注目すべき新鋭バンド、ヴィラネル(VILLANELLE)──リアム・ギャラガーの息子ジーンが率いるこの3人組は、デビューEPのリリース前にもかかわらず、すでにイギリス全土で大きな話題を呼んでいる。

11月12日に新曲「Measly Means」をリリースするまでは、ヴィラネルのSpotify上の楽曲はたった1曲しかなかった。
このロック・トリオは、母国イングランド以外でライブを行ったことがほとんどなく、例外はマルタとドイツでの短い単発公演だけだ。1st EPの正式なリリース時期も未定で、デビュー・アルバムに至ってはまだ遠い夢のような存在である。

それでも彼らはすでに、ジェットやリアム・ギャラガーのオープニングアクトとして、イギリス各地の巨大会場で演奏している。さらに、彼らの熱狂的なクラブ・ギグには、まだレコーディングすらされていない曲を、ファンがYouTubeに投稿した粗い映像でしか聴けないにもかかわらず、一緒に叫びながら歌う若い観客が詰めかけているのだ。

彼らがここまでの成功を収めた理由のひとつは、ヴィラネルが筋金入りのニルヴァーナ信奉者だからだ。彼らは『Nevermind』のサウンドをほぼ逆算的に再構築し、その上に少しだけアークティック・モンキーズの要素を振りかけて、彼らが生まれる前にほぼ姿を消していた音楽スタイルを新しい世代のファンに紹介している。「ニルヴァーナのあのサウンドが本当に大好きなんだ」と、フロントマンのジーン・ギャラガーは語る。「最近のバンドの多くは、新しさにこだわりすぎて、過去の音楽から影響を受けることを怖がっているように思う。でも、僕はあのサウンドが好きだし、それを取り入れるのも好きなんだ」

もうひとつの理由は、ジーン・ギャラガーがオアシスのフロントマン、リアム・ギャラガーの息子であるということだ。この事実はもちろん、バンドに多くのチャンスをもたらしている。たとえば、2024年に開催された父リアムの『Definitely Maybe』30周年ツアーでサポートアクトを務めたこともそうだ。

しかし同時に、この血筋ゆえに「ネポ・ベイビー(親の七光り)」という非難は避けがたく、完全に消えることはないだろう。


「ロック・アイコンの息子であることには、いい面がたくさんある」とジーンは語る。「つまり、いい面のほうが悪い面をはるかに上回っているんだ。100パーセントね。でも悪い面も……あまり気にしすぎちゃいけない。前を向いて進み続けて、全部を受け止めるしかないんだ。みんなが何か言ってくるそのエネルギーを全部、自分の力に変えればいい。そうすれば、結構いい立ち位置にいられるからさ」

ヴィラネル結成~初ライブまでの日々

2000年前後のイングランドで育った少年時代、ジーン・ギャラガーはザ・ビートルズに夢中だった。少し成長した頃、母でありオール・セインツのメンバーでもあるニコル・アプルトンが、90年代グランジのバンドたちを彼に教えた。その音楽は彼の心を開き、人生の進むべき道を示してくれたという。「楽器を弾く前から、自分はミュージシャンになるとわかってた」と彼は語る。「初めて観客の前で演奏したとき、その感覚にハマったんだ。ずっとこれをやっていくだろうって、その瞬間に確信したのさ」

ヴィラネルが結成されたのは、ほんの数年前のことだ。
ジーンが友人のつてでベーシストのジャック・シアヴォとバーで出会ったのがきっかけだった。ビートルズ、ニルヴァーナ、アリス・イン・チェインズへの共通の愛を発見した二人は、すぐにバンドを組もうと話し始めた。ほどなくして、友人づてに噂を聞いたギタリストのベン・テイラーをInstagramで見つけ出し、彼が加入した(当初はドラマーのアンドリュー・リッチモンドも在籍していたが、今年になってバンドを離れた。現在はルイス・セムレカン=フェイスをライブで迎えているが、名義上はトリオのままだ)。

結成当初から、彼らは自分たちの好きな90年代バンドのサウンドを再現したいと考えていた。「どんなジャンルやスタイルでも、それを初めて聴く人にとっては”新しい”ものなんだ」とベンは言う。「だから、ある意味では”何かを復活させている”とも言えるけど、多くの人にとってはそれがフレッシュで新しい音楽なんだ。そして、それこそが次の時代を動かしていくものになると思う」

7カ月間のリハーサルとソングライティング期間を経て、彼らはロンドン・アールズコート地区のクラブ「トルバドール」で初ライブをブッキングした。「初めてのギグだから、そりゃ緊張してたよ」とジーンは振り返る。「マジでビビってた。でも勇気を出すためにビールを2、3本飲んでさ。そのあとはもう、めちゃくちゃ楽しかったよ」

初ライブでは、彼らはオリジナル曲だけを演奏した。
その方針は今も変わっていない。「いわゆるカバーバンドにはなりたくなかったんだ」とジーンは語る。「もし誰も僕たちの曲を知らなかったとしても、それはそれで受け止めるしかないって思ってたんだ」

ロンドン中の小さなクラブで数カ月間ライブを重ねるうちに、彼らは十分なレパートリーを持つようになった。しかし、リリースを急ぐことはせず、9月25日に発表した「Hinge」まで音源を温存することにした。「俺たちの曲は、何度も何度もアレンジを変えてきたんだ」とジャックは語る。「一度レコーディングしてSpotifyに出したら、それが最終形になる。だから、あえて時間をかけて寝かせることで、最終的に本当に満足できる形に仕上げることができたんだ」

2万人の観客を前に演奏

2024年6月、バンドはイングランド各地で行われた『Definitely Maybe』ツアーに参加し、2万人規模のアリーナを満員にする観客の前で演奏することになった。「まさに”火の洗礼”って感じだったね」とジャックは振り返る。「でもその経験で、俺たちは本当にミュージシャンとして結束が強まった。ツアーを終えてまた自分たちのクラブ・ギグに戻ったとき、前よりずっとタイトで、しっかりしたバンドになってたんだ。あの瞬間に、確実に成長したと思う」

VILLANELLEインタビュー Oasisリアムの息子率いる3人組が、90年代グランジを甦らせる理由

Photo by Seb Barros

バンドは『Definitely Maybe』ツアーのオープニングで「Measly Means」を披露し、それ以来この曲はライブの中核を担う存在になっている。2ndシングルとしてリリースするのは、自然な流れだった。
「『Hinge』のエッセンスを持ちながら、これからの方向性も示している曲なんだ」とジーンは語る。「力強くて、跳ねるような曲。聴くたびにポゴダンスしたくなるよ」

現時点でヴィラネルのスケジュールには、12月に予定されているイギリス国内でのクラブ・ツアー以外、特に予定はない。だが、彼らはすでに2026年に向けて大きな計画を立てている。春には1st EPのリリース、そして初のアメリカ・ツアーが控えているという。「来年はアメリカ中のいろんな場所で、すでにかなりブッキングが入ってるんだ」とジャックは話す。「外に出て、自分たちのサウンドを聴かせて、本当に響く観客がどこにいるのか、どこには響かないのかを確かめるいいチャンスになると思う。そしてそこから、また次に進んでいけたらいいね」

ヴィラネルの台頭は、オアシスの再結成ツアーと時を同じくして起こった。スケジュールの合間を縫って、メンバーたちはそのツアーを一緒に観に行くなど楽しんでいるが、その一方でどこへ行っても「タダでチケットをくれ」というお願いが絶えないという。「ほんとにいつも頼まれるんだ」とジーンは苦笑する。「知らない人にまで頼まれるんだから、止まらないよ」

また、人々がヴィラネルをニルヴァーナと比較するのも止まらない。だが、それについては彼もあまり気にしていないようだ。
「みんな、”パクってる”と”影響を受けてる”の違いがわかってないんだと思う」とジーンは言う。「まあ、クソみたいなバンドと比べられるよりは、ニルヴァーナと比べられたほうがずっとマシだね」

From Rolling Stone US.

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