いつかベルリンでライブするのが一つの目標
──まず、“GANZ HASE”というバンド名はどういう意味なんですか。
UCARY:私の口癖が“めっちゃ”なんです。ベルリンにいたとき、“めっちゃ”はドイツ語で何て言うの? って若い子に聞いたら“GANZ”だよって。
──それはもうバンドができてるとき?
UCARY:いや、最初は自分が打ち込みでハードコアテクノみたいなことをしてて、それが4年前ぐらいかな。それから2年前ぐらいですかね、ギターのKikuchiさんに「もうそろそろバンドにしてライブしたいな」って相談して、メンバー探して今の4人になった感じです。
──もともとKikuchiとは面識があったの?
UCARY:“UCARY & THE VALENTINE”というソロのプロジェクトでサポートのメンバーとして入ってもらってました。
──Ryochiとは?
UCARY:999999999のライブに呼んでもらってですね。Too-shit君は「ヤバいドラマーがいるよ」って教えてもらってライブを観に行きました。パフォーマンスを観た瞬間、この人が一番かっこよく見える曲を作りたいと思いました。もっとバンドサウンドにしたいなって。ラブコールにも応えてくれたので、曲のアレンジも少しずつ変えていき、今のスタイルになりました。
──ベルリンでハードコアテクノみたいなことをやってたっていうのは、それをやりたいっていう意識があったの?
UCARY:ベルリンは街として好きなんです。パンクもハードコアも邪険にされてないというか、みんな普段着みたいに個性を受け入れているんですよね。そういう人がいっぱいいる、こういう街でライブをしたら自分は過ごしやすいんじゃないかと思って。
──と仰ってますけど、皆さんはどうですか?
Too-shit:めちゃくちゃ行きたいですね。音楽的にもテクノとかがアツいっていうのもそうなんですけど、変な人が過ごしやすい空気っていうのをベルリンには感じていて。生きやすいとこに行きたいですね、過ごしやすいところ。
──KikuchiとRyochiは知り合いだったの?
Ryochi:999999999でもギター弾いてもらったり、999999999のイベントでMOP of HEADに出てもらったこともあるし、もともとVOLT(vocal / 999999999)と旧知なので。
Too-shit:それで僕は普段やってるQUESTRAKTっていうハードコアバンドで999999999と仲良くなってて。Ryochiさんとは何かありそうだなと思ったので連絡先を交換していて。
Ryochi:二人でスタジオ入ったりしてたよね。
Too-shit:そう。で、メンバーを探してるってときに声かけてもらって、UCARYちゃんをライブに連れてきてもらって。それでお誘いを受けましたね。
──最初はトラックを中心に作ってたということなんですが、バンドとしてスタジオで合わせたときの感触はどうでしたか。
UCARY:全然違いますね。最近の傾向として、曲の核みたいなものを作ってみんなに投げて、それぞれその曲に合う音を持ってきてもらう感じで進めます。メインのアレンジはKikuchiさんにやってもらって、そこからさらにそれぞれが音を入れていく感じです。
──ある程度自由に曲を作ることができてると。
Too-shit:そうですね、バンド感が出てきてますよね。
UCARY:我々は基本的にオンラインバンドなんです。
Ryochi:俺が誘われたのは本当にコロナ禍で。Too-shit君が入るまでは本当にデータだけのやり取りで活動していて、Web上に存在しているみたいな。スタジオとか入らずに。
Too-shit:僕以外はみんな宅録できるんですよね。なのでそれが強みではあったと思います。
──ライブもすでに4回ほどやってるけど、スタジオで音を合わせているとライブの完成度みたいなものもどんどん変わってくるもの?
Ryochi:それぞれがバンド経験、音楽経験があるのでやっぱり変化が早いですね。
──ライブをやって達成感みたいなものはだいぶ増えてきた?
Ryochi:やるたびに増えてますね。
Too-shit:まだ分母が少ないんで分からないですけどね。ただ、前回の二万電圧でのライブはめちゃくちゃ良かった。すごくやった感がありました。
Ryochi:スタジオでも最近爆発してますもんね。
UCARY:私は“やってしまった感”が増えてきたかもしれない。やりすぎちゃったなというか。ソロは歌がメインなので、心を込めて歌に集中します。GANZ HASEは暴れるっていうことを練習中です。
スペシャルでこれをやってますっていう感じはない
──曲を聴かせてもらいました。2曲目の「Fxxx Fxxx Fxxx」とかはアンビエントというのか、デジタルハードコアの要素もあるけども面白いです。曲の振り幅、引き出しが多い。曲のレンジが広い。
Ryochi:全員、バックボーンがバラバラなので。
UCARY:私はドリームポップ、そこにKikuchiさんの純正なサイケって言うんですかね、バグった感じがあって、それでケミストリーが生まれると思うんですね。オールジャンルいける単純なパワー。
──レコーディングはどういう感じで録ったの?
Kikuchi:竿モノが宅録、ドラムがスタジオで、ボーカルはUC(guitar:999999999)さん宅。
Too-shit:ドラムのエンジニアはUCさんにやってもらって、ミックス・マスタリングもUCさん。
──今までのバンドなどはスタジオのエンジニアさんに録ってもらうことが多かったと思うけど、自分たちで本格的に作り上げるって感じなのかな。
Too-shit:友達まわりで完結できればディスカッションもしやすいし、話が早いですし。UCさんはそもそもRyochiさんとバンド一緒にやってるんでコミュニケーションも取りやすいし。
UCARY:Kikuchiさんがだいたいできちゃうんで、それをUCさんが綺麗に整える。ギターだけじゃなくてFX系も。
Ryochi:メンバー内でレコーディングもそうだけどいろいろできる。自分たちでデザインをやってるとかその辺もまだ表に伝わってないと思うけど。
Too-shit:DIYにこだわっているわけじゃないんですけど。
Ryochi:自然と、みんなそれぞれ経験からね。
──ライブでやれるのは何曲ぐらい?
UCARY:リハに入れたら結構できそうですけどね。
Ryochi:今日のライブでも9曲やりますよ。
──9曲もやるんだ。
UCARY:短い曲もあるしね。
Ryochi:UCARYちゃんは止めなかったら無尽蔵に良い曲が出てくるしね。
Too-shit:一回スタジオ入ればみんなキャリアがあるからパッと返せはするんですけど、ただ一回一回やっていることがまるで違うんですよね(笑)、形にはなるんですけど。だから現状で何曲できるかとか把握しきれてないです。
──アレンジもバッチリ決めてやろうっていうよりは自由にやろうという感じなんだね。
UCARY:私は勝手に自由にやってます。
Ryochi:それをKikuchiが全体のアレンジを考えてくれたり、シーケンスの部分とか。その上でいけそうかどうかをみんなで考える。
Too-shit:トラックがそれ自体単体で聴いてもかっこいいぐらいバチッと決まってるんで、逆に楽器はフリーキーにやっちゃっても大丈夫かなっていう感じですかね。
──3曲目の「hurt」のMVのコメント欄に「SOFT BALLET好きですか」というのがありました。シンクロ、伝播してくる感じがすごい面白いです。影響を受けたアーティスト教えてください。
UCARY:ムスリムガーゼ。私がベルリンに行く理由になったアーティスト、ムスリムガーゼっていうトラックメーカーなのかな…がいて、もう亡くなっちゃったんですけど。その人の音楽が好きで、その人の未発表音源をベルリンのStaalplaatっていうレコード屋だけで売ってるんですが、そこに買いに行ってました。セパルトゥラとかガーゼも好きです。その辺が軸にありつつ、私がこの声なんで結構キャッチーになりやすい。なのでキャッチー要素として、恥ずかしいけどマーベルとかマリリン・マンソンとか、分かりやすいぐらい悪役みたいな音楽も聴いてます。悪役のポップス要素をちょっと入れて、最近はそこにオアシスを混ぜてます(笑)。やっぱりみんなで歌えたらいいなと思うんで。ダムドとかも好きなんですけど、分かりやすいじゃないですか。ハードコアじゃないけど“分かりやすい”“ちょっとかわいい”“ちょっとダサい”要素を入れて、めっちゃグロテスクだけど聴きやすい、アホっぽい、っていう感じにしたくて。その感覚に一番近いのはKikuchiさんでした。Kikuchiさんはわりと超ハードなことを天然で入れてきてくれます。ハードって言うか、気の触れたような音。Ryo-chiさん、Too-shit君はウワモノ二人のトリッキーな音楽をめっちゃしっかり支えてくれるし、なおかつぶっ飛ばしてくれる感じがある。最高のバンドだと思ってます。
Ryochi:経験、キャリアがある人たちが集まって組むバンドっていうのはパッとやって終わったりとか全然あると思うんですけど、そういう感じじゃないですね。
Too-shit:ハマってますよね。
Ryochi:新しくバンド組んでますって感じですよね。みんなそれぞれ活動してますけど、なんかスペシャルでこれをやってますっていう感じはない。
早くチェックしないと「アンテナ立ってない」と思われますよ?
──Ryochiも999999999とは違うスタンスで?
Ryochi:全然違いますね。関わり方も違いますし。向こうではリーダーというか、責任を持ってやってるんですけど、こっちは好きにやってます。皆さんに甘えてますね。なんならいじられてます(笑)。
UCARY:いじるとこだらけですよ(笑)。
Ryochi:そういう意味でも、みんなそれぞれバンドの立ち位置もジャンルも違うので、別のバンド、新しいバンドっていう感じですね。
UCARY:安心して任せられるから結構余裕を持ってできる。“信頼”って感じです、早くも。
Too-shit:いい友達に巡り会えたっていう感じがしますね。
──Kikuchi君は?
Kikuchi:僕はわりと立ち位置は似てますよ。MOP of HEADの方法はGeorge(Machine / MOP of HEAD)から雛形作って自分が一番最初にアレンジする。そこはあんま変わらないです。ひとつ違うのは自分でも曲を書くっていうことですかね、歌のことはなんも考えてないですけど。ただワーっと。
UCARY:4曲目(「STOP ASIAN HATE」)とかはめっちゃ早かったですね。ダーッってきてスタジオ入ってパッと返してできた、みたいな。ちょっと歌は変わったけど。今回は出してないですけど、ライブでやっている曲でRyochiさんがトラックを作ってくれて私が歌を載せた曲もあるし、そういうのも楽しいですね。
Too-shit:3人曲が作れるっていうのは強みですね。ペースが早くて。逆に僕が今日のスタジオはどれからやればいいのみたいな感じでテンパってしまうことも(笑)。
Ryochi:他のバンドの経験がそこまであるわけじゃないですけど、相当早いと思いますよ。なんなら今はセーブしてるぐらい。
──11月5日に1st EP『BLOOD IN BLOOD OUT』をリリースするということで、一言ずつもらえますか。
Too-shit:先行で2曲を公開してます。2曲目「Fxxx Fxxx Fxxx」を配信リリースしていて、3曲目「hurt」はMVとしてYouTubeで公開されています。
──あの動画もすごいかっこいいよね。
Too-shit:あれはRyochiさんが撮ってUCARYちゃんが編集とかしてます。なので完全な新曲っていうのは2曲。その4つでかなり幅広い起承転結を表現できていると思うんで、それを面白がってもらえたらいいですね。一度通して聴いてほしいです。ここからまた何が起こるのかなっていうことを楽しみにしてもらえたら。
Ryochi:まだね、名前も、曲もどういう人たちがやってるのか知らない人も多いと思います。けど早くチェックしておかないと「アンテナ立ってない」と思われるから。早く音源聴いて早くライブに来てください。今回入ってる音源もめちゃめちゃGANZ HASEらしいですけど、まだ入ってない曲も面白いのがいっぱいできてるのでそれもどんどんリリースしていこうと思います。
Too-shit:もうオケ録ってる曲はいっぱいあるもんね。
Kikuchi:たくさん聴いて、たくさんライブ来てください。
UCARY:“BLOOD IN BLOOD OUT”はギャングの用語で、その組織に入るときの合言葉みたいなものなんですね。「人を殺して入る、出るときは自分が死ぬとき」っていう覚悟。そういう覚悟を持って音楽で生きているから、このタイトルを付けました。それとジャケットはKAWAMURA KOSUKEさんにお願いして作ってもらったんで、ジャケットもチェックしてもらいたいです。
──こんな面白いことをやっているバンドなので、世界に評価されて日本でも評価されて伝わっていって欲しいですね。今後の展望を教えてください。
UCARY:とりあえず…メンバー全員はワクチン2回打ってください!(笑) 海外へのアプローチは頑張るんで、いつでも行けるように準備を整えるようにしたい。みんな家族を愛してるところも大好きなので、そういうところも大事にしつつバンドをちゃんと長い目でやっていけたらと思います。悪魔降臨させるんで悪魔が見たい人は来てください!