2020年12月15日(火)東京・LIQUIDROOM the peggies LIVE “ENCORE”~supported by DECEMBER'S CHILDREN~
DAY、NIGHTの1日昼夜2公演というスタイルでの東名阪ツアー『運命だって信じたいツアー』を11月に敢行したthe peggies。このツアーの夜公演は全会場ソールドアウトと盛況のうちに終えたが、その勢いをかって12月15日、恵比寿リキッドルームで2020年最後となるステージ『the peggies LIVE “ENCORE” ~supported by DECEMBER'S CHILDREN~』に臨んだ。 この夜は音楽事務所moving onの年末恒例のイベント『DECEMBER'S CHILDREN』がサポートする『運命だって信じたいツアー』の「アンコール公演」的なライブ。
開場時アクト1/Rose One ナイフのような苛立ちの言葉を繰り出すRose One
トップバッターは2019年12月から活動を始めたRose One。“暴力、暴動、いじめ、ハラスメント……世界のクソッタレを全て唄にする群れない、媚びない、属さないを地で行く社会派ノスタルジックシンガー”と異名を取る22歳の女性シンガーソングライターだ。 1曲目の「常識なんてからっぽ」から、「クッソタレのようなこの場所で戦ってきた」と世の中の欺瞞に対するエネルギーを強烈に放つ。続く「ハラスメント」「但し書き大国」でもナイフのような切れ味鋭い言葉がマシンガンのように繰り出される。その言葉の一つひとつが、「それでいいのかい?」とばかりに突きつけられ、フロアに緊張感が走る。 そんなRose Oneだが、「自分を受け入れてくれる居場所を見つけた」というライブハウスで出会った“おっちゃん”が投げかけてくれた肯定の言葉をモチーフにした4曲目の「君は正しい」では、素直に受け入れたけたくない日々に苦しむ人たちへの優しさを見せた。 そして圧巻だったのがラストナンバーの「ボクノイルバショ」。セリフ調のAメロから一転、サビでは「悩みは先生に相談しましょう」というフレーズに対して、「うるせー」「ばか」「僕のいる場所はここなんだと」泣き叫ぶように歌い、抗う。まるで誰もが心のなかにしまっている“言わない言葉”を代弁するかのように。誰しもの心にある痛み、怒り、もどかしさ……そして、優しさとつながるRose One。不透明で理不尽なことが増えていきそうな世の中で、これからどんな歌を生み出していくのか。楽しみにしたい。

開場時アクト2/奇跡の歌声で物語を綴る成山俊太郎
続いて登場したのも2019年に音楽活動を志し、高校卒業後の2019年に福岡県から上京したという成山俊太郎。 あるメジャーレコード会社の男性ボーカリストオーディションで3,767人の応募者から4人のファイナリストの一人に選ばれた逸材だ。 1曲目はくるりのスタンダードナンバー「ばらの花」のカバー。歌い出した瞬間に「あっ」という声が出そうになったくらい、深みのある美しい歌声に驚く。この“圧倒的な声”を周知させる、そして“成山俊太郎というボーカリスト”の存在を際立たせるにはうってつけの選曲だった。 「ルーティーン」「夜とグラス」「七変化」と美しいメロディの曲が続く。日本的な情緒を根底に、どこかアメリカのフォークロックやスタンダードポップスの調べも思い起こさせるナンバーだ。そして、ここでも存在感を放ったのがやはり“歌声”。一見、誰の日々にもありそうな風景、“君と僕”との感情の機微が、成山俊太郎の声を通すと一つひとつの描写に色がつき、掛け替えのない物語として歌の世界が目の前に浮かび上がってくる。まるで映画を見ているように。この魔法がかった声、奇跡的な声を聞いていうちに、キャロル・キングやポール・サイモンが頭に浮かんだ。 最後に歌った「七変化」は12月23日に配信シングルとしてリリースされるという。替えの効かない天賦の才を秘めた成山俊太郎は、これから何を経験して、何を見て、どんな物語を極上の奇跡の声で綴っていくのだろうか。

メインアクト/苦難の1年を経て“勇敢さ”を増したthe peggies
いよいよメインアクトのthe peggiesの出番。北澤ゆうほ(Vo&Gt)、石渡マキコ(Ba)、大貫みく(Dr)が意気揚々と登場。気合が伝わってくるその立ち姿には、ただならぬこの1年を乗り越えてきたファン、フロアに集うも声を上げられぬ仲間たちを「大丈夫!」とフックアップするようなたくましさがみなぎっている。 誰もが苦難を強いられ、大切に積み上げてきたことがご破算にもなった人も多かった2020年。そのやるせなさをぐっと歯を食いしばって耐えてきた2020年。もちろんthe peggiesも辛抱の日々を過ごした。でも、大事にしてきたライブでファンと共鳴し、最高の笑顔を弾けさせる日は不完全ながら戻ってきた。「ならば、やらねば!」。そんな気概に満ちながら「Hello!」の第一声とともに「グライダー」でステージの幕が開く。「それでも進み続けなきゃいけない」「僕らの戦闘機はまだまだ大丈夫さ」と、もどかしさを振り切って前に進もうとするメッセージが、いつにも増して迫ってくる。 「マイクロフォン」「スタンドバイミー」と一気呵成にたたみかける。「マイクロフォンを渡すから君の泣き声も笑い声も全部聞かせてよ」のフレーズは、このご時世だけに、やはりさらに大きく響く。





