名門〈Warp〉の創業時からの最古参アーティスト、ナイトメアズ・オン・ワックス(Nightmares On Wax:以下、NOW)。このたび、2006年の通算5枚目となる『In A Space Outta Sound』が、リリースから20周年記念の「ダブ・アルバム」化、『In A Space Outta Dub』に生まれ変わり、4月3日にリリースされる。
ダブ・ミックスを手がけたのはUKダブのイノヴェイダー、〈ON-U Sound〉率いるエイドリアン・シャーウッドだ。昨年は13年ぶりのソロ・アルバムをリリース、近年のプロデュース/ダブ・ミックス・ワークスなどを含めてますます冴え渡った作品群を手掛けている。

『In A Space Outta Sound』は、NOWのその代表作、ソウルやジャズが溶け込んだダビーなブーンバップ・インスト『Smokers Delight』──KLFによるアンビエント・ハウスの金字塔『Chill Out』のヒップホップ・ヴァージョンというコンセプトにて作られた1995年の2ndアルバム──の路線を踏襲しながら、ディスコグラフィのなかでもひときわレゲエやルーツ・ダブのフレイバーが強い。元ジャケットが象徴的だが、サウンド的にも彼が育った地域に隣接するカリビアン・コミュニティ由来のサウンドシステム体験というルーツを反映させた作品だ。

そもそもNOWは、エイドリアンが開拓したレゲエ以外の音楽へのダブの拡張を、ブレイクビーツやヒップホップに展開してきたアーティストとも言える。さらに、こうした趣向性の作品ということを考えればエイドリアンのミックスが施されるとあれば、もはや生まれながらのクラシックが約束されている。そして作品はここ数年のエイドリアン・ワークスになくてはならない存在の敏腕ミュージシャンたちも参加し、単なるダブ・ミックスというよりも、原曲を再演、ダブによるリワークといった方が相応しい。オリジナルよりさらに太く、サイケデリックなダブのマジックが施された逸品となった。

※エイドリアン・シャーウッド、ナイトメアズ・オン・ワックスを迎えた来日公演「DUB SESSIONS 2026」が9月に決定。詳細は記事末尾にて

『In A Space Outta Sound』を振り返る

─『In A Space Outta Sound』は、もともとサウンドシステム(※注1)をいじっているあなたの写真がジャケットで、フィーチャーされ、とりわけダブ、レゲエ色の強いサウンドでした。改めてこのアルバムを作ったときのテーマやコンセプトがあればお教えください。

NOW:このアルバムは、自分のルーツに根ざした作品なんだ。
アルバム・タイトルの『In A Space Outta Sound』は、「まるで魔法のよう(マジカル)な瞬間を音楽で創り出すために、ある特定の空間に入り込むことで、はじめてそんな音を生み出せる」という気づきを表現したんだ。そもそも自分のサウンドは一体どこから来ているのかを振り返ると、当然ながらサウンドシステム・カルチャーやヒップホップ、ソウル・ミュージックといった、いわば俺のインスピレーション源に遡ることになる。その後、そういった要素がどのようにNOWのサウンドのなかに融合してきたか、そしていかにサウンドシステム・カルチャーとダブ・ミュージックが俺の基盤において重要な役割を果たしてきたかを考えた。サウンドシステム・カルチャーは、特にレコードの選曲による表現やMCの存在が、ヒップホップへと進化していく過程においてそのカルチャーと完璧に系譜が繋がっている。だから、このアルバムはまさにNOWのサウンドそのものだと思う。

※注1:ジャマイカで第二次大戦後に誕生した、巨大なスピーカー、アンプ、ターンテーブルなどの音響機器で構成された移動型のPAシステム。それぞれのチームが自らのシステムを持ち、それをボールルームや野外の空き地などで展開しパーティを開くカルチャー。UKでは戦後の労働力を担ったジャマイカ系住民たちによって持ち込まれた。サウンドシステムはそれぞれバックグラウンドとなる地域があり、多くはそうした地域の住民が「ご当地」システムのサポーターとなる。

─昨年末にリリースした作品『Echo 45 Soundsystem』も、タイトルからしてひさびさにレゲエやダブの影響を強く感じさせる作品でした。サウンド的にも『In A Space Outta Sound』に近い感覚がありました。これは今回のダブ・アルバムへと繋がる布石という感じだったのですか?

NOW:そういう見方もできるかもしれないけど、正直なところ布石っていう感じでもないんだ。
現実的な話を言うと『Echo 45 Soundsystem』は、6~8年前に制作した楽曲も収録している。そもそも、この作品は「楽曲が山ほどあるけど、いわゆる”アルバム”としてまとめるような楽曲じゃないから、どうすればいいんだろう?」と考えた時に、それならばとミックステープとしての作品の制作を提案されたんだ。大昔によく聴いていたミックス・テープやサウンドクラッシュ(※注2)のことを思い出してね。ミックステープを聴いていた頃は海賊ラジオの時代だった。俺はサウンドシステム・カルチャーと共に育ったけど、当時は子供だったから、サウンドクラッシュの現場には行かせて貰えなかった。サウンドクラッシュのテープを聴きながら「あぁ、行きたいなぁー!」って思うだけだった(笑)。当時、実際にサウンドクラッシュを体験できたのは、毎年8月末にリーズで開催されるリーズ・アフロ・カリビアン・カーニバル(※注3)だけだったから。

でも、ラッキーなことに、親友の兄貴が育ったエリアが「メサイア(Messiah)」というサウンドシステムのエリアで、俺たちは9歳の頃から放課後に彼らのシステムがスピーカーボックスを見せてくれるワークショップに通うことになった。ワークショップでは、サウンドクラッシュの舞台裏だとか、システムの仕組みを教えて貰えたんだ。その後、12、13歳の頃に学校のバザーで初めて入手したスピーカーボックスのサウンドシステムに俺は「Echo 45」という名前をつけた。さらにこのスピーカーが俺とヒップホップ文化を繋いだものになったんだ。

そういった経験から『Echo 45 Soundsystem』は、サウンドシステムの文化を「サウンドクラッシュ」の実況のように表現しつつ、同時に海賊ラジオの体験も盛り込んだアルバムを作ったら面白いんじゃないかと考え始めた。
海賊ラジオも俺のDJとしてのバックグラウンドの一部だし、育ってきた環境でもあるからね。だからあの作品は、単なるミックステープじゃなくて、このレコードを聴くことで、まるでサウンドクラッシュに参加しているような感覚や海賊ラジオを聴いているような感覚も味わえるような作品にできないかなと。だから『Echo 45 Soundsystem』には俺のストーリーも詰まっている。

だから、今回のダブ・アルバムとこのミックステープは、あまり意図したわけじゃないんだけど、自然の流れで最高のタイミングにドロップされたと思う。個人的にはアルバム・リリースを急ぐ必要なんてないと思うけど、音楽が自然な形でそのタイミングを決めるんだろうね。だから、今回の『In a Space Outta Sound』(20周年記念盤)は、NOWの系譜における完璧な繋がりになったと思う。

※注2:サウンドシステムが2つないしは、複数集まり、さまざまなルールで競い合うパーティの形式。レゲエのシーンでは、この実況録音テープが出回っている。

※注3:アフロ・カリビアンによる音楽を中心にしたお祭り、レゲエのサウンドシステムが稼働し、ソカやカリプソなども演奏され、パレードなども行われる。ロンドンのノッティングヒル・カーニバルが有名。

─改めて現在のあなたの感覚から聞いて『In A Space Outta Sound』の感想は?

NOW:現在オーストラリア・ツアー中だけど、このアルバムの楽曲は観客の反応が相変わらず凄いね。『In A Space Outta Sound』には魔法のような瞬間がたくさん詰まっている。
僕の他の作品と同じで、どれも制作に関わった人たちとの深いストーリーがあるんだ。当時、前作(2002年『Mind Elevation』)の成功や絶え間ないツアーと、キャリアを築き続けていく中で、自分の気が散っているように感じていた。以前のように音楽と深く繋がっている感覚が薄れて、そんな気づきの過程で『In a Space Outta Sound』が生まれた。面白いことに、人生の様々な段階で内省する時間って必要なもので、内省の過程で何かを悟っていく。終わりなき音楽の旅路を続ける自分自身について、あるいは音楽との関係性について悟る。そして、このアルバムは、アーティストとして「大きな転換点」が訪れた瞬間を刻んでいる。そういった個人的な経験もあり、自分にとっては特別な作品なんだ。

ナイトメアズ・オン・ワックスが語る、エイドリアン・シャーウッドと共に生み出したサイケなダブの化学反応


エイドリアン・シャーウッドとの邂逅

─エイドリアン・シャーウッドにダブ・ミックスをお願いすることになった経緯をお教えください。

NOW:そもそもの自分の楽曲に対するアプローチとして「壊れていないものを無理に直す必要はない」という考え方だったから、打ち合わせでは「敬意を持ってこの曲を扱い、独自のアレンジを加え、しかも完璧な融合を実現できる人物は誰だろう?」という話をスタッフとしていたんだ。そのなかでエイドリアンが候補に挙がった。もちろん俺は〈On-U Sound〉の熱烈なファンだし、エイドリアンが手がけた全ての作品に常に圧倒されてきた。とりわけレゲエ・カルチャーにおいて彼は独自のサウンドを引き出してきた。
だから「このアルバムにピッタリじゃないか?」と思ったし、彼に頼めば『In A Space Outta Sound』のアイデンティティを保ちつつ、明らかに違うものになると確信したよ。

エイドリアンの仕事ぶりやエレクトロニック・ミュージックに対する実験的精神や音楽の根底にあるミュージシャンシップ、それは僕自身が自分の作品に対する「生演奏と電子音の完璧な融合」を追求する姿勢と非常に似ているから、面白い試みになると思ったんだ。

─どのようにすすめられたんです?

NOW:まずは電話でこのアルバムについて話し合うことになった。エイドリアンと話すのは、その時が初めてだったけど、彼はこのアルバムのファンで、隅から隅まで熟知していることを知ったんだ。つまり、お互いに尊敬し合っていたんだ。共同プロジェクトを組む際には、実際何かを聴く前に感じる印象が最も重要。実際に電話だったけど初めて話した時は、とてもいい感じだった。そして、エイドリアンが選んだ楽曲を形にしていく過程は、本当に興味深いプロジェクトだったね。

─エイドリアンの作品に関して、もし好きな作品があれば教えてください。また自分のスタイルに及ぼした影響などがあれば。

NOW:最近のものであれば、エイドリアンが手掛けたパンダ・ベアのリミックス盤(パンダ・ベア&ソニック・ブーム『Reset In Dub』)が大好きだね。〈On-U Sound〉は全てが素晴らしいから、作品を絞るのは不可能だなぁ……(苦笑)。
とにかく、彼のサウンドは一貫しているよね。ルーツに深く根ざしながらも、リスナーを未来へと誘う才能があり、その両方の要素に惹かれる。それは俺の音楽の基盤も同じだからね。

エイドリアンは俺より年上で活動歴も長いし、レゲエに関する知識は俺の知識を遥かに超えている。エイドリアンと話していると「ああ、これは元々このリズムから来てるんだ」という感じで、いろいろ教えてくれるから、俺にとっては「先生」のような存在だ。近い将来、エイドリアンと共演できる日を心から楽しみにしている。まるで教室で授業を受けるような感じだろうなぁ(笑)。

ナイトメアズ・オン・ワックスが語る、エイドリアン・シャーウッドと共に生み出したサイケなダブの化学反応

エイドリアン・シャーウッド

─今回のダブ・アルバムに関して感想はいかがでしょうか?

NOW:完璧なマリアージュだろ? 驚いたリスナーもいるかもしれないけど、今のところは非常に好評で、よろこんでくれた人が多い。完璧な組み合わせだった。さっきも言ったけどエイドリアン・シャーウッドが手掛けたら、当然いいものになるよな(笑)。

ここ数カ月、改めて聴き直したんだけど、とにかくいい感じだよ! とても心地良くて、原曲への敬意を感じつつも、新たなひねりが加わって、まったく違う世界に浸ることができる。だから、エイドリアンの今回の仕事は「リミックスした(remixed)」というよりも、「蘇らせた(revived)」と言えるだろうね。彼の世界観をNOWの世界に融合させたこの共同プロジェクトは、実に美しいものに仕上がった。

─今回の作品に関してはほぼエイドリアンにお任せといった感じでしょうか?

NOW:「ここにもう少しキーを足してみて」というようなやりとりは若干あったけど、100%エイドリアンを信頼したよ。彼は常に情報を共有して、作業の過程で断片的な音源も送ってくれた。エイドリアンは常に協力し合いながら最高のものを生み出そうと突き進む姿勢で、本当に興味深いプロジェクトだった。

─今回多くの楽曲でさまざまなアーティストがあなたの作った楽曲を生演奏で弾いてくれています。なかでも全てのベースを弾いているダグ・ウィンビッシュの演奏は本作をより印象深いものにしています。彼は元シュガーヒル・ギャング、ということは、あなたが子どもの頃に聴いていた「Rapper's Delight」のベーシストです。そんなレジェンドがあなたが作った楽曲のベースを弾いているということでもありますよね。

NOW:ダグのベース演奏はまるで「ヴェルヴェットのようなサウンド」という表現がピッタリ。彼は、マイルス・デイヴィスのバンドでも演奏したことがある、まさに最高峰の伝説的なベーシスト。ある時、エイドリアンが電話口で「ダグにベースを弾いて貰おうと思って」って言うから、「えっ、ダグ・ウィンビッシュ?!」ってなったよ。実は1996、1997年頃にニューヨークで一緒にレコーディングしたことがあったんだよね。それを伝えたら「今、まさに横にいるけどダグと話す?」って代わってくれたんだ。その時、約30年ぶりにダグと電話で話して、「このシンクロニシティは特別なものになる!」と直感したんだ。ちなみに30年前のレコーディング・セッションは別のアーティストのためのレコーディングだったんだ。だから俺は「自分のプロジェクトに参加して貰えるなんてホントに嬉しい」ってダグに伝えたよ。音楽の道がこんな風に交差し、また共演できるなんて最高だった。こうした出来事があって「ああ、この作品は間違いなく正しい方向だ」と実感したね。だから、エイドリアンや素晴らしいミュージシャン勢がこのレコードに参加したことはとても光栄なことだったし、感謝の気持ちで一杯だよ。

それから、ミックスを担当したエンジニアの仕事ぶりも高く評価したい。ふわふわした雲のような音に仕上がっているだろ? 実に温かみのあるサウンドでね。ベースの音は重くなく、ひたすら心地良い。アルバム全体のプロダクションと仕上がりのクオリティには大満足している。

─ちなみにそのレコーディング・セッションはどのアーティストの作品だったんですか?

ニコール・レネー(注4)だよ。

注4 : 1990年代末に活動していたアメリカの女性R&Bシンガー。

「ブリープ・ハウスのルーツ」としてのサウンドシステム体験

ここで1点補足を。NOWは〈WARP〉のレーベル初期を象徴するサウンド=ブリープ・ハウスのアーティストとして1980年代末にLFOらとともにデビューしている。ブリープ・ハウスは初期のチープなハウス・サウンドにUS産にはない野太いベース・サウンドが備わっている。これはUKらしい、サウンドシステム・カルチャーとハウス/テクノの出会いとも称される。ブリープ・ハウスは、いわばハウスのダブ・ヴァージョンと言えるだろう。彼のキャリアは最初からサウンドシステムやダブにひとつのルーツがあるのだ。

 *

─ちょっとあなたのルーツとしてのサウンドシステム体験とおそらくそれに続く初期のブリープ・シーンに、すこしフォーカスしたいんですが、冒頭で出てきたリーズのメサイアというサウンドシステムのワークショップに通っていたということですが、どんなことをやっていたんですか? 

NOW:俺が9歳頃に地元のワークショップで学ばせて貰ったメサイアでは、スピーカーボックスの作り方を学ばせて貰っていて。最近、取材なんかを通じて再び思い出すことになったんだ。例えば、前作のタイトルに「Echo 45」と入っていたのは、さっきも言ったけど俺が初めて入手したスピーカーボックスにつけた名前だったから。13歳の頃に学校のバザーで、とある先生がスピーカーボックスを5ポンドで売っていて、ダッシュで帰宅してうちの母親に金を借りてそのスピーカーを買ったよ。俺にとって初の自前のサウンドシステムだった。周囲でサウンドシステムをやっていた年上のクルーたちは俺にはヒーロー的存在で、当時はまずは大人たちの真似事をしていたんだ(笑)。最初は自分のサウンドシステムを「Echo HiFi」と呼んでたけど、後に「Echo 45」に変えた。「ついに自分のサウンドシステムを手に入れた!」って感じで、このスピーカーボックスは俺の全てだったんだ。

ところが、ある時このスピーカーボックスを巡って幼馴染の仲間数人とちょっとしたトラブルになってね。スピーカーボックスを巡って誤解が生じ、俺の様子がおかしいことに気づいた俺の姉貴が「私のボーイフレンドのいとこで、ブレイクダンサーのダレン・パスカルに会ってみたら?」と紹介してくれたんだ。それでダレンが別のブレイクダンス・クルーを紹介してくれて、俺はそのグループに参加するようになった。そこで出会ったのがNOW最初の相棒、ケヴィン・ハーパーで、結果として俺の人生を別の方向へ導いてくれた。あの出来事がなかったら、この人生は違うものになっていたはず。だから、13歳の時に入手したスピーカーボックスが自分の人生を変えたことに気づいたんだ。

─そのケヴィンと出会ったブレイクダンサー・チームが、ソーラー・シティ・ロッカーズで、その一員がDJチームとなって、あなたたちとともに初期ブリープ・ハウスを象徴するアーティスト・ポッセ、ユニーク3になったようですね。またリーズと言えば現在のイギリスのニュールーツ・レゲエ~ダブのサウンドシステム・シーンの代表的アーティスト、アイレーション・ステッパーズのマーク・アイレーションも、あなたと同じくサウンドシステム~ブリープ・ハウスのシーンもいたようですが。

NOW:もちろん知っているよ! 若い頃は互いにライバルの別のクルーに属していて、サウンドクラッシュの相手だから、彼のことが嫌いだったけど(笑)。今では仲良しだよ。元々彼らはアイタル・ロッカーズって名前でブリープをやっていた、後にアイレーション・ステッパーズになったんだ。

俺とマークは、確か16か17歳の頃に初めてサウンドクラッシュで知り合ったと思う。マークは10代からずっとサウンドシステム・カルチャー一筋の人生を歩んできていて、リスペクトしている。こうして今でも彼がその活動を世界中に広めている姿は実に美しいね。俺たちは同郷で育ち、お互いの大ファン。実はマークには『Echo 45』のナレーションの一部をお願いしたんだよね。彼には尊敬の念しかない。昔のサウンドクラッシュやヒップホップ文化には地元をレペゼンする意識が強くて、激しい競争心があり、時に不健全だったりもした。そういう時代だったんだ。でも、それが「何かを成し遂げたい!」という情熱を燃え上がらせた。そこには良い面も悪い面もあって、今振り返ってみると「当時、自分たちが取っていた行動はガキそのものだったな」と思うけどね。

─初期のブリープ・ハウスやその後のあなたの音楽性にもベースはとても大事なものだと思いますが、そこはやはりサウンドシステムでのダブ体験の影響が大きい?

NOW:うん、大きいね。ワークショップに通い始めた子供時代は、サウンドシステムについて「どうしてこっちのスピーカーの方が大きいの?」という感じでいろいろ質問したよ。低音、高音、中音域用のスピーカーのことを教えて貰ったりした。その時に「ベースの低音が最も重要な部分」ということを学んで、実際にいろいろと試聴させて貰ったんだ。その頃の代表的なダブ・マスターであり、エンジニアでもあるサイエンティストの作品を聴くようになってね。あの漫画みたいな色使いのジャケ写にも惹かれた(※注5)。俺が7歳の時に初めて買った(シングル盤)レコードはサード・ワールドの「Cool Meditation」で、初めて買ったアルバムはサイエンティストの『Scientist Meets the Space Invaders』か『Scientists Rids the World of Evil Curse of Vampires』のどちらか。そして、初めて購入した12インチ盤はビリー・ボヨの「One Spliff A Day」。話が脱線したけど、そうやってベース音が重要な要素であることを学んだんだ。

そこから808ベースのヒップホップ、そしてテクノとも繋がりのあるマイアミ・ベースへと発展していった。もちろんUKのストリート・ソウルにも808ベースは使われていたし、UK発祥のソウルフルでダビーなラヴァーズ・ロックもそう。そういった音楽に囲まれて育ったんだ。そして、俺はブレイクダンサーとして、フュージョン・ダンスに没頭した。常にベースラインが全て。特にブラック・カルチャーやアーバン・ミュージックではベースが基盤だし、ベース音は極めて重要だよ。

NOWのデビュー・シングル「Dexterous」もベースが核となっている。ハウス・ミュージックを作り始めた初期の頃でさえ、俺たちにはサウンドクラッシュやヒップホップ・バトルの精神(スピリット)があったし、今でもそれは消えてない。あるクルーが新曲を出すと、「俺たちもドロップするぞ!」って感じだったね。ア・ガイ・コールド・ジェラルドが出せば、俺たちもドロップする感じでさ。マンチェスター、ハダースフィールド、シェフィールド、リーズから次々と曲がリリースされ、LFOが現れ、ベースラインが全てだった。そのルーツは間違いなくサウンドシステムに遡るね。

※注5:1980年代前半のダブ・アルバムのクラシックとなっているシリーズ。英〈Greensleevs〉がリリースしていたトニー・マクダーモットのイラストを配したサイエンティストのダブ・アルバム・シリーズ。バック・バンドは、当時のジャマイカのサウンドを象徴するルーツ・ラディクス。

─あなたにとってダブというサウンド・スタイルはキャリアにおいて、どのような意味を持ちますか?

NOW:俺にとってのダブは「音の旅路」。ヒップホップ、ソウル、レゲエ、ハウスミュージックなど、多様な音楽を通ってきた自分の旅路がダブにはあるんだ。

─エイドリアンとの来日も決まったようですが、最後に日本のファンにメッセージを。

NOW:日本は大好きな国で、実は数週間前に自分の誕生日を日本で迎えたばかり。和食も大好きだけど、何より最高なのは日本のオーディエンスと彼らのエネルギー。日本にまた訪問できるといいなぁ。今日はインタビューしてくれてどうもありがとう。この記事を読んでる読者やNOWを応援してくれるファンの皆に心から感謝しているよ!

ナイトメアズ・オン・ワックスが語る、エイドリアン・シャーウッドと共に生み出したサイケなダブの化学反応

Nightmares on Wax VS Adrian Sherwood
『In A Space Outta Dub』
2026年4月3日リリース
詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=15624

ナイトメアズ・オン・ワックスが語る、エイドリアン・シャーウッドと共に生み出したサイケなダブの化学反応

DUB SESSIONS 2026
feat. ADRIAN SHERWOOD VS NIGHTMARES ON WAX
2026年9月9日(水)東京・Spotify O-EAST
2026年9月10日(木)大阪・Yogibo META VALLEY
OPEN / START 18:00
チケット:前売8,000円(税込 / 別途ドリンク代 / オールスタンディング)
イープラス・プレイガイド最速先行受付:4月3日(金)10:00 ~ 4月8日(水)23:59
詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=15671
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