音楽的な特徴は、スウィート・ソウルやドゥーワップ、ロックステディなどのローライダー・オールディーズを着想源としたヴィンテージなサウンドと甘美なボーカル/ハーモニー。彼らの楽曲は、米西海岸などに暮らすチカーノ(メキシコ系アメリカ人)のコミュニティを中心に支持を集め、現在では日本を含めたワールドワイドでファンを増やしている。なかでも2020年にリリースした「Can I Call You Rose?」は現行チカーノ・ソウルのシーンにおいてアンセム化しているグループの代表曲で、複数のアーティストによるカバーも登場している。
所属レーベルは、名門ダップトーンのサブレーベルでLA郊外のリバーサイドにスタジオも構えるペンローズ。2020年に設立され、チカーノ・ソウル系のアーティストを中心に送り出している同レーベルでシンシアーズ(Thee Sinseers)やアルトンズ(The Altons)と並ぶ看板アクトがこのセイクリッド・ソウルズである。Tiny Desk Concertやコーチェラへの出演でも広く注目を浴び、セント・ポール&ザ・ブロークン・ボーンズやカリ・ウチスのオープニング・アクトを務めたことも話題になった。
メンバーは、ドラマーのアレックス・ガルシア、ベーシストのサル・サマーノ、ボーカリストのジョシュ・レーンの3名。ビルボードライブでの待望の初来日公演を前に、古風でありながら新しい音楽を奏でる彼らに、結成の経緯や音楽的背景、「Can I Call You Rose?」の誕生秘話、それぞれのチカーノ・ソウルに対する見解などを話してもらった。
「Thee」を名乗るようになるまで
―まずグループ結成の経緯からお聞きしましょうか。
サル:僕が答えようか?
アレックス:前に同じ質問があった時、君の方がうまくまとめてたから頼むよ。
サル:僕とアレックスはそれぞれ別のバンドにいて、ある日、同じライブに出演することになったんだ。出番までの待ち時間が長かったから、なんとなくふたりで会話が始まった。
その頃、アレックスは自宅の裏庭にあるスタジオでソロのプロジェクトに取り掛かっていて、僕はそこに顔を出すようになった。ある時、一緒にジャムしていたら、自分で作ったインストの曲を何曲か聴かせてくれて、その中の一曲が後に「Can I Call You Rose?」になる曲のインストだったんだ。初めて聴いた時、すぐに気に入ったよ。オールディーズというか、懐かしさのあるバラードで、自分が追い求めていたサウンドそのものだったから。それであの曲がプロジェクトのメインになったんだ。
―そのインストが出来てからボーカルのジョシュが加入することになるのですよね。
サル:当時、ジョシュとアレックスは互いにインスタでフォローし合っていたけど、僕はまだジョシュと面識がなかった。
アレックス:ジョシュが初めて会いに来た時、彼はてっきり自分のソロ・プロジェクトのために僕がドラムを叩くと思ってたみたいなんだ(笑)。で、その時に作った曲をいくつか聴いてもらった。そのジャム・セッションの終わりの方で出した曲が「Can I Call You Rose?」だったんだ。
左からジョシュ・レーン(Vo)、アレックス・ガルシア(Dr)、サル・サマーノ(Ba) Photo by Gabriel Roth
―「Can I Call You Rose?」の話は後ほどお聞きするとして、セイクリッド・ソウルズ(Thee Sacred Souls)というグループ名の由来は?
サル:話は僕とアレックス、僕の父の3人で話した時に遡る。父は僕が小さい頃から筋金入りのレコード収集家だった。いつも僕にコレクションを見せてくれて、その中にはもちろん45回転盤(のシングル)もたくさんあったよ。僕はすでに音楽をかじっていたけど、思い返すとそんな父の影響でソウル寄りのバンドをやってみようかなと思ったんだ。それで父にアレックスに出会ったことやふたりの計画について話した。「これ、ふたりで作ったデモなんだ。聴いて意見を聞かせてよ」って言うと、めちゃめちゃ興奮してたね。
それである日、僕の父とマイク、そしてアレックスと僕の4人で集まって、誰と繋がればうまくいくかとか、バンドの名前はどうするかとか意見を出し合っていた。その時に父たちが「今我々が立ち上げようとしている愛好会はThe Sacred Soul Clubにしようと思ってるけど、もし気に入ったなら使ってもいいぞ」って提案してくれたんだ。で、すごくいいじゃんってことになった。とはいえ、僕らはクラブじゃなくてグループだからSacred Soulsに変えたんだ。それと、僕らに最もインスピレーションを与えてくれたグループのひとつで、イーストLAのウィッター・ブルバード(Whittier Blvd.:ローライダーの聖地として知られる幹線道路)が誇るミッドナイターズ(Thee Midniters)への敬意を表す意味でTheeを付けた。そうやってThee Sacred Soulsとなったんだ。
―グループ名のアタマにThee(現代の”you”に相当する古い英語の二人称単数代名詞で、それを定冠詞のように使ったものとされる)をつけるのは60年代のThee Midnitersを筆頭にチカーノ・ソウルの伝統と言いますか、近年もThee Heart Tones、インドネシアのThee Marloesなど、セイクリッド・ソウルの登場前後から再び増えてきている印象があります。
サル:僕らだけじゃなくてシンシアーズ(Thee Sinseers)もそうだし、ずっと昔から多くのチカーノ・グループの中でTheeを付ける伝統はあったからね。Theeをつける理由のひとつとして、例えば60年代にはシャドウズ(The Shadows)という名前のバンドが20以上あったと思う。その中で自分のバンドも”シャドウズ”にしたければ、他と区別をする必要があった。ミッドナイターズもそうだよ。
3人のバックグラウンドと音楽的ルーツ
―現在も活動拠点はサンディエゴですか? 地元とイーストLAのバリオ(メキシコ~ラテン系居住区)との違いなどがあれば教えてください。
アレックス:僕自身は1年ぐらい前に(LA郊外の)リバーサイドに引っ越してしまったけど、月に数回はサンディエゴに戻っているから、まだそこが拠点と言ってもいいと思う。僕とサルにとっては故郷だし、熱心なファンも含めてここから全てが始まったわけだしね。サンディエゴとイーストLAのバリオの違い? なんだろう?どう思う、サル?
サル:そうだな……イーストLAはかなり凝縮された街だと思う。小さな街や街区も多いし、なんと言っても歴史が詰まっている。それと比べてサンディエゴは基本的には同じだけど、そこまでまとまった感じはない。イーストLAもサンディエゴも、ルーツはもちろん、音楽や車、ファッションやフード、アートといった文化の面では基本的には同じだよ。ただイーストLAの方がもっと盛んで、サンディエゴはそういった文化がそこまで広範囲に渡っていなくて、特定のスポットがあるみたいな感じかな。
―アレックスとサルはサンディエゴでローライダーのカルチャーに親しんでいたと聞いています。
アレックス:そうだね、ふたりともそういう音楽がかかっていた環境で育った。
―一方でジョシュは、ふたりとは違うルーツがありますよね。
ジョシュ:僕は母が先住民(ネイティブ・アメリカン)、父がカリフォルニア州サクラメント出身のアフリカ系アメリカ人の混血。キリスト教の家庭で、幼少期は両親がよくかけていたゴスペルを聴いて育った。それからクラシックの声楽科に進学して、昔ながらのアメリカン・フォークとかジャズを聴くようになった。ソウルももちろん聴いていたけど、当時僕が好きだったのはモータウンのようなノーザン・ソウルとか、いわゆるメインストリームのソウル。だから僕のボーカルは多くのソウル・シンガーたちの影響を受けていると言える。特にマーヴィン・ゲイやアル・グリーンが好きだった。音楽専攻だったからジャズも大好きで、サラ・ヴォーンとかエラ・フィッツジェラルドみたいなジャズ・シンガーたちもよく聴いたよ。
―ファルセットも交えたやるせないボーカルは、有名どころだとスモーキー・ロビンソンやカーティス・メイフィールドなどを連想させます。
ジョシュ:カーティス・メイフィールドを聴き始めたのは大学卒業後だったけど、ケイデンス(フレーズの終わり方)なんかは間違いなく彼の影響も受けている。それからアレックスとサルと出会って、さらに多くのソウル・ミュージックを聴くようになったよ。それまでもレコードは集めていたけど、45回転盤を集めていた彼らの影響で、今では僕も集めるようになった。以前はジャズかモータウンのソウル中心だったのが、もっとレアなソウル・シンガーたちの作品に触れることになったから、そこからも影響を受けているよ。一緒にいると友達の影響って自然に受けるもんだよね。
チカーノ・ソウルへの敬愛と現代的解釈
―グループが籍を置くペンローズ/ダップトーンのボス、ボスコ・マン(ゲイブリエル・ロス)とはどうやって出会ったのでしょう?
アレックス:ゲイブ(ボスコ・マン)と初めて会ったのは、グループとしての活動を始めた2019年。当時インスタに載せていたデモの動画が話題になったんだ。それを観たウィズ・ストレンジャーズっていう(チカーノ・ソウルの)バンドのメンバーから連絡があって、「君たちのデモをゲイブ・ロスにシェアしてもいいかな?」って言われたから、「いいよ」って言ったんだ。そして「ゲイブから連絡が入るからね」ってメッセージがきたと思ったら、本当にゲイブから連絡があって(笑)。めちゃめちゃ緊張していたら、ゲイブに「次の公演はいつ?」って聞かれた。「今週の土曜日です」って答えたら、「わかった、観に行くよ」って。あれは僕たちにとってまだ結成後2回目のギグだった。で、彼は本当に観に来てくれて、公演後に「僕のスタジオに来てレコーディングしないか?」って言われたんだ。「いいですね、いつですか?」って言うと、「来週」って(笑)。そんな感じでどんどん進んでいった。
ゲイブと仕事ができることは本当に最高だよ。彼のような先生にはそう出会えないから。ゲイブと知り合っただけで、僕らはみんな音楽的にレベルアップしたと感じている。友達として一緒にいろんな音楽を聴いたり語り合って、音楽を違う角度から聴くコツとか洞察力なんかもゲイブから学んだ。自分の音楽をより良いものにする術が身に付いていくんだ。ゲイブはそういう意味で僕たちをすごくサポートしてくれたよ。
ジョシュ:良いレーベルだよ。
―ペンローズから出されている大半の作品がそうですが、あなたたちの音楽はチカーノ・ソウルと呼ばれています。”チカーノ・ソウル”というのは、チカーノたちが歌い奏でるソウルであると同時にチカーノたちが好むソウル・ミュージックというふたつの意味があると思うのですが、そのサブ・ジャンルについて当事者の目線で話してもらえますか。
アレックス:これに関してはいろんな解釈があると思う。君が言うように、ひとつは演者がチカーノであることで、独自のサウンドを持ったひとつのジャンルという考え方もある。まあ、僕に言わせれば、純粋にチカーノたちが自分なりにソウル・ミュージックを作った結果、独自のサウンドが生まれたと考えてるけどね。ふたりの見解は違うかもしれないけど、ジョシュはどう?
ジョシュ:そうだね。僕から付け加えるなら、そもそもソウル・ミュージックってすごくアメリカンなもの。もっと厳密に言うと、歴史を辿ればアフリカ系アメリカ人にルーツがある。それを聴いて刺激を受けた多くの人たちが、50年代初期~60年代頃のソウル・シンガーたちをヒントに自分たちなりのバージョンを作ったということだと思う。僕はたまたまこのグループで唯一の黒人だけど、チカーノ・ソウルと呼ばれるのは、僕たちの音楽が特定の文化の影響を受けているから。特に初めの頃のファン層は明らかにチカーノ・カルチャーに慣れ親しんだ人たちが圧倒的に多かった。チカーノ・ソウル、チカーノ・カルチャーって、ある意味ブラック(アフリカ系アメリカ人)とブラウン(ラティーノ)の融合だと思う。ブラック・ソウルにインスピレーションを受けてはいるけれど、同時に独自のソウル・ミュージックでもある。例えばロイヤル・ジェスターズやミッドナイターズを聴けばわかるけど、れっきとした独自のサウンドなんだ。僕自身は彼らのようなチカーノ・バンドにすごく刺激を受けている。サルもチカーノ・カルチャーの観点から見た見解を持っているよね。
サル:ほとんどふたりが言ったことと同じだよ。ジョシュが言ったみたいに、チカーノ・ソウルはチカーノたちが既存のソウル系のバンドを参考に自分たちでソウル・ミュージックを歌い奏でて、結果的にそこから独自のサウンドが誕生したってこと。それは(ソウルの)サウンドから受けた影響に限らず、独自のレコーディングの仕方や演奏方法によっても生まれたものだと思う。
―あなたたちの音楽においてリファレンスになっている音楽は60~70年代のソウル・ミュージックが中心で、ドゥーワップやロックステディの影響も感じるのですが、それらのどういう部分に惹かれているのでしょうか?
アレックス:僕にとってソウル・ミュージックの魅力は、キャッチーなフック、アタックが強いドラム、耳に残るベースライン、つまりは良い曲の条件みたいな要素だと思う。ロックステディもそうで、個人的にはアルトン・エリスはものすごく影響されたアーティスト。彼のフレージングにおけるメロディのセンスは学ぶところが多い。他にはライブラリー音楽なんかも聴くよ。ピエロ・ウミリアー二は好きだね。彼が使うトーンや音色の幅は素晴らしいと思う。ソウル・ミュージックにもレアな45回転盤が山ほどあって、アルバム制作には至らなかったけど出来のいい一曲だけシングルが出された例はたくさんある。そういう無名のアーティストたちをここで挙げるのは難しいけど……レコードをめくりながら「これとかこれ」と言って僕らの45回転盤のコレクションを見せながらだったら話は早いけどね。
ジョシュ:僕もアレックスと同じ感じで、ベースやギター、ボーカルであれ、一番惹かれるのはそのたまらなくキャッチーなメロディ。あと女性ボーカルが主体の曲も好きなんだ。僕のコレクションの中で言うと、シェリル・スウォープ(Sheryl Swope)の「Run To Me」(68年)なんかがそう。ファンキーなんだけど、ポップ・ソウル的な情緒も感じられるクロスオーバーなソウル。ヴァースからコーラスまで、曲全体を通してとにかくすごく魅力的なメロディが詰め込まれている。あとはストーリーがあること。恋愛による高揚感とか、失恋や悲しみ、自分の周りの世界が辛い状況にある時、そういった心に深くのしかかる感情を受け止めて伝える良いパイプ役を果たしていると思う。
―あなたたちの音楽は、もちろん単に古いソウル・ミュージックをそのままをやっているわけではないと思いますが、そうしたヴィンテージというかレトロな音の質感を出すために、演奏や録音方法、ミックスなどで気を使っていることは?
アレックス: 古い機材を使っていることぐらいかな。ドラムやギター、テープ・マシーンなんかは60年代の物だよ。演奏や録音の方法としては当時のやり方とほとんど変わらない。もちろん僕らの音楽はその頃の影響を受けてはいるけれど、サウンド的には当時と同じだとは思っていない。聴く人によっては60年代~70年代の音楽だと思うかもしれないけど、古い機材を使っているとは言え、聴き比べてもらえば僕らの音楽は紛れもなく今のサウンドだと思う。まあ昔を思わせるとすれば、それは当時使われていた機材を使っているせいだと思う。
ジョシュ:そうだね、あとは曲の構造も少し関係しているかもしれない。僕らは常に昔のソウル・ミュージックの作り方に沿ってやっているわけではないけど、限られた長さの中で多くを語る短い曲なんかも当時の音楽からヒントを得ている。でも、アレックスが言ったみたいに、オールディーズ風のバンドって簡単に分類されてしまうことが多いけど、実際、僕らの音楽には他からの影響を感じさせる要素が詰まっているんだ。
Photo by Gabriel Roth
「Can I Call You Rose?」誕生秘話、ブルーノ・マーズへの共感
―2022年にリリースしたセルフ・タイトルのデビュー・アルバムは話題になりましたが、やはり大きかったのは「Can I Call You Rose?」だと思います。ペンローズにおける第一号シングルでもありますが、完成までのプロセスを改めて教えてください。
ジョシュ:さっきふたりが言ってたみたいに、ある日僕はアレックスのガレージにジャムしに行ったんだけど、実はあの時、自分のポップなソウルの曲に参加してもらいたいという下心があった。なんだかんだで40分ぐらいいろんな曲を一緒に演奏して、終わりがけにアレックスが、気に入ってはいるけどお気に入りとまではいかないっていうインストの曲を出してきた。触りをちょこっと弾いてくれたんだけど、すぐに惹かれたよ。心を掴む曲が持っている要素が揃っていたんだ。全てのセクションに素晴らしいメロディがフィットするスペースが設けられていて、コードも最高で。心が折れそうな辛い気持ちからハッピーへと転換していく感じで、歌詞を考えるヒントになった。あと何って言うんだっけ、あの毛布……すごく分厚い……。
アレックス: あの毛布ね。どう説明すればいいかな。なぜかメキシコ系の家庭には必ずあるあれ。
サル:わかる人にはわかる(笑)。なぜかみんな必ず持ってるやつ。
ジョシュ: アレックスの家のガレージにもあって、彼はそれをドラムの後ろで吸音材として使っていたんだけど、その柄が大きな一輪の薔薇だったんだ。僕は新しい曲に取り組んでいる時、例えばコード進行を聴きながらそれに合わせてハミングをすることが多いんだけど、メロディが自然に流れている時に歌詞に気を取られてそれが中断されるのは嫌なんだ。だからメロディに集中するために、ちょうどアレックスの後ろにあった毛布が目に映ったから、仮のタイトルとして「Can I Call You Rose?」(「とりあえずローズと呼ぶ」的な)にしたんだけど、結果的にはフィットしたね。とにかくコード進行が完璧な曲で、歌詞を考えるのは簡単だった。ジャムの終わりの方で、出だしのメロディとかをふたりと一緒に考えた。かかった時間は45分ぐらいで、そこからハーモニーとかに取り組んだよ。全てはあの毛布から始まったんだ(笑)
―「Can I Call You Rose?」はカバーも多く、イザベル(スペイン系英国人女性シンガー)やラヒーム・デヴォーンなどが歌っています。この曲の何がスペシャルなのだと思いますか?
サル:すごくキャッチーな歌だからね。さすがジョシュだよ。明確で気の利いた、わかりやすい歌詞を書いてくれた。そしてビートの良さとギターの感じ、あれはアレックスの凄さだよ。軽やかでロマンティックな曲に仕上がった。昔ながらのバラードに求められる雰囲気が凝縮されていると思う。
ジョシュ:そうだね、当然僕たちは数えきれないぐらいこの曲を聴いて演奏もしてきたから曲に対する感じ方も当初とは変わったけど、初めてあのインスト版を聴いた時の感覚は今でも忘れない。生きていて良かったって思ったよ。いい音楽って人を幸せにするんだよね。音楽を聴けることに感謝したくなる。そして、そんな素晴らしい楽曲に歌詞を付け加える機会に恵まれて、関われた自分が誇らしい気持ちになった。笑っちゃうんだけど、アレックスがこの楽曲を聴かせてくれた時、彼がこの曲が嫌いだったとまでは言わないけど、「他にも何曲かあるんだ」って全然この曲を推してなかったから、僕が「ちょ、ちょっと待って、この曲は?」って止めたんだ(笑)。
アレックス:たまに「えー、この曲が?」っていうのがうまくいく時があるんだよね。まあ、みんなが気に入ってくれて良かったよ。
―チカーノ・ソウルやチカーノ・アートでは薔薇がアイコンのようにもなっていますが、あなたたちが曲を書く時の約束事みたいなことはありますか?
アレックス:そういうのはないかな。
ジョシュ:いい曲を書くってことぐらいかな。Clown(戯けたヤツ)とかFool(バカ者)とかって言葉は、元々ブラック・ソウルにも登場していたけど、僕らに限らずチカーノ・ソウルの歌詞にたびたび出てくるようになったよね。ふたりが同じ意見かはわからないけど、約束事と言うより、僕はテーマ次第だと思うんだよね。曲全体で目指しているテーマは何かっていう。だから例えば、裏切りとか失恋、恋愛をテーマにした歌でも同じ意味を持つ言葉を、他と違うもっとキャッチーなフレーズや言い方を思いつけば、それを採用する。歌詞については3人でよく話し合うけど、ルールみたいなものはないよ。
サル:(チカーノ・ソウルには)感情に訴える歌詞は多いよね。特に当時の男性たちって感情的になったり、自分の弱さを見せるのが苦手だったと思うんだ。そういう人たちにとってそういう(感情的に訴える)歌が相手に自分の気持ちを伝える手段のひとつだったんじゃないかなと思う。「この歌を聴いて君のことを想ったよ」って相手に歌を捧げたり、歌詞のタトゥーを入れたり。
―ちょうどブルーノ・マーズがラテン~チカーノ・ソウルにアプローチした新作『The Romantic』を出しました。「God Was Showing Off」などのホーンの録音には、あなたたちの後見人であるゲイブリエル・ロスやアンソニー・マシーノが関わっていますが、ブルーノの新作についてはどう思いましたか?
アレックス: よく出来てると思う。ゲイブは自分が聴きたいサウンドを理解しているからね。さすがだよ。
サル:一番確かな人選だよ。
ジョシュ: アンソニー・マシーノにも敬意を表したい。彼も最高だよ。僕らのアルバムも手掛けてくれたけど、彼の考え方はすごく共感できる。
サル:音楽性も素晴らしいしね。
大編成でのステージ、来日公演に向けて
―2024年に発表した2ndアルバム『Got A Story To Tell』では「Live For You」のようなグルーヴィーな曲がありましたが、1stアルバムと比べて決定的な違いはありますか?
アレックス:1stと比べて2ndアルバムは歌詞が全般的に少し暗めだった。アレンジに関しては、考え抜かれた、より洗練された感じになったと思う。特別なテーマがあったわけじゃないけど、結果的にちょっとダークなイメージに仕上がったかなと僕は思う。
ジョシュ:グループとして進化したことが示された作品になったと感じている。聴きながらみんなで曲の並びを考えていた時に、それを実感して自分たちのことを誇りに思えた。1stより失恋をテーマにした曲も増えたから、アレックスが言ったみたいに少し悲観的かもしれないけど、すごく気に入っている。レコーディングも楽しかったし、良いアルバムに求められるキャッチーで心地よい要素が全て備わっている。アルバムの最後にポジティブで元気が出る曲に出会えたことも僕にとってはよかった。
―その最後の曲、「Im So Glad I Found You,Baby」にはミッドナイターズのラリー・レンドンがテナーサックスで参加していますが、彼はどういう経緯で参加したのでしょうか?
サル:あれは確かゲイブが「ラリーが君らのファンで一曲参加したいって言ってるんだけどどうする? 連れてこようか?」って言うから、「もちろん」って言って決まった。で、セッションに参加してくれて実現したんだ。確かあの時、お孫さんが送り迎えしてたよ(笑)
―レコーディングやライブでは、例えばシンシアーズのジョーイ・キニョーネスがオルガンを弾いていたり、フィーチャリング・ボーカリストとしてペンローズからシングルを出しているジェンシン・ベニテスが参加していたりしますが、あなたたちの作品に欠かせないミュージシャンとその繋がりを教えてもらえますか?
アレックス: サルとジョシュと出会う前から僕はライリー・ダン(Key)やシェイ・ストルツ(Gt)と知り合いで、シェイとはハウス・ショウなんかの現場で同じバンドでやっていたんだ。彼は何でも弾けるギタリストだから(セイクリッド・ソウルズにも)ぴったりだと思った。例えば、「レッド・ツェッペリンが75年にこの街でライブした時の演奏やってみてよ」ってふざけて難問を出しても、それが出来ちゃうヤツなんだよ。だからリード・ギターは彼だって確信していた。ライリーも同じ頃に出会った。あとは誰だっけ?
サル:ジョーイ・キニョーネスはシンシアーズのフロントマンで僕らのバンドのメンバーではなかったけど、「Can I Call You Rose?」のオルガンを担当してくれた。ジェンシン(・ベニテス)とは、ずいぶん前にどこかのハウス・ショウに出ていた時に出会った。彼女も自分のバンドと来ていて、歌声を聴いた時になんてユニークな声をしているんだろうって思ったんだ。それで取り掛かっていたプロジェクトを見にくるよう誘った。そうしたら彼女は、みんなにすっかり馴染んでバンドに加わることになった。以来、彼女もソロのプロジェクトを手掛けたり頑張っているよ。あとは誰がいたかな?
ジョシュ:ここ数年バック・ボーカルを務めてくれているヴィエン(Viane Escobar)は、素晴らしいボーカリストだよ。他にも必要な時にサポートで入ってくれるボーカリストたちが数人いる。LAを拠点にしているボーカリストのアンディ(Andy Delos Santos)もそう。もうひとりのアスティン(Astyn Turrentine)は僕らの友達で、彼女もいろいろ活動している素晴らしいボーカリストだね。それと、やっとツアーに常時ホーン・セクションを入れられるようになったんだ。彼らは大学で結成されたグループで、素晴らしいミュージシャンたちだよ。
サル:チャネルトーン・ホーンズ(Channeltone Horns)。
ジョシュそう、チャネルトーン・ホーンズっていうんだ。テナー・サックスのカミール(Camille Kerani)にトロンボーンのスティーブン(Steven Schlosberg)……。
サル:あとトランペットのジュリアン(Julian Johnson)。ビッグ・バンドだよ。パーカッションはアレックス・サンティリ(Alex Santilli)。彼のことはシカゴでいきなり勧誘したんだ。「僕らと一緒にやらないか?」って。というのも、みんなで彼の演奏を観ていたんだけど、圧巻のプレイだった。あの日のスターは間違いなく彼だった。そうやって参加することになった。
アレックス: 弦楽奏者もいるし、今や総勢20名のバンドだよ。
ジョシュ:素晴らしいプレーヤーたちばかりで、共演していてすごく楽しい。これまでに何度もメンバー変更はあったけど、今のメンツは一緒にツアーしていても、オフの時間を過ごすのも本当に楽しい。それに何よりホーンやストリングスが加わると、楽しいだけじゃなくてソウル・ミュージックが際立つというか、豊かに感じられるんだ。
―昨年はシングル「We Dont Have To Be Alone」を出しましたが、これは次のアルバムに入るのでしょうか?
サル:(アルバムに入れるかとか)話題になったことはなかったよね?
アレックス: 特に話し合ってないけど、次のアルバムには入れる予定はない。あれは『Got A Story To Tell』のセッション中に録った曲だしね。
ジョシュ:すごく良い曲だし、シングルとして出して良かったと思う。プレイしていても楽しい曲ではあるけど、アレックスが言ったみたいにアルバムにつながる曲だとは思わない。実際、2作目のアルバムを考えていた頃に録った曲だしね。でも良い曲だよ。
―では最後に来日公演について。Tiny Desk Concertやコーチェラでのパフォーマンスも素晴らしかったですが、5月の公演では最も新しいセイクリッド・ソウルズが観られるということで楽しみです。
サル:ちょうど待ちに待った長い休暇を取ったところなんだ。ずっとツアーが続いていて過密スケジュールだったから、それぞれしっかり心身を休める時間が必要だった。頭がスッキリすると、また切り替えていろいろ向き合うことができる。みんな調子も良いし、またプレイできるのが待ち遠しい。自分としてはメチャメチャいいショウになると思っている。
アレックス:移動サーカスが来ると思ってくれればいいよ。パフォーマーやダンサー、火吹き芸人とか、いろいろ連れて行く予定だから(笑)。
ジョシュ:お馴染みの曲は期待してもらっていいし、僕たちもどれぐらい観客のみんなが一緒に歌ってくれるか今から気になってる。ホーン・セクションも連れて行くからフル・バンドでお届けするよ。
サル:観客席まで走っていくかもよ!
ジョシュ:それもあり得るね(笑)。とにかくすごく楽しみにしている。僕たちはほとんど全員日本に行くのは初めてだしね。日本に行ったことのある友達や日本の友達の話だったり、SNSなんかを見ていても、日本の人たちの思慮深さや特定の文化に対する敬意の念には感銘を受けている。ソウル・ミュージックに対しても同じで、聴く人が敬意の念を持っている姿勢は素晴らしいと思う。滞在中はリスニング・バーに行ったり、古着のデニムを見つけたりできたらいいな。
セイクリッド・ソウルズは4月10日、ニューシングル「Any Old Fool」をリリース
セイクリッド・ソウルズ来日公演
2026年5月17日(日)ビルボードライブ大阪
1stステージ:開場 15:00 / 開演 16:00
2ndステージ:開場 18:00 / 開演 19:00
>>>詳細・チケット購入はこちら
2026年5月19日(火)ビルボードライブ横浜
1stステージ:開場 16:30 / 開演 17:30
2ndステージ:開場 19:30 / 開演 20:30
>>>詳細・チケット購入はこちら
2026年5月21日(木)・22日(金)ビルボードライブ東京
1stステージ:開場 16:30 / 開演 17:30
2ndステージ:開場 19:30 / 開演 20:30
>>>詳細・チケット購入はこちら:5月21日(木)
>>>詳細・チケット購入はこちら:5月22日(金)


![VVS (初回盤) (BD) [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51lAumaB-aL._SL500_.jpg)








