この世界の現状に少しでも目を逸らさずにいれば、誰もがすぐにうんざりさせられるに決まっている。いつまでも戦争や侵略やジェノサイドは終わる気配がなく、富の極端な集中による経済格差は増すばかり。
夏の暑さは耐え難い上昇を続け、SNSでは今日も不毛な争いが巻き起こっている。そんな山積みの問題の解決に人々が一致団結して向かうというのは、夢のまた夢。現実には、誰が敵で誰が味方かをはっきりとさせ、敵陣営=”悪”を殲滅させることしか考えていない。世界の分断はあらゆる面で深まっている。こんな現状を目にすれば、スリーフォード・モッズ(Sleaford Mods)でなくても、「地球とかいう星=惑星Xの終焉」と吐き捨てたくもなるだろう。

『The Demise of Planet X(惑星Xの終焉)』は、英ノッティンガム出身、ジェイソン・ウィリアムソンとアンドリュー・フェーンからなるスリーフォード・モッズが、現体制になってから送り出す通算8作目のアルバムだ。英国下層階級の目に映る気の滅入るような現実を、鋭いユーモアや怒りが詰まったリリックと、武骨で攻撃的なサウンドで捉えており、その唯一無二の表現に揺るぎはない。

もちろん過去数作で顕著だった音楽性の拡張は、このアルバムでも継続されている。ポストパンクやスカ、グライムやエレクトロなどの影響が随所に顔を出し、その広がりがアルバムの快楽性を底上げしている。また、ジェイソンの紡ぐ言葉に内省的な側面が見られるのも、近作で続いてきた傾向だ。横暴を続けるビッグテックのトップや、市井の人々が犠牲になる戦争には激しく牙をむくと同時に、ときには幼少期まで遡って自分自身を見つめ直し、内面的な問題を乗り越えようとしている。

つまり彼らは、惑星Xにはすっかり呆れ果てて乾いた笑いを響かせる一方、スリーフォード・モッズとしては真摯に前進を続けようとしているのだ。
こんな世の中でもまだやれることは残されている、と言わんばかりに。

ではそろそろ、ジェイソンとアンドリューにご登場を願おう。二人はどんな質問にも率直に、ときにはユーモアを交えながら楽しげに応えてくれた。

「Megaton」日本語字幕付きMV

人生の終わりとナイトクラブ

―『The Demise of Planet X(惑星Xの終焉)』というアルバムタイトルは、まさにディストピアのように、どんどん酷くなっていく世の中の状況を表現した言葉だと理解しています。まずは、このフレーズが何を表象しているのか教えてください。

ジェイソン:いまの俺たちの存在って、どこか枯れ果ててしまった感じがあるだろ? とにかく今は全員が宙ぶらりんというか、「次はどこへ向かうんだ?」っていう感覚なんだよ。気候変動、戦争、各国の経済問題、それから人々の信じるものの分断、カルチャーウォーズ……とにかく全部がバラバラで、弱り切っている感じがする。混沌とした”これまでの生き方”は完全に壊れたようでいて、でも壊れたあとに残っているのも結局は同じ混沌なんだ。毎日、人生の終わりの縁に立っているような気分になる。親密な死をずっと見つめているような感覚というか。

―ええ、よくわかります。

ジェイソン:まったく、元気が出る話題だよな(笑)。
とびきりハッピーなテーマで悪いね。まあ、でも本当にそう感じてしまうんだよ。ただ、重いテーマに向き合うこと自体は俺にとってすごく刺激的なんだけど、同時に、どこかで理性とか、現実感とか、自制心みたいなものを混ぜたいとも思っている。「落ち着けよ、まだやれるだろ」っていうね。

アンドリュー:その通り。

―プレスリリースには、本作はあなた方が「2000年代半ばにミッドランズのナイトクラブで目にした混沌とした光景に触発されている」とも記されていますよね。

ジェイソン:そのナイトクラブは、まるで暴君の人生の末期を眺めているような場所だったんだ。逃げ道がなくなって、行動がどんどん悪趣味で過剰になっていく感じがあった。文明が崩壊するとき、人々は節操もなく快楽に走る──そんな話がよくあるけど、あのクラブには確かに似た空気が漂っていた。とにかく酔って、他人のまわりをふらつきながら、頭の中はセックスのことばかり。世界が終わりに向かっていて、隕石が落ちる前に、ぶどうをもう一房だけ胃に押し込みたい、そんな必死さに近いものを感じたんだよ(笑)。その光景が妙に忘れられなくて、やがてアルバムのテーマとして形にできるくらい強いイメージになっていったんだ。


スリーフォード・モッズが語る、分断と戦争の時代へのアンサー「最悪な人間をクソ野郎って呼ぶのは間違いなのか?」

左からジェイソン・ウィリアムソン、アンドリュー・フェーン(Photo by Nick Waplington)

余白と余裕が生んだクリエイティブ

―アルバムのテーマは非常に現代的で重たいですが、そのサウンドは過去数作と同様、音楽性の幅をさらに押し広げていて、とても充実しています。あなた方はこのアルバムに「本当に満足している」というコメントを出していますが、自身としては具体的にどんなところが気に入っていますか?

ジェイソン:全部だよ、全部。俺にとってはね。

アンドリュー:そうだね。全体がちゃんとひとつにまとまっていく感じがすごく良かった。これまでは、アルバムを作って、そのあとツアーに出て……ツアーを回る中で「ああ、このアルバムってこういう作品だったんだ」って実感することが多かった。でも今回は制作にじっくり時間をかけられたから、その実感をアルバム制作中にもう味わえていたんだ。アートワークが完成して、ひとつの作品として形になった瞬間なんて本当に最高だった。

ジェイソン:俺が一番気に入ってるのは、作業のパターンを少し変えたことで、自分たちが表現できる余白みたいなものが広がったこと。それに、また新しいアルバムを作り上げられたっていう事実そのものも、マジですごいことだと思ってる。

アンドリュー:うん。

ジェイソン:だから、まとめて言うと、全部ひっくるめて好きなんだよな。
このアルバムそのものが、すごく気に入ってる。

―作業のパターンを変えたという話がありましたが、今回はいつも使っているノッティンガムのDIYヴェニュー兼スタジオのJT・ソアーズだけでなく、ロンドンのアビー・ロード・スタジオや、ジェフ・バーロウ(ポーティスヘッド)が所有するブリストルのインヴェーダ・スタジオでもレコーディングを行っていますよね?

ジェイソン:どこか違う場所で録ってみたかったんだよ。なあ、アンドリュー? 景色が変わると、作業の視野も広がる気がして。スタジオに入る前の段階で、どこか別の場所で一夜を過ごすだけでも気分が変わるんだよ。それだけでけっこうインスピレーションになる。時間も十分あったし、よし、一回やってみよう、と。それがきっかけ。

アンドリュー:そうそう。絶対いい刺激になると思った。ノッティンガムで作る時も悪くはないけど、ブリストル(のインヴェーダ・スタジオ)でやる、アビー・ロードに入る、ってなると自然と集中力が上がるんだ。数日泊まり込みでやるから、毎回4日間くらいのセッションなんだよな。無理なく集中できるし、二人だけだから作業もスムーズだし。
四人編成のバンドだと、ライブ録りでもしない限り、一つずつ重ねていく退屈な作業も多いけど、俺たちはその点すごく恵まれてるよ。

ジェイソン:ほんとそう。あと、場所が変われば部屋の響きや機材も違うし、その日の気分にも左右されるだろ。俺はそういうのをけっこう信じてる。毎日が最高!みたいなテンションじゃないけど、あらゆる要素が音にちゃんと影響してくるんだよ。

―今回は、アンドリューがエンジニアリングを外部に任せることでそこに割く時間を減らし、ジェイソンとのプロデュースに時間をかけたとも聞いています。

アンドリュー:おかげで、スタジオでの作業は前より少しやりやすくなったと思う。ただ、今回のアルバムは外に任せる前に作ったものも混ざっているから、大きく何かが変わったというわけでもないけどね。自分としては、ただ作り方が少し変わっただけ、という感覚に近い。結局やっていることは音を積み重ねていく作業なんだよ(笑)。

ジェイソン:お前がそういうふうに感じているのは面白いよな。

アンドリュー:今の音楽制作ではエンジニアリング自体がクリエイティブな行為なんだ。
どこで音を切るか、どう配置するか、DAWの画面でどう扱うか。それを他の人に説明するのが少し厄介でね。でも、自分が直接演奏して録ってしまえば、エンジニアがそれをループさせてDAWに入れてくれる。そのやり方が今回はかなり役に立った。もちろん、スタジオで録ったあとに微調整する工程は残るけど、その場での制作はかなり楽だったし、クリエイティブになれたと思う。

―そのように余裕が生まれてクリエイティブになれたことが曲にどんな影響を与えたのか、具体的に教えてもらうことはできますか?

アンドリュー:たとえば 「Bad Santa」や「No Touch」では、80年代のサンプラーを再現したエミュレーターのプラグインを使って、気になる音をどんどん鳴らしながら、思いついたらそのままギターを録りに行ったりしてさ。スタジオにはいつでも弾けるようにベースも置いてあったから、すぐに音を重ねられて制作がとても早かった。それで「No Touch」なんかは、だんだんポップな曲になっていって。で、ジェイソンがすぐにメロディと歌詞の大半を出してきたんだ。

ジェイソン:そうそう。アンドリューが作ったベースラインがすごくキャッチーでさ、いろんなものを思い出させてくれたんだよ。うん、あれは良いやり方だったと思う。

―「Gina Was」は非常にキャッチーでメロディアスですし、「Flood The Zone」はジョイ・ディヴィジョンをよりノーザン・ソウル的にしたかのようです。「Shoving the Images」には往年のクラブ・ミュージック、「Kill List」にはグライム的な要素も感じました。今回のサウンドを作る上で、インスピレーションを受けた音楽は何かありましたか?

ジェイソン:いや、今回も特にこれといった元ネタは無いんだよ。「Flood The Zone」や「Elitest G.O.A.T.」は、俺が送った雑なアコースティックのアイデアをアンドリューが形にしてくれたんだけど、そういう曲を作ってると自然にスカみたいな音楽を思い出すことがあったかもしれない。実際、アルバム制作の最初期からずっと、スカっぽいものをよく聴いてたんだよね。

アンドリュー:曲によって出どころが全然違うんだよ。例えば「Kill List」のトラックなんて、俺がオーストラリアに向かう飛行機の中でiPadで作ったやつだし(笑)。逆にジェイソンから送られてくるメロディのボイスメモは、スタイル的にはすごくニュートラルなんだよね。

ジェイソン:そうそう。

アンドリュー:ちょっとパンクっぽい匂いはあるけど、基本的にはいろんな方向に解釈できる余白がある。その上で、最終的にはスリーフォード・モッズらしさが出ていないといけない、っていうのが俺の中には常にあるんだよね。「Gina Was」はまさにスリーフォード・モッズっぽいアップビートの感じがあると思う。

ジェイソン:うん、うん。

アンドリュー:だからこそ、こうやって曲ごとに全然違う音のアプローチができるのが、本当に楽しいんだよ。それがスリーフォード・モッズをやっていて一番ワクワクするところなんだ。

ビーフ合戦の時代は終わった?

―今作は、これまでで一番フィーチャリング・アーティストが多いアルバムでもありますよね? それもサウンドの多彩さに影響を与えていると思います。

ジェイソン:単純にその曲が必要としてたからだよ。俺より上手く歌える人が必要なパートがあって、実際に自分の歌があんまりしっくり来ていないところもあった。そういう時は「この人なら、ちゃんとやってくれる」って分かってる人に頼むようにした。

アンドリュー:ジェイソンの歌も悪くなかったんだけど、求めている質感じゃなかったんだよね。実際、別のシンガーが入ったことで曲全体(のレベル)が一段上がったよ。当たり前だけど、良いシンガーが歌えば作品が一気に変わる。

ジェイソン:ほんとにその通り。それにゲストを呼んだ理由には、彼らの持つ存在感もある。たとえばグウェンドリン・クリスティー(『ゲーム・オブ・スローンズ』などで知られる俳優)。あの人はとんでもない表現者だし、人格もすばらしい。レコーディングでも最初から完璧で、こちらの指示もすぐに理解してくれた。スー・トンプキンス(ライフ・ウィズアウト・ビルディングス)もそう。あの独特の声とキャラクターが曲にすごくハマった。オルダス・ハーディングは、どちらかと言えば楽器みたいに機能してくれて、曲に独特の空気が生まれた。どのゲストもそれぞれのやり方で曲に作用してくれたんだよ。だからすごく満足してる。

アンドリュー:それに、みんなが俺たちと一緒にやりたいと思ってくれたこと自体がすごく嬉しい。有名な人になると、なおさらありがたいよ。グウェンドリン・クリスティーなんて忙しくて何でもできる人なのに、それでも参加してくれた。いろんなところから人が集まってきて、それでも”自分にも合う”と思ってやってくれる。それが嬉しいんだ。

―では、そのグウェンドリン・クリスティーが参加した「The Good Life」について訊かせてください。ヴァースではジェイソンの攻撃的な側面が強調されていますが、グウェンドリンが歌うパートではそれと表裏一体の自己嫌悪が表現されていますし、ビッグ・スペシャルのパートは「攻撃的になってしまう自分をコントロールできるようになったときに良い人生=good lifeが待っている」と述べているようにも解釈できます。ジェイソン自身としては、どういった意味合いでこの歌詞を書いたのでしょうか?

ジェイソン:あるとき、「(他の)バンドを攻撃してばかりでいいのか?」と指摘されたんだ。でも俺は、その時本気で「いや、俺はやるよ」って思ってた。強く感じたことを批判しない理由なんて無いだろ?って。ただ同時に、誰かをジャッジする時にちょっとした執着みたいなものが自分の中にあるんじゃないか、とも思った。それを曲に落とし込んだつもりなんだよ。

―もう少し詳しく言うと?

ジェイソン:つまり、やってることは攻撃なんだけど、表向きには「いや、そんなつもりじゃない」って装ってる。でも実際にはやってるし、そのアプローチ自体はいまだに正しいと思っている部分もある。でも、内側のどこかでは、それで苦しむ自分もいる。悪いカルマを出せば、自分に戻ってくる。その感覚が何なのか……それを説明したくて、この歌詞を書いたんだ。

―最近あなた方は、かつて激しいビーフ合戦をしていたアイドルズと和解するなど、実生活でも変わろうとしているのが感じられます。ただ、スリーフォード・モッズがアークティック・モンキーズやアイドルズなどに噛みつくことにある種の痛快さを覚えていたようなタイプのファンが離れてしまうのではないか、と不安に思ったことはありませんか?

ジェイソン:いや、その心配は全然してない。そもそも俺は、自分たちのやることを人がどう受け取るかなんて気にしてこなかった。このバンドが成り立ってきた一番の理由は、俺たちが自分たちのやりたいことだけをやってきたからなんだ。誰かのために迎合するようなことはしたくないし、まして”客を呼ぶためにネガティブな態度を続ける”なんてことは絶対にやらない。そんな理由で他人に噛みつき続けるのは違うだろ?

―あなた方は過去にノエル・ギャラガーとの確執もありましたが、元々オアシスのファンでもありましたよね。彼らの再結成ライブは観に行ったりしました?

ジェイソン:リアムのソロは観に行ったことがある。よかったよ、普通に。オアシスのライブもきっとすごいんだろうけど……正直、わざわざ足を運ぼうって気にはなってなくてさ(笑)。

アンドリュー:ジェイソンは行ったらリンチされるかもよ。

ジェイソン:リンチされるって!?(爆笑)

―(笑)。オアシスのチケット販売では、これまで何度も問題となってきたダイナミックプライシングが再度論争の的になりました。ダイナミックプライシングでなくても、日本を含め、チケット価格は全体的に大きく上がっています。UK/ヨーロッパツアーで低所得者向けの5ポンドのチケットを用意したあなたたちは、現在のチケット価格の高騰についてどのように考えているのでしょうか?

ジェイソン:オアシスの件に関しては、あの価格設定には多少の違和感があったと思う。でも、そもそも今の音楽業界って、経済的な旨味がほとんど残っていないんだよ。バンドがまともに金を得られるのって、ライブと物販ぐらいしかない。だから一部のアーティストのチケットが高くなる理由は分からなくもない。もちろん、それで客が離れることだってある。でも今の状況を見れば、それも仕方ない面があるんだよな。ただ、既に成功してるバンドにとっては言い訳にならない。「そんなに金が必要か?」って思う。

アンドリュー:孫とかまで食わせてあげてるんだろうね(笑)

ジェイソン:絶対それだよな(爆笑)。しかも大物バンドって、大規模なチームを抱えてるんだよ。照明、ケータリング、移動、スタッフ……全部金がかかる。でも、それでも「おい、さすがにやり過ぎじゃないか?」と思う場合もある。

アンドリュー:たとえばローリング・ストーンズみたいなバンドなら、強気にやっても客は必ず来る。どれだけ高くても、結局チケットは売れる。その一方で、稼いだ金をちゃんと寄付してる可能性もあるし、そこは分からないけどね。ただ、大きいバンドが高いチケットを売るのは、もう”そういうもんだ”って感じでもある。巨大になれば、それが許されてしまう。誰も何も言えない。

ジェイソン:本当にその通り。

分断と戦争の時代へのアンサー

―2年前にスペインでのライブで、ステージにパレスチナの旗が投げ込まれ、ライブが何度も中断したことがありましたよね。「Megaton」は当時あなた方が発表した声明を、曲の形で改めて表現したものだと感じました。大事なのは戦争をやめ、これ以上の死者を出すことを一刻も早くとめることであり、どちらの側につくかを表明することで敵味方の線引きをし、さらなる分断を生むことではない、というのがあなた方の主張だと私は理解しています。改めて戦争やジェノサイドに対するあなた方のスタンスを教えてください。

ジェイソン:そうだよ。戦争は反対だし、死者が出ることも反対だ。俺たちは、よくオンラインで見かけるような、あるいは同業者の中にもいるような”パフォーマンスとしての政治性”には加担したくない。それが現実だよ。ステージで旗を掲げることが、戦争そのものについて語っているとは思わない。それは結局「旗を掲げている自分自身」をアピールしているだけになる気がする。だから、俺たちのスタンスは当時と変わっていない。もちろん、ステージを途中で降りたことは後悔しているし、そのあとTwitterで発信したことも、めちゃくちゃ後悔してる。できるなら、やり直したいと思ってる。でも、ああいう状況ではああいうふうにしか動けなかったんだ。

―「Megaton」や、ホット・チップとのコラボシングル「Nom Nom Nom / Cat Burglar」は、ウォー・チャイルドとのパートナーシップでリリースされており、その収益は戦争被害を受けた子供たちに寄付されています。これは、戦争当事国のどちら側に立つでもなく、その被害者に寄り添うというあなたたちのスタンスの実践だと捉えていいのでしょうか?

ジェイソン:ああ、そうだと思うよ。これが俺たちなりの向き合い方なんだ。他の誰かを非難したいわけでもないし、正直、この形以外のやり方にはしっくりこないんだよ。アンドリューも同じ考えだと思う。戦争について語るって、本当に複雑で難しい問題だろ? でも俺たちは今のところ、この場所に立っていて、そのスタンスは変わらないと思う。

―「Megaton」では、ソーシャルメディアで繰り広げられる地獄のような光景の描写もあります。そして、あなた方は具体的な名前を挙げて人を批判することはもうやめたと話していたことがありますが、本作の中でほぼ唯一、具体的な名前を挙げて批判の対象になっているのが「Kill List」でのイーロン・マスクです。

ジェイソン&アンドリュー:(笑)。

―やはり人々の分断はソーシャルメディアの影響も大きいと考えているのでしょうか?

ジェイソン:そうだな。やっぱり名指ししなきゃいけない奴らっているんだよ。存在感がデカすぎる。でも、バンドに対して名指しで噛みつくのはもうダサいと思ってる。バンドなんて虫ケラみたいなもんだろ?(笑)子犬に向かって叱ってるみたいで、もうやる気になれない。ただ、イーロン・マスクみたいな巨大プレイヤーとか、世の中の構造そのものや、人々の見方・信じ方を動かしてしまうような存在については、必要に応じて触れるべきだと思うんだ。ちゃんとした形でね。俺たちはうまくやれていると思うし、たまには言及する必要があると思う。

アンドリュー:同感。

―ちなみに、「Kill List」で「ガーディアンのコメント欄に書き込んでいるのにいつも消されてしまう」と歌っているのは実話ですか?

ジェイソン:ああ、ほんとに消されるよ。丁寧に書いても消される(笑)。新聞のオピニオン記事って、どこでもそうだけど、読んでて本当にイラっとすることが多くてさ。で、腐った連中をちゃんと批判する記事が載った時にコメントしても、なぜかそれも消されるんだよな。たぶん、汚い言葉づかいや、強いバイアスのある発言を嫌うんだろう。さっきマドリードの話をしたばかりで矛盾して聞こえるかもしれないけど、一方的すぎる意見は載せたくないってことなんじゃないかな。でもさ、イーロン・マスクをクソ野郎だって言うのは間違いなのか? 俺は違うと思う。あいつ何なんだよ、ほんと。

アンドリュー:あれは言っていいんだよ。だって、もう人間味がないじゃないか。

ジェイソン:ああいう奴らって、本当にひどい。何やってんだ?って思うよ。

アンドリュー:ひどいっていうレベルじゃない。最悪なんだよ、あいつは。

ジェイソン:これは別に、「金持ちだからムカつく!」とかいう話じゃなくてさ。ああいう人間は本質を分かってないんだよ。最終的なところまで行ったら、金なんて何の役にも立たないのにな。死ぬ間際になって金が助けてくれるわけでもない。そういうことに気づかないのが、本当に腹立つんだよ。

―では最後に、2025年の世の中を振り返って、もっとも失望させられたことと、もっとも希望が感じられたことをそれぞれ教えてください。

ジェイソン:やっぱりドナルド・トランプには失望させられたな。

アンドリュー:俺も今ちょうど同じことを言おうとしてた。あいつは、ただひどいことを言うために引っ張り出されてるみたいな存在になってる。権威主義的な発想を、他のバカどもにも真似させてるんだよ。洪水戦略(Flood the zone)で、全部を混乱させて、破壊していく……そんなやり方をね。ああいうのは本当に簡単にできてしまう。

ジェイソン:そうそう。本当にがっかりだよ。で、いちばん良かったことは……家にいられた時間が多かったことかな。すごく良かったし、充実してた。俺たち二人とも、これまでずっとツアーで家を空けがちだったから。

アンドリュー:そう、家にいない時間がほんと多かったからな。

ジェイソン:だから、今回の期間は新しいフェーズに入った感じがするよ。まあ、前みたいに無茶なペースで動くことは減るかもしれないけど……とはいえツアーは収入源だから、どうなるかは分からないけどね。

スリーフォード・モッズが語る、分断と戦争の時代へのアンサー「最悪な人間をクソ野郎って呼ぶのは間違いなのか?」

スリーフォード・モッズ
『The Demise of Planet X』
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