上海証券取引所のメインボードへの上場を目指している、江西天新薬業(603235/上海)が7月1日、新規公開(IPO)に向けた公募を開始する。4378万株を発行予定で、公募価格は6月30日に発表する。
同社は2004年設立の民営企業で、17年に株式会社化した。単体ビタミン製品の研究開発、生産、販売を主業務としており、製品にはビタミンB6、B1、ビオチン、葉酸、ビタミンD3、パルミチン酸アスコルビル、ビタミンEパウダーなどが含まれる。中国国内だけでなく、アジア、欧州、北米、南米、オセアニア、アフリカの国・地域で販売され、高い評価を得ている。特に売上の8割前後を占めるビタミンB6とB1で高い世界市場シェアを持つ。同社が生産する単体ビタミンは、食品や飼料として用いられるだけでなく、医薬品あるいは医薬品中間体としても広く利用されている。
ビタミンは人体に必須の栄養素であり、永久的な需要が見込まれる。食品だけでなく、動物飼料への添加、さらには薬品やサプリメントと市場が拡大してきた。現在の世界市場はオランダDSM、独BASFと中国企業がシェアを奪い合う状態になっている。中国におけるビタミン生産量は2010年の約20万トンから、20年には35万9000トンにまで増加し、世界の生産量の78.4%を占めた。また、中国はビタミンの一大生産国であるとともに、主要輸出国でもある。輸出量は10年の約17万トンから、20年には28万1000トンとなった。
中国では経済成長に伴う生活水準の向上により市民の健康意識が高まり、ビタミンなどのサプリメント市場が拡大しているが、1人あたりの消費量は欧米や日本の先進国に比べるとまだまだ少なく、国内需要は今後さらに高まることが予想される。また、高齢化の加速もビタミンなどサプリメント市場にとっては追い風だ。
同社は全面的かつ充実した管理体制、認証取得状況、業界をリードする技術力、研究開発力、国内外に広範な販売市場を持ち、顧客と安定的な関係を築いていることなどを強みとしている。一方で、手掛けているビタミン製品の種類が国際的な大手メーカーに比べると少なく、水溶性ビタミンに偏っていること、生産能力や取扱い品種、販路の拡大に必要な資金調達力に乏しい点がボトルネックとなっている。また、製品価格の下落、原材料価格の上昇、国外向け販売が全体の6割前後を占めており、国際貿易の環境や政策の変化による影響が大きいこと、主力製品であるビタミンB6、B1の競争が激しくなっており、利益やシェアが低下する可能性があることなどがリスクとして存在する。
2021年12月期の売上高は25億2243万元(前期比9.50%増)、純利益は7億4388万元(同16.14%減)。22年1~3月期の売上高は6億608万元(前年同期比5.43%減)、純利益は1億7815万元(同13.42%減)。(編集担当:今関忠馬)(イメージ写真提供:123RF)