吉林人民出版社で雑誌「日本文学」の副編集長を務める李長声氏はこのほど、中国文化を懸命に吸収した古代日本が、宦官を導入しなかったことをテーマにする論説を発表した。「中国人は尊敬の気持ちを持つ」と評価し、その理由を考察した。
多くのニュースサイトや個人のブログが同論説を転載した。

 李氏はまず、「古代日本は中国から多くを学習した。そのため、日本文化には中国文化に似た点が多い。しかし、日本文化には独自の点も多い。例えば宦官だ。日本には存在しない。なぜだろう?」と書き起こした。

 論説は、「中国人も、宦官をよく思っていない。導入しなかった日本人に、尊敬の気持ちを感じざるをえない」と主張。「日本は、あえて導入しなかったのではなく、文化的に中国のすべてを導入するまでには、成熟していなかった可能性がある」と論じ、それでも日本にとって幸いだったことは事実とした。

 日本文化が「成熟していなかった」こととして、具体的には牧畜文化の希薄さを挙げた。日本は義和団の変に対応するため、1900年に8カ国連合軍の一員として中国に出兵した際、欧米の軍から初めて軍馬の去勢を教わったことを紹介。
文化人類学者の石田栄一郎氏の「日本に伝わらなかったり、普及しなかった大陸の文化の多くは、牧畜文化に直接・間接にかかわるものだ」との言葉を引用した。

 また、「人間に対する去勢はもともと、征服民族が被征服民族に対して行う手段だった」との、別の日本人学者の見方を紹介し、「異民族との接触が少なく、征服・被征服の歴史がなかった日本では宦官を生み出す決定的条件はなく、後になり仏教文化の影響も強まり、この残酷な手法を用いる可能性は、なおさらなくなった」と論じた。

 なお、一般的な歴史観で、宦官は常に陰謀をめぐらした「悪の存在」とされるが、宦官を一方的に非難する論調には行き過ぎもあると考えられている。宮廷で宦官と勢力争いをしたのは、主に科挙に合格して立身出世した官僚で、文筆に長じた彼らは、「敵」である宦官をことさら悪く書いたからだ。

 論説も史記を著した司馬遷、紙を発明した蔡倫、アフリカまでに及ぶ大航海を行った鄭和など、宦官には偉人もいたとして、国家の衰退をもたらした人間性のない存在との見方には、偏見もあると論じた。(編集担当:如月隼人)

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