By Angie Martoccio
Visuals by CARIN BACKOFF
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「テイト」と「タチアナ」の二面性
「自分のことは、自分でどうにかしなさいよ!(fix your f*ckin self!)」円を描くように腰を振り、ダークブロンドの髪を翻しながら、テイト・マクレーはそう叫ぶ。カナダ出身のポップスターは、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンのステージに立ち、約1万5千人の観客を集めたソールドアウト公演で、新たな別れのアンセム「TIT FOR TAT」を披露している。彼女が身にまとっているのは、チェリーレッドのマイクロショーツにおそろいのブラ。ブリトニー・スピアーズが「Oops! … I Did It Again」のビデオで着ていたのと同じ色味だ。そこに黒のニーソックスを合わせている。キャットウォークを軽やかにスキップし、笑顔を見せたかと思うと、すぐさま獰猛で躍動的な振り付けへと戻る。頭を大きく反らし、ランジの姿勢で片脚ずつ横に投げ出し、汗に濡れた腹筋が照明にきらめく。
「TIT FOR TAT」米カリフォルニア州・Kia Forumでのパフォーマンス映像
曲がクライマックスに差しかかると、テイトとバックダンサーたちが一斉に両手を突き上げる、その一秒単位のタイミングに合わせてパイロ(火柱)が炸裂する。観客は完全に釘付けだ。歓声を上げながら、誰もがスマートフォンでその一瞬一瞬を記録している。アンコールでヒット曲「Sports car」が演奏されると、会場の熱気は最高潮に達する。
ここに集ったファンたちは、「テイター・トッツ(Tater Tots)」という愛称で呼ばれている。彼女たちもまたマイクロショーツ姿で、その多くはレオパード柄。背中に「T8」と書かれたジャージを羽織っている者も多い。2017年にテイトが自身の楽曲を投稿し、バイラルヒットを飛ばし始めた頃から彼女を追い続け、文字どおり”ともに成長してきた”ファンも少なくない。だが、いま彼女たちが崇拝しているのは、もはや以前のテイト・マクレーではない。ステージに立っているのは、テイトのもうひとつの顔、タチアナだ。大胆で、セクシーで、恐れを知らないスーパースター。驚異的な柔軟性を武器にしたダンスムーブをひとつ決めるたび、この一年ひそかに、しかし確実にポップの世界を制圧してきた存在である。
2025年11月14日、ロサンゼルスにて撮影されたテイト・マクレー
彼女のダンス・ポップの名曲群は、クラブ仕様でありながら、女性であることについての内省的な一節がぎっしり詰まっている。同時にそれらは、身を委ねれば理性や羞恥心を忘れさせてしまう類の楽曲でもある。
彼女がそう語るあいだ、私は”ディナー・パーティー・テイト”と向き合っている。もっとも、正確にはディナーではなくランチだが。場所は、ビバリーヒルズのホテル9階にある洒落たレストラン、ダンテ。先述のマディソン・スクエア・ガーデン公演から1カ月が過ぎた頃──ちなみにあの公演は、彼女にとって今年3度目のMSGソールドアウトであり、全88公演を行い、興行収入1億1100万ドルを記録した「Miss Possessive Tour」の一環だった。私たちはテラス席に腰を下ろし、束の間の雨をもたらす陰鬱な雲を眺めている。ちょうどそのときピアニストが、最近テイトがよく聴いているというザ・ビートルズの『Yesterday』を弾き始める。「度付きではない」と彼女自身が言うべっ甲柄のメガネ越しに、丘とヤシの木を見つめながら、テイトはダイエットコークをひと口飲む。「なんだか、いま天国に足を踏み入れたみたい」と彼女は言う。
テイトはセックス・ピストルズのスウェットシャツを着ている(「何なのかはよく分かってないんだけど」と彼女は認める)。白いスウェットパンツには茶色いペンキが飛び散り、足元はシルバーのアディダスGhost Sprintシューズ。
テイトは南カリフォルニアに6年間暮らしてきたが、現在の拠点はほぼニューヨークだ。この夏、マンハッタンにアパートを購入した。ロサンゼルスをけなすつもりはないと言いつつも、ここにいると自分が迷子のエイリアンみたいに感じるという。
Vintage 2001 Dior by Galliano Choker via Shop Sosko.
いま筆者の眼前にいるのは、素のテイト・マクレーだ。彼女はアルバータ州出身の22歳で、パンプキン・スパイス・ラテが誕生したのと同じ年に生まれている(ちなみにこれは的確な符合だ。というのも、彼女はホリデー・シーズンが大好きなのだ。「秋とクリスマスって特別だと思う」と、のちほど彼女は打ち明けてくれた)。彼女はサワードウをかじりながら、ベイキングを始めてみたいという話や、今日このあと血液検査を受けなければならないという話をしている。「ママに『今まで一度も血液検査したことないでしょ?』って言われて」と彼女は言う。「『さすがに怖いし、やったほうがいいよね』って思ったの」。
この取材の48時間後、彼女は『サタデー・ナイト・ライブ』でネタにされていた(過去2年間で2度、音楽ゲストとして出演しているテイトにとってはおなじみの舞台だ)。だが、いま目の前にいる彼女は、そのポップスター像とはこれ以上ないほどかけ離れている。
「本当に笑えるよね」と彼女は言う。「テイトはとても内省的で、とても繊細で、とても引っ込み思案で、ちょっと不器用なカナダ人。どちらかといえばシャイなタイプかな。私は観察する側で、いつも内側に意識が向いている。そして、私が作り上げたこの人格は、自信に満ちたポップガールでいるための手段なの。ふたつのコントラストがあるからこそ、人ってこんなにも多面的になり得るんだ、ってことを示せると思う」。
「私は間違いなく、その両方の側面を見てきました」と語るのは、テイトの常連コラボレーターであるエイミー・アレン。これまでにサブリナ・カーペンター、セレーナ・ゴメス、ハリー・スタイルズらともヒット曲を手がけてきた人物だ。「(曲作りの過程で)すごく親密な空気のなかで、彼女のもっとも深いところにある切実な体験を掘り下げていくんです。でも、ときには同じ曲の途中でさえ、さっきまで胸が張り裂けそうなことを話していたはずなのに、急に立ち上がって、くるっと回り、部屋の隅で軽く振り付けを始めたりする。
Vintage Bodysuit from Lidow Archive. Vintage Jeans via Bluey Denim. Shoes by Amina Muaddi.
筆者がテイトと会った時期は、彼女が破格の成功を収めた一年の終盤にあたる。過酷な「Miss Possessive Tour」に乗り出す直前の2月、彼女は3作目のアルバム『So Close to What』をリリース。本作はビルボード200で初登場1位を獲得し、ドレイクとパーティネクストドアによる『$ome $exy $ongs 4 U』を首位から引きずり下ろした(ちなみに同作には、ドレイクが〈Bitch, I feel like Tate McRae〉と歌う「Small Town Fame」が収録されている)。その後、テイトは9月にMTV Video Music Awardsでパフォーマンスを披露したあと、映画『F1/エフワン』のサウンドトラック・アルバム収録曲「Just Keep Watching」を発表。この楽曲によって、自身初のグラミー賞ノミネート(最優秀ダンス・ポップ・レコーディング部門)を果たした。さらに11月、ロサンゼルスで私たちが会ってから1週間後には、『So Close to What』のデラックス版となる『SO CLOSE TO WHAT??? (deluxe)』をリリースする。
雨粒がぱらぱらと落ち始め、ピアニストがビリー・ジョエルの『Vienna』を弾き始める。いまのテイトはどんな気分なのだろうか? 「肉体的には、もうクタクタ」と彼女は言う。「でもメンタル的には、この6年間でいちばん自分でいられている感覚がある」。
MTV Video Music Awardsで「Revolving Door」と「Sports car」をパフォーマンス
天使のモチーフとと失恋の痛み
テイトがどうしてもカリフォルニアに滞在しなければならないとき、夕方になると音楽をかけ、窓を開けたまま海まで車を走らせるという。「夜のビーチ、月と海が大好き」と彼女は言う。「いかにも水の星座っぽいでしょ。でも、あそこに行くと、何かとちゃんとつながっている感じがして、夢を見たり、願いごとを考えたりできるの」。
彼女は、フランスの作家アナイス・ニンが残した一節に、たびたび立ち返るという。「私は落ち着きがない。何かが私を呼び、引き離そうとしている。私の髪は、また星々に引っ張られている」──テイトが引用したこの言葉が、彼女の2025年におけるムードを言い表していたという。
これはデラックス・アルバムのビジュアル・コンセプトにも反映された。「自分が、外側からの力に引き寄せられているように感じていたの。だから、デラックス盤も、そういう感覚をまとったものにしたかった」と彼女は言う。そのイメージは、アルバム・カバーで具体的なかたちを取る。黄昏時のビーチに横たわり、マホガニー色のサロンを身に着けた彼女。右腕は岩に身を預け、左手の指は砂をつかんでいる。「とても浮世離れしていて、神秘的なの」と彼女は語る。
テイトが『So Close to What』のデラックス盤に追加された新曲──「TIT FOR TAT」を含む5曲──を書き下ろすきっかけになったのは、ヨーロッパ・ツアーを終えたあとだった。携帯電話のスクリーンセーバーを、光り輝く天使の画像に設定したとき、自分のなかに明確なビジョンがあることを確信したという。「毎日、楽屋に座って、退屈で仕方がない時間を過ごしているうちに、音楽を作ることがどれだけ魔法みたいな行為なのか、そして自分が文字どおり現実世界の妖精や天使になれるんだって気づいたの」
天使のモチーフは、特にきらめく楽曲「NOBODY'S GIRL」で前面に現れる。そこでは、彼女自身が書いた詩の一節が歌われている──〈私が問いかけると、天使たちは歌う/本当の愛は、あなたの翼を切り落としたりしないって(And when I ask, the angels sing/They say, Real love doesnt clip your wings)〉。そのイメージは、テイトが天使の翼を身にまとう、トリップ感のあるミュージック・ビデオにも引き継がれている。バズ・ラーマン監督の映画『ロミオ+ジュリエット』のクレア・デインズを、Z世代的にアップデートしたような姿だ。
ヨーロッパ・ツアー中にパフォーマンスをしていない時間、テイトは詩を読み、日記を書き、ラナ・デル・レイを大量に聴いて過ごしていたという(「私の人生のサウンドトラックだった」と彼女は言う)。プラハの公園をあてもなく歩いたり、チューリッヒでは湖のほとりに6時間も座っていたこともあった。夜更かしが続き、気づけば朝6時まで、ただ考えごとをしていることも多かった。振り返ってみれば、あれは実存的な危機だったのかもしれない。「移動ばかりの生活が続いていて、自分をすり減らしながら、あちこちに分散させている感覚があった。自分の核の部分で、何が起きているのか、まったく分からなかったの」と彼女は言う。「感情的にも、かなり大変な時期だった」。
彼女がここで言及しているのは、2024年初頭から交際していたオーストラリア出身のミュージシャン、ザ・キッド・ラロイとの破局だ。テイトは「何でも聞いていいよ」と言ってくれていたものの、別れについて尋ねると、表情が一瞬こわばった。関係が終わったのは6月だったと、彼女は認めている。その3カ月後にリリースされた「TIT FOR TAT」は、ラロイの「A COLD PLAY」に対するアンサー・ソングではないかと広く推測されてきた。
ラロイが〈君を立ち直らせられたらよかったのに〉と歌う一方で、テイトの言葉はシンプルで、そして刺激的だ──〈自分のことは自分でどうにかする!〉。それは、わずか数カ月前に発表された『So Close to What』収録曲「I Know Love」──恋に落ちることをドラッグになぞらえ、ラロイが客演していた楽曲──とは、あまりにも対照的だった。「TIT FOR TAT」が公開されると、インターネットは騒然となった。20代前半のポップスターの恋愛事情に、突然、大勢の大人たちが過剰な関心を寄せ始めたのだ。その状況は、テイトにとって深く違和感のあるものだった。
「本当に怖かったし、受け止めきれなかった」彼女はランチを取りながら私に語る。「たとえ友達の人生のことでも、あんなふうに話題にしたりしない。自分のプライベートが公になることで、ここまで影響を受けるなんて思ってもいなかった。だって、どんな出来事でも、完全な全貌を知っている人なんて誰もいないでしょう。それなのに、実際よりもひどい状況として描かれてしまうのが、私はすごく嫌だった」そう前置きしたうえで、彼女はこう続ける。「でも、理解しなきゃいけなかったのは、彼は彼で曲を書くし、私は私で曲を書く、ということ。それが私たちの自己表現の仕方であり、アートであり、仕事なんだってこと。いったん世に出てしまったら、もうそれは私のものじゃない」。
この状況に通じる存在として挙げられるのが、テイラー・スウィフトだ。彼女は『The Life of a Showgirl』のプロモーション中、ジミー・ファロンに対し、「TIT FOR TAT」を称賛し、「フルボリュームで、何度もリピートしている」と語った。私がその話題をテイトに振ると、彼女はこう答えた。「うちのママ、ほんと魔女っぽいの。その前の週に『いま、あなたのエーテルの中にテイラー・スウィフトがいる気がする』って言ってきて。私は『え、なにそれ、急に?』って思ったんだけど。私は彼女の大ファンだし、心から尊敬してる。だから、スマホを開いて、彼女があの曲について話しているのを見たときは、人生で最高にクールな瞬間のひとつだった。作詞家としても、もちろん音楽業界で生きる女性としても、彼女は本当に大きなインスピレーション。そんな彼女に認めてもらえたのは特別すぎる」。
”素のテイトは、内省的で、不器用なカナダ人なのに対して……”
Vintage 1997 Chanel Blazer and Vintage 1994 Chanel Bikini from Cafe Society Archive. -Vintage Chanel Necklace from the Archive x Yana.
”……タチアナは、私が自信に満ちたポップ・ガールでいるための方法なの”
Vintage 1994 Chanel Bikini from Cafe Society Archive. Vintage Chanel Earrings from the Archive x Yana
魔女っぽいのはテイトの母、ターニャ・ロスネルだけではないようだ。テイトは、2025年のスーパーボウルの結果を──勝者から最終スコアまで──見事に的中させたことで知られているが、自身のことを「史上最高にwoo-woo(スピリチュアル)な人間」とも表現している。彼女は定期的にヒーラーのもとを訪れており、そのひとりは友人の叔母だという。「その人は、あなたに何が取り憑いているか、どんなエネルギーが残っているかを見てくれるの。それってすごく大事なこと」と彼女は言う。「人は10人分くらいのエネルギーを抱え込んでしまって、それで気分が落ち込むこともある。そういうのを、全部浄化してくれるの」
ランチの前日、テイトは霊能者に相談していた。その人物からは「28歳で結婚するかもしれない」と告げられたという。その話が現実になってほしいかと私が尋ねると、彼女は「かもね」と答える。「マニフェスティングって、本気で信じてるの」と彼女は付け加える。「自分の波動を変えれば、身体を取り巻くフィールドは一瞬で変わると思ってるし、すべての出来事には理由があるとも信じてる。誰にでも運命があって、人生はすでに描かれている。何かを強く望むなら、それはもうそこに存在している、つまりそういうこと。非現実的な楽観主義かもしれないけど、人生の捉え方としては美しいと思う」。
テイラーだけがテイトの楽曲をリピートしているわけではない。デラックス盤の楽曲が配信されてから最初の48時間のあいだに、筆者はあちこちでそれらを耳にした──マンハッタンのストリート、通っているピラティス・スタジオ、地下鉄の車内。とりわけ顕著だったのが、辛辣な一曲「ANYTHING BUT LOVE」だ。テイトはここで、自身の苦味をさらにむき出しにする(〈パパもあんたが嫌い、犬も嫌い、兄弟も嫌い、そして私も嫌い〉)。さらには、あのオルターエゴまで引き合いに出す。〈私が嫌いだって言うくせに、なんでタチアナに欲情してるの?〉。
「自分の書くものには、ちょっとしたユーモアの要素もあると思う」とテイトは言い、その側面を引き出してくれた存在として共作者のジュリア・マイケルズの名を挙げる。「そういうのは、強さやエンパワーメントから生まれたもの。スタジオにいるときの、あの怖いもの知らずな感じや、冗談を言い合っている空気のなかで出てきたの。『これは絶対に世に出さない』って思っているときほど、だいたい金脈に当たるものでさ」。
とはいえ、本作には心の傷も多く刻まれている。とりわけ際立っているのが「NOBODY'S GIRL」だ。テイトは破局直後の7月1日に誕生日を迎え、混乱のただなかでひとつ歳を重ねることについて、こう歌っている──〈22歳になるのは、ちょっと切ない/でも、楽しくもある〉。さらに、メランコリックでR&Bの風合いを帯びた「HORSESHOE」では、いっそう深く内面を掘り下げ、〈ひとりきりのとき、私はポップスターじゃない〉と告白する。
この一節はジョークではない、と彼女は言う。「人生を通じて願い続けてきたことを、実際に体験している最中だったから、すごく奇妙な気分だった。ライブをして、この仕事で生きていける私は、世界一ラッキーな女の子だと思う。そんな人生を送っているのに、悲しんでいる場合じゃないって自分に言い聞かせていた。この曲は、心から感謝している一方で、これまででいちばん孤独で、すべてから疎外されているように感じていた自分について歌っている」。
彼女は続ける。「メイクも服も全部脱いだら、残るのはベッドルームにひとりぼっちの自分だけ。そこで『じゃあ、私は誰?』って考えるのは、ものすごく怖い。私はただ、不安を抱えた繊細な人間で、自分が何を望んでいるのか見失っているの」。
7月にマンハッタンへ移り住んだテイトは、正式にニューヨーカーとなった最初の週に、デラックス盤の楽曲を携えてエレクトリック・レディ・スタジオに入った。「仕事するのも会うことも、これほど間が空いたのは久しぶりだったと思います」とエイミー・アレンは言う。「彼女は、まるで生まれ変わったように、新鮮で活力に満ちたエネルギーをまとっていました。友達と久しぶりに会って、『あ、何か大きな出来事があったんだな。もう次に進む準備ができてる』って感じる、ああいう瞬間あるでしょう。デラックス盤ではあるけど、私はこれがテイトの次章の始まりだと思っています」。
テイトがもともと『So Close to What』というタイトルを付けたのは、急速に拡大していく名声のなかで感じていた自身の心境を反映していたからだ。何か新しいものの目前にいながら、それが何なのか分からない感覚。そしてときには、自分自身を見失いつつあるのではないか、という不安。その感覚は、デラックス盤のオープニングを飾るスロウ・バーナー(じわじわ熱を帯びる曲)「TRYING ON SHOES」で掘り下げられている。アイデンティティと格闘する楽曲だ。「いろんな人間を試してみる、自分のバージョンを試着してみる、という発想から生まれたの」と彼女は言う。「特にツアー中は、失恋の痛みを抱えたまま、どうやってそこから抜け出せばいいのか分からなかった。だから、自分をマシだと思えるように、誰かの人格や身体を借りなきゃいけない気がしていた。いまステージの上で、こんなにも打ちのめされている自分じゃないふりをするために、仮面をかぶる、という感覚」。
彼女がデラックス盤に『SO CLOSE TO WHAT???』というタイトルを付けたのは、いまもなお、その問いと格闘し続けているからだ。「強度が一段階、上がった感じがする」と彼女は言う。「しばらくは完全にどん底モードで──アルバム本編のときより、もっと傷が拡がっていた。そして、『So Close To What』という自分の問いに対する答えには、いまも何ひとつ辿り着いていない。ただ、その感覚が、以前よりもずっと強くなっているだけ。何も解決していないの」。
だが、それは完全に正しいとも言えない。テイトは、少なくとも表面上は失恋の痛みから立ち直っているように見えるし、筆者がそれをどう振り返っているのか尋ねると、率直で、きわめて無防備な言葉を返してくれる。「私はすごく、過去を大切にするタイプなの」と彼女は言う。「誰かが長いあいだ自分の人生にいたなら、その人のことを、絶対に、絶対に忘れないし、何も感じなくなることもない。これまで私の人生に現れたすべての人を、私はいまも感じている。人が大好きで、本当に、本当に、大切に思ってるし、いつも元気でいてほしいって願ってる。だから別れたあと、その人が大丈夫なのか分からないのは、すごくきつい。でも、時間が経てばわかると思う」。
「踊れるポップスター」が生まれるまで
筆者が最初にテイトと会ったのは、10月に行われたデラックス・アルバムのフォトシュートの現場だった。マディソン・スクエア・ガーデン公演から2日後のことだ。彼女の母親が自己紹介をし、続いてテイトのチーム全員が挨拶をしてくれた。そこには、これまでにマイリー・サイラスやリンジー・ローハンらと携わり、今回新たにクリエイティブ・ディレクターに就任したルドヴィック・ド・サン・セルナンとイグナシオ・ムニョスも含まれていた。
ビーチ感のあるサロン姿に加え、彼女はいくつもの衣装でポーズを取る。そのひとつが、白いビーズのミニドレスで、本人は「ちょっとレトロすぎない?」と気にしている(筆者はそんなことないと伝えた)。撮影中、クルーは数分おきに「最高!」「いいね!」と声をかけ続け、あまりの熱量に、筆者も一緒に盛り上げるべきなのだろうか、と心配になった。カメラの前に立ったテイトは、ふと問いかける。「ここで描くストーリーって、どんなものだと思う?」
テイトは、物語が大好きだ。子どもの頃、ダンサーとして大会に臨む前にも、頭のなかで自分自身に物語を語り聞かせていたという。「自分のストーリーが何なのか、エッセイを書くみたいにまとめてたの。ほんと、クソ真面目なオタクだったと思う」と彼女は笑う。「部屋に座って、『私はこういう人間で、こんな気持ちを抱えている。親のことで傷ついている若い少女』って、自分の物語を全部書き出して。それから2分間のソロ演技に入るの」
テイトは2003年、カルガリーで、母ターニャ・ロスネルと父トッド・マクレーのもとに生まれた。父のトッドは弁護士、母のロスネルはダンス・インストラクターで、その影響もあり、彼女は6歳からトレーニングを始める。「『もっとダンスを教えて。完全にハマっちゃった』って感じだった」と彼女は振り返る。「ママは、私にとってのフェアリー・ゴッドマザー。何だってできると信じてくれるし、その支えがあったから、ここまで来られたと思う。もし今この瞬間に、全部投げ出して歯医者になりたいって言ったとしても、きっと『最高じゃない! あなたならできる』って言うと思う」。
テイトは朝6時に起き、夜9時に帰宅する生活を送っていた。週に40時間をダンススタジオで過ごし、モダンからバレエまであらゆるジャンルに手を伸ばす一方、兄のタッカーはホッケーに打ち込んでいた。「とにかく、ずっとトレーニングしてた。学校に行ったり行かなかったり、ホームスクーリングだったり、そうじゃなかったり。私たちは本当に情熱的な子どもで、常に何かに取り組んでいた」
テイトはアルバータ・バレエ団の付属トレーニングスクールに通い、毎週末のようにダンス・コンペティションに出場していた。2016年には、リアリティ番組『So You Think You Can Dance: The Next Generation』への出演のため、2カ月間ロサンゼルスに移住。毎週月曜の生放送で、数百万人の視聴者の前でパフォーマンスを披露した。「12歳でプロダンサーとしてのキャリアを生きている気分だった。いま思うと、信じられない話だけど」と彼女は言う。「審査される側に立ったのは、あれが初めてだった。初めて批評にさらされる経験でもあった」。最終的に彼女は番組で3位に入賞し、その後、ベルリン国立バレエ団でトレーニングするため、ドイツへの移住も真剣に検討していた。
テイトは、どんな形であれダンスに関わり続けたいと考えていた。バレリーナとしてでも、ロサンゼルスでバックダンサーとしてでも、あるいはモダン・ダンス・カンパニーの一員としてでもいい。彼女はダンスの枠を越え、子ども向けアニメ『ララループシー』で声の仕事もしている。「若い頃は、本当にいろんなことをやってた」と彼女は言う。「自分でもよく言うけど、完全に面倒な奴だったと思う。思いつく限り、片っ端から手を出していた。寄り道的に挑戦したことのひとつが、パ・ド・ドゥ(バレエ用語:ペアによる踊り)だったりして。『うわ、私って本当に欲張りだったんだな』って感じ」
だが、時間が経つにつれて、彼女が本当に欲しいものは、ひとつに絞られていった。プレティーン(9~12歳くらい)の頃、テイトはYouTubeで活発に活動し、ダンス動画を投稿していた(8歳にして、ジョン・レノンの「Imagine」をカバーしていたこともある)。2017年になると、自作曲の動画を投稿するようになり、「Create With Tate」と名付けたシリーズをスタートさせた。ある動画では、14歳のテイトが、バーガンディ(えんじ色)のベルベット素材のプルオーバーを着てキーボードの前に座っている。髪の下から、シルバーのフープピアスがのぞいている。「知らない人もいるかもしれないけど、私はシンガーで、曲を書くのが大好きなの」と彼女は動画の中で語りかけている。「それが本当に、自分の心から好きなことなんだって気づいた。だから、これから歌う曲は、昨日の夜に、1時間くらいでサクッと作ったものよ」現在のテイトは冗談交じりに、こう付け加える。「あのとき、親はすぐそこにいたんだけどね。『あんた、ほんとにダサいわね! 友達と遊びなさいよ!』って言われてた。でも私は家にこもって、ラブソングを書いてたの」。
その動画、物憂げなバラード「One Day」こそが、テイトのキャリアの出発点となった。人生で初めて書いたその曲は、瞬く間に幅広い層に届き始める(現在では再生回数は4200万回を突破)。テイト自身は、当時の動画を見返すと気恥ずかしさを覚えるというが、それでも削除するつもりはない。「あれがあったから、私はここまで来られたって、ちゃんと受け入れられるようになった」と彼女は言う。「どことなく愛おしいところもあるしね」。
レーベル各社が声をかけるようになり、テイトは2019年にRCAと契約を結ぶ。翌2020年、16歳のときに発表した陰鬱な楽曲「you broke me first」はTikTokでバイラルヒットを記録した。彼女はロサンゼルスに移り住み、高校はオンラインで修了する。2022年には、初のフルアルバム『i used to think i could fly』をリリースした。このアルバムは、テイトが単なるTikTok発の一発屋ではないことを示した一方で、彼女が自分のサウンドを模索している過程をそのまま記録した作品でもあり、ベッドルーム・ポップからクラブバンガーまで、さまざまなスタイルに手を伸ばしている。グレッグ・カースティンからフィニアスに至るまで、あまりにも多くのプロデューサーと仕事をした結果、全体としての統一感には欠ける印象も残した。
「周りのみんなが、『あなたはこうあるべき』『こういう曲を書かなきゃ』って、常に耳元で言ってきた」と彼女は振り返る。「一度リセットして、自分がキャリアとしてどこへ向かいたいのかを、ちゃんと見極める必要があったの」
2023年、彼女はひとつの啓示にたどり着く。「踊れるポップスターになる」。そう自分に言い聞かせた。「必ず実現させる」と。それまで彼女は、ダンスと音楽というふたつの側面を融合させることを、ほとんど考えたことがなかったという。「表現としてのダンサーの自分は、ソングライターとしての自分とはまったく別の存在だと感じていた。ふたつが共存できるなんて思ってもいなかった」。
その決意を実現するため、テイトはポップ・カルチャーの生徒となった。ダンサーとしてのキャリアに没頭していたあいだに、触れられずにいた音楽を、徹底的に吸収していったのだ。「長いあいだ、ダンス史の世界にいて、フレッド・アステアやシルヴィ・ギエムみたいなバレリーナを観てきたから」と彼女は言う。「音楽業界に足を踏み入れた瞬間、『なにこれ、全然わからない』って思った。そこから、まったく新しい世界が開けたの」。
彼女は「ありとあらゆるポップ・ビデオ」を観まくった。2007年のBETアワードで「Get Me Bodied」を踊り倒すビヨンセ、マドンナのドキュメンタリー群、そして2009年のVMAsでのレディー・ガガの「Paparazzi」。あまりに象徴的なそのパフォーマンスは、テイトいわく「脳の化学反応を書き換えた」ほどだった。「ポップスターがスーパーヒーローみたいに見えだしてきたの」と彼女は言う。
テイトのダンスとボーカル──母音を強調する、いわゆるカーシヴ的な歌唱法と結び付けられることも多い──は、しばしば別のポップスターとの比較を招く。具体的にいうとブリトニー・スピアーズだ。彼女をブリトニー役に据えた伝記映画を望むファンも少なくないが、その話を振ると、テイトは慎重な姿勢を見せる。「あれこれ考える前に、まず演技のレッスンを受けなきゃ」と彼女は言う。「それに見た目も声も、彼女とは全然違うと思うから、私が適役かどうかは分からない」
ポップスターとしてのテイト・マクレーが初めて明確なかたちを取ったのが、2023年9月にリリースされた中毒性の高い楽曲「greedy」だった。スポーティーなミュージック・ビデオでは、彼女がホッケーリンクで踊り、受付カウンターの前でスプリットを決め、ザンボニー(製氷車)に乗って氷上を滑走する姿が映し出される。きわめてカナダ的だが、ぎこちなさは微塵もない。彼女はまるでその場を支配するかのように、髪をかき上げ、ダイヤのヒールを宙にぶら下げ、ロリポップをくわえながら、ダンサーたちを引き連れてロッカールームを突き進む。廊下を駆け抜け、腰を激しく振り、引き締まった腹筋をあらわにする。「あそこから、周囲の私を見る目が変わった気がする」と彼女は言う。
テイト、ライアン・テダー、ジャスパー・ハリスとともに同曲を共作したエイミー・アレンも、その見方に同意する。「『greedy』が出た瞬間、世界は彼女のものになった、という感じがしました」と彼女は語る。「みんなが一気に夢中になっていった。あの曲で、彼女が世界にとってのパワーハウスであることが決定づけられたと思います」。
「greedy」はビルボードHot 100で最高3位を記録し、その勢いのままテイトは、同じく中毒性の高い「exes」を続けて発表した。いずれも2023年のアルバム『Think Later』に収録されており、この作品は彼女の到達点を示す一枚であると同時に、タチアナという存在が立ち上がった瞬間でもあった。「ステージに上がると、この獣みたいな別人格が解き放たれるの」と彼女は言う。「どんなに最悪な気分の日でも、『まあいいや、いまは自分でいる必要ない。彼女になればいい』って思えた」。
共感と批判のあいだで
2025年1月、公式リリースを1カ月後に控えた時点で、『So Close to What』のデモ音源の一部が流出した。それだけでなく、12歳の頃まで遡るものも含め、テイトの楽曲600曲以上が一挙にネット上に出回ったのだ。どうしてそんな事態が起きたのかは不明だが、彼女は深く打ちのめされた。「そのうち9割は最悪な曲だと思う」と彼女は言う。「自分の成長過程で抱えてきた、すごくパーソナルなものばかりだし、いまの私はスタイルも好みも変わっている。だから、ものすごく無防備な気分になった。スマホの中身を丸ごと公開されたみたいな感覚。もう穴にこもって、二度と何もしたくなくなった」。
それでもテイトは、この状況を笑いに変えた。「Leak this」と書かれたTシャツを発売したのだ(熱心なテイター・トッツたちは、正式リリースされる2月まで、アルバムを聴くのをあえて控えていた)。「こういうことを乗り越えるには、逆転の発想で”不幸中の幸い”として捉えるしかないと思う」と彼女は言う。「この仕事を続けていくには、それしか方法がない。だって、こういうことは常に起きるから。『最悪だな。じゃあ、これをどう自分の武器に変えられる?』って考えるしかない」
11月にも、彼女は同じ姿勢を見せている。ステージ上で誤って上下逆さまのマイクに向かって歌ってしまう様子が動画で拡散され、口パク疑惑が浮上したのだ(多くのポップ・アクトと同様、テイトはバッキング・トラックに合わせて生歌を披露している)。数日後、彼女は『So Close to What』収録曲「Purple Lace Bra」を力強く歌い上げるTikTok動画を投稿し、「どうやら私、ライブで歌ってないらしいからね」というキャプションに笑顔の顔文字を添えた。
「オンライン上では、本当にいろんなことが誤解されたまま広がっていくと思う」と彼女は私に語る。「そこにユーモアを持てなかったら、正気でいられない。だって、私は自分のショーにものすごく力を注いでいるし、基本的にはずっと歌うことに情熱を注いでいる。もちろんステージ上を歩くときとか、ダンス・ブレイクのときは別だけど、それは誰だって同じでしょう。実際には、その2秒後にちゃんと歌っているのに、動画はそこで切られてる。もう冗談としか思えなかった。だって弁明しようにも、防がなきゃいけないことが多すぎるから」(こうした動画の拡散を防ぐため、スマートフォンの持ち込みを禁止する可能性はあるかと尋ねると、テイトは「将来の公演では検討するかもしれない」と答えた)。
もうひとつ、テイトが弁明を求められることになったのが、問題を抱えるカントリー界のスーパースター、モーガン・ウォーレンとの共演だ。2025年5月、彼女はモーガンの官能的なシングル「What I Want」に参加し、このデュエットは彼のアルバム『Im the Problem』に収録された。同曲は、彼女にとって初のシングルチャート1位ヒットとなった。モーガンは、2021年に人種差別的なスラングを使用したことや、2024年にナッシュビルのバーの屋上から椅子を投げ落とした事件などを含め、たびたび批判を浴びてきた人物だ。近年、その人気はさらに拡大しているが、彼とのコラボレーションを選んだことで、テイト自身も相応の批判を受けることになった。
この論争についてテイトに尋ねると、彼女は自身が幼い頃からカントリー・ミュージックを愛してきたことを語ってくれた。その原点にあるのが、故郷カルガリーで毎年開催される野外イベント「カルガリー・スタンピード」だという。
「私の地元ではカントリー・ミュージックが本当に大きな存在なの」と彼女は言う。「兄は昔から筋金入りのカントリー・ファンだったし、私自身も、人生のどこかでフォークとかカントリーをやりたいって、ずっと思ってきた。たぶん将来的には、いまもその気持ちはある。でも、今回はただカントリーの曲をやるチャンスが巡ってきて、『あ、いいじゃん』って思っただけ。ジャンルの枠を越えてみたい思いも強かったし、私にとっては純粋に曲ありきの話だった。その一曲の選択が、ここまで他の要素と結びついて受け取られるとは思っていなくて、そこは本当にショックだった」。
テイトは、モーガンと実際に会ったことは一度もないと強調する。それでも、このデュエットを後悔してはいないという。「人生で起きたことを後悔すべきじゃないと思う。こういう経験って、すごく大きな明確さを与えてくれるから」と彼女は言う。「論争や批判って、自分がこれから何を選び、どう前に進みたいのかを学ぶための手段でもあるし、それが人としての自分をどう形作るのかを考えるきっかけにもなる。全部、大事なことだと思う」。
その返答は、率直でありながら、いささかも弁解がましくない。だが、それがテイトとしての言葉なのか、タチアナとしての言葉なのか、私には判別がつかない。おそらくその両方なのだろうし、テイト自身が考えているほど、この二つの存在は分離していないのかもしれない。そのことが最もはっきりと表れているのが、エイミー・アレン、エミール・ヘイニーと共作した「Purple Lace Bra」だ。一聴すれば官能的で鮮烈な曲だが、その内側には、より深い意味が折り重なっている。自信を持つこと、そして自分をエンパワーする挑発的な服を身にまとうことが、いかにメディアによる羞恥や断罪へと転じてしまうのか──テイトはその矛盾を描き出す。ブリッジで彼女はこう歌う。〈私が裸になったときだけ、あなたは耳を傾ける〉。
「女の子には、いつも”もっと自分をさらけ出せ”って言うくせに、いざそうした瞬間、今度は徹底的に叩かれる」と彼女は言う。「人生で初めてセクシーで、自信を持っている自分を感じられたのに、何かを発表するたびに、今度は”性的に消費されている”と感じてしまって、自分が注いできた努力や仕事のすべてが奪われたような気持ちになった。女性に向けられる監視の目は、どんどんひどくなっている。男性なら問題にされないような些細なことで、私たち女の子がここまで注視されるのって、本当に異常だと思う」。
彼女は続ける。「ステージ上で起きている素晴らしいことには、誰も目を向けていない。ボーカルのことも、どうパフォーマンスしているかも、どれだけ自分をさらけ出して、どんなメッセージを伝えようとしているかも考えない。ただ、どんなショーツを履いているか、メイクがどう見えるか、そこばかり。それが本当にうんざりするの」。
テイトは、「Purple Lace Bra」を披露する瞬間、あのブリッジの一節を歌うのをとりわけ楽しみにしている。「最前列の女の子たちが、あそこを叫ぶように歌っているのが見えるの」と彼女は言う。「全身がゾクッとする。『これは私だけの感情じゃない。みんなが同じものを感じているんだ』って思えるから。あまりにも長いあいだ引きずってきた、このどうしようもないフラストレーションをね」。
Outfit: Vintage via clothing by Kier
エイミー・アレンにとって、こうした強い共感を呼ぶソングライティングこそが、テイトの大きな魅力だという。「私がこれまで見てきたなかでも、テイトは作詞、ボーカル、ダンスを明確に兼ね備えたトリプル・スレットです」と彼女は語る。「現実世界にいる神様みたいな存在だと思います。でも実のところ、世界中の人がここまで彼女を好きになってしまう最大の理由は、彼女が本当に優しくて、謙虚で、飾らない人間だから。本人に会うと妹みたいに感じるし、もっと一緒にいたくなる。リスナーもきっと同様で、『ずっと耳元にいてほしい』って思わせる存在なんです」
熱心なテイター・トッツは、各公演前に行われるVIP向けのサウンドチェックに参加することができる。そこでテイトは自身の楽曲、もしくはカバーを、1曲だけアコースティックで披露する。コールドプレイの「Fix You」や、サブリナ・カーペンターの「Dont Smile」が演奏されることもある。開演前のバックステージでは、彼女はポッドキャストを聴き、メイクをしてもらい、瞑想をし、アーモンドミルク入りのコールドブリューを飲んで過ごしている。
ツアー中、彼女はできる限り体調管理に気を配っていた。お酒はほとんど飲まず、サウナに通い、ピラティスを行い(セレブ御用達のフィットネスコーチ、トレイシー・アンダーソンのメソッドも好んでいるという)、リンパドレナージュのマッサージも受けていた。それでも公演によっては体調を崩していたり、極度の疲労状態だったり、生理と重なってしまうこともあり、抗生物質やステロイドを服用しながらステージに立つこともあった。最後の9公演に関しては、完全に燃え尽きていたという。「バスに轢かれたみたいな感じ」と彼女は喩える。「自分の体が、いま何が起きているのか、まったく理解できていない感じがした」。
Sweater by Ann Demeulemeeste. Outfit: Vintage 1996 Dolce & Gabbana set via Herpium.
テイトには、この巨大なツアーと、あまりにも濃密だった2025年を消化する時間が必要だ。「去年の9月にあのアルバムの曲を書き始めた頃の自分と、いまの自分を比べてみると、その変化がすごく興味深い」と彼女は言う。「もう、あの頃の自分がどんな人だったのか分からないくらい。ここ1年で、10歳は歳を取った気がする」。
彼女は2026年を、友人たち──心が強くて、地に足のついた女の子とゲイたち──と過ごし、シングルでいる時間に充てるつもりだという。「私、フラートする(友達以上恋人未満の関係を楽しむ)のが本当に苦手なの」と彼女は言う。「アプリは無理。ああいうの、本気で心臓発作起こしそうになるし、人と出会うことを考えるだけで吐き気がする」。少なくとも、しばらくはリラックスするつもりだ。「個人的には、彼女には数週間くらいソファに座っていてほしいわね」と、エイミー・アレンは冗談めかして言う。
では、テイトの未来には何が待っているのだろうか。「Miss Possessive Tour」のドキュメンタリーを公開するかもしれないし、詩集を出版する可能性もある。だが、さらに何十年も先──70代になってもステージに立ち続け、「Sports car」を歌っている自分を想像できるかと尋ねると、彼女は少し首をかしげる。
「どこかで区切りをつけて、私はフェードアウトして、イタリアに引っ込んでのんびりするんじゃないかな」と彼女は言う。「そうなったらいいなって思うよ」。
From Rolling Stone US.
テイト・マクレー
『SO CLOSE TO WHAT???(deluxe)』
発売中
再生・購入:https://tatemcrae.lnk.to/SCTWdxJPNRS
【収録曲】
1. TRYING ON SHOES *新曲
2. ANYTHING BUT LOVE *新曲
3. NOBODYS GIRL *新曲+MV公開
4. HORSESHOE *新曲
5. TIT FOR TAT *9月リリース
6. Miss possessive
7. Revolving door
8. bloodonmyhands (feat. Flo Milli)
9. Dear god
10. Purple lace bra
11. Sports car
12. Signs
13. I know love (feat. The Kid LAROI)
14. Like I do
15. It's ok I'm ok
16. No I'm not in love
17. Means I care
18. Greenlight
19. 2 hands
20. Siren sounds (bonus)
21. Nostalgia


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