今週末は、この映画に胸アツ!映画『アイム・スティル・ヒア』 海への深い想いと、家族への温かな愛情が紡がれた、珠玉のオスカー受賞作!

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今年のアカデミー賞からすでに5カ月。すっかり記憶の彼方になった感もあるが、アカデミー賞受賞作の中で、ようやく日本で公開が始まるのが本作。
かなり時間が空いたけれど、タイミングは悪くない。それは“海”への想いが込められているからで、夏に観るのにぴったりな作品だから!

第97回アカデミー賞で作品賞など3部門にノミネートされ、国際長編映画賞を受賞。『セントラル・ステーション』や『モーターサイクル・ダイアリーズ』などで、ブラジルの誇る巨匠となったウォルター・サレス監督はハリウッドにも進出しつつ、祖国に戻って撮ったのがこの最新作だ。それだけにブラジルへの愛、複雑な感情が強く込められ、観る者の胸を締めつける。物語は1971年のリオデジャネイロではじまる。当時のブラジルは軍事独裁政権。そんな政府に批判的な立場だった元下院議員のルーベンスが連行され、そのまま行方不明になってしまう。ルーベンスの帰りを待つ妻のエウニセと5人の子供たちが、その後、どんな運命をたどったか。40年以上にもおよぶ過酷でドラマティックな彼らの人生。軍事政権のあまりに理不尽な行動。さらに、これはすべて実際に起こったこと……。アカデミー賞受賞というだけあって、強烈なインパクトで心に刻まれる一作だ。

  
ストーリーだけ紹介すると、たしかにシリアス。エウニセが尋問で受ける苦痛など衝撃的描写もあるのだが、映画全体はどこか温かく優しい空気に包まれている印象。メインの舞台となる1970年代の音楽や映画のネタが絶妙に盛り込まれ、ノスタルジックで心地よいムードを醸し出している。ブラジルらしい大らかな国民性が、家族の絆と結びつき、観ていて愛おしくなるのは、ウォルター・サレス監督のマジックかも。主人公一家の心の拠り所になるのがリオデジャネイロの海。終盤、その海への家族の気持ちが溢れるシーンは、本作の美しい“記憶”となるだろう。本作でアカデミー賞主演女優賞にノミネートのエウニセ役フェルナンダ・トーレス。その顔に映画ファンは見覚えがあるかも。同じサレス監督の27年前の『セントラル・ステーション』でやはり同賞ノミネートのフェルナンダ・モンテネグロにそっくりなのだ。そう、2人は母娘。そして母のモンテネグロも本作に出演。どんな役なのかは、お楽しみに!

『アイム・スティル・ヒア』8月8日公開
監督/ウォルター・サレス 脚本/ムリロ・ハウザー、エイトール・ロレガ 出演/フェルナンダ・トーレス、セルトン・メロ、フェルナンダ・モンテネグロ
2024年/ブラジル、フランス/上映時間137分
  

文=斉藤博昭 text : Hiaroaki Saito
©2024VideoFilmes/RT Features/Globoplay/Conspiração/MACT Productions/ARTE France Cinéma

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