうと思ってますし、みんなが懐かしいなと思うようなこの20年間を振り返れるセットリストを作ってきました。次の曲もそういう曲なので」と言うと、TORUの哀愁感の漂うギターリフが聞こえた。悲鳴のような声が上がる。『感情エフェクト』に収録された「Living Dolls」だ。オーディエンスのシンガロングが響き渡り、TAKAが「もっといけるっしょ!  腹の底から出してくれ!」 俺の声に負けんなよ!」と叫び、一層大きなシンガロングが巻き起こった。メンバー4人の絆に加えて、ONE OK ROCKとオーディエンスの深くて強い絆もどんどん露わになっていった。

オリエンタルな旋律からゴリゴリのアンサンブルへ。アリーナエリアにはCHICO CARLITOの姿が。
ラップをしながらメインステージに向かう後ろでPaleduskのDAIDAI(Gt)がギターを弾き倒している。「C.U.R.I.O.S.I.T.Y. fe​at. Paledusk and CHICO CARLITO」だ。ステージには他のPaleduskのメンバーが上がっており、KAITO(Vo)がTAKAと拳を突き合わせた。TAKAが「日産スタジアムにこのメンツが集まったってことはこれをやるしかないってことだよな! お前らついてこいよ!」と叫ぶとステージから炎が勢いよく上がった。TAKAとKAITOが向き合っておでこを付けて、シャウトをしまくる様に7万人は熱狂。コラボは1曲だけでは終わらず、『35xxxv』収録の「One by One」にPaleduskとCHICO CARLITOが参加。今回のためにアレンジされたCHICO CARLITOのラップが熱い。猛獣たちの競演のような凄まじいステージだった。

最高潮に上がった熱を冷ますかのように青いレーザーが舞い、静謐なピアノが響く。TAKAが左手を前に突き出し、「The Beginning」へ。オーディエンスは肩を組んでヘッドバンキング。超強力なコラボの後にもかかわらず、少しも場内のテンションが落ちない。
これが世界のONE OK ROCKの力量なのだ。

ONE OK ROCK、20周年『DETOX』ツアーで炸裂 揺るがぬ絆と未来へのメッセージ

Photo by MASAHIRO YAMADA

ONE OK ROCK、20周年『DETOX』ツアーで炸裂 揺るがぬ絆と未来へのメッセージ

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ONE OK ROCK、20周年『DETOX』ツアーで炸裂 揺るがぬ絆と未来へのメッセージ

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TAKAが「ありがとう! 日産! 皆さんたちの熱気と愛がステージに届いてます」と感謝を伝えた。「10年くらい前から海外に行き始めていろんな景色を見て自分たちがどうであるべきかを考えて作ったのが『DETOX』です。僕たちみたいなバンドが政治的なアルバムを作って世界中を回ることはすごく大事だと思ってます。次の曲は『DETOX』で一番大事な曲です。自分たちにまっすぐ生きることを欲しているのがONE OK ROCKです。次の曲のメッセージが合わない人もいるかもしれませんが、違う主義が一つになったら世の中が平和になると思ってます」。演奏されたのは「Delusion:All」だ。ONE OK ROCKからの今の世界に対するメッセージがヘヴィなアンサンブルとパワフルな歌で届けられた。

「どれだけ攻撃的なアルバムだとしても、正反対の優しい気持ちを持つべきだと思う」

「Dystopia」の後、TAKAが「みんなちょっと待って!」と申告して一度ステージからはけた。ライブ後に骨折していたことが発表されたが、TAKAは車いすに乗って再登場し、「こんな姿でやるの初めてだけど。絶対やめないからな!」と宣言し、左足を負傷しながらライブを続行。
「Tropical Therapy」ではお立ち台に座り、美しい歌声を聞かせ、マイクを客席に向けるとオーディエンスは特大のシンガロング。「いやあ、凹むわ(笑)。何かが与えた俺への試練だな。乗り越えてやるぜ。俺をなめんなよ。俺は強いぞ」といって笑うTAKA。この不屈さが20年間多くの人々にエネルギーを与えてきた。

ONE OK ROCK、20周年『DETOX』ツアーで炸裂 揺るがぬ絆と未来へのメッセージ

Photo by MASAHIRO YAMADA

本編ラストの「The Pilot
ONE OK ROCK、20周年『DETOX』ツアーで炸裂 揺るがぬ絆と未来へのメッセージ

Photo by Kosuke Ito

アンコール。「Stand Out Fit In」のイントロが聞こえ、TAKAはケンケンで登場。「俺の分まで跳んでくれ! 頼むぞ!」ということで、サビでオーディエンスは思いっきりジャンプし、「Stand Out Fit In」と大合唱。スタジアムが揺れた。TAKAが「むかつく!許せない! さっき許す許せないの話をしたけど、もう許せない!」と思うように動かない左足に怒りをぶつけて「+Matter」へ。
左足がほぼ動かないのにアグレッシブに体を使ってパフォーマンスするTAKAを見て改めてものすごい身体能力の持ち主だと実感。TAKAはTORUにしがみつきながら歌い、「ありがとうTORU!」と叫んだ。

ラストの曲は7万人の歌の力が爆発した「We are」。TAKAは「皆さんは明日からまた戦場に戻ります。あなたたちが諦めないから俺らも諦めない。自分を信じてあげてください。俺もそうやってここまでやってきました」と告げた。TAKAがステージに倒れ込み、TORUとRYOTAが心配そうに覗き込む。TORUとTOMOYAがTAKAを抱き抱え、4人は肩を組んでおじぎをした。そのままステージの下手から上手へと移動し、いつまでもオーディエンスとコミュニケーションを取り続けていた。

日本での凄まじいツアーの後、ONE OK ROCKはヨーロッパを周る。無事に完走し、多くのオーディエンスに今世界が抱えている悲しさを覆すような『DETOX』に込めたメッセージとロックバンドとしての強さを見せつけてほしい。

ONE OK ROCK、20周年『DETOX』ツアーで炸裂 揺るがぬ絆と未来へのメッセージ

Photo by Rui Hashimoto [SOUND SHOOTER]
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