トンボコープが、全19曲を収録した渾身のメジャー1stアルバム『FANDOM』をリリースした。今年に入ってから発表された数々の楽曲を聴いて、そして、最近の彼らのライブを観て、思ったことがある。
それは、ロックバンドの王道を闊歩する意志、ロックバンドの使命を担う覚悟が、かつてよりもさらに揺るぎないものになっている、ということ。今回のアルバムを聴いて、そして、メンバー4人がインタビューを通して語ってくれた力強い言葉を聞いて、その確信がさらに深まった。今回のメジャー1stアルバムは、彼らにとっての目的でも集大成でもなく、これから先の未来へ向けた「始まりの合図」に過ぎない。今の4人の熱量と勢いを、このインタビューを通して感じ取ってもらえたら嬉しい。

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ー今回のアルバムに収録されている全19曲を貫く1本の軸となるタイトルが、『FANDOM』です。いきなり核心めいたことを聞いてしまう形になるのですが、この言葉はどのようにして出てきたのでしょうか。

雪村りん(G・Vo):アルバムの収録曲が半分以上決まった時に、そろそろタイトル決めなきゃねみたいな話になって。で、その時点であった曲とこれから書きたい曲を照らし合わせて、どういうタイトルが一番いいのか話し合った時に、龍之介が『FANDOM』っていう案を出して。俺はもうすごいそれがしっくりきて。その時点であった曲にも1本の太い柱が通った感覚がありましたし、これから新しく曲を書いていく時にも、目標を見失わないための指標になるんじゃないかなと思って。

林龍之介(Dr):僕の中では、文章じゃなくて、エネルギーのこもった言葉、大きな概念の言葉がいいなと最初に思っていて。その中で、『FANDOM』ってかっけえなって純粋に思って。
そもそもバンドにとって欠かせないのがお客さん、ファンであって、そのファンの皆さんと僕たちでつくる世界がどんどん広がって、最終的にはもう日本中が『FANDOM』になるっていう、そういうのを見据えて付けるタイトルがいいなって。『FANDOM』の”DOM”ダムって、ドメスティックとか、ドームとか、そういう言葉の語源なんですけど、トンボコープの最終的な夢は、ファンでドームを埋めることで、これはもう揺るぎないものとしてあって、そういう想いを込めて、『FANDOM』っていう言葉がピキーんときて。

そらサンダー(G):最後まで残ってた候補として、ランドマークっていうのがあって、僕は最後までそっち推しだったんです。でも、『FANDOM』という言葉には熱狂的なファンっていう意味があるって聞いて、熱狂的って言葉がすげえかっけえなって思って。

ーアーティストがファーストアルバムを出す時、セルフタイトルを付けるケースも多いと思います。でも皆さんの場合は、自分たち自身を示す言葉ではなくて、自分たちのファンのことを表す言葉をタイトルとして冠していて、そこに、皆さんの価値観やスタンスがすごく色濃く表れていると思いました。

林:自分たち自身を示す言葉、という発想はみんなの中では全くなく、だから話にも上がらなかったんですけど、今振り返って思い出してみたら、何のためにやってるとか、誰に向けてやってるとか、そういうことを考えた時に、必然的に誰かの光でありたいみたいな、そういう話がけっこう上がって。ランドマークというタイトルの候補が出た時も、誰かのランドマークでありたいとか、そういう話が出て、そこには光というテーマが通底していて。

ーとてもビッグで普遍的な言葉だと思います。

林:どこからいつ出てきたかは分からないんですけど、まるで宇宙が誕生するかのように、僕たちの中で光っていう言葉がぽっと出てきて。その意味としては、誰かの救いとか、寄り添う場所とか、そういう意味での光で。収録曲の一つである「レインコート」も、暗くて、ちょっと死を連想させるような側面もあったりするんですけど、闇の中でこそ光を認識するものかなって思うんで。
日中に星は探せないし、そういう側面の光もあったりして。今から思うと、今回のアルバムは、光を中心にできたのかなって思います。

そら:たしかに今考えてみたら、例えば、りんが作った「HEART BEAT」に〈君は光で僕は影〉っていう歌詞があって、それがすごいりんっぽいなって。自分が光じゃないんだ、っていう。りんがライブのMCで、「主役は君たちだ」みたいなことをよく言うんですよ。もうずっと昔から言っていて、だから、トンボコープの音楽は君たちのものだっていうイメージが僕の中で完全にできあがっていて。

ーでかそさんは、光というキーワードについてどのようなことを思いますか?

でかそ(B):概念として抽象的なのがすごいいいなっていうふうに思ってて。人によって求めてる光は違いますし、光にはいろんな光り方がありますし。でも、全員に等しく光になれる存在でありたいと思ってます。楽曲のバラエティが富んでいて、どんな状況にも寄り添える。そういう、誰にとっても、どんな時も、光になりうるバンドでありたいと思います。

ー先ほど、雪村さんが作詞作曲を手掛けた「レインコート」の話が出ましたが、〈僕のような涙を持った 君に向けて歌うよ〉と誓うこの曲は、トンボコープの存在意義や使命を示す渾身の一曲だと思います。


雪村:自分がバンドマンになる前、リスナーとして音楽を聴いていた時に、すごい音楽に救われた瞬間があって。僕は、落ち込んでる時だったりとか、鬱な気分になってる時だったりとか、そういう暗い気持ちの時に音楽が刺さるタイプの人間なので。自分がアーティストになった今、そういう人に突き刺したいなって思ってます。あえて具体的に言うなら、自分に似てる人に届いてほしいなって思ってます。

ーアーティストとそのファンは似る、もしくは、自分と似ているからそのアーティストを好きになる、という話がありますが、雪村さんは、自分に似ている人というのは、どのような人だと思っていますか?

雪村:自分のことを過度に攻めすぎちゃう瞬間がある人。一人で抱え込んで、失敗を悔やんだりだとか、あとは、周りと比べて自分が負けてるっていう劣等感をすごく感じてしまいやすい人だったりとか。そういう人に届いてほしいです。

トンボコープが語る、揺るぎない夢、ロックバンドを背負う意思

雪村りん

ー雪村さん、林さんという2人のソングライターがいることがトンボコープというバンドの大きな特徴の一つだと思いますが、全く異なる2つの方向性の曲があるバンドという印象はなくて、雪村さんが書く曲と、林さんが書く曲は、深いところで通じ合っているように思います。

雪村:龍之介が書いた曲と俺が書いた曲の伝えたいことの共通性を探した時に、やっぱり一番しっくりくるのが、先ほど話として出た光なんだと思います。誰かの光になりたいという意志が、やっぱり、2人のどの曲にもあるなって思っていて、それが大きく関係してると思います。

ー「レインコート」は、先行シングルとして配信され、既にライブでも披露していますよね。ファンへの誓いの歌、約束の歌であるこの曲は、これからのライブにおいて、とても重要な役割を担い続けていくことになるのだろうと想像しました。


でかそ:自分がイメージするりん君っぽさってこれだなっていう感じがすごいあって。りん君節がすごい出てるし、りん君が本当に思ってることがそのまま歌詞として詰め込まれているっていう印象です。

トンボコープが語る、揺るぎない夢、ロックバンドを背負う意思

でかそ

ー野暮な質問になってしまうかもしれませんが、でかそさんが思う雪村さんっぽさというのはどのようなものでしょうか?

でかそ:なんて言うんですかね。一人でいるというか。ちょっと暗さを持ってるというか。何も考えず楽しく生きてるみたいなタイプの人だと出てこないような視点とか発想。そういう、一人、みたいなところから見た何かが歌われてるっていうのが、りん君っぽさかなっていう印象です。

ー世の中には「みんなで一緒に楽しもう」「みんなで幸せになろう」と歌う歌が多い中、人は誰しも一人である、という前提と徹底的に向き合う姿勢は、僕はとても信頼できると思います。みんなそれぞれ一人ひとりが全然違うからこそ、仲良くなれなかったり、愛し合えなかったりするけど、でも、仲良くなりたいし、愛し合いたい。一人でも、一人だからこそ、〈君〉と一緒に生きていきたい。そうした切実な想いが、それぞれの曲に深く宿っていると改めて思いました。

雪村:意識はしてないんですけど、無意識の中に刷り込まれてるのかなと思います。
どれだけ仲間がたくさんいてキャピキャピしてる人でも、一人の瞬間っていうのは絶対あるので。人間誰しも一人っていうのはずっと思ってて。でも、その中で、手を取り合う瞬間があったりとか、一緒に笑い合ったりとか、一緒に歌う瞬間があったりとか。一人の時間があるからこそ、そういうハッピーな瞬間が際立つ、それが人生なんじゃないか。そういうのが、いろんな曲に散りばめられてるのかなと思います。

ーありがとうございます。今回のアルバムには、雪村さんが書いた「HEART BEAT」、今作のリード曲の「アイデンティティ」、林さんが書いた「始まりの合図」をはじめ、明確に王道を見据えてる、明確にアンセムを目指していると思えるような渾身の楽曲が数多く収録されていると感じます。メジャー1stアルバムをリリースする勝負のタイミングだからこそ、王道の、アンセミックなロックを鳴らしたい、というモードになっているのだと想像したのですが、いかがでしょうか?

林:そういう想いは、最近になってより強くなっています。とにかくこのアルバムに、めちゃくちゃ、もう本当に命を懸けてて。こういうアンセミックな曲をたくさん入れ込んでできたこのアルバムは、もう本当に2025年にロックバンドが出すどのアルバムにも負けてないと僕たちは思ってて。それぐらい、誰の手にも届いてほしいって思っていて。だから、そういうアンセム的な曲が、おのずとたくさん出てきたという感じなのかなって思います。
あとは、ありのままというか、嘘がない感じが、より強まってるかなってすごく思います。必死さがあるというか。もうほんとに光散らしてるというか。

ー雪村さんは、いかがですか?

雪村:僕は、目先の喜びや満足感に囚われて曲を書いていてた時期があって。例えば、SNSでいいねがいっぱい付いたりとか、そういう簡単な部分に囚われていて。でも時間が経って、そういう自分がすごい自分っぽくないなって思って。やっぱり自分っぽさをどんどん出していきたいなって思ったのが、こういう王道に繋がってるのかなって思います。あと、自分っぽさっていう点で言うと、今まで自分を包み隠してバンド活動をしてた部分もあったなって思って。ずっと自分の鬱の部分、弱い部分を包み隠してバンド活動してたんですけど、活動してる中で、そういう自分じゃダメだなってすごい思って。客観的に見ると、すごいつまんない人に見えてるのかもなって。弱い部分も正直にさらけ出して曲にすることによって、さっきも言ったとおり、自分に似てる人がちょっとでも楽になるんじゃないかとか、そういうふうに思ったので、そういうのもあって王道っぽい曲が生まれたのかなと思います。

ー今のお話は、雪村さんにとってとても大きなターニングポイントだと思います。ステージ上に完全無欠のロックスターがいて、そこに熱狂的なファンがついている、という構図ではないというか、それこそがトンボコープらしさであり、素敵なところだと思います。ステージの上に立っている4人は、もしかしたら完全無欠の存在ではないかもしれないけど、弱い部分も共有し合って、そこにファンがしっかりついてく。そういう関係性を大切にしている皆さんが、今回のアルバムに『FANDOM』と名付ける、というのも改めて納得というか。

雪村:ファンの方と同じ目線で音楽をやってる人間こそが、僕の中でのロックスターだと思ってるので、自分なりのロックスターを目指してやっていきたいって思います。

林:そうやってファンと同じ目線で物事を捉えるっていうのは、俺が藤君(BUMP OF CHICKEN)にしてもらったことなんです。それを自分もやりたいなっていうのがすごくあります。

トンボコープが語る、揺るぎない夢、ロックバンドを背負う意思

林龍之介

ー藤原さんは、ライブのMCで、絶対に「みんな」って言わずに、一人ひとりに向けて「君」って言うんですよね。そういうところも通じていると思いました。

林:NHKの「18祭」にBUMPが出た時、1000人の参加者一人ひとりのことを、「5人目のメンバー」っていう言い方をしてて、やっぱそういうところがロックスターだなって。で、そうやってお客さんのことを考えつつも、やっぱ俺たちの中にも、ロックスター、ロックバンドを背負いたいっていう意思はすごく強くあって。そういうのを、『FANDOM』っていうアルバムを通して主張していきたいっていう感じですね。

ーそらさん、でかそさんは、いかがですか?

そら:僕、牡蠣好きなんすよ。牡蠣を獲ってくれる漁師さんにめっちゃ感謝してて。僕からしたらヒーローなんですよ。で、きっと、僕のことをヒーローって思ってくれる人もどこかにはいるんですよ。だからもうみんなに感謝をして生きていきたいし、自分ができることを精一杯やりたい。そういう気持ちは誰にも負けたくないなって最近すごく思いますね。

トンボコープが語る、揺るぎない夢、ロックバンドを背負う意思

そらサンダー

ーそれで言うと、ライブの会場にいる一人ひとりのお客さんも、誰かにとってのヒーローである、という捉え方もできますね。でかそさんは、いかがですか?

でかそ:みんなが言ったことと共通していて、芯になってる部分は同じなんですけど、個人的に思うのは、高校生の時の俺が憧れる人でありたいと思ってます。過去の自分にしゃばいと思われたくない。そういうかっこよさは持っていたいです。別にかっこつけて生きてるわけでもなくて、全然ダメダメな部分も多いですし、でも、自分の半生を過去の俺に喋った時に、よくやったと思われる人生ではありたいです。

ー最後に、今作を完成させた手応えを持った上で、今後、どのように進んでいこうと思っているのかについて教えてください。

林:そうですね、根本的なものは変わらないんですけど、何をしていくかは、たぶんめちゃくちゃ変わり続けていくと思っています。僕たちの中で、ロックバンドたる所以は、常に新しいことにチャレンジしていくことで、それこそが使命だと思ってるんで。例えば、いろんなジャンルを取り入れるとか。今作だと、ヒップホップっぽい曲があったりとか、ボカロみがある曲があったりとか、そういう新しさもあって。時代もどんどん変わっていくと思うし、だから、いろんな新しいものを取り入れて、さらに変わって、進化していきたい。そういう意味を込めて、今作の最後の曲をあえて「始まりの合図」にしています。今回のアルバムでいったん一区切りというわけではなく、始まりに過ぎないっていう意味で。これから、すごく目まぐるしく、面白くなっていくと思います。

雪村:この19曲を土台にして、これからも進んでいきたいなと思います。集大成の作品じゃなくて、スタートラインなんだっていうのはすごく思ってます。あと、さっき龍之介が話したように、いろんなジャンルも取り入れていきたいなって思ってて。世の中には、ロックとは何か、どんな音か、のような固定概念みたいなものがあると思うんですけど、僕は、僕がかっこいいと思ったものがロックだと思ってるんで、どんなジャンルだろうと、かっこいいと思ったものどんどん取り入れて、最強のトンボコープにしていくんだっていう想いでやっていきたいと思ってます。

トンボコープが語る、揺るぎない夢、ロックバンドを背負う意思


<リリース情報>

トンボコープ
Major 1st Full Album『FANDOM』
2025年9月17日発売
配信URL:https://tombocoop.lnk.to/fandom
[CD+Blu-ray] 完全生産限定盤
品番:CTCR-96126/B
価格:¥8,800(税込)
[CD] 通常盤
品番:CTCR-96128
価格:¥3,500(税込)
https://tombocoop.lnk.to/fandom_CD

<ライブ情報>

TOMBO COOP 1st ALBUM RELEASE TOUR
2025年9月26日(金)[大阪] BIGCAT
開場18:00 / 開演19:00
2025年10月4日(土)[愛知] 名古屋DIAMOND HALL
開場17:00 / 開演18:00
2025年10月11日(土)[福岡] DRUM LOGOS
開場17:00 / 開演18:00
2025年10月13日(月・祝)[北海道] cube garden
開場17:00 / 開演18:00
2025年10月23日(木)[東京] Zepp Haneda
開場18:00 / 開演19:00
▼チケット情報
全自由 前売り: ¥4,800(税込) / 当日: ¥5,300(税込)
2F座席指定(Zepp Hanedaのみ) 前売り : ¥5,300(税込) / 当日 : ¥5,800(税込)
▼チケット
イープラス先着先行 (先着)
受付期間:6月23日(月)18:00~7月13日(日)23:59
受付URL:https://eplus.jp/tombocoop/ 
※予定枚数に達し次第、販売終了のため、予めご了承ください。

Official Site:https://tombocoop.com/
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