ネイト・スミス(Nate Smith)は今や世界最高のドラマーのひとりだ。パット・メセニー、デイヴ・ホランド、ジョン・バティステといったジャズ・ミュージシャンから、ブリタニー・ハワード、チャイルディッシュ・ガンビーノ、ポール・サイモンといった大物まで、幅広いジャンルの作品に貢献してきた。
ヴルフペックのメンバーらによるフィアレス・フライヤーズでの活動でも知られている。

さらに、ネイトはソロアーティストとしても高い評価を得ている。もともとマイケル・ジャクソンの作品に共同作曲者としてクレジットされるなど作曲家としての顔を持ち、ビートも生み出すプロデューサーでもある。リリースしてきたリーダー・アルバムは高い評価を受け、グラミー賞の常連になりつつある。

そんなネイトの最新アルバム『LIVE-ACTION』は、レイラ・ハサウェイやリオーネル・ルエケなど様々なゲストを迎え、これまでとは異なる空気感を伴う作品になっている。ネイトの素晴らしいドラミングが堪能できる一方、独特の質感をまとったサウンドは彼のキャリアの中でも異色。2026年の第68回グラミー賞では最優秀オルタナティブ・ジャズ・アルバム賞、最優秀インストゥルメンタル/ボーカル編曲賞の2部門にノミネートされている。

今年2月にキーファー、カートゥーンズとともに行なった来日公演も大盛況だったネイト。今度はスナーキー・パピーのリーダーであるマイケル・リーグ(Ba)、ジェイムズ・フランシーズ(P)を迎えた3人編成によるツアーで、12月5日にビルボードライブ大阪、12月7日にモントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン2025(会場:ぴあアリーナMM)、12月8日に東京・代官山UNITを回る。そんな彼に、新作『LIVE-ACTION』の話をじっくり訊いた。

一発録りとローファイ感の追求

―まずは新作『LIVE-ACTION』のコンセプトから聞かせてください。

ネイト:僕がほとんどの楽器を自分で演奏してるアルバムなんだ。
ドラム、キーボード、キーボード・ベース、などなど。アルバムの半分くらいは僕ひとりで全部のパートを演奏していて、残りの3~4曲ではリズムセクションにゲストを呼んでる。

そして、ほとんどの曲は頭から最後まで一発録り。ちょっとしたミスとか、ズレとかも全部そのまま残してる。それが人間らしさにつながると思ったし、このアルバムには”生っぽさ”が大事だと思ったから。ジャズの即興性もしっかり残したかったしね。それを全体的にちょっとローファイで、ミックステープみたいな質感に仕上げたのがこのアルバムだね。

―つまりジャケットに楽器がたくさん映っているのは、「全部自分で演奏したよ」というアピールなんですかね?

ネイト:あの写真はね……「ひどい散らかり方してるだろ?」って意味かな(笑)。カオスに囲まれてる感じを出したかったんだ。実際、レコーディング中の僕の頭の中もあんな感じで、いろんなアイデアや音が散らばってて、それをなんとか並べ替えて形にしていく。そのプロセスを象徴しているのがあのアートワークなんだ。

レイラ・ハサウェイが参加した「Automatic」

―あなたはこれまでもライブ性を大事にしてきたと思います。
今回は”一発録り”という点に意識的にフォーカスしたということでしょうか?

ネイト:そう、今回は特に強く意識した。全部の楽器を自分でやるからこそ、「その瞬間に音を見つけていく感じ」を正直に残したかったんだ。テイクの間にあまり時間も置かず、「ベースの音が決まったらそのまま録るよ……よし、決まった。じゃ、頭からいこう」って感じで録音していった。結果的に嘘のない表現になったと思う。

そして、このアルバムを作りながら、僕はスライ・ストーン、スティーヴィー・ワンダー、プリンスといった”ワンマンバンド”の伝統を作った人たちのことをずっと考えてた。今回の作品は、僕なりのそのスタイルへのちょっとしたオマージュでもあるんだ。

―もしかして、ジャケットが紫なのはプリンスと関係あります?

ネイト:ははは、それは偶然のトリビュートだね(笑)。でも僕が紫を使うと自動的にプリンスへの敬意になるよね。

―さっきローファイという言葉が出ましたが、今回はリッチモンドのSpacebomb Studioを使っていますよね。ローファイ感と、このスタジオの機材や環境は関係ありますか?

ネイト:すごく関係してる。Spacebombを知ったのは、友人のバンドであるブッチャー・ブラウンがここで録っていたから。
彼らのアルバムの音がめちゃくちゃ良かったんだ。僕のレコーディングを担当してくれたエンジニアのAlex Deyoungは本当に優秀で、今回求めていた温かさや彩度(saturation)を見事に引き出してくれた。カセットテープっぽい質感でもあるし、2インチテープみたいでもある。2023年にリッチモンドに戻ってからはSpacebombをよく使ってるんだ。

―Spacebombのサイトを見ると、古いアナログ・コンソールやテープマシン、いろんなビンテージの機材が揃っていますよね。そういう機材の存在もこのスタジオを選んだ理由と関係している?

ネイト:僕が初めて録音を経験したのは大学時代で、90年代半ば。当時はまだテープが主流で、エンジニアリングも少し学んでいたから、テープの扱い方や、レイザーブレードでの編集なんかも実際に体験してるんだ。

それに僕は80年代の子どもだから、カセット文化の時代に育った。ブームボックス(大音量でパワフルな音を出す携帯可能なラジカセ。80年代にはヒップホップやストリートダンス文化にとって重要なアイテムだった)の内蔵マイクで自分の演奏を録音していた頃のテープもまだ家にあるよ。音はひどいけどね(笑)。最初の”自分の録音”はそのカセットテープなんだ。
だから、僕のサウンドの原点には、あのテープの質感や記憶がある。Spacebombで録ることで、その感覚をもう一度引き出せたし、それを音楽に反映できた。あのスタジオには、僕が求めている美学があるんだ。音の”聴こえ方”が似てるって感じかな。

『LIVE-ACTION』トレイラー映像、Spacebomb Studioでの録音風景も

―僕はアルバムを聴いて、マッドリブのようなローファイな質感を狙うプロデューサーを思い浮かべたんですが、今回の作品に影響を与えたアーティストはいますか?

ネイト:マッドリブの名前が出るのは嬉しいね。僕がローファイな美学にハマったきっかけの一つが、マッドリブの『Shades of Blue』なんだ。20年くらい前にブルーノートから出た作品で、あのレーベルのマスター音源を彼がリミックスしてる。あの作品には温かさとノスタルジーがあって、同時にビートの組み方が未来的でもある。今でもよく聴いてる作品だよ。

それから、僕は70年代後半~80年代初期に育ってきた。父が聴いていたクリード・テイラー、クインシー・ジョーンズ、ジャズ・クルセイダーズ……あのあたりが最初の音楽体験なんだ。当時は最新鋭のサウンドだったはずなのに、僕が聴いた頃にはすでに少し古びていて、そこにまたヒップホップのサンプリング文化が乗ってきた。
サンプルされたのはボブ・ジェイムス、ハービー・ハンコック、クインシーの諸作といった感じで……ヒップホップを聴くようになっても子供のころに聴いていた作品と同じ時代の音を掘ってたんだよね。

ローファイ的な美学って実は新しくなくて、ずっと続いてる流れなんだと思う。現代だと、さっき名前を挙げたブッチャー・ブラウン、特にDJハリソンだよね。彼は温かいアナログ質感の体現者だよ。日本に行ったとき一緒だったキーファーとカートゥーンズも素晴らしいプロデューサーで、彼らからもたくさん学んだ。そして、フィアレス・フライヤーズを始めたときに、ヴルフペックのジャック・ストラットンが作ったサウンドもヴィンテージだった。フィアレス・フライヤーズでの経験も今作に大きな影響を与えてると思う。

DJハリソン、ジャーメイン・ホームズ、チャーリー・ハンターが参加した「Juke Joint」(詳しくは後述)

本質にたどり着くための「忍耐のプロセス」

―今作は一発録りでの制作、ヴィンテージ/ローファイな音作りに加えて、曲の長さも3分台でかなりコンパクトなのも特徴だと思います。

ネイト:今の僕が考えているのは「現代のリスニング環境の中でジャズをどう提示するか」ということ。もちろん8分台や12分台の曲にも価値があるし、6分くらいの曲にもいいものはある。でも今回の作品では、プレイリストみたいな感覚を大事にしたかった。曲どうしのつながりや流れが自然で、シームレスに聴けるようにしたかったんだ。
自分自身も含め、いまの音楽の聴かれ方を考えると、コンパクトな形で何を伝えるかが重要だと思ったからね。

それと最近は、「少ない情報量でどれだけ伝えられるか」も意識している。ライブで7分弾くつもりの内容を、半分の3分半に凝縮できないか、とかね。これはブリタニー・ハワードとの仕事から学んだことでもある。彼女は「核心にたどり着く」のが本当に早い。曲が短くても、核心に触れるような表現ができるんだよね。だから何度でも聴き返したくなる。ジャズの場合、核心にたどり着くまでの何コーラスもの過程を大事にすることが多いけれど、今回の作品ではもう少し早く核心に辿りつきたかった。

―最短距離で本質にたどり着くって、すごく難しいことですよね。

ネイト:そうなんだよ。そういうものを作るには、めちゃくちゃ時間がかかるプロセスが必要なんだ(笑)。僕の作曲はいつもiPhoneのボイスメモから始まる。ピアノの前に座って、3つとか4つのコードを見つけて、それをずっと繰り返し弾きながら2~3分録音する。それを数カ月、時には数年単位で聴き返すんだ。iPhoneの中には未完成のアイデアが山ほどあるけど、何度も何度も聴くことで、”好きな部分”と”いらない部分”がだんだんはっきりしてくる。「あ、後半いらないな。前半だけでいいかも」「この最初のフレーズだけ取り出して別の曲を作れるかも」そんなふうに芯の部分が見えてくる。逆に「これはダメだな」ってなるアイデアもわかってくる。

大事なのは、作って、いったん離れて、また聴き返して──というプロセスを繰り返すこと。客観的に聴けるまで時間を置くと「これは長い」「これは短いな」とか、適切に判断できるようになる。だから僕にとって、本質に辿り着くことは忍耐のプロセスなんだ。

―今作では「ゲスト陣を短い曲の中でどう活かすか」という難しさもあると思います。限られた時間の中で、そのアーティストの良さを引き出さなきゃいけないですよね。その点はどうでしたか?

ネイト:それもまた忍耐のプロセスで、下調べが大事なんだ。例えば今回2曲で参加してくれたジョシュ・ジョンソン。彼はサックスがうまいだけじゃなくて、ペダルやエレクトロニクスを使ったサウンドスケープがすごく美しい。今回はそこをしっかり引き出したかった。だから、彼に声をかける前に1年くらい彼の音を聴きまくってた。

マーキス・ヒルもそう。彼とはボルチモアでクリスチャン・マクブライド、ジェフリー・キーザーと一緒にカルテットをやったことがあって、そのときの演奏も録っておいて何度も聴いた。そういう関係性もあったから、彼に何をお願いできるかも明確だったんだ。セージュとレイラ・ハサウェイ以外のゲストは、みんな僕が以前から関係を築いてきたアーティスト。だから、「この曲ならこの人のこの良さが出るはず」っていう確信をもって誘うことができた。その下調べがあったから、結果的にどのゲストのパートもうまくハマったんだよね。

ジョシュ・ジョンソンが参加した「LAST SIGHT」

一流のプロデューサー兼ドラマーとして

―適材適所にゲストを配置する。それはクインシー・ジョーンズのように、偉大なプロデューサーが実践してきたアプローチでもありますよね。

ネイト:その通り。クインシー・ジョーンズの凄さって本当に深いんだよね。彼が最高なのは、周りのミュージシャンが「自分らしくいられる空間」をつくるところなんだ。テヴィン・キャンベル、テイク6、バリー・ホワイト、サラ・ヴォーン、マイルス・デイヴィスといった幅広い顔ぶれが同じレコードの中で自然に共存できるのは、クインシーが彼らを歓迎して、安心して演奏できるようにしたから。プロデューサーとして、その水準まで到達するのは本当に難しいけど、僕もできる限りそこを目指したいと思っているよ。

―では、偉大なプロデューサーを目指すあなたはプロデューサーとして、ドラマーのネイト・スミスに何を求めたんでしょうか?

ネイト:ははは、面白い問いだ。ドラマーとしてのネイト・スミスに関しては、好きな部分がある一方で、彼が得意じゃないところも僕は知っている。だからプロデューサーとしての僕の役割は、強みをしっかり際立たせつつ、”弱い部分”にも少しチャレンジさせることなんだ。

例えば、アルバム冒頭のインタールードを聴いてほしい。あの曲ではドラムを思いきり前面に出して、ほぼひとりで勝負している。作品の冒頭からあれだけ”むき出し”になるのは初めてだったから、すごく脆い部分をさらけ出すような感覚があったんだよね。プロデューサーとしての僕は「ここはもっと攻めよう」「ここは普段と違うアイデアを試そう」って、いつも内側で自分に声をかけてる。それは今回に限らず、ライブでも、スタジオでも、最近のツアーでも同じ。僕は一緒に演奏するミュージシャンから刺激を受けるし、逆に僕も彼らを刺激したいと思ってるからね。

ジョシュ・ジョンソン(Sax)、ベン・ウィリアムス(Ba)とのライブ映像

―セージュのコーラスが入る「BIG FISH」、ジョシュ・ジョンソンとの「NOW」「LAST SIGHT」など、ストロングに叩きすぎず”抑える”ことが求められる曲もありますよね。ドラムのセッティングや音色にはどういうこだわりがありましたか?

ネイト:セージュとの「BIG FISH」の魅力って、まず彼女たちの声がクリアで美しいことなんだよね。でも、その下で鳴ってるドラムや楽器はちょっとザラついていて、その衝突が面白いんだ。最初はピアノとドラムだけのデモだったんだけど、それをセージュのメンバーのサラ・ガザレクに送ったんだ。そこから1年くらいかけて、アマンダ・テイラーがメロディやヴォイシングを作り上げてくれた。完成に近づくにつれて、僕は「これ、もっと違うサウンドにしたほうがいいな」と思うようになった。

その時に「もしこの曲が マイケル・ジャクソンの『I Cant Help It』みたいな質感になったらどうだろう?」ってアイデアが浮かんだんだ。そこからモーグとローズを用意して、その音色に合わせて70年代っぽいデッドな質感のドラムセットを組んで演奏し直したら、すごくハマったんだ。

ジョシュ・ジョンソンに関しては得意領域が明確にある。彼はアンビエントで空間的なサウンド、エレクトロニクス、そして”音の泳ぎ方”がとても美しい。だから、「NOW」「LAST SIGHT」での僕のドラムはしっかり芯を持ちながら、周りのシンセやエフェクトに溶け込むようなサウンドが必要だった。要するに、相手のサウンドをよく聴いて、そこにどうフィットするかを考えること。それが今回のドラム・サウンドの作り方だった。

セージュが参加した「BIG FISH」

ディアンジェロの喪失「彼は”生徒”であり続けた」

―ところで最近、ディアンジェロが亡くなりました。ネイトさんも大きな影響を受けたアーティストだと思いますし、このアルバムの中にも彼を思い出す瞬間があります。

ネイト:とても悲しい出来事だよ。僕とディアンジェロは生まれ年が同じで(1974年)、彼が10カ月だけ年上。彼は2月生まれで、僕が12月生まれ。その短い生涯で、スタジオアルバムが3枚、数多くの客演、そして未発表の作品が山ほどあるはず……もう新しい音楽を聴けないと思うと、本当に心が痛む。

今回のアルバムを作ったとき、僕たちは彼の容態を知らなかった。でも「Juke Joint」に参加してくれた ジャーメイン・ホームズは、ディアンジェロのバックシンガーだったし、ギターのチャーリー・ハンターは『Voodoo』でプレイしてる。だから強い縁があったんだ。

「Juke Joint」ドキュメンタリー映像

―まさに僕も、先ほどの質問に関しては「Juke Joint」が念頭にありました。

ネイト:だよね。ディアンジェロは本当に大きな存在だった。彼が亡くなったことで、僕らは巨人を失った。僕は葬儀にも参列できたんだけど、彼の3人の子どもたちがみんな素晴らしいスピーチをしていて、本当にいい父親だったことが伝わってきた。そして友人たちにも深く愛されていた。リッチモンドは大きな街ではないけど、それでも各地からたくさんのミュージシャンが集まって、彼に敬意を表していた。あれは本当に胸を打つ光景だった。ディアンジェロの喪失は大きすぎる。でも、彼から受け取ったインスピレーションは、これからの僕の音楽の中にも生き続けると思う。

―実は、ディアンジェロが亡くなった翌日に僕はラジオに出演する機会があって、追悼特集を組むことになったんです。そこでロイ・ハーグローヴ、ニコラス・ペイトン、ロバート・グラスパー、そしてネイトさんの曲を選びました。ディアンジェロがやってきたことは本当に幅広くて、その影響を自分なりに解釈し直したり、拡張してきたのがネイトさんだという印象があったからです。ミュージシャンとして、彼からどんな影響を受けたのか聞かせてもらえますか?

ネイト:ディアンジェロはよく「自分はブラック・ミュージックを作っている」と言っていたんだよね。彼はブラック・チャーチで育った。父親が牧師だったと思うけど、教会の音楽にどっぷり浸かって育った。それに加えて、彼は音楽全体の熱心なリスナーで、ずっと学生のように音楽を学び、研究していた。特にプリンスだよね。今回のインタビューで彼の名前が何度も出てきたことも、ディアンジェロからの影響が大きいと思う。プリンス、スティーヴィー・ワンダー、マイケル・ジャクソン……そういったブラック・ミュージックの巨大な系譜が、全てディアンジェロの中に流れ込んでいた。それだけじゃない。マイルス・デイヴィスもフェラ・クティもね。彼の音楽にはアフロビートの影響だってある。とにかく彼の音楽にはいろんな要素が詰まっている。だから「どの部分に影響を受けたか」と一つに絞るのは難しい。でも、一番強く感じるのは、彼が生涯”ブラック・ミュージックの生徒”であり続けたこと。歴史への敬意と好奇心を常に持っていた人だった。

ロイ・ハーグローヴとディアンジェロがつながったのは偶然じゃないし、ロイの存在が『Voodoo』のサウンドにとってどれだけ重要だったかは明らかだと思う。あの二人の出会いはブラック・アメリカン・ミュージックの交差点そのもの。僕自身もブラック・アメリカンのミュージシャンとして、その系譜の一部にいる。ソウル、ファンク、ジャズ、アフロビート、ブラックロック、エレクトリック・ジャズ……全部が自分の中でつながっている。だから彼から受け取った影響を言葉にするなら、”音楽を学び続ける姿勢”なんだと思う。僕らはずっと生徒なんだ。

―アフロビート、ブラックロック、ジャズ、ファンク、エレクトリック・ジャズなど、ディアンジェロが吸収していたブラック・ミュージックの幅広さを考えたとき、今その広さ全部を受け継いでいるひとりがネイトさんじゃないか、と僕は思ったんですよね。

ネイト:ありがとう。僕は歌で伝えることはできないけど、楽器奏者として、ドラマーとして、自分の音楽はひとつの壁をつくるレンガだと思っている。作品のひとつひとつがレンガで、その積み重ねが自分という音楽の壁になる。ディアンジェロのような偉大なアーティストが築いた大きな壁に比べたらずっと小さいかもしれない。でも、僕もその連続性の中の一部として音楽を作っているつもりだよ。

―では最後に、今回の日本ツアーについてコメントをお願いします。

ネイト:今回は、ジェイムズ・フランシーズ(P)とマイケル・リーグ(Ba)のトリオで行くよ。ヨーロッパで一緒に演奏していて、音楽のまとまりが本当に素晴らしいんだ。二人とも最高のミュージシャンだし、最高の仲間だよ。彼らと日本に行けるのは夢が叶うような気持ちだ。どれだけワクワクしているか説明するのが難しいくらいだよ。

ネイト・スミスが語る「ジャズを現代のリスニング環境でどう提示するか」新たな挑戦とディアンジェロの喪失

Photo by Tyler Scheerschmidt


ネイト・スミスが語る「ジャズを現代のリスニング環境でどう提示するか」新たな挑戦とディアンジェロの喪失

Nate Smith featuring Michael League and James Francies
JAPAN TOUR 2025

2025年12月5日(金)ビルボードライブ大阪
1stステージ 16:30開場 17:30開演 / 2ndステージ 19:30開場 20:30開演
>>>チケット購入はこちら

2025年12月7日(日)MONTREUX JAZZ FESTIVAL JAPAN 2025
会場:ぴあアリーナMM
12:00開場 13:00開演(予定)
共演:ハービー・ハンコック 85th Anniversary Special (guest:小曽根真、馬場智章、石若駿)、ペルソナ5 スペシャル・ビッグバンド、MJFJ TB×ER UNIT with BIGYUKI(guest:Jeremy Quartus、石若駿)、蓮沼執太フィル、LOsmose
公式サイト:https://montreuxjazzfestival.jp/
>>>チケット購入はこちら

2025年12月8日(月)東京・代官山UNIT
18:00開場 18:30開演
>>>チケット購入はこちら

公式サイト:https://www.eight-islands.com/nate-smith-japan-tour-2025
編集部おすすめ