10月8日にリリースされたNovel Coreの曲「DiRTY NASTY」。リリックには〈まるでマイケル・モンロー/飲まない酒は1滴も/でも 上がっていくテンポ 爆音中毒の脳味噌〉というラインがある。
Novel Coreとマイケル・モンロー……ジャンルも世代も違う両者だが、境界線なんて関係なく、新しい音楽、新しいスタイルを打ち出してきた点では共通点を感じてしまう。

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マイケル・モンローに対しては、音楽だけに限らず、ロックスターなのにストレート・エッジという生き方をしているところにも惹かれたというNovel Core。マイケル・モンローの来日時に、両者の対談が実現した。なお原稿の最後に、11月25日の東京公演を観たNovel Coreから感想コメントを追記しておく。

―彼(Novel Core)は新曲「DiRTY NASTY」のリリックの中に、あなたの名前を入れているんですよ。

マイケル・モンロー 僕の名前を? ありがとう! 

Novel Core (マイケル・モンローのことは)幼少期から母親の影響もあって、もともとハノイ・ロックスの頃から知ってます。ロックミュージックがずっとかかってる家庭で育ったので、その中で聴いてカッコいいなと思ったんですよ。あとは、自分のスタイルをちゃんと持ってるところにスゴく惹かれて。フー・ファイターズのギターのクリスがインタビューで、影響を受けてるという話を見たので、どういうスタイルの人なのかが気になって。掘り下げていったところから、ストレート・エッジなのを知って。自分もスタイルが同じだから、スゴいそこで共感したんです。

マイケル・モンロー 君もアルコールを飲まないんだね。
アルコールは良くないよ。

Novel Core なぜストレート・エッジになったんですか?

マイケル・モンロー まず最初に言っておきたいのは、酒ってつまらないんだよね。楽しくも何ともない。ただ、ロックンロールっていうだけで、みんなが酒と結びつけたがるだけなんだ。でも、ロックンロールってそういうことじゃないんだ。酒を飲むとバカになるし、変なことをするし、僕は楽しいとは思わない。飲むと気持ち悪くなるだけで、吐いたりすると、「これ、何が楽しいんだよ」って思ってしまう。みんながやってるからって、同じことをする必要なんて全然ないじゃないか。アルコールを飲むことが ”ロックンロール” なわけじゃないんだよ。人は僕に「こうあるべきだ」っていうのを期待してくる。でもそんなのはクリシェでしかない。ロッカーはみんな同じだと思ってるけど、実際には飲まないロッカーなんていっぱいいるし。
それに、「俺も昔はクレイジーだった。今はクリーンになったけど」みたいな話をする人たちも退屈だ。ビール腹でゼエゼエ言いながら、そういうことを言ってくるんだ(笑)。僕は昔から飲まないし、自分の身体は常にちゃんとケアしてきた。

ライブってさ、かなり体力を使うんだよ。特に僕の場合はたくさん動くし、サックスも吹くし、ハーモニカも演奏するから。身体が良い状態にあると、パフォーマンスはずっと楽になるし、観客から見ても自然に見える。一番重要なのは、ライブをちゃんとやることだからね。確かに、ハノイ・ロックスには悪い評判がつきまとってたよ。それで人は、僕が ”クレイジーな悪魔” みたいな存在でいてほしいと願ってる。でもそれはただの評判でしかないから。みんなはそういうのに惹かれるし、そういうのがカッコいいと思い込んでる。
でも僕にとっては、ハノイ・ロックスの時代から、いつだって重要なのは ”楽曲” と ”パフォーマンス” なんだよ。だから、ひどいライブなんて一度もない。ただ、昔ロンドンでやったあるギグでは、ギターのナスティ・スーサイドが完全にぶっ飛んでてさ、ステージにでかい柱みたいなものに寄りかかって演奏をしてたけどね。それでもちゃんと弾いてたよ。

ハノイ・ロックスに影響を受けた人たちの多くは、飲んだり、パーティしたりしすぎて、楽器よりもヘアスプレー缶をうまく鳴らしてるような感じだった。ビッグヘアにして、変なポーズをして、女、セックス、ドラッグ、ロックンロール……そういうノリだ。つまらないよね。多くのバンドは肝心なことを忘れてしまうんだ。大切なのはハートなのにさ。ちゃんとハートを込めて音楽をやれば、必ず人のハートにも届く。最終的には自分の道を行くのが一番で、他人の流行を追うのは完全に間違いなんだ。グランジとかニューメタルとかいろいろ流行もあったけど、終わったよね。
ニルヴァーナが登場して、スゴいバンドだって評判になって、2000以上ものバンドが自分たちも売れたくて同じような音を出してた。でもね、お金とか名声が理由で音楽を始めるのは間違いの元なんだ。本当の ”自分のもの” があれば、それは必ず届く。”自分の道を行く” 方がずっとクールなんだよ。自分のアートをやればいいだけだし、間違った理由で妥協なんかするべきじゃない。他人のことなんて気にする必要はないんだ。自分のことをやって、自分のパーソナリティを強くして、うまく歌うことよりもエモーションを大切にするんだ。パーソナリティとフィーリングなんだよ。つまり、心から誠実で、自分のやりたいことを正しい理由でやるってことだ。そうすれば、その土台はスゴく強いものになるし、誰にもそれを奪うことなんてできなくなるから。

Novel Core 自分がずっと信じ続けてきたことを、今そのまま言ってくれたので、本当にうれしいです。自分の育った環境はヒップホップのシーンだったんですけど、僕はお酒アレルギーで、そもそも飲めないというのもあって。
でも、先輩たちとかシーンにいる人たちはみんな飲んでるし、コミュニケーションの一環だから飲もうと言われていたけど、僕の中では音楽、自分のメッセージを届けることが一番大事だったんです。それを天秤にかけても、アルコールが重くなることは絶対になかったから、自分が大事なものを優先したんです。

マイケル・モンロー 間違いないね。特に、ラップミュージックはストリートミュージックだし、もともとは歌詞にメッセージがあったし、歌詞が本当に大事だったからね。グランドマスター・フラッシュ・アンド・ザ・フューリアス・ファイヴもそうだった。「The Message」の歌詞もそうだ。そこにオリジナルのアイデアがあった。でも、何でもそうだけど、商業化されると薄まっていくものだ。それで、ラップの歌詞にはもうメッセージなんてなくなって、すべてが「女の胸とお尻」みたいな内容だけになってしまったよね。そもそもMTVなんて、最初はブラック・ミュージックのビデオをオンエアしてなかったんだよ。「Sun City」って知ってる? リトル・スティーヴンがアパルトヘイトに反対して作った曲で、僕もバックボーカルで参加してるんだ。ボノからボブ・ゲルドフ、ブルース・スプリングスティーン、マイルス・デイビス、Run-DMCまで、世界中の大物たちがそこにいたよ。
1985年の曲だけど、当時の南アフリカで行われてることが気に入らなくて、ロッカーもラッパーもみんなが集まったんだ。

サン・シティっていうのは、南アフリカのリゾート地で、巨額の報酬をもらうためにそこに演奏しに行くミュージシャンが多かった。僕たちはそれのボイコットを呼びかけたんだよ。結果、何年か経って、南アフリカではアパルトヘイトが廃止されることにもなった。リトル・スティーヴンは最初、MTVにもかけ合ったけど、「Sun City」はオンエアされることがなかった。でも曲が大反響になると、MTVもオンエアせざるを得なくなった。そこからMTVでもブラックミュージックがオンエアされるようになったんだよ。それでヒップホップは大人気になって、メッセージもなくなっていったというわけさ。で、最初の話に戻るけど、僕の中では、「ヒップホップ」とか「ラップ」とかいう名前がついた時点で終わったと思ってる。”自分のことをやる” っていうのは、いつだってそうだ。ロックンロールだって同じだ。カテゴリーができた時点で、限界が生まれてしまうんだ。僕が大事にしたいのは、相手の顔を見て真実を伝えることだ。それがシステムに対する反逆になる。システムなんてクソだし、ちゃんと機能していない。世界を見てみなよ。クレイジーな世の中だし、指導者たちも狂ってるよね。音楽における歌詞っていうのはスゴくパワフルなツールなんだ。言葉を使うことで世界は変わってくるから。僕はロックンロールで世界を救えると信じてるからね。

Novel Core それは僕も同じです。

マイケル・モンロー かと言って、政治的なことを言わなくてもいいんだ。とにかく真実を伝えること。他人がまだ考えたことのないものを提示できるからね。歌詞はサウンドと同じくらい重要なものなんだ。

マイケル・モンロー×Novel Coreが語る 世代とジャンルを超えて共鳴した「信念」

Photo by Mitsuru Nishimura

Novel Core 自分はヒップホップが出自ではあるけれど、ロックミュージック、ポップス、R&B、ボーカロイド、アニメとか漫画からもスゴい影響を受けてるから、それを全部ごちゃ混ぜにした音楽、ミクスチャー・ミュージックというのを自分の中で定義してやっているんです。今話してくれたように、ジャンルに名前がついてしまうと一気に天井が決まってしまうというのは、僕もそう思っていて。だからこそ、自分のやりたいことを自由にやろう、ジャンルとか関係なく、自分がいろいろ影響を受けたものを、ごちゃ混ぜにしてそのままインスピレーションとして吐き出すというのを、今はめちゃくちゃやってます。次のアルバムには「Wake Up! TOKYO」という曲が入ってて、今話してくれたみたいな、世間から見たら政治的に見えるかもしれないメッセージだけど、僕からすると政治的ではなくて、自分から見えた世界の話をしてるだけの曲なんです。今の日本は、ポリティカルなことをリリックに入れると、良くないみたいな雰囲気があって。ミュージシャン側が気にしてたりとかもするけれど、僕は自分の話をするべきだと思うし。スゴくそこは共感しますね。

マイケル・モンロー×Novel Coreが語る 世代とジャンルを超えて共鳴した「信念」

Photo by Mitsuru Nishimura

マイケル・モンロー ポリティカルなことを歌っても、音楽は音楽だからね。メロディがあれば、音楽になってしまうから。それはどんな音楽でも良くて、大事なのは気持ちが動くかどうかということなんだ。そこに真実を語る歌詞があればさらにいいよね。スティーヴ・ベイターズ(The Lords of the New Church)の曲にこんなのがあるよ。「Open Your Eyes」という曲で、〈テレビゲームは子どもたちを戦争に備えさせ/ハイファッションの店にはアーミー・シックが並ぶ/「法と秩序」は仕事を果たしたと言うが/刑務所は満杯で金持ちはいまだに盗み放題/暗殺まがいの政治/この国の真ん中では暴力が支配している/無知こそが彼らの武器だ〉。素晴らしいリリックのいい例だよ。自分のハートが感じた真実を歌うということが大切なんだ。それが人のハートを動かすから。

Novel Core メロディの話で言うと、「Tragedy」のノスタルジックなメロディがスゴい好きなんですよ。メロディを考える時、曲を作る時に、何を一番大事にしているのかを知りたいです。

マイケル・モンロー 大切なのはキャッチーなメロディと、ちゃんと何かを言ってて、人が共感できるような歌詞だと思う。自分のエモーション、フィーリング、考えてることを、エンジンとして歌詞に込めるんだ。それを伝える時に、聴き手がどう受け止めるのかを考える。聴き手は君の歌う歌詞、音楽を聴いて、「ああ、この人には言いたいことがあるんだ」ってなるはずだ。その言葉は必ずしもディープで意味があるものでなくてもいい。正直であればいいんだ。人に対してごまかしをするような、くだらないものでなければいい。シンプルでもリアルであればいいんだよ。つまり自分らしいものであればいいんだ。

Novel Core 僕も年々作り方がそうなってきてるし、それがしっくりきてるんです。今の話を聞くと、自分は合ってるんだなと思いました。

マイケル・モンロー 僕は63歳だけど、今が人生の中で一番幸せだよ。あまり変わってもいないし、同じ人間だと思うしね。進化もしてるし、キッズの振りをするつもりもないよ。ただ同じスピリットの持ち主でいるだけだから。大人になるよりも、子どもと同じ好奇心と興奮を人生の中で持ち続けたいね。まあ、そういう意味ではキッズなのかもしれないけど(笑)。

Novel Core 本当に同じことを思います。若さって年齢ではない、時間と共に死んでいってしまう若さには特別な意味はないと思うので。

マイケル・モンロー 間違いないよ。今の時代は特にね。アリス・クーパーなんて77歳だよ。一緒にツアーした時に、「マイケル、60歳なんて大したことないよ」って言われたからね(笑)。要は、気持ちの持ちようだ。年老いたと思ったら、見た目もそうなるから。60歳にもなれば、生き方が顔に出てくるものだから。君のパーソナリティがそこから見えてくるんだよ。

Novel Core 確かに。

マイケル・モンロー でも自分に正直でいれば、恐れることなんてない。確固とした基盤があれば、誰もそれを奪えないからね。

Novel Core あと、「Last Train To Tokyo」という曲で、東京が舞台になった理由を知りたいです。

マイケル・モンロー 日本が大好きだからだよ。日本で演奏するのも大好きだ。今まで35回は日本に来たんじゃないかな。この国は素晴らしいよ。僕は日本人も日本の文化も大好きなんだ。日本に来る前、ハノイ・ロックス時代から着物を着てたくらいだ。日本人はスマートだし、お酒を飲んでも攻撃的にはならないよね。イギリス人みたいに、すぐに喧嘩とかにはならないんだ。でも、アルコールに関して言うと、アルコールが合法なのはそこに意味があるんだよ。政府からすると、市民がバカでいてくれる方が支配しやすいからね。まあ、これは僕の考えだけど。

Novel Core 今日のライブで、ここが一番楽しみということを知りたいです。

マイケル・モンロー 観に来てくれた人がどんな形でも楽しんでもらえたらと思うね。今日は新曲を2曲演奏するから、それも楽しみだ。ちょうど今日、新曲「Disconnected」が発表になるし、もう1曲「Rockin Horse」はすでにリリースしてる。この2曲を初めて演奏するのが東京なんだ。一人ひとりが思い思いに楽しんでくれたら、それが最高だね。全員に楽しい時間を過ごしてほしいんだ。昨日のライブでは8000人もの人がいて、最初はみんな静かにしてたけど、演奏が始まるとスゴく盛り上がってくれたよ。日本人ほど礼儀正しくて、素敵な人たちはいないと思うね。だから、東京にオマージュを捧げた曲も作ったんだよ。

―Novel Coreは境界線を超えていくアーティストなので、最後にハノイ・ロックスが登場した時のことを聞きたいのですが。マイケルは1980年代に全く新しいルックス、新しいサウンドで、突然変異のごとく登場しましたよね。そこには境界線なんてないという感じがありました。

マイケル・モンロー 僕たちは影響を受けたあらゆるものを、自分たちのものとして表現したからね。50s、60s、パンクロック……リトル・リチャードからローリング・ストーンズラモーンズまで、さらにクラシック音楽も含めて、ありとあらゆる音楽を取り入れたんだ。ルックスに関しても、テディボーイズからはここ、あそこからはここという風に、影響を受けたあらゆるところから取り入れてた。そこから自分たちならではのものを形にしていったんだよ。パンクはその後ファッションになってしまったけど、あれは衝撃だったし、大きな変化をもたらした。当時のロックは大げさなステージで、長くて自己満のギターソロを弾いたりして、観客が眠ってしまうような退屈なものに変わり果ててたんだ。一方で、ラモーンズが演奏するのは2分の曲だから、パンクのおかげで超絶技巧のプレイヤーになる必要がなくなった。パンクはスゴくヘルシーなムーブメントだったと思うよ。ある時、ラモーンズがロンドンでギグをやった時、クラッシュのジョー・ストラマーがジョニー・ラモーンに、「俺もバンドをやってるけど、まだ用意ができてないんだ」って言ったら、「用意できてるだろ。何でやらないんだ」って言われたらしいんだ。ひどいバンドでも、最高なんだよ。ロックンロールの考えはそこにあるんだ。他人を気にせず、自分のことをやるだけ。それに尽きると思うね。

■Novel Coreコメント(ライブ観覧後)

とにかくエネルギーがピュアで、ストレートだったのが印象的でした。曲もやはりシンプル。初めて聴いた曲もあったけど、コール&レスポンスについていけるくらいシンプルな構成で、マイケル・モンロー本人の茶目っ気と、歌のパワーが遊びの余白を作っていて。

ファンを気遣い、ペットボトルを舞台袖から大量に持ってきてフロアに投げ入れる姿を見て、対談時に感じた目の真っ直ぐさ、音楽と、それと向き合う彼を支える全ての人への誠実さを強く感じるステージだった。

ジャンル分け、カテゴライズなんかよりもずっとずっと前にある ”心が踊るか否か” で彼はパフォーマンスしている感じがしたし、僕と同じく、自身の中で普遍的なグッドミュージックを追求しているから、こういう楽曲、ライブになるんだろうなと強いシンパシーを感じた。

あと、本番前の裏でのストレッチを見ていても感じたけど、改めて体の柔らかさが凄い(笑)。

マイケル・モンロー×Novel Coreが語る 世代とジャンルを超えて共鳴した「信念」

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マイケル・モンロー×Novel Coreが語る 世代とジャンルを超えて共鳴した「信念」

『PERFECTLY DEFECTiVE』
Novel Core
2026年1月14日発売
https://novelcore.jp/announcement/perfectly-defective/
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